2018年03月11日

ラ米・カリブ海のアグロエコロジー1

なぜ、いま、アグロエコロジーと小規模家族農業なのか

グローバル市場では克服できない食料危機は小規模家族農業なら解決できる

 アグロエコロジーの地域戦略や国家戦略を開発するため、FAOは、ヨーロッパ、アジア、ラ米と地域会議を開催してきた。最初の地域会議が開催されたのは「ラテンアメリカ・カリブ海」で、2015年6月24〜26日にかけて開催され、その開催地となったのはブラジリアだった(4,5)。市民社会55人、学術研究者11人と政府関係者(14カ国45人)等132人が参加した(5)

 そもそも、なぜ、アグロエコロジーの地域会議が開かれることとなったのだろうか。それを整理しておくことから始めてみよう。

José-Graziano-da-Silva.jpg 2014年は国連の「国際家族農業年」だった。同年9月、FAOはこの家族年の一貫として、「食料と栄養の安全保障のためのアグロエコロジー国際シンポジウム」なるものを組織する。FAOのジョゼ・グラチアノ・ダ・シルバ事務局長によれば、このイニシアティブは、二つ決定的な事実を公式に認めることからスタートした。

 第一は、近年、食料危機が深刻化することから、グローバル市場によっては、世界の食料安全保障が達成できないことが見えて来たことだ。その一方で、家族農業は国内市場に食料を供給し、農村で雇用や収入を生み出す鍵となっている。

 第二に、アグロエコロジーは、科学的であると同時に政治的な内容を持つが、各地で成功を納めつつあり、かつ、気候変動という難題に人類が直面する中でも、飢餓や栄養失調を根絶する方法をもたらしていることだ。皮肉なことだが、食料危機がこのコンセンサスにつながったのだ(6)

食料が余っている中で飢餓がなくならないのは社会がおかしいからだ

 さらに決定的なことに、現在のグローバルな食料需要は、いまの生産水準でも十分に足りている事実がある。このことはFAOも認めている。いま、世界各地で目にされているのは、大量の食物があふれ余っている中で飢餓が増え続けているという現象なのだ。となれば、「第二の緑の革命(GMO)」による食料増産によってのみ、増え続ける人類の食料需要を満たすことができるという主張は、そもそも論理的におかしいし、破綻している。このパラドックスを克服するには、いまの食料の生産、流通、消費システムを根底から改革することが必要である。そして、社会運動や市民社会組織は、こうした変革は「食料主権」という政治原則を中心に構築されなければならないと主張する。

 また、現在の食料危機は複雑であって、環境、エネルギー、気候変動、社会的危機と、個々の問題をバラバラに見ていてはとても解決できない。こうした変革は、地元コミュニティというミクロ・レベルから、経済的、エコロジー的にまともなことをやっていくことしか解決できない。逆に、そうすることによって、グローバル化された市場論理から強要される「生産主義(productivist)」という歪みを克服していくことができるのだ(6)

大地に感謝するスピリチュアルな儀式で始まった会議

Jahi-Chappell.jpg それでは、FAOが最初に開催したアグロエコロジーの地域会議の内容は、どのようなものだったのだろうか。そのリアルな様子を米国のミネソタ州にあるNGOシンクタンク「農業と貿易政策研究所」のジャヒ・チャッペル博士がリポートしている(2,4)

 チャッペル博士は、ミシガン大学で学位を取得した後、コーネル大学でポスドクを務め、上記研究所のスタッフとなった。複雑な現代のフードシステムを理解するために、博士は、保全生物学、生態学、政治経済学、社会学と多岐にわたる分野をつないできた。同時に、FAO、ビア・カンペシーナ、都市農業の成長希望(ミシガンイプシランティ、urban agriculture nonprofits Growing Hope)、成長菜園(Growing Gardensポートランド、オレゴン)等でも働いたりその顧問をしてきた。ブラジルでは、南東部の高原に建設された計画都市でミナスジェライス州の州都、ベロオリゾンテ市の「食料安全保障政策」が、飢餓撲滅プログラムの基礎として役立ったが、これも研究している。博士の活動のべースには、農民と市民(まさに「消費者」でない!)のために役立つ、社会的に公正で、エコロジー的に持続可能な参加型のフードシステムを構築することにある(1)。それでは、現場の雰囲気を再現してみよう。

 チャッペル博士らは、まず、ロウソクに火をともす、「mistica」という名のスピリチュアルな儀式に参加した(2,4)。「mistica」とは、大地から送られた贈り物に感謝し、祖先たちの知恵、とりわけ、先住民の知恵があるおかげで、いまの文化的な遺産があることを認めたうえで会議を開こうという儀式で、国際小規模農民運動、ビア・カンペシーナの集会で実践されることが多い(2)。「火」は基本元素を意味し、農民たちや先住民が大地を利用できるように大地への畏敬の念を呼び起こす。そう運動のリーダーたちは語った。この儀式は閉会式でも行われた。そして、この儀礼に従って、社会運動、NGO、研究者、政府機関や国際組織とあらゆるセクターからの参加者たちは、旧友であれ、新たにこの場で出会った朋友であれ、互いに抱き合って、FAOが作り出した「場」に感謝したのだった(4)

アグロエコロロジーが抱える問題をプレ会議で議論

 開会式に先立ち、市民組織は「プレ会議」を開いていたが、そこでは、市民組織、研究者、政府やFAO代表たちが語りあい、すでにアグロエコロジー運動が抱える課題を分析し、提起していた。

 不十分な資金。「アグロエコロジー」という言葉そのものが世界的にまだなじまれていないこと。現在のシステムを維持するためのただ便利なツールとして使われてしまうこと。原則や実践の中から「社会正義」という決定的な要素を切り離してしまうこと。エビデンスに対する不十分な認識等だ(2)

緑の革命とGMOで脅かされた食料主権をアグロエコロジーで取り戻す

緑の革命とGMOで全人民の食料主権が脅かされている

 開会式は、農村女性運動のメンバーで、ラテンアメリカ・カリブ海人民食料主権同盟のブラジル代表でもある、アドリアナ・メザドリ女史によって始められた(5,6)。メザドリ女史は、貧困克服の挑戦とアグロエコロジーとの関係を語った(6)

 この会合がアグロエコロジーの3つの地域会議のひとつとして歴史的な集会である。緑の革命は、化学資材や機械他を農業に押し付け、農業を大規模な産業型のものに変え、世界飢餓を根絶すると約束する。そして、これと並んで、遺伝子組み換え作物や遺伝子組み換え食品も現れてきた。そして、経済的、社会的、環境的な問題が目にされ、今もこの状況で、より良き暮らしの質への権利を守るための、まさに少数者のためではなく全人民のための戦いが続いている。

 これは、社会が集団として対峙しなければならない課題である。そして、こうした課題はラテンアメリカや世界全人民の食料主権と関連している。農村や都市の全労働者に対して威厳ある暮らしを担保すべく、そして、全人民のために健康的な食べ物を生産するために市民社会のメンバーは、戦い続けることを誓っている(5)

アグロエコロジーは人類誕生以来ずっとあった生き方そのものである

 植物の栽培、動物の家畜化、農業の創造と食の供給では、女性参加が鍵であり、人類誕生以来、アグロエコロジーがずっと農業の一部であった。緑の革命に対して、農村住民、アフリカ系子孫、先住民が、歴史を通じて強力に守ってきた祖先からのプロセスがアグロエロジーである。したがって、アグロエコロジーは、真っ当な食べ物を生産し、尊厳を持って人々が生きる上での助けとなろう。したがって、アグロエコロジーのプロセスは、生き方、あるいは、文化として見られなければならない。それはシンプルな生産技術をはるかに越えたものである(5)

アグロエコロジーは平等な生産構造とも密接に関わる〜貧困と戦うこと

 とはいえ、この地球を破壊している巨大な多国籍企業は、世界の飢餓問題を解決しようとはせず、ましてやアグロエコロジーに向けてその行動を変えることもしようとはしない(5)。もし、ある一部の人たちが多くのものを所有し、他の人々が何も手にしていなければ、アグロエコロジーも持続可能な惑星もありえない。したがって、市民社会は、土地や富の公正な分配のために、生産構造を変えるために戦い続けるであろう(5,6)

関係者が論じあい生産構造を変えるための現実的な政策を創造しよう

agrocologia.jpg そして、構造的な政策を創設することにおいて、FAOや政府のサポートは決定的であろう。その意味で、国際機関、政府、アカデミー、市民社会の代表がこの地域会議に参加し、論じることで、農民、先住民、農村の生産者に対して、現実的に適用できる効果的な政策を構築していくことが必要である。土地所有、信用、種子の保全、食や栄養的な主権、アグロエコロジーにおける女性の役割、世界の農村や都市における若者の役割等は、ずっと論じられてきた課題だが、この地域会議が、すべてのセクターにおけるより良き暮らしの質に向けた重要なステップであることが望まれる(5)。

憲法改正で食料主権を位置づけ、アグロエコロジー教育と技術で貧困問題を解決する

 エクアドルのエフライン・エジムンド・ナルヴァエス農業家畜漁業大臣は、中南米カリブ海諸国共同体の代表でもあるが、安全で健康的で栄養価もある食べ物を国民が手にする権利を担保し、かつ、地域の伝統や文化と合致した農産物をローカルに生産するための道は、エクアドル憲法の改正によって可能となったと語った。また、こうした特徴を持つ食べ物を生産することができるのは、地域の小規模な家族農家だけだとの見解を示した(6)

 一方、大臣は、中南米カリブ海諸国共同体の代表としての立場では、貧困問題について語り、アグロエコロジーが各世帯の所得向上や国民経済に対して大きく寄与する可能性を強調した(6)。そして、そのためには、初等教育から大学教育まで、アグロエコロジーの課題を扱い、アグロエコロジー技術を改善する研究を進めることが必要であるとした(5)。小規模農民のための土地の権利を担保することが決定的であると述べた(6)

政府と市民とが論じあって政策を作る

 メルコスールには、家族農業を強化し、政府と市民との間で公共政策のあり方について論じあうための諮問機関として、「メルコスール家族農業専門委員会」が2004年から設置されている。委員会はこれまで、社会運動や政府、学術関係者と様々な分野から専門家を招いて、セミナーやワークショップを開催してきた。そして、公共政策を策定するにあたって、地域会議やハイレベルな各国の会議で活用できる文書を産み出して来た。

 アグロエコロジーに関する仕事は、2013年にベネズエラのカラカスで開催された会議から始まった。そして、各地域のアグロエコロジーの現状を把握するためのアンケート調査の様式がブラジルによって準備された。この調査から、多様なアグロエコロジーの姿が浮き彫りとなり、各国での政策議論を豊かにし、アグロエコロジーを大きく進展させることにつながった。

 同委員会のフェルナンド・ロドリゲス氏は、アグロエコロジーのための公共政策をさらに幅広く改善していくことが課題だと述べた(5)

アグロエコロジーによる地場農産物で健全な食と良き暮らし生物多様性を確保

Alan-BojanicS.jpg FAOのアラン・ボジャニック氏は次のように語った。

 2014年にローマで開催されたFAOの国際シンポジウムでは、ジョゼ・グラチアノ・ダ・シルバ事務局長は「投入資材の集約的な利用による慣行農業モデルはもはや持続可能はない。我々はより持続可能なものに向けた包括的なモデルへと変わらなければならない」と述べたが、この地域会議はここからスタートしている。

 持続可能な農業を創造し、食料や栄養を保障するためには、女性や若者を含めて、関係者が協働していく必要がある。そして、アグロエコロジーをその戦略の中心に据えることによって、健康的な食料が確保でき、地場農産物が復活し、その評価も高まり、農村が発展し、生産者・消費者の暮らしは向上し、生物多様性も確保されよう(5)

キューバとブラジルの事例が参考となる

 ラテンアメリカは、多くの国、とりわけ、キューバとブラジルの努力によって、アグロエコロジーの大きな前進が成し遂げられている。ブラジルは、「全国アグロエコロジー・有機農業計画」を実施している。それが生産を可能とし、かつ、資源も保全する。

 この地域会議を通して、他国の経験をわかちあうことができる。また、持続可能な農業のため、社会運動と政府との間を調整してきたメルコスール家族農業専門委員会の優れた仕事も認めることができる。

土壌保全のためにもアグロエコロジーが重要

 今後の課題は以下のとおりである。

・組織を強化すること
・各国政府の政策にアグロエコロジーが含まれ、すべての国において推進されるよう公共政策を調整すること。また、地域の経験を生かし、アグロエコロジーの知識を他地域へも普及していくこと。

 FAOは、各国の公共政策に関する関係者の対話が進むことを支援する。また、2015年が「国際土壌年」であることが重要である。いま、全世界の土壌の30%が劣化する中、生物多様性を維持し、持続可能な生産構造へと転換するには、土壌保全の話題がこの会議に含まれなければならない(5)

飢餓問題を解決するには非GMOでの質が高いアグロエコロジー農産物が必要

ブラジル農業開発大臣、量よりも質。健康な食べ物の必要性を強調

Patrus-Ananias.jpg ・誰しものために健全な食を生産すること
 ・いのちに対する基本的な権利を認めること
 ・食料と栄養の安全保障

 この課題にはブラジルが大きく関係する。というのは、ブラジルはアグロエコロジーをもってこれに大きく寄与しようとしているからである(5)

 FAOの統計によれば、いまだに8億以上もの人々が飢餓や栄養失調で苦しめられている。食にアクセスできることは基本的な人権である。全人民の食料主権、十分な食べ物に対する人権、とりわけ、アフリカの我らが兄弟姉妹を気にかけることが必要である(5)。しかし、質(栄養価)を抜きにして、ただ量的に増産するだけでは効果的に健康や生命を守ることはできない(5,6)。なぜなら、いま化学農薬やGMO種子が使われているからだ。我々は、病気や死ではなく健康やいのちを育むことにつながる有益な食べ物を必要としている(6)。このことから、農薬や遺伝子組み換え食品、遺伝子組み換え種子を使わずに、持続可能なアグロエコロジー農業を進める必要性は明白である(5)

 ブラジルは、この立場を堅持し、2012年の「全国アグロエコロジー・有機生産政策」を持って、これに貢献することを目指している。また、持続可能な農村発展のためのアクションを実施し、この政策を実施すべく、2013年には「全国アグロエコロジー・有機生産計画」を立ち上げた。70億ブラジル・レアルのクレジット基金とともに、その投資額は、88億ブラジル・レアル(28億米ドル)に相当する。そして、125以上のイニシアティブを10省庁が調整している。ブラジルのパトラス・アナニヤス・デ・ソウザ農業開発大臣はこう主張した(5)

土壌、家族農業、質の高い食べ物はつながっている

 有毒な農薬が不正使用されたりすることから、家族農業は、アグリビジネスに比べて遅れているとの一般的な理解がある。家族農業は時代遅れで有史以前のものとされてきた。しかし、これは誤解である。人々のこうした見解や農業を変えることが、我々の挑戦でなければならない。

 家族農業の生産を奨励し、市場アクセスを推進し、テクノロジーを改善することによって、これを達成することが我々のベースでなければならない。これは、難しいプロセスではあるが、我々にはそれを実行する手段がある。我々は誰しもを養うために必要な量と質で健全な食を担保するため、すべての機関と調和して働き続けるであろう。

 現在、この仕事は家族農業を支えるための「家族農業プラン」によって実施されている。家族農業プランは、大学や各組織にも連帯を拡充し、ローカルな種子、在来種、伝統的な種子を守り、その種子生産を支援し、「コミュニティ種子バンク」をトレーニングすることが含まれる。とりわけ、半不毛地域において、種子や苗生産のための協力や研究を発達させるためにである。

 この目的を達成し、アグロエコロジーや家族農業を発展させるため、信用、協同組合、マーケティングへの機会を充実させることも目指している。

 また、2015〜2016年には、「家族農業と健全な食計画」を立ち上げ、先住民やコミュニティの維持に務めている。こうしたイニシアティブは、ブラジルの文化を保全し、アグロエコロジーを強化する重要な要素である(5)

質が高い食べ物と土壌とのつながりを認める必要がある

 国連は「国際土壌年」を創設した。各国はこれを論じ、未来を熟視しなければならない。各国はどのような世界を将来世代のために残したいのであろうか。食の安全、食の質、そして、より良き暮らしの質を担保することと土壌とがむすびついていることがいったい、いつ認められるのであろうか。

 この理由から、現在の困難にもかかわらず、仕事が続けなければならない。そして、こうした挑戦は応じられることができるし、この地域会議は、問題を理解し、変革のための行動を始める助けになれる。地域レベルのみならず全世界においてである(5)

過剰消費主義を見直し環境に配慮せよ

 基本サービスにアクセスできない人々が、20億~30億人、ラテンアメリカだけで1億人いる。これに加えて、環境の持続可能性という難題もある。これらは大きな挑戦である。しかし、ブラジルはそれを克服することを約束する。

 環境に関しては、ローマ教皇が全司教へ送った回勅も考慮されなければならない。教皇は消費者主義(consumerism)や過剰消費を含め、多くの問題にふれられた。

 大きな挑戦は、将来世代のために資源を保全すること。必要な商品やサービスをすべての人々が手にでき、尊厳ある暮らしを担保するため、知識(教育、科学的で、技術的で、社会的な開発、大学の参加と市民の社会組織)に投資することである(5)

 アナニヤス大臣は、まだ大臣に着任してまもないが、ルラ元大統領の下で社会開発担当大臣を勤め、「飢餓撲滅プログラム」を実行してきたキーマンである(3)。そして、ジルマ・ルセフ政権下でも新たな土地改革計画をすぐに立ち上げることを約束した。それは、ブラジル全土のキャンプや居住地にいる土地なし農民全員に対して農地を担保するものだ。大臣の熱のこもった誓約に、農民、FAO、政府官僚、研究者、NGOスタッフ・メンバーから拍手があがった。もし、ブラジル政府がそれをできればまさに革命的とされよう(計画の詳細は来月まで発表されない)(3)

ブラジル食品安全会議議長、健康的なあたりまえの食べ物を手にできることは人権である

Maria-emilia-pacheco.jpg ブラジルには「全国食品安全会議」があるが、同会議のマリア・エミリア・パシェコ議長も農業開発大臣と同じ文脈で、「間違った解決策が巨大アグリビジネスから提案されている」と批判した。議長はこう語る。

「市場主義の支持者たちは、栄養学の立場から食べ物を医療の対象にしようとしています。ブラジルでも全国食品安全計画を策定していましたが、広範な市民の声を反映させることで、食料の安全保障や栄養の保障のオフィシャルな理解は、健康的であたりまえの食べ物に対する食料主権や人権を含むこととなったのです」(6)

 土地なし農民や小規模家族農家の組織化が進む中、パシェコ議長は、消費者運動の組織化も可能だと望み、同安全会議に消費者代表も最近加えた。

 チャッペル博士の属する農業と貿易政策研究所では、最近「個人参加型のフード民主主義」を検討しているが、ブラジルの食品安全会議の背後にある哲学は素晴らしいし、そのモデルにもなると博士は語る。確かに、ブラジルの食品安全政策は、ローカルから各州と多くのレベルで、連邦の食料安全保障政策に組み込まれている(3)

 とはいえ、この食品安全会議も順風満帆な道を歩んできたわけではなかった。1990年代や2000年代前半のカルドゾ政権の間には中断し、数十年も後退してきた。しかし、前ルラ大統領下で再制度化されたのである(3)。パシェコ議長は、よりよき政策が動機づけられるためには、社会的な動員による圧力が果たす役割が決定的だと語る(3,4)。そして、食品安全政策はアグロエコロジーと直接的に関連すると指摘したのだった(6)

 オープニング・セレモニーの後では、市民社会グループは、アグロエコロジーに関するニエレミ宣言を論じるため、小グループにわかれた。ニエレ ニ宣言とは、アグロエコロジーに共通する柱となる原則、すなわち、権利、責任、食料主権、そして、根本的なパラダイムシフトについて、この世界でどのよう に農業をすべきかの方法も含め、アグロエコロジーとはどのようなものなのか、を包括的に定義したものだ。なお、この宣言を支持する文章は、2015年6月 24日にFAOの事務局長にも送られている(2)

  オープニング・セッションでも重い問いかけが投げかけられた。いま、多くの政府や企業は、現実の問題解決にはつながらない技術的な「修復」を求めている。 こうした中で、現在のシステムからの食や農のオルタナティブなパラダイムとして、食料主権やアグロエコロジーを支援するための制度は、いかにすれば手にすることができるのかである(続)(3)
(2018年3月11日投稿)
(2018年3月18日改正)

【地名】
ベロオリゾンテ(Belo Horizonte)

【用語】
農村女性運動(MMC=Movimento de Mulheres Camponesas)
ラテンアメリカ・カリブ海人民食料主権同盟(Alianza por la Soberanía Alimentaria de los Pueblos de América Latina y el Caribe)
中南米カリブ海諸国共同体(CELAC=Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños)。中南米33か国が参加し、2011年12月に発足。米国から自立した地域統合を目指す。中南米の問題は中南米で解決するとの考えから、米州機構のうち米国とカナダを除き、キューバを加えた中南米のすべての国で構成される
メルコスール(Mercosur=Mercado Común del Sur)。1991年にアルゼンチン・ブラジル・パラグアイ・ウルグアイの四か国で合意した共同市場計画。95年に発効。
メルコスール家族農業専門委員会(REAF=La Reunión Especializada de Agricultura Familiar del MERCOSUR)
全国アグロエコロジー・有機生産計画(PlanApo= Plano Nacional de Agroecologia e Produção Orgânica)
全国アグロエコロジ―・有機生産政策(PNAPO=Política Nacional de Agroecologia e Produção Orgânica)
家族農業と健全な食計画(Plano Safra da Agricultura Familiar)
国際土壌年(International Year of Soils)

【人名】
ジョゼ・グラチアノ・ダ・シルバ(José Graziano da Silva,1949年~)事務局長の画像はこのサイトより
ジャヒ・チャッペル(Jahi Chappell)博士の画像はこのサイトより
アドリアナ・メザルディ(Adriana Mezadri)女史
エフライン・エジムンド・ナルヴァエス(Efraín Edmundo Narváez)大臣
フェルナンド・ロドリゲス(Fernando Rodríguez)氏
アラン・ボジャニック(Alan bojanic)氏の画像はこのサイトより
パトラス・アナニヤス・デ・ソウザ(Patrus Ananias de Souza)大臣の画像はこのサイトより
マリア・エミリア・パシェコ(Maria Emilia Pacheco)議長の画像はこのサイトより

【引用文献】
(1) Dr. M. Jahi Chappell Senior Staff Scientist, The Institute for Agriculture and Trade Policy.
(2) M. Jahi Chappell, Reporting from Brazil: lessons on agroecology, The Institute for Agriculture and Trade Policy, June 25th, 2015.
(3) M. Jahi Chappell, Day two at the Latin America & Caribbean Regional Agroecology Seminar: innovation and power in agroecology, The Institute for Agriculture and Trade Policy, June 25th, 2015.
(4) M. Jahi Chappell,Final Day at the FAO Regional Agroecology Seminar in Brazil – The Struggle Ahead, The Institute for Agriculture and Trade Policy, June 29th, 2015.
(5) Final recommendations of the regional seminar on agroecology in Latin America and the Caribbean, 2015.
(6) Paulo Petersen and Flavia Londres, The Regional Seminar on Agroecology in Latin America and the Caribbean A summary of outcomes, ILEIA,2016.




posted by José Mujica at 13:54| Comment(0) | アグロエコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする