2018年05月17日

破綻のはじまり

健康上の問題を引き起こすグリホサート

 必須アミノ酸を合成する植物の代謝機能、シキミ経路を止めることでグリホサートは働く。シキミ酸経路が止まれば植物は枯れる。もっともヒトの細胞にはシキミ酸経路は存在していない。だから、グリホサートがターゲットとしているのは植物に見出される酵素だけであって、人間やペットのそれは目標としていない。そうモンサントが主張する根拠となっている(1)

 けれども、問題はシキミ酸経路がバクテリアにおいて見つかることだ。人間は腸内フローラと呼ばれる何百万もの善玉菌を腸内に抱えている。腸内細菌は健康に欠かせない。それは免疫系すら調整できる。作物に散布したときに被曝するのであれ、グリホサートの残留物が残った食品を食べるのであれ、グリホサートが体内に入れば、様々な健康問題が引き起こされると科学者は信じている(1)

 例えば、グリホサートに関するいくつかの研究から、炎症性腸疾患や食物アレルギーの発生率がこの10~15年で急増していることが明らかになっている。疾病管理予防センターの調査によれば、20人に1人の子どもがいま食物アレルギーで苦しんでいる。それは、1990年代後期から50%の増加を意味する。

 湿疹他の皮膚アレルギーの発病率もほぼ70%増え、いま、8人のうち1人の子どもたちに影響を及ぼしている。腸内細菌に対するグリホサートのインパクトがこうした病気や状況の一因となっていると考えることは理にかなっていると科学者たちは主張する(1)

おそらく、グリホサートで最も有害で認識できる副作用は、非ホジキンリンパ腫である。2015年、WHOの国際癌研究機関は、グリホサートがおそらく発がん物質だと結論づけた。同機関の報告によれば、グリホサートの暴露と最も関連したガンは、非ホジキンリンパ腫と他の血液生成ガンである。

 このリポートは、グリフォセートへの被曝は、哺乳類に遺伝子毒性、ホルモン、酵素の影響があるだけでなく、人間の細胞でのDNAや染色体のダメージを引き起こすエビデンスがあるとも結論づけている。そして、この報告は、農民、農場労働者、庭師、造園家、政府職員、そして、ラウンドアップに被曝することで非ホジキンリンパ腫にかかったと主張する多数人々。モンサントに対してなされる何百もの訴訟を刺激してきた(1)

米国の環境2団体、ペテン広告を訴訟

 除草剤ラウンドアップには「人間やペットではなく植物に見出される酵素をターゲットとしている」と表示されている。けれども、ラウンドアップの活性成分、グリホサートがターゲットとする酵素は、人間やペットにも見出せるだから、この主張はあてにならず、まぎらわしく、ペテンである。この表示は消費者の誤解を招く。

 そう主張して、2017年4月7日、市民団体、ビヨンド・ペスティサイドと有機消費者連盟は、コロンビア特別区消費者保護手続き法に基づいて、モンサントを告訴した(1,3,4,5)

ラウンドアップは腸内細菌に影響を及ぼす

Jay-Feldman.jpg 原告となったビヨンド・ペスティサイドのジェイ・フェルドマン代表はこう語る。

「ラウンドアップの表示は、複雑な人間の生物的特性やこの非常に有毒な化学製品の腸内細菌機能への影響、とりわけ、私たちの健康にもたらす影響と合致しません。こう主張することで、モンサントは自分たちの製品が人々に危害を与えることはないと不正に市民に語っているのです(2)

「不十分なEPAの農薬規制だけでは、表示がまぎらわしく、チェックされずに残されてしまいます。ラウンドアップは『植物に見出される酵素をターゲットとしていて、人間やペットの酵素はターゲットとはしていない』とのモンサントの広告や表示は誤っており、グリホサートは有益な腸内細菌への悲惨な危害をもたらします。腸内細菌の破壊は、喘息、自閉症、細菌性膣疾患、心血管疾患、ガン、クローン病、鬱病、炎症性腸疾患、リーキーガット症候群、多発性硬化症、肥満、1型及び2型糖尿病、パーキンソンを含む多くのの21世紀の病気と関係しているのです。

 ラウンドアップ、グリホサートの危険性は科学的に明白です。そして、モンサントはそれを承知なのです。私どもは、この訴訟で、市場での間違った広告や製品の表示で市民が惑わされないことを担保しようとしています。それは、人々やその家族、そして、彼らが暮らすコミュニティを汚染する有毒な製品を購入する前に、人々に完全に周知することを担保することに向けての重要なステップなのです」(4)

Henry-Rowlands.jpg デトックス・プロジェクトを立ち上げたヘンリー・ローランズ代表は言う。

 グリホサート・ベースの除草剤『ラウンドアップ』が、人間やペットではなく植物だけで見出される酵素をターゲットとしているとのモンサントの主張はバカげています。同じ酵素が人間や他の動物の腸内細菌によって生産されているからです」(5)

 有機消費者協会のロニー・カミンズ代表もこう述べた。

「人間や動物にとって『安全だ』として、モンサントはラウンドアップを野心的に市場に出しています。グリホサートには発がん性があり、その使用が人間や動物の心血管、内分泌、神経、生殖システムに影響を及ぼすかもしれないことを示す新たな研究があるにもかかわらずです。この製品、グリホサートが『人間やペットで』には見つからない酵素をターゲットとしているとの主張によって、ラウンドアップが実際には、人間や動物に見出される大切な細菌酵素を実際にはターゲットとしており、その免疫系の健全さに影響及ぼすことを分別ある消費者は予想できません(1,2,4)

Ronnie-cummins.jpg「とりわけ、安全性の問題のこととなれば、会社は、製品ラベルに書く情報に関しては、高水準を保持しなければなりません。何十年も、子供たちやペットに危険性がなく庭にラウンドアップを撒けると思いこませ消費者をだます間違った表示の主張を、モンサントは使ってきました。裁判官が入る時です」(2)

 調査からは、消費者が購入にあたって、家族を安全にするために、その表示に頼っていることがわかります。企業が消費者やその家族に対するその製品の影響の問題に関して誤りをおかさせるとしたら、この場合では、もちろん、誰に対してもですが、とりわけ、公園で遊ぶ子どもたちを危険にさらします。このまぎらわしい情報の除去を求めるには法制度を使う他に頼るものはないではありませんか」(4)

確信犯には罰金を

「グリホサートがどのようにしてシキミ酸経路に働くのかをモンサントは気づいています… 。そして、シキミ酸経路が人とペットの消化器系に欠かせない細菌に存在することを示している研究も気づきます」という。「ですから、グリホサートが植物だけでなく人々とペットにも存在する酵素をターゲットとしていることをモンサントは知っています」(1)

 人間やペットは目標とはしていないと主張すれば、消費者は除草剤に対して多くを支払う。正直者の競合製品の売上を減らす一方、ラウンドアップの販売は増える。そのことをモンサントは知ったうえで意図的に、この嘘の広告キャンペーンを行うことで不当な利潤をあげてきた。となれば、グリホサートの販売であげた利益は、その危険性に対する消費者意識を高めるための慈善の基金に預けよ、そう主張したのだ(1,2)

訴えはまとも、裁判所が受理

 この市民組織の告発に対して、モンサント社はこの訴訟を棄却するように裁判所に求めていた(6)。けれども、米国のコロンビア高等裁判所は、この訴訟を却下しようとしたモンサント側の動きをはねつけ、十分な証拠が提出されたとしてその訴えを5月7日に受理した(3,4,5,6)

Timothy-Kelly.jpg ティモシー・ケリー(1969年〜)高等裁判所判事は、自分の決定は双方のブリーリングと適用法に基づくものであり(3)、原告側は自分たちの主張を支持できるだけの十分な証拠が提供されているとの決断を下す(4,5)

「モンサント社がラウンドアップ、グリホサートにおいて安全だと表示して市民をだましていることを示すことによって、この法廷の決定はきわめて重大です」とフェルドマン氏は言う(4)

「これは、とても大切な裁判所の判決です。私たちは、グリホサート他のどこにでもある化学製品が腸内細菌に何をしているのかをさらによく理解する必要があります。研究によれば、それが私たちの健康や幸せの鍵だからです。私たちはグリホサートについてあまりにも知りません。それが変わるのは、包括的な独立した科学がグローバルに支持されるときだけですとローランズ氏も言う(5)

編集後記

 印鑰智哉氏は、この裁判はモンサントのラウンドアップの運命を決めるものとなるかもしれない。

 訴訟では絶大な力を持つモンサントを負かすことは容易ではないだろうが、科学的な事実はさすがのモンサントと言えども否定できないだろう。この虚偽が証明されればモンサントの農薬ラウンドアップの世界的な禁止はもはや秒読みに入ることになるのではないだろうか?

 EUの主要国がすでにラウンドアップ(グリホサート)の3年以内の禁止に向かっていることはこうしたことを踏まえるならば当然の動きということができるだろう。それに反して、最大400倍の規制緩和をしてしまう現在の日本政府は本当に度しがたいならず者国家であるといわざるをえない。日本でも禁止に動く必要がある。実現可能なことはいろいろあるはずだ(6)と述べられておられる。

 けれども、私は、この点に関しては、印鑰氏と違って悲観的である。仮に宗主国でラウンドアップが危険だとの判決が科学的に下ったとしても、本国で余ったグリホサートを処理するために属州にはさらに大量のゴミが捨てられるはずだ。日本国中央政府は、ますます力を入れるであろう。

 とはいえ、庶民にも抵抗できることはある。口に入れられるだけのグリホサートをたっぷりとほおばりながら、「日本国中央政府が言う以上は、大丈夫である」と絶叫しつつ、「官僚はぜったいに嘘をつかない。霞ヶ関がやっていることはすべて正しい。危険なものがCMで放映されるはずがない」とグリホサートに一抹の懸念を持つ友人や知人を罵倒するよりは、「もしかしたら、この印鑰という男が言っていることにも一抹の真実があるのかもしれない。だとしたら、なんという不幸な国に生まれてしまったことよ」と諦観しつつ、ひそかにザワークラウトづくりにでも励むしかない。そして、ザワークラウト教が普及すれば、「なぜだ」と疑問に思う人が増えるかもしれないではないか。
(2018年5月17日投稿)

【人名】
ジェイ・フェルドマン(Jay Feldman)氏の画像はこのサイトより
ヘンリー・ローランズ(Henry Rowlands)氏の画像はこのサイトより
ロニー・カミンズ(Ronnie Cummins)氏の画像はこのサイトより
ティモシー・J・ケリー(Timothy Kelly)判事の画像はこのサイトより

【用語】
シキミ酸経路(shikimate pathway)
炎症性腸疾患(inflammatory bowel diseases)
疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)
湿疹(eczema)
非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma)
国際がん研究機関(IARC =International Agency for Research on Cancer)
ビヨンド・ペスティサイド(Beyond Pesticides)
有機的消費者協会(OCA =Organic Consumer Association)
デトックス・プロジェクト(The Detox Project)
コロンビア特別区消費者保護手続き法(District of Columbia’s Consumer Protection Procedures Act)
細菌性膣疾患(bacterial vaginosis)
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)
多発性硬化症(multiple sclerosis)
訴訟(lawsuit)
却下(dismiss)
適用法(applicable law)

【引用文献】
(1) Baum Hedlund, Monsanto Sued Over Misleading Roundup Label, April 7th, 2017.
(2) Sustainable Pulse, Monsanto Face Lawsuit over “Misleading” Roundup Label, Sustainable Pulse, Apr 11 2017.
(3) Dena Aubin, Judge rejects Monsanto's bid to toss lawsuit over Roundup label, April 3, 2018.
(4) Sustainable Pulse, US Judge Gives Green Light to Misleading Roundup Label Lawsuit against Monsanto, May 7, 2018.
(5) WholeFoods Magazine Staff, Judge Rules on Misleading Roundup Label Lawsuit, WholeFoods, May 12, 2018.
(6) 印鑰智哉氏の5月14日のブログ「モンサントの「ラウンドアップは安全」の宣伝の虚偽に関する裁判始まる」


posted by José Mujica at 07:00| Comment(0) | GMO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする