2018年03月10日

アジアのアグロエコロジー

2015年バンコクにてアジア・太平洋地域のアグロエコロジー・シンポ開催さる

アジアではアグロエコロジーが必要

 アジア・太平洋地域においては、アグロエコロジー的なアプローチを緊急的に展開する必要性が鋭く感じられている。農業生態系の劣化やダメージを保護しつつ、食料や栄養的なニーズを満たす必要性がある。アジア・太平洋地域では、生産性向上させるうえで以前には緑の革命が助けとなった。しかし、それは最初だけで、その後には、土壌や水質を汚染し、農民たちに借金を負わせ、伝統的な農業体系や伝統知識を損失させ、いまも農村景観を破壊し続けている。気候変動とあいまって、新たな農業パラダイムが必要とされ、オルタナティブなアプローチを模索することが欠かせないことは明白なのである。こうした状況をふまえ、アグロエコロジーが国際舞台に登場してきた。そのきっかけとなったのは2009年に「開発のための農業科学技術国際アセスメント」である。

ローマからバンコクまで

José-Graziano-da-Silva.jpg 2014年にFAOが主催した第1回アグロエコロジー国際会議においては、FAOのジョセ・グラチアノ・ダ・シルヴァ事務局長がこう述べた。

「アグロエコロジーは、ウィン・ウィンの解決策を提供する。生産性を高め、レジリアンスを改善し、天然資源をより効率的に使う」

 アジア・太平洋における第1回のアグロエコロジー地域会議(Multistakeholder Consultation)は2015年11月にバンコクにおいて開催された。バンコク会議の目的は、ローマでなされた議論を拡充することであった。管内の20カ国以上から、行政、研究者、農民の代表や社会運動組織が参加し、この地域においてアグロエコロジーを前進させるための議論を行い、末尾の推薦事項への同意がなされた。それでは、協議された内容や提案を以下の5テーマに整理して紹介しておこう。

1アジア・太平洋ではアグロエコロジーはもともとあったあたりまえの生き方

Shipei-Murakami.JPGアジア・太平洋地域では近代農業以前はアグロエコロジーだった

 同地域会議が意識して主張したポイントは、アグロエコロジーはすでに既存のアプローチだということである。慣行の『緑の革命型』の化学集約農業に対するオルタナティブであるアグロエコロジー的な多様な実践はアジア・太平洋地域内にはもとから存在してきた。統合農業、総合病害虫管理、SRI、保全農業、アグロフォレストリーと様々な名で称されているが、いずれも、水の保全や有機物の管理によって地力を高めることを目指してきた。

 アジア農民協会の村上真平氏は、また別の事例をあげる。 「バングラデシュの549カ村の約30万農民たちは「ナヤクリシ農法」に従っている。それは主にアグロエコロジーに基づく農業の10の原則を含んでいる」

 しかし、これまでは過少評価されてきたのである。

アジア・太平洋地域のアグロエコロジーには畜産業や漁業も含まれる

 アグロエコロジー的なアプローチは漁業や畜産業においてもなされている。そのベースにはアグロエコロジーと同じ価値観がある。

「漁業には社会文化的な側面があり、それは、我々にとっては宗教でもある。養わずしてただ収穫だけをすることはない」 漁民たちは海洋生態系を維持する必要を非常に意識していると世界漁民フォーラムのギルバート・ロドリゴ(gilbert Rodligo)氏は強調する。

 畜産業も同じで、インドのMARAGのディニッシュ・デサイ氏はこう語る。

「我々は持続可能な牧畜業を通じて牧草地や山地の共有資源をケアしてきた。それをずっと実践してきた」

 しかしながら、現在は、こうした土地が非農業的な用途のためにますます転用されていることために、こうしたアグロエコロジー的なシステムは脅威にさらされている。そこで、地元の地域社会のエコロジー的なリアリティの範囲内にアグロエコロジーを埋め込むことが必要である。

2 イノベーション、研究、知識のわかちあい、運動

多国籍企業の研究から地域に根差す研究へ
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 アグロエコロジーの知識構築のためには、コラボレーションの必要性が強調された。様々なスピーカーたちが、アクション型研究の持続性についての指摘し、その一方、地元知識を科学が潜在的に支配しているとアドバイスした。例えば、持続可能な農業強化のためのアジア革新センターのアバ・ミシュラ博士はこう語る。

「科学界にとってはアグロエコロジーの概念は新しく、開発においてはパートナーと共同する文化が欠如している。さらに開放される必要がある」。

 研究は、農民たちのニーズに基づかなければならない。それは特定の地域や文化に根差さなければならず、かつ、農民を共同研究者や革新者として認めなければならない。現在の研究は、多国籍企業によって突き動かされているが、それをコミュニティ指向の研究に変えていかなければならない。 地域会議では、アグロエコロジーの研究者たちの地域ネットワークを構築し、市民社会や小規模な食料生産者たちが互いに学びあうことが推奨された。

アグロエコロジーの知識は学際的~大学の研究室から田んぼや畑へ
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 現在の農業教育制度は非常に専門化され、多分野にまたがるアグロエコロジーの性質や複数の『知の体系』を認めようとはしない。インドネシアのボゴール農科大学のダマヤンティ・ブッチョリ教授はこう語る。

「アグロエコロジーは、明らかに多分野にまたがり学際的です。そうした複雑さを理解することは、多様な考え、パラダイム・シフトを必要とします」

 タイのチュラロンコーン大学のウェイン・ネレス博士はこう言う。

「アグロエコロジーを効果的にサポートするには、FAOは、教育の現状を深刻に受け止め、教育普及や知識共有を改革するため、予算戦略を開発する必要があります」

 さらに、アグロエコロジーは科学によって支えられなければならないが、その知識構築は、分散型で、学際的で、社会的テクノロジーを含む必要がある。『人々から人々への学び』が知識普及の促進で抜本的な鍵であることも確認された。

 アグロエコロジーは、非常に地域に根差し、かつ、知識集約型である。このため、いかなるアグロエコロジー戦略も、地元のノウハウや家族農家の実験に立脚しなければならない。こうした研究は、その中心に農民たちを据える。したがって、研究は大学キャンパスだけでなされるのではなく、フィールドで実施されなければならない。

 地元知識やイノベーションを構築するためのポジティブ事例もプレゼンされた。そのひとつがインターナショナル・ピープル・アグロエコロジー・マルチバーシティーから提示された。それはアジア太平洋農薬アクションネットワークのオンライン・イニシアティブで、土地、農薬、食文化、食料主権、ジェンダー、コミュニティのエンパワーメントに関してアグロエコロジーやそれと関連した課題を推進するため、草の根指向でネットワーク・ベースのオルタナティブな教育環境を提供している。

伝統的な非教育システムの重要性

 参加者は、正規教育と非公式の教育との違い、そして、両モデルを補完するため公的支援を獲得する必要性を指摘した。非公式の教育システムは、小規模な生産者の経験や知識に基づき、世代を通して継承されていく。非公式教育は、とりわけ、女性と若者がかかわり、アジア・太平洋地域ではアグロエコロジーを動かすうえで最も重要な乗り物のひとつである。 このため、女性と若者のニーズを適切に考慮し、将来の世代や女性たちの伝統知識、伝統的な価値観、ビジョン、リーダーシップを保護することが、すべてのアグロエコロジー教育で必要とされた。なお、最終宣言は、生産者の知識を認めて、支えて、文書化する必要を強く強調した。そして、小学校や高等教育のカリキュラム、すべての農場教育プログラムにアグロエコロジーを組み込むことが勧められた。しかも、その内容やポイントは小規模な食料生産者によって産み出される知識に由来しなければならない。教育や私たちが教育されるやり方は転換される必要があるのである。 なお、口述する農民田んぼの学校はローカル・レベルでの知識構築で効果的手段なでありえるが、アグロエコロジーのより幅広い概念に向けて、現在のプログラムから再適合される必要がある。

3 アグロエコロジ―は気候変動に対処するためにも有効

Vili-Fuavao.JPG「アグロエコロジーは地球温室化ガスを減らし、食料安全保障を達成するためのパワフルなツールだ」 FAOのアジア・太平洋地域のヴィリ・フアヴァオ副代表はこう言う。

 副代表は慣行農業が多くの問題、とりわけ、気候変動を引き起こしていることを認める。そして、地域会議の参加者は、気候変動に対応するうえでのアグロエコロジーの大切さを強調した。

 第一に、アグロエコロジーは、地産地消に基づく。

 第二に、アグロエコロジーの実践は、農業生産の強化、食品や栄養の安全保障、食料主権、生物多様性、よりレジリアンスのある農場や環境保全につながる。生物多様性が高まれば、土壌中の有機物含有量も増える。

 第三に、農民たちは、アグロエコロジーによって気候変動の影響に適応することができる。適切な品種を選抜し、作付け時期をずらし、効率的な水管理を行い、アグロフォレストリーも実施できる。植林を行うことによって、異常気象の後でも生産を続けることで、気候変動の影響も緩和できる(ボックス1)。

 バンコクでの地域会議の最終的な推薦文では、これまで無視されてきたり活用されてこなかった在来の食用作物品種や耐旱魃性作物の伝統的な管理のための大きな支援が呼びかけられた。また、アグロエコロジーと気候変動とのつながりでさらに多くの研究や政策を実施することも品種の農場での選抜を強調するとともに推薦された。

ボックス1 インドネシアでは農民主導のアクション研究を通して気候変動に適応

IPPHTIS.jpg インドネシアのジャワ島の北海岸に位置するインドラマユ地域はコメ生産の中核地帯だが、長期にわたる乾期、高温、不規則な降雨から、病害虫が蔓延したり、コメの不作にみまわれやすい。このため、インドラマユ農民たんぼの学校(IPPHTI=Ikatan Petani Pengendali Hama Terpadu Indonesia Indramayu)の卒業生たちは地元組織を結成し、統合病害虫管理プログラムに取り組んでいる。

 IPPHTIは、自分自身で田んぼを観察し記録を取ることを推奨しているが、現在、インドラマユの24管区では何百人もの農民たちが、水田を観察し、降雨量、病害虫や作物成長に関するデータを集めている。そして、2週間毎の観察結果をデータとして集め、学習の情報源として毎月評価している。月例会を組織し、自分たちの観察結果や抱える課題を議論し、解決策を見出すのである。 その気候変動の影響の農民の理解を高め、適合に対する戦略を開発している。例えば、地域に応じた品種選抜や作付け時期を遅らす他、自分たち自身で適応可能な反応を開発している。そして、近年では、ジャワとランポンの28地区の農民リーダーたちは、アグロエコロジのための全国農民ネットワークGPN(Gerakan Petani Nusantara)を結成している。そこでは、彼らの農民アクション研究の結果が、より幅広い適応のためわかちあわれている。

 ただし、重要なことは、こうしたアグロエコロジーの実践は小規模家族農民によってのみ実施することができることである。

4 アグロエコロジーと市場

地産地消は地域経済を活性化する

 アグロエコロジーにとって市場は挑戦課題ではあるが解決策でもある。このため、小規模家族農家のアグロエコロジー農産物のための市場販売ルートを構築していくことが重要である。

 第一に、市場は持続可能なアグロエコロジーのためのバリューチェーンを作るうえで重要な役割を果たせる。 地産地消では仲介業者がいないか少ないため適切な販売価格が担保できる。その結果、アグロエコロジーの実践をより「見える化」できる。そして、小規模農民が自分自身で『ブランド』を作ることも可能となる。支持してくれる消費者とコミュニケーションしあうことでアグロエコロジー的な実行を促進するのに使える。

 第二に、地産地消は地域経済を促進し、地域内に経済効果が波及することを担保する。また、地産地消は、フードマイレージが少なくカーボン・フットプリントを削減でき、より持続可能である。

 第三に、文化的に適切な地元の食習慣と合致した生鮮食料を消費者は手にできる。 アグロエコロジーの生産が市場によってどれほど強化できるかの良事例が地域にはある(ボックス2)。

ボックス2 生産からマーケティングへの農民のリーダーシップ

 Mae-WinS.jpgタイのチェンマイ県メーワン郡メーウィン山においては、約1144家族が再植林を行いながらコーヒーを生産加工している。CLUMP財団(stands for Communal Life of Love and Unity of the Mountain People)、山岳民の相互生活のための財団は、アグロエコロジーやアグロフォレストリーの技術を用いることで、山地への帰農や生命の繁栄の希望を表している。

 コーヒーは森林が生み出す日陰の恩恵を受けて、大木の下でよく育つ。この新たな方法を用いることで、キロ当たりの生産を2014年3タイバーツを2015年に5バーツ、2016年には8バーツと高められたのである。さもなければ不毛であった25㏊も豊かな多くの生命が育つ地に変わった。そこで農民はこう言う。

「コーヒーを育てることは森林を再生することだ」

 コーヒー豆の選抜から焙煎、チェンマイにおける高品質有機コーヒーの販売まで、山地農民たちは、生産とマーケティング・プロセスのすべてにかかわっている。そのシステムは森林再生と連帯したコミュニティを産み出している。その最終製品チェンマイでわかちあうことに興奮している消費者たちである。

 このプロジェクトは、どんな公的な支持や政府資金提供なしに構築されている。農民たちは、いま、自分たちの高地開発の経験を低地の人のための新たなカカオプランテーションやチョコレート生産のモデルにモデルとしたがっている。そして、それ以外の現地の多くのハーブの復活させる刺激として、コショウの生産も準備している。

5 アグロエコロジーを広げるための政策

アグロエコロジーの拡大のための農政が必要

 市民社会や社会運動は、2010年のコロンボ宣言(Colombo Declaration)、2012年のスリン宣言(Surin Declaration)、2015年のニエレミ・アグロエコロジーフォーラム(Nyéléni Forum on Agroecology)と、これまでもアグロエコロジーを支援するための政策の必要性を主張してきた。

「しかし、多くは実行されませんでした。アグロエコロジーを支援する公共政策はいまも不足しています」

 国際農村カトリック運動連盟のジョージ・ディクソン・フェルナンデス氏は現在の政策はアグロエコロジーを拡大することに不適当であると言う。

 Pham-Hoi.jpgベトナムのハノイ農科大学アグロエコロジーセンターのパム・ヴァン・ホイ所長も同意する。 「現在の政策はトップダウンだ。おまけに、化学企業に大きく影響されている。その結果、彼らはアグロエコロジー的な複雑な生産に効果的に対処できない」

Estrella-PenuniaS.jpg アジア農民協会のエストレ・ペヌニアさんは、農民たちが所有する企業の持続性をローカル・レベルで支援する政策の重要な役割を強調する。

 インドのFIMARCのロニ・ジョセフ氏は、以下の政策案をリスト化した。

  • 正規教育と非正規でのアグロエコロジー教育に対する投資
  • アジア・太平洋諸国からのアグロエコロジーで優良事例の確認と強化
  • 意思決定者、学術研究者、農業者、消費者、地域の若者へのつながりの促進

「農場レベルから景観へとアグロエコロジーを広めるには数多くの社会的なプロセスや組織変化が必要です」 と、カンボジア援助チャリティのラダ・コング氏はまとめる。すなわち、政策立案者、科学者、教育者、国連、開発パートナー、CSO、農民や農民組織等が連携し、参加型プロセスによって、アグロエコロジーのための首尾一貫した政策を構築していく必要がある。そして、このアグロエコロジーは、各県、全国、地域の農業政策の不可欠な部分とならなければならない。そして、適切な法律やそれを管理するフレームワークも開発されなければならない。

アグロエコロジーは単なる農法ではない

 2007年2月にアフリカのマリ共和国のニエレミでは約80カ国から500人以上が参加し「食料主権国際フォーラム」が開かれたが、この結果は、2015年2月にニエレミ・フォーラム宣言としてまとめられている。このフォーラムでは、アグロエコロジーは単なる農法ではなく、むしろ社会を変えるための政治的な道具であると定義する。 ニエレミ・フォーラム宣言にあわせて、会議では、農業フードシステムの構造変化のコアとして、アグロエコロロジーを守る必要性が繰り返し主張された。

 アグロエコロジーは自然生態系と調和することを重視する一方、食料安全保障を改善し、農民たちの自治を築きあげる。 ビアカンペシーナやアジア農民協会等の地域の農業者グループは、アグロエコロジーの拡大が食料主権につながる道だと主張する。自分自身の食や農業のあり方を決める権利、食料主権にアグロエコロジーは寄与する。アジア・太平洋地域におけるFAOのアグロエコロジーのプロセスのための次のステップは、アグロエコロジーのこうした鍵となる面を強化する方法でさらなるステップを定めることに焦点をおかなければならない。実践として、科学として、そして、工業型農業モデルによって持ち込まれた脅威から守るための開発戦略に運動が集中されなければならない。

たとえ環境に優しくても小規模家族農業が保全されなければ成功とはいえない

 工業型農業の悪影響を軽減するため、いま「気候スマート農業」等やそれと類似した流行語が国際的に議論されている。けれども、こうした一連のテクノロジーの概念とアグロエコロジーとが混同されてはならないし、こうした概念へと矮小化されるいかなる試みも彼らは拒絶した。 また、アグロエコロジーを少数の生産者や消費者のためのニッチ有機農産物市場を組織化することに制限してもならないと彼らは主張し、こう付け加えた。現代社会のあり方やその自然との関係性を変えるための原則を遵守し、伝統的コミュニティや先住民のコミュニティを含め、小規模な農業生産者を強化することにつながるときにのみ、アグロエコロジーは成功している、と付け加えた。

 地域会議では、アジアや太平洋における家族農家他の小規模生産者の生活様式がアグロエコロジーであることをはっきりさせた。アグロエコロジーを通して、彼らは文化的な価値観を生かしてゆける。都市であれ農村地域であれ、アグロエコロジーは、食品と栄養の安全保障を担保する。そして、自然と調和して世界を養うために、百姓他の食料生産者をその中心に据える。

 アグロエコロジーとは、その定義上、食料生産者が自然環境と相互交流しあう革新的・創造的プロセスである。このような革新は小規模で起こることが多い。アグロエコロジーは知識集約型であり、地元に根差す。家族農家による地域資源の管理に依存する。小規模な家族農家に食糧生産者への投資が優先されなければならない。 このことは、農法の普及のあり方や農業者をサポートするやり方を変えることをまさに意味する。

 アグロエコロジーをスケールアップするためには以下の提案がなされた。

  • 政治的な認識に対するイデオロギー的な障害の錠をこじ開ける 農民から農民へのネットワークを支援する
  • 様々なレベルでの教育や研究に資金提供する 効果的な公共政策環境を提供する
  • 女性をエンパワーするための特定の措置を講じる
  • 社会的な運動で戦略的提携をしていく

百姓をコアに地域で広めていく

 コミュニティレベルや集団段階でアグロエコロジーが実施されるテリトリーを構築するためには、農民たちが導く社会的な革新のシステムや実践が促進されなければならない。

Subash-Dasgupta.jpg「アグロエコロジーは地域の農業生産システムの一部になろう」と、アジア太平洋のFAOの地域のオフィスのスブハシュ・ダスグプタ博士は断言する。

「もし、政府が合意すれば、我々はこうした推薦を取りあげる。それは、FAOの将来の仕事のプランを作成するための根拠として用いられる」と、彼は用心深く付け加える。 アグロエコロジーベースでの地域米イニシアティブ、ゼロ飢餓イニシアティブ、ブルーグロースイニシアティブ(Blue Growth Initiative)等、FAOで進められている地域プログラムやイニシアティブの中で、アグロエコロジーを推進していくことも提唱された。要するに、FAOや各政府では、アグロエコロジーに対する支援を最優先すべきである。そして、アグロエコロジーのための適切な市場を創設するためにも政策転換が必要なのである。

編集後記

 種子法保全と非常に密接に関連する概念に「アグロエコロジー」と「小規模家族農業」がある。「種子法廃止」については、ようやく語られるようになってきたが、「アグロエコロジー」はまだ人口に膾炙するまで至ってはいない。この4月にはローマでその第2回の国際会議が開催される。「テルマエ・ロマエ」ならぬ「ウンセメ・ロマエ(Un Seme di Romae)」だ。

 それでは、2014年にローマで第1回のFAOのアグロエコロジー国際会議が開かれてからどのような議論が蓄積されてきたのか。日本ではまったく情報が流れていない。ということで、その情報を発信していくこともこのアグエコ堂・松代店のミッションではないかと勝手に思っている。これはブタペスト版に続く、バンコクにて開催された大亜細亜版である。ブタペスト版の整理にあわせてまとめたが、地産地消の重要性が改めて強調されていること、そして、「アグロエコロジーなんてわざわざあんたたちに横文字で言われなくても、もともと我々はそうだったではないか」ということが強調されていたことが改めてアジアなのだと思ったりもした。

 日本は明治維新以来「脱亜入欧」をひた走ってきたが、大東亜戦争敗北後は「脱亜従米」を強いられてきた。されど、石油の枯渇によって「米」も揺らいでいる。「欧」はすでにアグロエコロジーに向かって一歩踏み出している。なんとなれば、「入亜脱米」を目指さなければなるまい。それは、経済産業省の一部局へと農林水産省を矮小化することではなく、地産地消を軸に地域経済を活性化する農業省を軸とした「農商務省」を復活することなのだと思うのだがどうであろう。

 こんなことを言うといささか誇大妄想に陥っていると思われるかもしれない。アグエコ堂・松代店はなんらアカデミックなバックグラウンドすらない個人が道楽と趣味でやっているのだから。けれども、たまたま京都にある総合地球環境学研究所のマックグリービー・スティーブン准教授が長野を訪れ、お会いする機会があった。准教授は同研究所のFEAST プロジェクト(みんなで作るいただきます) のリーダーを務められており、都市農業の観点から、新たな都市計画を考えておられる信州大学工学部の佐倉弘祐助教と研究の打合せで来県されたのだ。

「FAOが今年4月にローマでアグロエコロジーの国際シンポが開催されます。アグロエコロジーはとても重要です。カリフォルニア大学のミゲル・アルティエリ名誉教授は2月にも総合地球環境学研究所にやってきました。それは、愛知学院大学の関根佳恵准教授が日本で提唱されている小規模家族農業、ワーゲニンゲン大学のヤン・ダウ教授が提唱される「再百姓化」とも深く関係しています。そして、アグロエコロジーが最も進んでいるのは、ラテンアメリカ、ブラジルです。エコロジカル・フットプリントを減らすためにはライフスタイルのシステムそのものを変えなければなりません。ですが、子どもたちにこのままでは駄目だという恐怖感を押し付けるのは良い戦略とはいえません。むしろ、食を通じて自然に生き方が脱成長型へとトランジションしていくことが大切なのです。そのため、私たちのプロジェクトではいまブータンや日本の伝統食を調べているのです。そして、一番リアクションのあるのは、若いお母さんたちです。彼女たちはゆるがない。ぶれない。食のデザート化(砂漠化)が、とりわけ、米国では進んでいます。米国の子どもたちはまともなものを口にできませんが、、、、」

  けれども、米国にも「アンストッパブル・マムズ」たちがいる。しかも、ヴァンダナ・シヴァさんと連携している。私以上に明晰で拡張高い日本語で矢継ぎ早にアグロエコロジーを巡る世界情勢をコンパクトに語られた准教授の口からすべりでて来たのは、このブログで扱って来た人たちやコンテンツばかりだった。

 そう。ということはどういうことか。このブログで語られていることは、価値ある情報でもなんでもなく、月並みで、あたりまえで、ごく普通の世界常識なのかもしれない。もし、この駄文をお読みになって、ある種に違和感を覚えられたとしたら、それは、あなたの方がいささかグローバルスタンダードからズレており、まさにガラパゴス化しているのである。
(2018年3月10日投稿)
【人名】
ジョゼ・グラチアノ・ダ・シルバ事務局長の画像はこのサイトより
村上真平(Shimpei Murakami)氏の画像はこのサイトより
ギルバート・ロドリゴ(gilbert Rodligo)氏
ディニッシュ・デサイ(Dinesh Desai)氏
アバ・ミシュラ(Abha Mishra)博士の画像はこのサイトより
ダマヤンティ・ブッチョリ(Damayanti Buchori)教授の画像はこのサイトより
ウェイン・ネレス(Wayne Nelles)博士
ヴィリ・フアヴァオ(Vili A Fuavao)副代表の画像はこのサイトより
ジョージ・ディクソン・フェルナンデス(Georges Dixon Fernandez)氏
パム・ヴァン・ホイ(Pham Van Hoi)所長の画像はこのサイトより
エストレジャ・ペヌニア(Estrella Penunia)氏の画像はこのサイトより
ロニ・ジョセフ(Rony Joseph)氏
ラダ・コング(Rada Kong)氏
スブハシュ・ダスグプタ(Subhash Dasgupta)博士の画像はこのサイトより

【地名】
インドラマユ(Indramayu)
ランポン(Lampung)
メーワン(Mae Wang)郡
メーウィン(Mae Win)山の画像はこのサイトより
ニエレミ(Nyéléni)

【用語】
農業科学医術国際アセスメント(IAASTD=International Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology for Development)
統合農業(Integrated Farming)
総合病害虫管理(Integrated Pest Management)
保全農業(Conservation Agriculture)
アジア農民協会(Asian Farmers Association)
ナヤクリシ農法(Nayakrishi method)
世界漁民フォーラム(World Forum of Fisher Peoples)
持続可能な農業強化のためのアジア革新センター(ACISAI=Asian Centre of Innovation for Sustainable Agriculture Intensification)
インターナショナル・ピープル・アグロエコロジー・マルチダイバシティ(IPAM= International People’s Agroecology Multiversity
アジア太平洋農薬アクションネットワーク(Pesticide Action Network Asia-Pacific)
ボゴール農科大学(Bogor Agriculture University)
チュラロンコーン大学(Chulalongkorn University)
農民田んぼの学校(FFS= armer Field Schools)の画像はこのサイトより
CLUMP財団(stands for Communal Life of Love and Unity of the Mountain People)
国際農村カトリック運動連盟(FIMARC= International Federation of Rural Adult Catholic Movements)
カンボジア援助チャリティ(Cambodia Acid Survivors Charity)

【引用文献】
TM Radha AME Foundation, Agroecology in Asia and the Pacific, Leisa India.


posted by José Mujica at 10:51| Comment(0) | アグロエコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする