2018年04月21日

栄養と病気との深い関係1

はじめに

 最近、プレデュー大学のダン・ヒューバー教授がオーストラリアのクイーンズランド州のトゥーンバで行った講演会に参加した。満員の聴衆は忘れ難き印象をいだいた。微生物学者、ヒューバー教授は、ミネラルと微生物とその相互作用の研究に生涯を捧げて来たが、その要旨を説得力をもって披露した。また、グリホサートと関連する研究についても語った。教授が見出した極悪非道さになんども会議場は静まり返ったのだった。長い一日の後、名誉教授は私のインタビューに同意してくれた。まずパート1を紹介しよう。

有機菜園で非F1農産物を自給する

Graeme-Sait.jpgグレイム インタビューに同意してくださり、ありがとうございます。丸一日ステージで講演され、ディナーでも質問に答えられていました。いま、夜10時ですがこれから2時間お話しされることに同意していただきました。あなたは82才ですが、そのエネルギーには圧倒されます。事実、いま、まさにあなたは私の新たなヒーローになっています。80代でピークに達することを新たな目標にいま決めたところです。

 さて、今日、グリホサートの毒性問題の規模の大きさを理解し、部屋にいた多くの人たちが「もっと有機農産物を食べよう」と誓ったことを私は知っています。食物連鎖の巨大な汚染を認めて多くの人たちが震えました。ということで、あなたも有機農産物を食されているのでしょうか。

ダン教授 いつも自分の菜園を持っています。多くの食べ物がそこから提供されています。もちろん、すべて有機で、ミネラルもたくさんあります。そして、パンにも大きな違いがあると私は思っています。私は自分で非F1小麦を育てています。焼く直前に石臼で引くのですが、18%以上もタンパク質を含むとても古い品種で、素晴らしい木の実の味がします。いまの商業的な小麦とはまったく違います。

古代小麦と比べて今の小麦には栄養がない

グレイム 緑の革命の穀物問題にはほとんどの人たちが気づいてはいないと思います。ノーマン・ボーローグ(1914〜2009年)は、F1品種を発展させたことでノーベル賞を受賞しました。彼は、これまでよりも背丈が高くない矮小の小麦をもたらしましたが、それにはどのようなツケがあったのか。私たちの日々の糧となった変異体はさほど栄養分を取り込めません。そこで、健康を危うくしています。それが、9,000年以上も前からヨーロッパで栽培されていた古代のスペルト小麦を私も食べている理由のひとつです。それは格段に滋養に富んでいます。みなさんの小麦は、大きな選択枝なのです。で、その品種の名前は何というのでしょうか。

ダン教授 Riditと呼ばれる古い非F1品種です。家内はこの穀物で8分以内に焼ける準備ができている8個のパンを得られます。

作物の多くの病気はミネラル・バランスの乱れで生じる

グレイム 焼きたてのパンの匂いは健康的な土の甘い香りの次に良いものですね。いま、土壌についていくらかご質問をしたいと思います。あなたはとても洗練された微生物学者として、GMO技術を突き動かしている巨大な多国籍企業との伝説的なダビデとゴリアテとの戦いに関与していました。私の人生に大きく影響したのはあなたの著作でした。『ミネラルと栄養と作物の病気(Mineral Nutrition and Plant Disease)』(2007年)は、ずっと私のバイブルだったのです。あなたはこの本で最も深刻な作物病の多くをミネラル・バランスと誤った施肥と関連づけました。数多くの研究の1つのメタ分析で、窒素施肥を改善すれば120の事例で病気が減る一方、233のケースで窒素過多が病気を増やしていることを見出しています。そのことを聞いて、私はとても興味をいだきました。硝酸態、アンモニウム窒素。どちらが問題を引き起こしそうなのでしょうか。

ダン教授 二つの窒素形態はまったく違った代謝をして、ミクロフローラにインパクトを与えます。硝酸態窒素の代謝は、根圏にアルカリの影響を生み出します。一般には、アンモニウム態窒素での代謝による酸性の影響の方が望ましいのですが、若干の例外があります。例えば、硝酸カルシウムは、メロンでフザリウム菌が発生するのを減らせることが示されています。ですが、硝酸塩の形態がジャガイモ赤カビ病を増やすことが知られているので、アンモニウム態窒素が良い選択といえます。

モリブデンが不足すると還元糖が増え害虫が引き寄せられる

グレイム 私たちの地域のショウガの生産者は、最近、ピシウム菌に関する深刻な問題で苦しめられています。それは、尿素から硝酸態の液体窒素への動きと強く結びついているようです。硝酸態窒素の供給過剰のそれ以外の大きな問題は、栄養素の希釈要因と関係することです。自ら硝酸塩が吸収されると、これがそれ以外のミネラルを希釈して、ブリックス・レベル(栄養素の濃度の効果的な尺度)を引き下げます。葉の硝酸態濃度が高ければ、望ましいブリックス・レベルを達成することが不可能であることがわかります。

ダン教授 高濃度の硝酸塩と昆虫圧の高まりとのつながりが、一部は植物内での高濃度の還元糖類と関係していることを理解することが大切です。これらは、本当に昆虫が好む糖類なのです。葉の中にある硝酸態窒素をアミノ酸に転換するのには、最高で光合成で生産されたブドウ糖の16%が必要です。これは大変にエネルギー集約型のプロセスであって、植物内でカーボン・ストレスを産み出します。この転換問題は、モリブデンの欠乏によってさらに複雑となりますが、この欠乏はごく普通にみられるものなのです。

グレイム 確かにそうですね!。世界の土壌の約80%ではこの微量ミネラルが不足していることがわかっています。

ダン教授 たとえ、モリブデンが十分にあったとしても、さらにこれを複雑にする要素があります。それは、温度、湿度、旱魃のストレスが関係します。乾燥した状況においてまず最初にポシャる酵素は、亜硝酸塩や硝酸の還元酵素です。旱魃時に植物組織で硝酸態窒素が高濃度になるのはそのためです。多くの窒素があっても植物は生理的にどれも利用できません。マンガンが拘束されているとき、スクロース・シンターゼで苦しむことになります。これは、マンガンに依存する酵素で、グルコースをスクロースに変えます。そこで、スクロースの代わりに、還元された糖類、グルコースやフルクトースが過剰にあることになります。まさにディナーに招かれたとして昆虫が喜ぶことになります。

グレイム 糖度屈折計で測定されるブリックス・レベルは、こうした還元糖と関連するのでしょうか

ダン教授 ブリックス値ではスクロースの濃度が測定されます。その値が高いほど、昆虫圧はより低くなります。

グレイム はっきりしました。ありがとうございます。還元糖の問題を完全に理解していませんでした。

ダン教授 興味深いことに、初期の窒素の研究者たちの多くは、研究と関係する窒素の形態を決して定量化してきませんでした。まさに、それは「窒素(nitrogen)」と呼ばれていたのです。栄養素と病気との関連性を解釈しようとするとき、ミネラルの複雑な相互関係がかかわってくることがよくあります。ジャガイモそうか病がその好例です。アンモニウム態窒素は、マンガンの有効性を高めます。マンガンは耐病性で非常に重要です。イネのイモチ病、立枯れ病、根腐れ病、トウモロコシ茎腐病のすべては、マンガン欠乏と関連しています。

グリホサートはわずか数時間でマンガンの90%も拘束

グレイム グリホサートは、二重の脅威でマンガンの有効性に影響を及ぼすことから、この除草剤と関連した問題のスケールがわかりはじめました。グリホサートは植物がマンガンを利用できるようにする生物を殺し、植物内でマンガンを拘束してしまいます。

Don-Huber03S.jpgダン教授 グリホサートと関連して、私はサトウキビの研究にかかわってきました。この研究では、グリホサートを適用すると、4~6時間以内に植物組織にマンガンが拘束され、キレート化されて、固定化されることが示されました。この短い時間内に植物組織内でのマンガン濃度は実際に90%も落ち込んだのです。この大きな落ち込みと関連した影響が、植物内でのフルクトースやグルコースの増加とスクロースの還元です。前に述べたように昆虫はスクロースよりも還元糖によく引き寄せられます。

グレイム 窒素の話に戻りましょう。多くの農学者たちは、いまも硝酸態の形だけでしか窒素は吸収されないと主張しています。植物はどのようにこうした二形態の窒素を管理しているのでしょうか。二つの窒素の間には理想的なバランスがあるのでしょうか。

ダン教授 理想的なバランスは土壌内にあります。硝酸塩は、アンモニアに対する緩衝装置として、そして、アンモニアは硝酸塩に対する干渉装置として用いられます。一方があって他方がなければ植物は等しくどちらの窒素の形でも上手に使えます。ですが、いずれも等しい量でアクセスするならば、それは常にベストです。

グレイム 私どもの「Soil Therapy™」の土壌分析リポートでは両方の形の窒素20ppmが理想的なレベルだと示唆します。ですが、私たちは1:1の比率を維持することに集中しませんでした。

ダン教授 C3植物とコーンやソルガムのようなC4植物とでは違いが、あります。C4植物でアンモニア態の窒素の効率が高いのです。硝酸塩はタンパク質に転換されるうえで多くの炭素を必要とするため、結果として、硝酸窒素が支配的であれば、収量は苦しめられます。

シリカがシキミ経路を発動させるマンガンを動かす

グレイム いま、病害虫へのレジリアンスでマンガンの重要性を強調されたので、いままさにこうしたミネラルとの関連性のことを考えています。私は、シリカとマンガンの移動性との関連性を思い出します。可溶性シリカの利用と関連する耐病性が、実際に植物へのマンガンの移動が改善されることと関連するのでしょうか。

ダン教授 シリカがマンガンを動かすことから確かに強い関連性があります。マンガンに細胞壁を横切らせたり、それを感染症の場にマンガンをシリカが動かすのを目にできます。このシリカの後押しなくしては、マンガンはシキミ酸経路を活性化させる一助となるよう感染症の場に辿り着くのに苦労します。フェノール他の保護合成物を生産するために機能します。それが侵入を止めるのです。

グリホサートはシキミ酸経路を破壊し植物を病気にかからせる

グレイム もう少しシキミ酸経路に焦点をおきたいと思います。複数の発行された論文を徹底的にまとめたことからの冷酷な結論は、私たちがグリホサートで大変な間違いをしでかしていたということです。この化学物質で私たちはすべての食物連鎖を危うくしています。ほとんどの変性疾患や現代世界を壊滅させている伝染病のいくらかでさえ、いまそれはむすびついています。そして、それは、このシキミ酸経路と結びついているようです。このことを詳しく述べていただけますか。

ダン教授 グリホサートの作用の仕方は、シキミ酸経路をシャットダウンさせてしまうことです。主要な防御システムの活動が止まります。それ以外にもレジリアンスと関係した二、三の経路がありますが、防御のメインプレーヤーはシキミ酸経路なのです。事実、それは生命にとって本質的です。この防御経路がシャットダウンすると基本的にエイズにかかることになります。あなたは、植物免疫を基本的にシャットダウンさせています。その結果は、広範囲にわたる病気の増加です。それはまさに起きていることなのです。

グレイム なんということでしょうか。それ以外の多くのニーズを生み出すためにひとつの化学製品を使うという名人芸のマーケティング戦略ではありますまいか。まるで何らかの陰謀説のように聞こえますが、それは効果的に長年起きてきたことなのです。

 最近のあなたの論文を読みました。ただグリホサートを用いるだけで、40もの様々な植物病が増えていることを示されています。世界が間違いに気づいていくことから、それはこの多国籍企業にとって、災難を意味するとお考えになりますか。モンサントは10年後もまだ存在しているのでしょうか。

モンサントは1981年からグリホサートが発ガン物質と知ったうえで広めて来た

ダン教授 私は、彼らが明らかに将来を懸念していると思っています。WHOの最近のリポートではグリホサートを「可能性のある発がん物質(probable carcinogen)」と分類しています。さらに最近では、モンサント自身の研究で、自分たちの除草剤と関連した異なる7つのガンの型の性質を現すことを示すリポートを目に出来ます。いま、とても幅広い文献があります。

グレイム 疑っていない世界に対して、この毒物を押しつける以前から、この企業がガンとの関連性について完全に気づいていたとそれは示唆されているのでしょうか。

ダン教授 とても信頼されている科学者、アンソニー・サムエル博士によって公表された新たなデータによれば、彼らは1981年に遡りまさにそのことを知っていました。あなたの読者がメルコラ博士のmercola.com上で、この研究者とのインタビューをチェックすることはいいアイデアでしょう。本当に目が開かれます。WHOのリポートが確実な発がん物質ではなく、むしろ「おそらく」と結論を下した唯一の理由は、研究が絶えず抑えつけられてきたからです。

銅を使ってグリホサートの悪影響を減らす

グレイム それは多くの栽培者にとって大問題です。というのは、彼らはグリホサートに繋がれていると信じ込んでいるからです。この投入資材が多くの農民たちの暮らしを容易にしたことは疑いありません。不耕起農法もほとんどがグリホサート・ベースでした。それは明らかです。

 ですが、その悪影響を減らせるシンプルな戦略がいくつかあります。例えば、希釈したグリホサートの散布のPHを2.9まで下げれば、最高30%まで必要な化学資材の量を減らせます。わずかなフルボ酸を混合物に組みあわせれば、膜の透過性が高まり化学資材の取り込みも関連して増えます。こうした状況がプラグマティックであることは重要です。あなたには、グリホサートと関連した悪影響を減らす助けとなる示唆がなにかございますか。

ダン教授 そうですね。小麦を栽培して、グリホサートを使えば、麦角病やウドンコ病等の病気が増えることに気づかれたかもしれません。これらはいずれも植物での銅欠乏と関連性があります。このミネラルが除草剤によってシャットダウンされたからです。この問題を避ける助けとしては、葉に銅を散布することが非常に生産的な戦略でありえます。人々は、殺菌剤として銅を誤解しています。彼らは、植物をびしょ濡れにして、土壌中で銅を過剰にしてしまいます。葉の上よりも、むしろ、銅反応の75%は植物内でおきるのです。

グレイム 大賛成です。私どもは「Nutri-Key Copper Shuttle™」と呼ばれているユニークにキレート化された、銅の液体を開発しています。1つのスペインでの大がかりな試験では、この製品が2つの最も一般的な銅の殺菌剤、水酸化銅とオキシ塩化銅に対してテストされました。この試験には地元で非常に人気な生物学的製品も含まれていました。そして、「Nutri-Key Copper Shuttle™」はわずかしか銅を含みませんが、かび防止剤のパフォーマンスでは、それ以外を全く凌いだのです。たとえそれが殺菌剤として市場に出されないとしてもです。

 それが植物よりもむしろ銅を植物に入れることに関するすべてです。これは広くは認められていません。土壌で銅を過剰にすることが多いことから、銅の殺菌剤が最悪のものとされると考えます。銅は浸出しません。そして、十二分に菌類の病原体を殺すことができます。土壌での銅の高濃度は、バクテリア、有益な真菌、原生動物を危うくします。それは、幅広いスペクトルでの殺生物剤(biocide)なのです。この指摘によって、このインタビューの最初の部分を終わります。
(2018年4月21日投稿)
【地名】
トゥーンバ(Toowoomba)
【用語】
スペルト小麦(spelt)
硝酸カルシウム(Calcium nitrate)
ジャガイモ赤カビ病(potato scab)
ピシウム菌(Pythium)
カーボン・ストレス(carbon stress)
スクロース・シンターゼ(sucrose synthase)
グルコース(glucose)
スクロース(sucrose)
フルクトース(fructose)
ブリックス・レベル(brix levels)
還元糖(reducing sugar)
ジャガイモそうか病(potato scab)
いもち病(Rice blast)
立ち枯れ病(take-all)
根腐れ病(root rot)
茎腐病(corn stalk)
ソルガム(sorghum)
可溶性シリカ(soluble silica)
シキミ酸経路(shikimate pathway)
フェノール(phenolics)
フルボ酸(fulvic acid)
麦角病(ergot)
ウドンコ病(powdery mildew)
水酸化銅(copper hydroxide)
オキシ塩化銅(copper oxychloride)
【人名】
著作の画像はこのサイトより
ノーマン・ボーローグ(Norman Borlaug)
アンソニー・サムエル(Anthony Samsel)
グレイム・サイト(Graeme Sait)氏の画像はこのサイトより
ダン・ヒューバー(Don Huber)教授の画像は文献より
【文献】
Graeme Sait, Nutrition and Disease–Interview with Professor Don Huber–Part1, Nutri-Tech Solutions, 31 August 2016.


posted by José Mujica at 23:00| Comment(0) | GMO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする