2018年01月16日

自閉症急増の犯人は抗生物質?

過去40年で10倍にも増えている自閉症

 Rain-man.jpg自閉症というとまずイメージが浮かぶのが、1988年の映画『レインマン』でダスティン・ホフマンが演じた自閉症の主人公レイモンドである。レイモンドは自閉症サヴァンだったが、すべてが平均以上の知力を有するアスペルガー症候群だけではない。学習が困難な重度の自閉症もいる。1943年、米国の精神医学者、ジョンズ・ポプキンス大学のレオ・カナー(Leo Kanner,1894~1981年)名誉教授がこの症状を「自閉症」と命名した(5p102)

Leo-Kanner.jpg アスペルガー症候群や自閉症等、これまで別個のものとして扱われてきた様々な障害は、2013年に「自閉症スペクトラム障害」としてひとくくりにされることとなった(6p176)

 自閉症の兆候や症状は2~3歳のころに表れるが(6p178)、これらの障害には以下の共通する三つの特徴がある(6p176)

・社会的な交流が困難である。
・言語・行動による意志疎通が苦手である。
・行動が反復される(6p177)

 国連の統計によれば自閉症スペクトラム障害(ASD)の患者数は世界で7000万人いる。うち、3000万人が米国人である(6p176)。けれども、以前は自閉症は1万人に一人いるかどうかという非常に希な病気だった(5p103)。1940年代にはあまりに希なため病名すらついていなかった(5p53)。1960年代後期に初めて調査がなされるが、その時には2500人の子どもに一人だった。米国の質病管理予防センター(CDR)が正式に記録を取り始めたのは2000年からだが、8歳の子どものうち150人に一人となっていた。それが、2006年には110人に一人(5p53)、2010年現在では、68人に1人、男児では42人に1人(5p53,6p103)、女性では189人に一人が自閉症と診断されている(6p103)。心の病がこれほど増加しているのは「普通」ではない(5p54)。過去40年での十倍もの増加は、自閉症が広く認知されたことによって自閉症として診断される人が増えたというだけでは説明ができない(6p178)

自閉症は腸内破傷風菌の病気と関連する

Ellen-Bolte.jpg 以前は自閉症は遺伝性の病気であると考えられていた(5p103)。また、原因がまったくわからないためにワクチンの影響が論じられたりもしてきた(6p180)

 けれども、1990年代になってから自閉症の謎を解く鍵が見つかる。子どもを抱えたエレン・ボルト(Ellen Bolte)さんの息子アンディーは、1994年に自閉症と診断されるまではごく普通に育っていた。けれども、耳感染症を抗生物質で治療した後に自閉症にかかる。そこで、エレンさんは抗生物質によって腸内の善玉菌が死滅し(6p195)、クロストリジウム・ディフィシル感染症を引き起こす悪玉菌、破傷風菌(クロストリジウム・テタニ)が腸内で繁殖し、その神経毒素が脳にダメージを与えたのではないかと考えた(5p105,6p195)。そして、1996年には息子の腸内細菌のバランスを戻すことを試みて、その症状を改善させることに成功する。この親子の物語はドキュメンタリー番組『自閉症の謎』で取り上げられ反響を呼んだ(6p195)

Richard-Sandler.jpg 2000年には、セントラルフロリダ大学医学部のリチャード・サンドラー(Richard H. Sandler)教授が、自閉症と診断された11人の子どもたちに抗生物質による治療を行ない、その乱れを治療すれば自閉症の症状が大きく改善される証拠を示した。腸内細菌の乱れが自閉症の原因となっていることを示したことで医学会に衝撃を呼んだ(6p194)

Syd-Finegold.jpg 2001年には、微生物学者、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のシドニー・ファインゴールド(Sydney Martin Finegold,1921年~)名誉教授は、自閉症児13名と健康児8名の大腸内の微生物を比較してみた。破傷風菌そのものは見つからなかったが、平均するとクロストリジウム属の細菌が10倍も多くいた。自閉症の子どもたちには9種類のクロストリジウム属の菌がおり、それは自閉症ではない子どもたちには見られない菌だった(6p196)

破傷風菌が作り出す短鎖脂肪酸が自閉症症状を引き起こす?

 カナダのウェスタンオンタリオ大学のデリック・マクフェイブ(Derrick F. MacFabe)博士は、シドニー・ファインゴールド名誉教授が抗生物質で治療中のときにだけ自閉症の症状が改善したという話を聞いて興味を抱いた。当時、マクフェイブ博士はプロピオン酸と脳との関係を調べていた(5p122)

Clostridium-tetani.jpg 腸内細菌が食物繊維を分解するときには、代謝産物として短鎖脂肪酸、主にプロピオン酸、酢酸、酪酸を作り出す。それらは、結腸で吸収されてエネルギー源と使われるか、排泄される。どの短鎖脂肪酸が作り出されるのかは、細菌の種類によって異なり(6p196)、クロストリジウム属の細菌はプロピオン酸を産生する(5p123,6p196)

 そして、プロピオン酸は、自閉症の引き金となる(6p197)。プロピオン酸は、パンの防腐剤にも使われているが、自閉症児はパンを好む。自閉症児たちの腸内細菌はプロピオン酸を過剰に生産しているのではないか。

Derrick-MacFabe.jpg そう考えたマクフェイブ博士は、微量のプロピオン酸を生きたラットの脊柱から脳脊髄液に注入してみた。すると、突然にラットは仲間よりもモノに興味を示し、一定の動きを繰り返し、突発的に走ったりした。その奇妙な行動は自閉症患者の行動と似ていた。プロピオン酸の効果が30分ほどで消えるとラットの行動は元に戻った。そして、プラセボとしての生理食塩水を注入してもラットの行動は変化しなかった(5p123,6p198)

 また、妊娠中のラットと子供達にプロピオン酸が多く入った餌を食べさせてみると、生後4から7週間になる頃には、人間の自閉症の子どもたちのような変化が見られ始めた(6p198)

 マクフェイブ博士はラットの脳と検死解剖された自閉症患者の脳を検査してみた。その結果、どちらの脳にも免疫細胞が大量にあり、統合失調症と同じく炎症が起きていた(5p124)

 脳の学習は記憶と忘却が微妙にバランスしている。不要になったシナプスは免疫細胞が病原体を処理するように貪食する。これは健全な炎症反応である。けれども、プロピオン酸を注入されたラットは、ある迷路のルートを記録すると、その道を忘れられなくなっていた。自閉症患者が決まりきった行動を好み、異常に記憶力が優れているのと似ている(5p124)

リーキーガット症候群で自閉症となるマウス

Elaine-Hsiao.jpg カリフォルニア大学ロサンゼルス校のイレイン・シャオ(Elaine Hsiao)准教授は、2013年に自閉症の症状を引き起こす物質を発見した。かつ、その物質は腸内細菌が作っていたことがわかった(4p148)。シャオ博士が研究に用いたのは自閉症のモデルマウスである。ひとつのケージに2匹のマウスを入れると匂いをかいだり様々なコミュニケーションを始める(4p150)。さらに、人間には聞こえない超音波を使った鳴き声でもコミュニケーションをしている(4p151)。普通のマウスは1分に150回ほど音を発するが自閉症マウスはその3分の1程度しかなかない(4p152)。さらに、シャオ博士が詳しく調べると、自閉症マウスは血液中で腸内細菌によって作られる「4EPS」という毒素が80倍も多かった(4p153,6p203)

 けれども、マウスの餌に整腸剤、バクテロイデス・フラジリス菌(Bacteroides fragilis)を加えると、5週間後には自閉症マウスのリーキガット症候群は治癒し、血液中の異質分子濃度も下がった。それとともに、マウスの不安な要素も治り、反復行動を止め(4p155,6p203)、コミュニケーション能力も回復したのである(4p153,6p203)

Bacteroides-Fragilis.jpg 一方、普通のマウスに「4EPS」を注射してみるとコミュニケーション能力が低下した。この研究結果から推測されることは、腸内細菌が作り出した「4EPS」がリーキーガット症候群によって体内に入ると自閉症となり、また、別の腸内細菌、バクテロイデス・フラジリス菌によって腸壁が健全化すれば「4EPS」が入らないということなのである(4p154,4p155)

自閉症はプロピオン酸によるリーキーガットによって免疫系が過剰反応している

 確かに、自閉症の子どもたちの腸内細菌の構成には、そうではない子どもにはみられないある種のパターンがある。そして、誰もが同時に胃腸障害を患っている(6p180)。例えば、下痢、便秘、腹痛等が自閉症の子どもでは見られる。2012年に米国国立衛生研究所が調査したところ、85%が便秘、92%が消化器官が不調だった(6p190)

 米国疾病管理予防センターの推定でも、自閉症の子どもたちは、慢性的な下痢や便秘が普通の子どもの3.5倍も多いのである(6p191)。確かに、自閉症の患者は慢性的な下痢に悩まされている(5p56)

Enzo-emanuele.jpg また、2010年に、イタリア、パヴィア大学のエンツォ・エマヌエーレ(Enzo Emanuele,1977年〜)博士の研究から、重度の自閉症の患者では、高濃度のリポ多糖(LPS=Lipopolysaccharide)が見いだせることもわかった。通常の場合、LPSが血流に入ることはない。けれども、自閉症患者の場合は、リーキガット症候群によってそれが入ってしまっているのである(5p192)

 そして、自閉症の患者ではリンパ組織も93%が増加している(5p192)。免疫系といえば、まず思い浮かぶのが白血球やリンパ球である。免疫系と腸とは一見無関係に思えるが、体内で免疫細胞が一番多く集まっている場所は腸である。過敏性腸症候群とは免疫系が過剰反応したことによる腸の障害だが、鬱病も過敏性腸症候群と連動して起こっている(4p56)

 では、なぜ、自閉症患者ではリーキガットが起こるのだろうか。これも、プロピオン酸が影響している。プロピオン酸が腸壁の細胞をつないでいる結合を緩めることでリーキガットを引き起こし、血流の中に入って炎症を引き起こすのである(6p197)

プロピオン酸がミトコンドリアにダメージを与える

Cecilia-Giulivi.jpg カリフォルニア大学デイビス校のセリシア・ギュリヴィ教授は、2~5歳の自閉症の子どもとそうではない子ども10人のリンパ球内のミトコンドリアの代謝経路を分析した結果、自閉症の子どものミトコンドリアの酸素消費量がかなり少なく、その活動が低いことを明らかにした(6p205)

これは、自閉症の子どもたちの細胞エネルギーの能力が低く、ミトコンドリアが機能不全に陥っていることを示唆する(6p204)。脳は体内でも心臓に次いで大量のエネルギーを使う。このため、脳神経細胞にエネルギーを送るための能力不足も自閉症と関連した認知不全につながっていると考えられるのである(6p205)

 その上、自閉症の子どもたちの5人に2人はミトコンドリアのDNA遺伝子そのものも減少していた。これは、酸化ストレスがDNAに影響していることを意味する(6p206)

 では、自閉症患者では、なぜ、ミトコンドリアがダメージを受けているのだろうか。これも、プロピオン酸が関係している。プロピオン酸がミトコンドリアの機能も低下させ脳のエネルギーを使う能力を引き下げる。加えて、酸化ストレスも高め、タンパク質、細胞膜、脂肪やDNAさえも傷つける。そして、神経伝達物質、オメガ3脂肪、抗酸化物質等、脳が正常に機能するために欠かせない分子を浪費してしまうのである(6p197)

細胞のエネルギー源ミトコンドリアの発見

 ミトコンドリアは光学顕微鏡で発見されたが、1886年、ドイツのリヒャルト・アルトマン(Richard Altmann, 1852~1900年)は、この重要性に着目し「ビオプラスト(生命の芽)」と名付け、この粒が生命の基本粒子なのだと主張した(2p17)。 

Mitochondria.jpg けれども、アルトマンの主張は受け入れられず、細胞学者たちは染色体に関心を関心を寄せた。透明な染色体の動きを見るためには染料で染色しなければならない。そして、着色するのは「酸性」の染料であった。酸性の染料はミトコンドリアを溶かしてしまう。核にこだわったため細胞学者たちは証拠を溶かしていたのだ。 また、それ以外の染料でもミトコンドリアが着目されることはなかった。ミトコンドリアそのものが染料を無色にしてしまうからである。幻影のように現れたり消えたりする組織。その存在は確信されなかった(2p18)

 1897年、ドイツの医師カール・ベンダ(Carl Benda, 1857~1932年)がミトコンドリアが存在することを明らかにし、ギリシア語の糸を意味する「ミトス」と小さな粒を意味する「コンドリオン」から「ミトコンドリア」と命名した(2p18,6p93)

 前述したように、染料が無色になるのは、ミトコンドリアが細胞呼吸の機能によって染料を酸化させてしまうからであった。1912年、B・F・キングズベリー(Benjamin F. Kingsbury)はミトコンドリアは細胞呼吸の場ではないかと提唱する(2p19)。そして、1949年にハーバード大学医学部のユージーン・ケネディ(Eugene Patrick Kennedy, 1919~2011年)とジョンズ・ホプキンス大学医学部アルバート・レーニンジャー(Albert Lester Lehninger, 1917~1986年)が呼吸酵素がミトコンドリアにあることを明らかにする(2p19,6p93)

ミトコンドリアが多い細胞ほどストレスを受ける

 ミトコンドリアは各細胞に平均300~400個存在し、人体全体では1兆の1万倍、1京個も及び(2p01)、ミラノ大学のエンツォ・ニソーリ教授によれば体重の10%にもなる(2p94,6p94)。けれども、細胞内にどれだけの数が、存在するのかは、その細胞がどれだけの代謝を必要とするかによって決まっている(2p16)

 皮膚細胞や血球にはごくわずかしかないか、まったくない(2p16)。幹細胞にもごく少数のミトコンドリアしかない(1p402)。意外に思えるが、幹細胞や癌細胞は活発に分裂するが、エネルギーをさほど必要としないため、ミトコンドリアの数もそう多くはない(1p401)。リンパ細胞のような免疫細胞もひとたび活性化されると頻繁に分裂するが、事実上ミトコンドリアを持たない(1p402)

 一方、肝臓、腎臓、筋肉、脳といった代謝が活発な細胞には数百から数千存在し、細胞質の40%も占め、細胞質を認めるのが困難なほどである(1p402,2p16,6p994)。そして、こうした多数のミトコンドリアを持つ特殊化した分化細胞は、深刻な酸化ストレスを受けている。とりわけ、脳、心臓、骨格筋といった酸化ストレスが最も激しい。カロリー制限が、組織の寿命が長い細胞に最もメリットがあるのはそのためなのである(1p402)

癌細胞はミトコンドリアがないから死を免れている

 ミトコンドリアの作用によって作られるフリーラジカルは、体内では悪者扱いされがちだが、細胞を自殺させる「アポトーシス」のコントロールにも深くかかわっている。「アポトーシス」という言葉は古代ギリシアの医師、ヒポクラテスに由来し「葉が落ちること」の意味で使われていた(6p95)

 けれども、エジンバラ大学のアラステア・カリー(Alastair Robert Currie,1921〜1994年)名誉教授らが、1972年に細胞を計画的に消滅させるプロセスで重要な役割を果たしていることを指摘して大きく着目される。アポトーシスがなければ、人間の指もできない。そして、体内で発生する多くの癌細胞を除去するうえでも、アポトーシスは重要な役割を果たしている(6p96)

 逆に言えば、ミトコンドリアがなければ、死刑執行人も働かない。癌細胞は増殖すればするほど、分化の度合いを弱め、そのプロセスでミトコンドリアを失ってゆく。大半の癌腫瘍は酸素をあまり必要としない密集した塊で嫌気呼吸で盛んに成長していく(1p402)。すなわち、ミトコンドリアが少数しかないことが癌細胞が死なず無限に増殖できる秘密なのである(1p403)

Nick-Lane.jpg また、ごく最近まで科学者たちは細胞機能は、核によって指示されるものだと考えていた。けれども、ニック・レーン(Nick Lane, 1967年〜)博士は、『ミトコンドリアが進化を決めた』でこう指摘している。

 「核が細胞活動の中心でその運命をコントロールしているとの既存のパラダイムは多くの面でもちろん正しい。けれども、アポトーシスの場合はこれがあてはまらない。意外なことに核を欠いた細胞でもアポトーシスは起きるのだ。ミトコンドリアが細胞の運命、生死を決定しているのである」(6p97)

Patrick-Chinnery_.jpg そして、ミトコンドリアの機能が衰弱すると健康な細胞でもアポトーシスが起こってしまう(6p96)。イギリスのケンブリッジ大学のパトリック・チネリー(Patrick Chinnery)教授によれば、自閉症、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症、ALS= Amyotrophic lateral sclerosis)病等のあらゆる神経性疾患はすべてミトコンドリアの機能不全と関連している(6p96,6p204)。それが、神経細胞が破壊されてしまうメカニズムである(6p96)。自閉症だけでなく、糖尿病やアルツハイマー病等の疾患もすべてミトコンドリアの機能不全が関係しているのである(6p98)。

 ミトコンドリアは燃料をエネルギー源に変えること以上の役割を果たしている。そして、腸内細菌がコントロールする炎症によって簡単にダメージを受けてしまう(6p97)。つまり、腸内細菌の研究がさらに進んだ結果、健全な腸内の機能、とりわけ、腸内細菌が脳にも関係していることが明らかになってきた(6p180)。腸内フローラとミトコンドリアは複雑にからみあっており、それらは、第二、第三のDNAでもある(6p206)

プロピオン酸の影響をなくせば自閉症を防げる

 プロピオン酸が自閉症を引き起こしているとすれば、それを防ぐことはできるのだろうか。例えば、脳内の主な酸化防止剤で炎症をコントロールするのを助ける物質にグルタチオンがあるが、自閉症の人ではこれが欠けている。そこで、グルタチオン、オメガ3脂肪酸、脳機能に不可欠なアミノ酸L-カルニチンの生成を助けるN-アセチルシステイン(NAC)を事前にラットに投与してからプロピアン酸を注入してみると、自閉症の特徴を示さなかった(6p199)。また、別の2012年にスタンフォード大医学部でなされた研究でも、NACが自閉症の子どもたちの行動障害に役立ち、反復行動を減らしイライラを抑えたとの結果が得られている(6p200)

自閉症を起こす抗生物質を避けて健全な食生活で健康を取り戻す

David-Perlmutter.jpg それでは、何が腸内細菌のバランスを壊しているのだろうか。腸内細菌のバランスを崩し、クロストリディウム・ディフィシル菌を増殖させるのは、フルオロキノロンや硫黄系抗生物質、特定のセフェム系抗生物質である。そして、この治療にはバイコマイシンが使われる。実際、自閉症の子どもたちはバイコマイシンによって腸の症状も治り、行動・認知も改善している(6p193)

 けれども、デイビッド・パールマター(David Perlmutter, 1954年〜)博士は、新たな治療法は副作用がある医薬品であっては欲しくないと語る(6p208)。食品の選び方やプロバイオティックスの治療によって腸内細菌叢のバランスを整えることが新たな治療法の主流になっていくに違いない。食生活の治療法ならば誰も実践できて金銭的な負担も少ない(6p209)

編集後記

 1月1日。日本が生んだ世界に誇るべき天才科学者が他界した。難病、筋萎縮性側索硬化症を患いながらも、猿橋賞を受賞した奥さんとともに、世界が瞠目する理論を提唱し続け、車いすで研究や学生の指導を続けた。体にはりつけたセンサーでパソコン画面のカーソルを操作しつつ3年をかけて初めて一般向けの著書の執筆したが、処女作がいきなり科学ジャーナリスト大賞を受賞するという天才ぶりであった。58歳というあまりにも早すぎる死。天がさらに生命を与えればどれほどの科学的真理を人類が手にできたかわからない。

 けれども、デイビッド・パールマター博士によれば、筋萎縮性側索硬化症も腸内細菌の乱れが原因である。そして、腸内細菌の乱れは、抗生物質、印鑰智哉氏によれば、遺伝子組換え作物に併用して多用される抗生物質によって引き起こされている。パールマター博士の「新たな治療法は副作用がある医薬品であっては欲しくない。食生活の治療法ならば誰もが実践できて金銭的な負担も少ない」という主張は、逆に読めば、食生活ではなく金銭的負担が大きく、副作用のある医薬品による新たな治療法ならば、経済成長ができることに他ならない。格安のジャンクフードを食べ高額の医療費を将来支払うことになるのか、エンゲル係数を高めつつ無病息災で過ごすのか。私たちはどちらの道を取るのかの選択肢を迫られている。
(2018年1月16日投稿)
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【引用文献】
(1) ニック・レーン『生と死の自然史』(2006)東海大学出版会
(2) ニック・レーン『ミトコンドリアが進化を決めた』(2007) みすず書房
(3) ニック・レーン『生命の跳躍』(2010) みすず書房
(4) NHKスペシャル取材班『腸内フローラ10の真実』(2015)主婦と生活社
(5) アランナ・コリン『あなたの体は9割が細菌』(2016)河出書房新社
(6) デイビッド・パールマター『「腸の力」であなたは変る』(2016)三笠書房


posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 腸内細菌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする