2018年06月30日

GMOフリーゾーンの緑の枢軸を築こう

国民の懸念の声と多国籍企業の種子独占への不安からプーチンGMOを否定

Elena-Sharoykina.jpg 2016年7月、ロシア連邦のウラジミール・プーチン大統領は、試験や科学研究で使用する以外、遺伝子組み換え動植物の栽培や繁殖を禁止する法律に署名した。事実上、この法律は、世界最大のGMOフリーゾーンとして、有機農業の発展のための大きなプラットホームをロシアに提供する(1,2)

 人間の健康や環境に対するGMO食品の長期的なリスクに関しては信頼のおける科学的な研究の欠落している。ロシア政府によってなされたこの決定は、環境団体や農業者他のロシア社会の代表たちの懸念する声も影響している。さらに、遺伝子組み換え種子の世界市場が、多国籍企業、そのほとんどが米国、ドイツ、スイスに拠点をおく企業に独占されており、クレムリンは国家食糧安全保障も明らかに考慮している(1,2)

GMOから離脱したがるEUvsGMOで世界支配を目指す米国

 多くのEU諸国は、米国とは異なりすでにGMOへの規制を適用している。それは、ロシア連邦が現在実施しているものと類似している。EU諸国のうち、5カ国、スペイン、ポルトガル、チェコ共和国、スロバキア、ルーマニアだけが遺伝子組み換え作物を栽培している。けれども、そこでも、徐々にGMO作物の作付け領域を減少させ始めている(1,2)

 米国は、そのバイテク会社の意向を受け、EUの農業セクターを征服して、それをグローバルなGMO市場の一部としようと試みている。この不適当な結びつきはトランスアトランティック貿易や投資協力(TTIP= Transatlantic trade and investment partnership)と公式には呼ばれ、マスメディアはそれを『経済NATO』と呼んでいる。GMO問題がTTIPをめぐる交渉プロセスの主な争点のひとつに見えることは興味深い(1,2)

 2016年9月中旬、この議論の中に、ドイツ化学製薬巨人バイエルが660億ドルの乗っ取り取引において米国のモンサントを買収することに同意すると発表された(1,2)。バイエルとモンサントとの合併が発表されたのは、この文脈においてなのである(2)。米国とEUの規制当局が合併を承認すれば、それはこれまで世界が目にしなかった『大西洋を超える怪物』を産み出すこととなろう。そして、この新企業が、私たちが何を食べるのか、どのような医薬品を飲むのか、そして、どのように農業を経営をするのかで全世界に命令を下すことになる(1,2)

 この合併は、世界バイテクと医薬品市場のさらなる独占へとつながる。庶民である消費者、あるいは各国の利益の見地からしても、かかる巨大な多国籍企業をコントロールすることは極めて難しい。独占企業は対話をすることを受け入れず、市場に一方向的なアプローチを強いるであろう…(2)

 いったいこの合併劇の背後には何があるのであろうか。そして、それは、ロシアやヨーロッパ、あるいはそれ以外の世界の誰しもにとって何を意味するのであろうか。それをこの劇の主要人物、バイエルとモンサントを見ることから探ってみたい(1,2)

化学兵器企業バイエルはウォール街の資金援助で巨大化

Antony-Sutton.jpg バイエル1863年に設立され、設立当時は、咳止めのヘロインとアスピリンで知られていた。現在、同社は広範にわたる農薬、製薬、医療品を製造しており、同社の一部門、「バイエル穀物科学」は、遺伝子工学分野の研究を行っている。

 バイエルが歴史的に『死の産業』であることはさほど知られはいないが、第一次世界大戦と第二次世界大戦中に同社はドイツの化学兵器メーカーであった。同じく、米国との『特別な関係』のほぼ百年についてもほとんど知られてはいない。傑出した歴史家、スタンフォード大学のアンソニーC.サットン(1925〜2002年)教授によれば、I.G.ファルベンは、ウォール街からの資金援助で、バイエルを含めた6つの既存のドイツの巨大な化学会社からハーマン・シュミットによって1925年に結成された。

第二次大戦後にバイエルは西側の軍需産業体と癒着する

Hermann-Schmitz.jpg「20年後、I. G.ファルベンが犯した戦争犯罪のためハーマン・シュミッツはニュルンベルグ裁判で取り調べを受けた… 。だが、I. G.ファルベンの米国側の系列企業やI. G.そのものの米国の責任者は静かに忘れ去られた。真実はアーカイブに埋められた… 。ウォール街からの資金供給がなければ、I. G.ファルベンはまず存在せず、アドルフ・ヒットラーと第二次世界大戦もなかったことはほぼ間違いない」。サットン教授は著作『ウォール街とヒトラーの隆盛(Wall Street and the Rise of Hitler)』でこう書いた(1)

 第二次大戦後に、再びバイエルには『科学的な可能性』で需要が生じる。けれども、今度は、ナチスがNATO軍司令官に取り替えられた。西側の軍産複合体とバイエルとのつながりは、実際には決して終わらなかった(1,2)

原爆研究と枯れ葉剤に関わっていたモンサント

 二番目の登場人物、米国企業モンサントは、遺伝子組み換え種子や遺伝子組み換え作物用の農薬の生産で有名である。バイエルと同じく、1901年に設立された直後から、モンサントは軍事プロジェクトに深く関係していた。オハイオ州にあるそのデイトン研究所で、マンハッタン・プロジェクトの一部として、ポロニウム・ベースの最初の中性子起爆装置が造られた。それらは原子爆弾で使われ、米国はそれを広島と長崎に落とした。

 ベトナム戦争中には、モンサントは米陸軍のオレンジ剤を最も多く供給した。それは化学兵器として使われ、ほぼ300万人が影響を受け、50万人が殺された(1,2)

過去は、未来を語る。バイエル、モンサントと「死の産業」

 言い換えれば、バイエルやモンサントは、非常に変わった企業なのだと考えなければならない。それは旧世界と新世界における最大の化学産業・バイテク産業であると同時に、ある意味では、軍需産業グループを完全に代表している(1,2)

「モンサント」と「バイエル」の西側の軍産複合体とのつながりが過去のものだと信じることはナイーブであろう。「バイエル」は、ワクチンの開発や製造の世界的リーダーである。けれども、ほとんどの場合、ワクチンはバイオ兵器プログラムのコインの裏側である。珍しいウイルスに対するワクチンを製造することはウイルスそのものを必要とする。そして、後者の見返りは、バイオ兵器エージェントの基礎となる。

 その一方で、「モンサント」には遺伝子工学技術がある。『バイオ戦争とテロリズム(Biowarfare and Terrorism)』の著者、米国のイリノイ大学ロースクールのフランシスA.ボイル(1950年〜)教授は、企業は米国のバイオ兵器プログラムと深く癒着していると述べている。

 これは何を意味するのであろうか。まさに、これは1例だが、致命的なウイルスの原種を遺伝子組み換えすれば、超兵器を得ることができる。そして、自然の既存の免疫は機能せず、開発者だけにそのためのワクチンがある。ヒトゲノムの飛躍的な発見とバイオ情報科学研究は、特定の遺伝情報のキャリヤーにだけ影響を及ぼすというバイオ戦争をリアルなものとする。

 グローバルな独占企業は、あなたが口にされる食ベモノの遺伝子の組成とあなたが接種するワクチンの化学組成を同時に決定するのだが、私たちはこのすべてを信頼することができようか?(2)

ヨーロッパ市民の願いを裏切って米国にしてやられたEU官僚

 このため、この合併問題はただ経済的な見解からだけではなく、現在の米国とEUのパワーバランスを反映した地政学的な問題としても評価されなければならない(1,2)

 私からすれば、これは乗っ取りではない。新たな多国籍構造を創り出すバイエル-モンサントとの合併なのだ。もし、このことが真実でなければ、ワシントンとブリュッセルとの関係ではEU側の影響力がかなり高まるであろう。けれども、それはリアリティとは完全に異なる。しかも、米国の外交政策におけるGMOの重要性を考慮に入れれば、ドイツ人ではなく、ホワイトハウスこそがこの莫大な資産を手にすることを想像することは難くない。明らかに、この二大巨人の合併劇の舞台裏には、米国とEUとのTTIPの交渉プロセスがある。そして、ブリュッセル側は、議論の余地があるいささかの問題に関する『撒回』と引きかえに、グローバルなバイテク産業のおこぼれを獲得した。一方で、モンサントは米国企業からヨーロッパ企業へと商標を変えることで、GMO生産でEU市場を開くことを期待している(1,2)

 例えば、最初の620億ドルの申請が2016年5月にバイエル側からなされ、これがモンサントによって断られたことを思い出させてほしい。けれども、2016年8月にドイツとフランスのリーダーによりなされたTTIP上の交渉が実際に失敗したとの声明の後、突然、コンセンサスに達したのだ。ロシア人と同じく、圧倒的多数のヨーロッパ市民は、GMO農業が広がることに対して明確に反対する態度を打ち出している。したがって、こうしたコンセンサスは、ヨーロッパの官僚たちによる公共益に対する裏切り行為である(1,2)

ヨーロッパへの侵入する準備をしているモンサントのGMO

 この合併は、とりわけ、ヨーロッパにおけるGMO規制への高まる圧力や、TTIP他の多国籍貿易協定に対する高まる反対に対するある一種の反撃と言える。こうした協定は、現在交渉中だが、国を超える先例なき権限を私企業に提供することとなろう。食べ物や健康といった最もセンシティブなエリアでさえも、国家の規制・管理する役割を実際に無効化してしまう。それらは、健康、そして、人間の遺伝子の安全性にとってさえ大変なリスクと言える(2)

Árpád-Pusztai.jpg 私の見解からすれば、GMOの使用問題は、予防原則に基づかなければならない。GMOが生きた生物の健康や環境にとって安全であることを、これまで誰1人として証明していない。いくつかの独立した研究、例えば、英国ロウェト研究所のアルパド・プシュタイ(1930年〜)博士、フランス・カーン大学のジル=エリック・セラリーニ(1960年〜)教授、オーストラリアのフリンダース大学のジュディ・カーマン教授、そして、ロシアの全国遺伝子安全協会他は、哺乳類でガン、不妊性、内臓の劣化、免疫系抑制他の深刻な健康リスクを示している。けれども、GMOの生産者は問題となっている研究に専念することに急ごうとはせず、不快な実験を繰り返している。そのかわりに、GMOのロビーは、彼らの仕事を批判して信用させないよう独立した研究者を攻撃する。フランスのセラリーニ教授に対する攻撃がそのケースである(2)

露、仏、独の緑の枢軸〜大陸規模でのGMフリーゾーンの構築

 米国企業の圧力を受けながらも世界の数少ない『緑の要塞』のひとつであったヨーロッパの没落は、ロシアにとってもトラブルを意味する。『遺伝子が組み換えNATO』が我らが国境に近づいており、私たちの生物的、遺伝子、食料の安全保障を脅かしているからだ。もし、米国がGMOでのEU市場の自由化を達成することに成功すれば、ロシアも必然的に人間の健康や環境にとって安全ではない領域への進出から保護されなければならないであろう。この場合には、モスクワは、EUにとってある種の先例なき「農業の鉄のカーテン」「ダブリンからウラジオストックまでのグリーン・スペース」を構築しそうである。つまり、ヨーロッパの農産品輸入に対するラディカルな規制の導入だ。けれども、この「グリーン・スペース」を夢みるかわりに、私たちは、ヨーロッパにおいて新たな境界線、環境における地政学を得ることもできる(1,2)

 ロシアとEUの農業におけるGMOの使用を規制する現行法律は非常に類似している。相互の制裁や規制にもかかわらず、いまだに十分に多い取引高のレベルを維持しており、将来にそのドアを開くキャパシティを保っている(2)

 私は、ある日、いささかの奇跡で、堕落しているヨーロッパの官僚が、国家的にまっとうな指導者とおきかえられることを信じたい。それは可能だし、私の見解ではこれがロシア国民にもヨーロッパ人にも必要なのだ。そして、手遅れにならなければ、私たちはパリ・ベルリン・モスクワにおいて「グリーンの枢軸」を構築するであろう。そして、私たちの協同の努力は、大陸スケールでGMOフリーゾーンの境界を拡大していく。旧世界において農業の伝統を保護して、有機農業を拡大し、持続可能な発展の原理に従って世界経済を改革していくことが可能となる。けれども、ヨーロッパ人たちにはその奇跡を待つ余裕があるだろうか(1,2)

編集後記

 去る6月24日に埼玉県比企郡小川町で「種子法廃止と種苗法改正の問題点について」と題して、山田正彦元農相の講演会が開かれた。ロシアの反GMOについても元農相は言及されたが、「ロシアは、すでに有機農業へのシフトを決断していて、これに中国も同調しそうという情報も衝撃だった。それに比べて、日本は時代に逆行している印象です。まずは、たくさんの人に現状を知ってもらうことが大切だと感じました。『農業は産業ではない。命をつなぐのが食料』というあたりまえの言葉が心に残りました」との感想が寄せられた。山田元農相は少しアジテートしすぎなのではないか、と批判される方もいる。けれども、ネット検索すれば「現実にフィリピンでGMO米を作付けされるくらいならばロシアから有機米を輸入しよう」あるいは「有機農業で自給を目指したキューバは熱帯の島だし、何でも栽培できる。だが、こうした恵まれた条件はそれ以外の世界にはないという批判に対して、人口も多く、米国よりも国土が広く、工業国で、かつ、温暖な気候にも恵まれていないにもかかわらず、機械も家畜も用いず、国民の食料需要の半分を有機農業で賄っているキューバ以外の事例があるとすれば、それは小規模でローカル農業が人類を養えるとのオルタナティブ・モデルを実証するうえで十分なのではあるまいか」というブログが見つかるほどプーチン脱GMOや有機農業宣言は話題を呼んでいるのが現実なのである。

 問題は、簡単に英語でゲットできる情報がなぜか日本語のメディアには乗らないことだ。プーチンは傑出した指導者だし、怪物ではある。けれども、国家をあげてのGMOの規制というのはただ1人ではできない。ロシアの動きの背後には、GMOは入らないという強力な空気があるに違いない。それが、ダーチャの文化に根ざす自然と調和したいという気質が「アナスタシア」ブームを引き起こし、GMO汚染と戦うヒーローというSF小説がベストセラーとしているのであろう。では、そうした価値観を持つロシアからは、いまのこの世界はどのように見えるのであろうか。ということで、ロシアを代表する反GMOジャーナリスト、エレナ・シャロイキニさんの論文をまとめてみた。

 モンサントとバイエルの合併劇の背後には軍需産業の癒着があるという「陰謀論」的な史観の是非はともあれ、「露、仏、独による緑の枢軸」とは実に壮大なビジョンだし、勇気がでてくる。私は種子法廃止問題から、関心をもっているのだが、こうしたグローバルな視点がないと、バクロステレビの主演者で社会的に影響力もある著名なU医師の「種子法は都道府県の閉鎖的な利権構造なのだから、廃止は大歓迎」という見解になってしまう。

 確かに、ロシアの脱GMO情報に対しては、ネット上で一番ヒットするのは、イリノイ大学の研究者による「プーチンの謀略に乗るな!これは米国内を混乱させる陰謀である」との情報である。

 浅学非才の一介のサラリーマンには「何があおりで、何があおりではないのか」をひとつひとつ判断するだけの力量はない。とはいえ、「イリノイ州立大学というのは多国籍企業から献金をもらう御用学者が多いのです」と京都の地球環境研のマックグリービー准教授は個人的に教えてくれた。マックグリービ准教授とは一緒に有機弁当を食べたりもしている。その中で「この人はいい人だ」と感じている。頭脳の分析よりも、そうした皮膚感覚での直感の方が真実に近づけることは、最先端の脳神経科学からも次第に明らかになってきている。ということで、最終的な判断は読者諸兄が各自でやっていくしかないのだが、拙ブログのネタも玉石混淆の情報のひとつとしてあなたの世界の見方への一助となれば幸いである。
(2018年6月30日投稿)

【人名】
アンソニーC.サットン(Antony Cyril Sutton)教授の画像はこのサイトより
ハーマン・シュミット(Hermann Schmitz, 1881〜1960年)氏の画像はこのサイトより
フランシスA.ボイル(Francis A. Boyle)教授の画像はこのサイトより
アルパド・プシュタイ(Árpád Pusztai)博士の画像はこのサイトより
ジル=エリック・セラリーニ(Gilles-Eric Seralini)教授
ジュディ・カーマン(Judy Carman)教授

【用語】
ヘロイン(heroin)
バイエル穀物科学(Bayer Crop Science)
I. G.ファルベン(I. G. Farben cartel =Interessen-Gemeinschaft Farbenindustie AG)
デイトン研究所(Dayton laboratory)
中性子起爆装置(neutron initiators)

【引用文献】
(1) Elena Sharoykina, Moscow Bans GMO: Russia, the World’s Largest GMO-free Territory, Platform for the Development of Organic Agriculture, Global Research, September 29, 2016.
(2) Elena Sharoykina, Europe – “Green” Alliance with Russia or experimental field for genetic Monsters?, Defend Democracy Press, Oct20, 2016.


posted by José Mujica at 12:46| Comment(0) | GMO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月27日

種子法廃止後のたねのゆくえ

2018年6月23日、明治大学リバティタワー

吉森弘子代表挨拶 みなさん。こんにちは。この会は2013年に立ち上げ、今日、5回目の設立総会をしました。最初は遺伝子組み換え農産物を考える場でしたが、今回は多様な種子の持つ豊かさ、可能性について勉強して、それを広げるように活動の趣旨を変えました。活動をする中で、ネガティブからポジティブへの大転換があったのです。今日の会もそのような形で開かせてもらっています。

 昨年、『君たちはどう生きるか』がベストセラーになりました。世界から俯瞰すると違って見えて来るものがあります。種子法についても世界の中から見てみると見えて来るものが違っていました。

 公共の種子システムを考えるだけでは終わらないのです。日本は相変わらず競争です。ですが、2007年、2008年の食料危機で世界は小さなコミュニティでの食料、種子に変わってきています。子どもの権利、食料の権利を考えるきっかけにしたいと思います。

都道府県に対するアンケート調査結果の報告
運営委員、藤木千草

 全都道府県にアンケートを送付した。そして、全都道府県から返事をもらった。もちろん、中には出し渋る県もあったが「おタクだけ出ていませんよ」と脅した(笑)。予算が減った自治体、増えた自治体と色々ある。2018年は北海道の予算が一番大きく1億5643万円。大阪府が最も予算が少なく28万8000円である。東京都は種子事業から撤退していてゼロである。奨励品種決定のための試験実施している。

 2018062703.jpg 種子生産ほ場の指定は2017年は東京都以外の46の道府県が実施していたが、2018年は25の道府県と53%しない。2017年に民間と協力したところは兵庫、三重、愛知だけでいずれもJAである。2018年に実施する予定は4県あり、前者に加えて青森県である。都道府県から国への意見書を提出したのは愛知県が29年12月、長野県が30年3月。議会で審議したが不採択となったのが茨城県である。区市町村段階では山形市が1である。なお都道府県は把握していなくても64の市議会から提出されている。また、不採択も表に出てこず、茨城県は自己申告してくれたが、4つの県議会、石川、千葉、福井は出せなかった。そして、6月議会でも結論が出るところがある。継続審議になっているのが7つの市村議会だからである。長野県議会も種子の安定供給は審議したものの新たな法制度については継続審議にしている。

 以前に、遺伝子組み換えの反対運動をやっていて、全国の全部の約6割の地方議会からの意見書が出されて国が動いたことがある。この経験をまた活かしていきたい。

基調講演
  グローバル・食料主権・種子法廃止後のたねのゆくえ
京都大学大学院久野秀二教授

Shuji-HIsanoS.jpg アンケートについてのコメントを含めてお話ししたい。食料主権と地域農業、食料・生活について話をしたい。「食料主権」という言葉は農業新聞でも使われている。龍谷大学の西川芳昭教授も言及されているが、食料主権という言葉だけが一人歩きしている。重要な課題であり、普通に話せば90分では終わらないが、種子の仕組みについては兵庫県の担当者が話してくれるのでサクサクといきたい。

 1年前に院内集会でも講演をした。ディスカッションペーパーとして私が発したメッセージはこういうことだ。

「主要農産物種子法廃止の影響は必ずしも短期間のうちにドラスティックに表れるというものではない。主要生産県を中心に長期にわたって現在の体制が維持されるものと思われる。それでも、現在の政治を大きく転換しない限りは、公的種子事業が直面するだろ財政的・制度的な困難な影響は避けがたく、ボディブローのように体力が蝕まれていく可能性がある。しかし、見方を変えればそれだけの時間的猶予が与えられたとも言える。したがって、今後も継続して国及び都道府県の公的種子事業を予算や人員の配置を含めて監視・調査し、彼らが果たすべき本来の役割を十全に果たさせるための働きかけをしていくことが肝要である」

 要するに、ほとんどの県が事業を継続していくと。これは、心強い。とはいえ、根拠法は失っている。

 また、こうも書いた。

「主要農産物種子法廃止は単独の動きでは決してなく、農業・食料分野はもちろん、それ以外の生活関連分野を含む公的セクターや協同組合セクターに対する攻撃を強める強権的新自由主義政策(アベノミクス)の一環であることを理解する必要がある(略)。今回の種子法廃止はその提案者が想定したかどうかはともかく、そのような問題の本質、対立軸の所在に光を当てる契機にはなっているのである」

種子は誰のものでもない

 さて、種子は重要なものである。遺伝資源として捉えてみれば、種子が持っている価値は、農や食料全体を規定する。したがって、「種子を制するものは世界を制する」という表現はあながち誇張ではない。

 そして、種子は誰のものでもあるが、誰のものでもない。多様な遺伝資源は全人類の共通財産である。ただし、それは農の現場だけでなく、公的な働きとの合作であった。野菜等では民間企業の役割もある。要するに、誰のものでもない。だからこそ、社会的な合意の下で管理していくことが大切である。全人類の共有の財産として使いながら守っていくことが必要なのである。

種子法廃止は矛盾だらけ

 さて、種子法の目的や概要、廃止の経緯は一気に飛ばし、その後の動きを見てゆきたい。内外で論じられてきた論点についてふれたい。そして、対立軸として食料主権について述べたい。

 2018062705.jpg まず、種子法は、優良種子の生産と普及における都道府県の役割を規定してきた。増殖制度と種子審査制度とを規定してきた。ここであえて英語にしたのは、こうしたプロセス、現原種、原種、一般栽培というプロセスはノースカロライナ州においても同じだからである。都道府県によって、システムは違うが日本では現場レベルでは様々な制度が作られてきた。このシステムを含めて全てが廃止されてしまった。

 種子法廃止にあたって農水省は「民間事業者が育成した品種が採択されない」と言ってきた。しかし、1986年に制度を変えたことで民間事業者の参加が可能になっている。制度改正によって、色々なプロセスで種子育成に関われるように制度上なっていた。そして、民間企業が育成した品種はいくつかある。撤退した事業者や倒産した事業者もあるが、実際に広がっている。

 けれども、種子法は規制改革推進会議から提案され、きちんとした説明や議論がないままにアレヨアレヨという間に法案が採択され、あわせて12時間で廃止が決まってしまった。

 政府側の説明理由としては、

①現在の種子制度では、都道府県育成品種が優先されることが構造的に避けられない。つまり、民間に対して補助金がつけられない。
②都道府県の枠を超えた広域的・戦略的な品種開発、種子生産ニーズに対応できていない。
③種子の生産供給の体制はすでに安定しており、全道府県(東京都は止めている)に一律に種子事業を義務付ける必要性がなくなった。各都道府県にまかせればよい、というものである。

 国会における質疑では、私や龍谷大学の西川先生を含めて問題提起をした。そして、色々な問題が明らかになったのだがそれは解消されてはいない。そして、政府側は問題ないとしている。しかし、根拠法令がない中で予算をどう確保するのか。国はどうするつもりなのか。また、「都道府県の知見を出せ」というのはどういうことなのか。また、これと連動するものとして品種開発はどうするのか。全国種子計画はどうするのか。それはいずれも不透明で種子法廃止が「規制改革会議」で提起され、生産資材の価格を下げるという文脈の中に無理やり押し込められている。それは疑問であり、本当に農業生産者所得は向上するのか。生産者所得を上げることが廃止法案の目的となっているのだが、それはどうなのか。その上、外資参入の懸念もある。

食料主権には国家の主権と人民の主権とがある

 例えば、日本農業新聞の論説では2017年2月2日には「主食の種子は食料主権の根幹に関わると知るべき」2017年4月15日では「食料主権の後退を許すな。社会的な公共財である主要農産物の種子を守ることは主権を守ることに他ならない」という主張になっている。確かに、種子は食料主権の根幹なのだが、ここで「主権」とは何かを考えるべきである。というのは、主権には、国家の主権と消費者・生産者を含めての人々の主権という二つがあるからである。国際的に使われている主権にもこの二つが混在している。そして、世界的には農業者の遺伝資源を守っている権利が中心課題になっている。つまり、この概念を理解した上で主権のことを理解する必要がある。

種子法だけでなく暮らしを守る公的セクター全体が攻撃されている

 さて、競争力強化支援法の8条で、次に掲げる措置を講ずるものとされている。

 1項は農薬で、政府の説明によれば1から3項は種子ではないとされている。けれども、これは非常にモヤモヤしている。さらに問題視されているのが4項である。このことをさらに、11月15日に出された農林水産事務次官通知でも述べられている。

 農水省も種子が大事であることはわかっている。ただし、官民の総力を挙げて国際競争力を高める必要がある。一律的に義務付ける主要農産物種子法は、官民の総力を挙げた体制の構築と矛盾する。農業を成長産業にしていく。国際競争力にそぐわないものは廃止していく。農協や卸売り制度もあるべき姿と矛盾する。だから廃止する。農協を作り変えていく。こういう一貫にあるのである。ただ種子法だけが出てきたわけではない。今、農業食料、生活に関わる部分、公的セクター、協同組合セクターが攻撃を全体として受けているのである。

成長産業としての農業を応援するので心配無用というのが政府のスタンス

 戦後の食料増産という目的は達成された。変質した。だからいらないというわけである。さらに、直ちに取り止めるわけではなく、農業競争力強化という枠組みの中で事業を続けて欲しいとなっている。

 民間事業者の知見を高める農業競争力強化法が目指すのは、我が国を成長産業にすることである。そして、多国籍企業については「留意されたい」となっている。実のところ、日本企業も多国籍企業なのだが、それは、心配しなくてもよろしいというのが政府の立場である。そこで「心配しないでいただきたい」と言っている。

主要農産物種子法廃止を懸念する声

 さて、地方では13都道府県63地方議会から意見書が出されている。そして、新潟県、兵庫県、埼玉県が主要農産物種子条例を可決している。一方、大阪府、奈良県、和歌山県が審査業務を民間移行する方針を表明している。

 これを受けて、国会でも野党共同で種子法復活法案が出されている。種子法の条文を復活させ、農業競争力強化支援法から「知見提供」規定を削除し、国及び都道府県以外の者の能力を活用したという部分を国内事業者に限定しようというものである。ただし、これは審議しているだけで棚ざらしになるようである。

主な論点1 長期的に都道府県の公的種子事業はどうなるのか

 それでは、論点を見ていこう。第一に懸念されるのは予算である。種子の予算は一般予算に溶け込んでいるために切り分けられない。政府は直ちに事業を取りやめるわけではない。民間事業者への参入が進むまで当面は問題がない。さらに、総務省も予算を配分すると言っている。ただし、状況が変われば見直すとも言っている。農水省も予算を確保する方針だが、長中期的にはわからない。

 各都道府県に対するアンケート調査では、ほぼ同額で事業継続を明記している回答もあるが、県によって違う。ただ17年と18年の2年だけでは変化では見えない。また、県としての責任は継続していく上でかなり苦労がしのばれる。京都府の担当者に聞いたのだが、実態は変わらないとしても、「指定」を「認定」、「審査」を「検査」にするとか言葉を変えて工夫をしている。そして、トーンが落ちている。対応に苦慮している様子が見られる。また、独自の要綱・要領も設けている。

 さて、私は民間との協力は否定しない。大切なのは結果であると考える。そして、各地で育成普及してきた公共品種に対する生産者と消費者の需要がなくならない限り、全都道府県が撤退することは想定できない。ただし、きちんとした社会的な要請、要望を続けていくことが必要である。

 また、民間企業側も、みつひかりのように、独自に生産できる種子もあるが、種子を開発するにあたり、民間企業も公共の種子を必要としている。けれども、民間での品種を普及していくのが政府の方針であれば、長期的には公的種子のエリアが削がれていく可能性はある。

基礎研究と現場での種子確保は切り離せない

 海外の事例を見てみると、民営化が進む中で、公共機関が基礎研究、民間が応用研究という役割分担もが生まれた。けれども、これはあまり機能していない。基礎的研究と現場において優良品種を作り確保していくことは一連の取り組みであってバラバラには切り離せないからである。これを切り離すと弱体化する。両者が一体となって初めて発揮されるのである。

民間を参入させなければ消費者需要に対応できないいというのは矛盾

 次に、民間企業の参入だが、官民を一体となって推進する上で、国は、「家庭内需要を志向した画一的な品種開発を目指してきた。ブランド米を競い合って来た。中食や外食の需要が増え、品質がそこそこであって価格が安いものが求められている。それに対応できない」と述べて来た。「国が画一的というのは何事か」と思う。多様な状況に応じて多様な趣旨を作ってきたのはまさに各地域だからである。そして、外食・中食への需要対応という点では弱かったことは確かだが、業務用米の開発に国も取り組んできたし、それをしてきた県もある。

 また、種子法があるために奨励品種に採用されなかったとも言われているが、それは違う。各県の状況に応じてきちんと対応している種子が奨励品種に採択されてきたのであって、これだけの理由で種子法を廃止してしまうというのは乱暴であった。運用規則の改正で十分に対応できたのではないかと思う。そして、価格についても種子の価格は上がるであろう。

Kazunuki_OhizumiS.jpg そもそも国際競争力の強化とは何か。宮城大学の大泉一貫(1949年〜)特任教授は、規制改革海外のメンバーでもあるのだが、2017年10月の『農業と経済』にこう書いている。

「この農政は、輸出などの農産物市場開拓を目指し、経営者重視の構造改革推進に重点を置いており、それまでの稲作偏重、その根源にあった兼業農家維持の保護農政とは一線を画している」

「市場に敏感な農業生産の構築が重要」「まずもって稲作偏重、兼業農家維持政策の象徴でもあった計画経済で作付けがなされるコメの生産調整を見直す必要」

「実質的に地域組合と化している農協に攻めの農政の隊列に加わってもらう必要(これが農協改革)」「グローバルフードチェーンの構築が必要である。海外で売ろうとする輸出事業者が国内産地と結びつきを強化し、産地・物流・販売事業者・海外消費地の全体がつながる仕組み」。

 そして、意思決定に関しては「農水省(食料・農業・農村審議会等)に限らず当該省庁の審議会の旺盛院はステーク・ホルダーの集まりで、審議のベクトル報告は現状維持か保守的なところにとどめる傾向」「農水省に期待しつつも、現状では規制改革会議や未来投資会議、国家戦略特区のような機関が牽引するよりほかないということ」。つまり、どうしても保守的になってしまう。だから、強引に牽引するしかない」と述べている。

 けれども、そもそも国際競争力の強化と農業の成長産業化とはどういうことか。

Hiroshi-Isoda.jpg 所得階層別に世界的な規模で再編が進む農産物・食料消費市場に合わせたバリューチェーンの階層別再編(富裕層向け、中間層向け、貧困層向け)に日本農業を投げ込むものである。そう解釈されているのが、九州大学大学院農学研究院の磯田宏准教授である。

 なるほど点は育つかもしれない。そして、施設型の植物工場は点でもよい。しかしながら、グローバル市場競争に参画できる一部の農業経営者を重点的に支援する一方で、大多数の農家・農村知識を切り捨てる政策であり、点を育てるために面をないがしろにする政策である。とりわけ、耕種型の農業は面がないと持たない。ところが、そうしたところに目がいっていない。

 さて、グローバルなものとしては、国際貿易のシステムがあるが、消費者は、環境、安全、倫理にも関心がある。こうした動きがローカルからも生まれている。それがメインストリームの企業が取り組んでいる。小さな農業と共存する、アントレプレナーマインドを持った人も少なからず生まれている。そうした人の感覚からしても今の農業政策はおかしい。

 そして、日本農業が持っているものは、あるべき農業を作り直す意味では可能性を持っている。そこで同時にそこに光をあてることを考えることが大事である。種子だけ守ればよいといことではない。

kagawaS.jpg 龍谷大学の香川文庸(1967年〜)教授は2018年1月2日の『産業と経済』で「多様な経営様式がかみ合うモザイク型農業像による未来:大規模経営・営農組織と「小さな農業」の支えあいによる地域農業の維持」を提唱されている。

なんで廃止されたのかもよくわからない。よくわからない。イデオロギー先行の動きだったのではないか。国際競争力を絶対という人が、地域農業切り捨て、公共財の払い下げの一環なのであろう。

対抗軸としての食料主権論の意味と可能性

 さて、食料安全保障についてFAOは何度も改定をしているが、「すべての人がいかなる時にも活動的で健康的な生活のための食生活の必要と嗜好に合致した、十分で、安全で、栄養のある食料を物理的、社会的、経済的に入手できるときに達成される」としている。栄養、社会的、物理的という要素が入っている。これはおそらく、食糧安全保障の定義としては最高の到達点なのであろう。けれども、これに対して、「食料の入手機会の向上」を入れた点は評価するとしても、政策のあり方として、どのような食料がどこで誰の手によって生産されるのかという構造的な視点が欠落していると批判したのが、ビア・カンペシーナである。

 この団体に加盟している農民連の真柄良孝氏は、わかりやすくこう説明されている。

「すべての国と民衆が自分たち自身の食料・農業政策を決定する権利」より具体的には「すべての人が安全で栄養豊かな食料を得る権利であり、こういう食料を小農・家族経営農お民、漁民が持続可能なやり方で生産する権利」であり「多国籍企業や大国、国際機関の横暴を各国が規制する国家主権と、国民が自国の食料・農業政策を決定する国民主権とを統一した概念」である。

 権利は、義務と一対の関係性の概念である。しかし、基本的な人権は無条件に与えられた権利である。そして、その権利主体は国民で義務主体は国家である。国家が責務を負っているとしたのが「国際人権法」の体系なのである。私に言わせれば、食料主権は政治的なスローガンである。国際的な論点が大切で、大事なものは国連人権理事会である。

 2018062701.jpg 国家の主権は大事である。投資の自由化も大事である。しかし、国民である消費者不在、農民不在の国家では意味がない。食べる人の権利を守るのは国家の責務である。主要農作物種子制度も国家の義務である。そして、この法制度はその役割を果たしてきた。種子だけでなく、どのような農業、社会を目指していくのか。そういう議論が大切な時である。

 最後に何をすべきか。

第一は主要農産物種子制度の役割・意義を正しく理解することである

 ・公的種子事業の必要性を国・都道府県に訴え事業継続を応援する

 ・各都道府県の主要農産物種子事業に対する予算措置を継続的に監視する

第二は地域と日本農業を守る運動と一体となって種子を守る運動を進めることである。

 ・日本の自給率はコメ98%、小麦15%、大麦・裸麦9%、ダイズ7%である。

 ・在来種を守る取り組み、タネ採りの取り組みや有機農業の実践とも連携を強めつつ公的種子事業を守る運動について裾野を広げる努力をする

 ・公的制度を民主的に再構築しながら守り、政府に本来の責任を果たさせる

第三に種子法廃止の背景にある政治経済の流れを理解することである

 ・農業・食料分野をはじめ、公的セクターや協同組合セクターに対する攻撃を強めるアベノミクスと批判を弱めるための全体主義的風潮に対抗するため、市民的・政治的な連帯を強めることである。

兵庫県種子生産条例報告
 兵庫県農政環境部農林水産局農産園芸課寺尾勇人氏

 兵庫県のPRをしたい。兵庫は但馬、丹波、攝津、播磨、淡路と5地域からなっている。そこで営まれる農業は人口550万人の大消費地であり、農家数も全国3位の農業県である。山田錦、酒米が全国シェア1位である。丹波黒。黒大(くろだい)。関西では必ずおせちに入っている。これは大豆として食べるが枝豆として食べても絶品である。淡路島の玉ねぎも全国3位である。北海道産に比べたら本当に甘い。肉用牛もトランプ大統領も食べた但馬牛というブランドがある。

 さて、県が担って来た役割は奨励品種の指定。地域の気象や土壌条件に適したものにお墨付きを与えている。二つ目が原原種と原種を生産する義務を県が負う。三つ目が種子生産ほ場の指定で、県が指定している。四つ目がほ場と生産された種子の審査である。そして、農業改良普及員が「異形」なものを確認して審査する。特定の病気や雑草が入っていないかどうかも審査する。例えば、種子伝染性で「バカ苗病」があるがそうしたものがないかどうかをチェックする。また発芽率もチェックする。

 奨励品種は原則3年は調査しなさいとなっている。また、奨励品種の決定は関係者が入って審査していく。

 品種育成では10年とかの歳月がかかり、これができたものに対しては品種登録が行われる。育成者の権利も与えられる。それを勝手に増殖したりはできなくなっている。

 そして、奨励品種として定められ、やっとここで種子が生産される段階となって、やっと一般農家の元に届くという流れになっている。つまり、何年もの年月がかかる。

 ただし、これはあくまでも奨励品種制度での場合である。奨励品種に指定されなくても種子生産は可能である。つまり、この枠外でやることもある。ただしその場合、種子の品質は自己責任で販売することになる。

 奨励品種になると有利なのは、栽培適性を県が保証しているし、栽培ごよみもあるからである。兵庫県の奨励品種の一覧は以下の通りである(略)。

 それでは、なぜ種子法は廃止されたのだろうか。国の言い分はこうである。

「農業の戦略物質である種子については、多様なニーズに対応するため、民間ノウハウも活用して、品種開発を強力に進める必要がある。しかし、都道府県と民間企業の競争条件は対等になっておらず、公的機関の開発品種が大宗を占めている」

 確かに、県が開発した品種と国が開発した品種をあわせるとほとんどが国と県であることがわかる。奨励品種に限って言えば、民間の開発品種は2品種だけ、JAグループが開発したのと個人が開発した品種である。この事実は確かにある

条例の制定について

 なお、普通、条例制定には半年から1年がかかると言われているが、作り始めたのは今年の1月末になってからである。僕の前任が1月で作利上げ議会にあげて施行された。担当者は、奥歯が欠けたと言っているが、なぜ条例にしたのかというと県知事からの指示があったからである。要綱では簡単に廃止できないようにしたということである。

新潟のたね場より現場からの声
 堀井修氏

県議会の質問から知事は条例制定を決意

 2018062702.jpg「保守的になれ」とトランプ大統領も良いことは言っている。新潟県は良い知事を選んだのだが、原発を動かすかどうかの論点で負けてしまった。我々が押している女性候補が「断固原発を動かさない」と言えばよかったのだが、検査するとか言ったので対抗馬も似たようなことを打ち出して焦点がボケてしまった。新知事はさっそく霞が関に「いかがしましょうか」とお伺いを立てている。政権与党にとっては良い流れになっている。

 種子法の条例については、12月の県議会である議員が質問をしたら「新潟県は全国一のコメの生産地であり何としても守っていかなければいけないので条例は作ります」と知事が答えたからである。1月から条例作成の準備に入ったということで担当者はそれなりに苦労されたようなのだが、始めたのが早かったのに兵庫県に3日遅れた(笑)。

 さて、大きな問題点はこれからである。主管省庁は「ヤメよ」と言っている。そして、「奨励品種」という言葉も出た。そして、新潟の名前がついた「コシヒカリ」というバカな品種がある。何が馬鹿げているのかというと、同じコシヒカリと言っても微妙に違うからダル。地域地域にコシヒカリという品種はあるのである。なんでそのようなことが起きるのかというと、育種をした人間に聞いたところ、イネは育てていれば地域地域で自然にその地域にあったものに変わって言ってしまうと。地域・地域で作っていくことが大事であると。例えば、種子法を活用することで北海道は総力をあげて美味しいコメをつくり出した。新潟よりもうまくかつ値段も高いコメを作るようになった。これが地方自治であろう。均一化してどうするんですかと言いたい。そして、業務用がないというが、そのようなものはとっくに作られている。そして、コシヒカリは美味だけれども収量が取れない。一番のブランドは魚沼である。1俵、2俵が3000円するが、コシヒカリは8俵しか取れない。一方、今でも15、16俵取れる飼料米がある。改良すれば収量は取れるけれども地域・地域の問題点が非常に大切で、量にしても味にしても出てくる。

 この会場で値段が安くてもいいという人はいますか。けれども、農家もそれで生活をしているんだと。例えば、この15年でコシヒカリの値段は3万円から1万5000円に半減している。そこで、面積を増やせと国は言っている。けれども、実際に広くやるための農業機械は高い。規模拡大したところは、今年から止めている。つまり、国はでっかくしておいて頭を殴るという卑怯なことをしている。我々にとって種子法の廃止は、良いものを作ろうとする努力を妨害をするものであると。地域の独立性を無視することが一番の問題だと思う。

F1やターミネーター種子

 さて、これまでのお二人のお話で欠けているなと思ったのは、民間が新しいコメを作るとしたらどうするか。こっそりと自分で山の中で作れる。そして、地域・地域で同じものを作っていても同じものにはならない。そういう性格があるんだ。それでは民間は儲からない。そこで、ハイブリッド、F1を作るんですよ。種子屋からF1を買ってきてもバラバラのものになってできない。いま野菜でそれがやられているんですよ。トウモロコシ。作って美味いなと思って撒いても獲れない。そういうふうにさせられているんです。それを麦、大豆、コメにしようというのが問題なんですよ。そこが理解されていない。

 遺伝子組み換えによって芽が出ないというとんでもない種子ができている。2000年にWTOの反対でシアトルに行った時に、米国の友人から「ターミネーター種子というのがあるよ」ともらって農水省に持ち込んだんだが、「なんでお前がこんなのを持っている」と言われたのだが、これは撒いても腐るだけ。

 自然は違う。例えば、子どもは親と似たようなものはできるけれども親とは違うでしょう。それが自然の摂理なんですよ。田んぼの中で一番いいものを選ぶ中でいまの種子はできてきたんですよ。

種子法は強化されパテント料を百姓は奪われる

 そして、種苗法は廃止されていない。むしろ強化されている。パテント料を払いなさいと。このことをずっと免れていたんだな。百姓は。今度はそうはいきませんよと。

 だいたい、種子法が廃止されても安い種子にならない。調べてみたら「みつひかり」は、だいたいコシヒカリの10倍だ。野菜の種子はそうなっている。家庭菜園ならば10粒300円でいいが、農家が1000単位で買うと高い。

食料主権は国のものではなく国民のもの

食料主権は国のものだけでなく、国民のものでもある。北朝鮮が危ないとかいって何千億円を投じているが、その前にやることがあるでしょう。これが食料主権なんですよ。それが種子なんです。芽がでないタネ。本当にこの問題をどう考えるのかです。

三井化学アグロの取材報告
 フォーラム運営委員 高澤 裕考

三井化学アグロの取材をして来た。民間の参入で言われているのでどういう形態なのかと。みつひかりはダントツで普及している成功例であると。そこで、拡大するチャンスかと聞いてみたのだが、結論から言うと三井化学アグロはチャンスだとは思っていない。それどころか、種子法があったからといって妨害されていないと。三井化学が政府と組んで廃止させたことが言われているが非常に戸惑っていると。F1はすごく手間がかかる。自家受粉と他家受粉があるが、コメは一つの中に雄しべと雌しべがあり、放置しておくと親と同じになる。それをあえて合いの子を作るのは非常に手間がかかると。効率が悪いため事業として成功していない。利益があがっていないと断言していた。

すると、脇にいた広報の人があわてて「利益については答えられない」とお茶をにごしていた。つまり、ハイブリッドで入ってくるとは思えない。民間の参入も1986年から参入できるし、その後は、販売してもいいのがなっているし、妨害はされていないと。どちらでもいいと当社としてはと言うことであった。

パネルディスカッションと質疑応答

 2018062704.jpg久野秀二教授 種子事業を担う改良普及員や試験場がどのように変わるのか。今後、品種開発がどうなっていくのか。種子の増殖体制を含めて生産者との関係を知りたい。

寺尾勇人氏 品種改良に関しては種子法が定めてきたものではないので、兵庫県は変わらないと思う。県では、農林水産技術総合センターが品種開発を担っている。品種開発の育成に取り組んでいるが、種子法が廃止されたとしても変わるわけではない。アンケートでも抱えてもらっているが、JAとも連携してオリジナル水稲品種を開発しようとしている。流通面でも実需者のニーズはJAが知っているのでアドバイスをもらいながら進めている。

堀井修氏 私も普及のOBで普及員をやめてもう30年になるが、新潟県だと原原種だけで740㏊もある。全体で13万㏊もあるから、どれだけ発芽するかが問題だ。バカ苗病は農薬で防げるが変わった個体は取り除かなければならない。

 この供給部分を断とうというわけだからとんでもことをやろうとしている。育種と供給とは切り離せない。ここを切ってしまえば農業試験場がいらなくなる。かろうじて残っているが県の自由裁量である。それは、法律があるので回していた。大阪はもうやめたと。東京はとっくにやめている。けれども、東京だって島にだって百姓がいる。多摩にだって百姓がいる。1、2年は変わらないが、数年先に変わる可能性が出てくる。それは地域自治に関わっってくるのではないか。

久野秀二教授 4月の農業新聞の記事によれば、大阪府、奈良県、和歌山県が一部の事業を関係団体に委ねるとあった。ただし、この3県はコメ生産では大きくはない。奈良も104戸、和歌山は4戸、1.7㏊。大阪もほとんどない。そういう県がどれだけあるのかわからないが、これから他県との連携が求められるのだろうか。富山県は他県にも種子を提供している。そして、富山、石川に次いで兵庫が提供している。県の連携の可能性はどうであろか。

寺尾勇人氏 「種子の生産が可能か」ということは聞かれたことはある。ただし、具体的にどこかに提供するという話はないが。もちろん、他府県に供給していきたいという思いはある。しかし、種子生産農家も高齢化している。一気には増やすことはできない。原原種や原種は圃場も限られており現実的に増やしていくことは難しい。具体的な話はまだないが担当者としてはそう考えている。

圃場審査を半分が止めた事実は現場にはショッキング

司会(高澤裕考) では、寺尾さんの方から質問を。

寺尾勇人氏 堀井さんに質問です。私も以前は普及員をしていたが、いま本庁に来ていて現場から離れている。種子法廃止に対して現場の農家の声はどうなのだろうか。それを聞かずに兵庫県では「条例作らなあかん」としたのだが。

堀井修氏 農家は変わらんだろうと。けれども、今回配られたアンケートの4pを見て唖然とした。半分しか圃場指定をしないと。実際に芽が出なかったら大変だ。千粒で何グラムとか農協を通じて生産して売っているのだが、今は現場は他人毎だ。けれども、この4pの情報は「おい、他人毎ではないぞ」と使える。新潟は740㏊も原種を作っているのでいいデータをもらった。新潟は24の農協があり、全農内に種子協会がある。種子協会に知らしてあげなきゃならんな。ある日突然になくなって驚くと。

寺尾勇人氏 また、圃場指定をするか続けるかという議論が県内でもあったが、「兵庫県指定」という看板が立つのは農家の誇りにもなり、それでやってもらっているので、なんとか維持させてくれと。日本ではこういう仕組みがあって公的制度があったわけだが、諸外国はどうなのだろうか。次に久野先生にお聞きしたい。外国の何か知見があれば参考にしたい。

欧米でも主食の種子は公的に守られている

久野秀二教授 全てを詳細に調べているわけではない。そして、欧米では小麦が主要作物だが、例えば、米国ではビジネスが先行しているイメージがあり、大豆はほぼ100%がGMOになっているのだが、小麦については各州で作られている。例えば、州立大学。土地交付大学という19世紀に作られた制度、エクステンションセンターが重要な役割を果たしている。もちろん、これは、品種改良のレベルだが州それぞれがやっている。民間育成品種を含めて今でも小麦については公的機関がきちんとやっている。

 カナダでも公的機関が品種改良を含めてきちんとやっている。オーストラリアでは規制緩和や制度改革によって民間化が広がっている。

 米についてはアーカンソ州とカリフォルニア州で生産されているが、カリフォルニア州は以前は公的機関がやっていた。今は生産者団体がやっているが。要するに、公的機関、生産者団体、農協といったものが果たす役割は大きい。そして、それを民間化することのメリットとデメリットが議論になって来たと。そして、いまどう維持していくかが議論されている。

小規模なムラを守るためにはどうしたらいいのか

堀井修氏 久野先生に是非お伺いしたいのだが、今の時代の言い分は安くである。そこで、規模拡大しなければならない。集中できるところはいい。私の集落も63戸で80㏊の水田があるが、それは6戸に集中している。確かに10㏊程度でやっている。一番大きいのが15㏊だ。けれども、その家も、お母さんは勤めており息子は後を継いでいない。兼業農家ということだ。そして、80㏊はたった一人だけではやれない。水管理ができない。今の農政はどうもムラがなくしていくように見えるのだが。これに対して妙案は。現状はよく分析されるのだがどう対処したらいいのか先生のお考えを。

人と自然の境界領域の里山の守り手が必要

久野秀二教授 農業経済学として、現場から離れたところで仕事をして来たので私の同僚が聞いたらバカにされるかもしれないが。要するに、一部の担い手に集中するしか生き残れなくなっている。けれども、畦道の管理や水管理がいるし、里山という言葉も古くからあり、それは、国際的にも着目さている。つまり、人と自然との境界領域に文化や自然があり、それが管理する人がいなければそれは継承できないと。そういう人を含めて生産にかかわってもらう。生活空間を守っていく必要がある。

 では、どのように各地域でそれを守っていくのか。そのことを議論をして取り組むべきである。国も集落営農ということで推進はしている。けれども、東北と西日本とでは実態が違う。地域農業を維持していくために農業生産法人として経営としてもまとめていく。そういうものが色々な社会的機能を果たしていく法人として期待されているのだが、協同組合セクターも経営体としても維持しなければならないため苦労している。要するに、たとえ法人化してもビジネスだけでなく地域社会を守ろうとしている人たちはいる。そういう人たちをサポートする政策が求められる。

 もちろん、農水省も推進しているし、兵庫県も進めているのだろうが、地域から切り離された担い手は生き残れない。また、そうしたグループを消費者としても支えていくことが大切ではないか。このように農村を守る中で種子も守られていくのではないか。

会場質問 イネの話はわかったが、丹波黒のタネはどうなっていくのだろうか。

寺尾勇人氏 在来種で品種登録されていないものを保存していくのは難しい問題がある。「これが黒大豆や」と言って売っても誰も規制できない。品種登録されていないし、種苗法があっても昔からある品種なので。実際に、丹波黒とはとても言えないものが売られているということなので、優良系統は、カワキタ、ハベグロ、そして、県が開発した兵系黒3号。これだけを丹波黒と言いましょうとしているが、何分、丹波地域は京都にもまたがっているので。

ジーン・バンクか現場保存か

吉森弘子氏 ノルウェーが有名だが久野先生にはジーン・バンクのことをお聞きしたい。寺尾さんには先進的な独自の条例づくりがなぜできたのかを聞きたい。国に対してどうこう言えないとしても制度を廃止した県もある。そして、堀井さんには高齢化で田んぼが減少していく中で、小さなコミュニティで種子の多様性を維持することは大事だと思うのだが、どうすれば農業が小さくなっていくことに歯止めをかけて巻き返せるのかをお聞きしたい。

久野秀二教授 西谷先生が一番のご専門かと思うだが、種子の保存はつくばの研究機関を含めて、大学が分担してやっている。北海道にも大きな遺伝資源貯蔵庫がある。京都府は亀岡にセンターを持っている。ただし、生産から遊離した冷蔵庫のようなところで保存するものである。いくら技術が進歩したとは言ってもそれは確実ではないし、同時に作り続けることによって遺伝資源は守られていくという考え方もある。確かに、多様性を作り出すのであればそれは作り続ける中でのみできる。もちろん、その中で失われるものもあるが、もともとそういうものだ。そして、その中間が広島県のジーン・バンク。保管されているものの一部を現場の元に返す。西川先生が野菜で紹介されている事例だが。

種子条例を制定しても国からはクレームはなかった

寺尾勇人氏 県の状況は私はよくわかっていないが、冷蔵庫のような保管もしているが一部はタネを播種することで保存している。

 さて、条例制定にあたって議論があったのかというご質問だが、国からは特に何か言われてはいない。「作ったらあかん」とは言われてはいない。ただ民間参入を促進するために廃止したということから、法を超えていないかどうかを文章課がチェックして民間参入を阻害しないような内容にはしている。ただ、種子生産には専用の乾燥機、コンバイン等が必要なのですぐに民間が参入するとは考えられない。

堀井修氏 すでになくなってしまっている種子もある。例えば、神楽南蛮(かぐらなんばん)という種子は作り続けると劣化していく。混ざるに決まっている。理論的には温度と湿度がコントロールできれば100年は持つとされているし、それは大丈夫であろうが。

 農水省の高官から聞いたところでは、元事務次官が後継者を指名したのに官邸から相手にされなかったと。次の事務次官は経産省から来るんじゃないかと。で、私は新潟県で有機農業をやっている農家の事務局もやっているが、1㏊とかを作れるわけがない。大規模化できない。そういう価値観でやっていく必要があると。じいさんばあさんが健在なうちは。ここ20年は家が減っていない。わかりやすいのが色々なものを作ってみる有機だ。

会場質問 種子法の廃止によってバイオメジャーが席巻するようになるのではないか。10年、20年後にそれが懸念されるのではないか。久野先生に解説を

久野秀二教授 レジュメの16pにも書いたが、日本モンサントが「とねの恵み」を消費財化しているが、コメは容易ではない。バイエルは農薬企業として重視している。シンジェンタはハイブリッドを開発しているが、これはインディカである。ダウ・デュポンもハイブリッド品種(長粒)だけである。

 BASFも開発して米国では一定のシェアを得ているが、これは日本人好みのコメではない。彼らが得意としているのは大量生産型モデルなので、日本では多国籍企業にとっては旨味のない市場。みつひかりが苦労されているがそれは旨味がないから。だから、参入しない。消費者の嗜好を変えれば入る余地はある。彼らが作っているのは食料ではない。日本の今の農業に入る余地はない。ただ、セグメント化した小さいなところでマージンを取るというビジネスモデルがあれば入ってくる。

 ただそれでも残る懸念は過去の事例である。公共品種があっても安心はできない。大豆がそうである。イギリスの小麦もそうだ。ただ、日本のような小さな大豆、実需者がある以上は米国で起きたような事態は想定できない。

高澤裕考氏 今後どうなっていくのか。いくつかの県は条例を作ったりしているが全部の県の義務はなくなった。条例や要綱をいくつかの県が作っていくことでこれまで通り進められるのであろうか。

寺尾勇人氏 しばらくは変わらない。条例を策定したのも、まずそういうことはないのだが、例えば、新しい部課長が来た時に要綱だけだと止めろと言えなくもないからだ。そして止めた県は他府県から種子をもらうことになるのだろうが、種子農家も高齢化で担い手不足だ。畢竟、民間が種子生産を行うことになる。ただ県が審査しないと品質も不安になる。圃場も純粋性が保てない。民間は利益だけを追求するためだ。

高澤裕考氏 民間がカバーできないものは残るのだろうか。

寺尾勇人氏 根拠はなくなったが今の都道府県で残す必要があるものだと考えている。

堀井修氏 基本的に全部の県が条例を作るべきだと思っている。主食が米である限り守っていかなければならないだろうと。こんなに廃止案を通すとは思っていなかった。一昨年の2月だよ。私が気づいたのは。民間がやろうとしているのは三井化学の話が出たが私は嘘を言っていると思っている。野菜でF1を作ったのは雄性不稔で作っているんだから。農水省も不可逆的に後戻りできない状況にしておいて、OBとかをヘッドハンティングして、貯蔵体制ができているわけで。そういうわけで皆さんも真っ当なものを食わせろ声をあげていくべき。全体の市場原理主義。その一局面なのだと。報道もない。誰が悪いというよりも一般市民の無関心が問題だと思う。食料への権利をこれからも大事にしていく。できるだけ大事にしていく。自分の問題として取り組んでいくことが必要かと思う。

【画像】
久野秀二教授の画像はこのサイトより
大泉一貫特任教授の画像はこのサイトより
磯田宏准教授の画像はこのサイトより
香川文庸教授の画像はこのサイトより

(2018年6月27日投稿)
posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 講演・学習会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月26日

国際連帯で種子を守る

はじめに

 NPO法人アジア太平洋資料センター(略称:PARC)という団体がある。NAGANO農と食の会では、3月17日に山田正彦元農相と印鑰智哉氏を講師に学習会「ママ、これ食べても大丈夫?」を開催した。そして、会場ではドキュメンタリー映画『種子からみんなのもの?それとも企業の所有物?』を上映した。実はこれを製作したのがPARCであり、映画の編集監督をしたのが印鑰智哉氏である。同映画は3月末に都内で完成記念上映会が開かれたのだが、PCRCの内田聖子事務局長の好意で、試写会に先駆け愛知と同日に全国で初上映できた。このPARCの主催で印鑰智哉氏を講師とした種子に学習会が都内で開かれる。これは、聞かなければならない。ということで上京して講演を聞いてきた。インスパイアされることが多くあり、実りある出会いもあったのでわかちあいたい。

なぜ種子の学習会なのか?

 アールセップの中間会合が日本で行われる。これはTPPともかなり重なる自由貿易協定なのだが、政府が情報を出さないし、メディアも扱わない。そこで、アールセップの問題の関係で、国際NGOグレインからインドネシアのカティーニ・サモンが来日され、デモをしたり市民社会の声を交渉に届ける努力をしようとしている。インドも農民運動が強く、ハイデラバードで交渉があった時も1000人ぐらいの農民が参加していた。

 そこで、これと関連して反GMO、アグロエコロジー、種子等の活動をするためにこうした企画を考えた。インドのシャリニ・ブタニさんも来日を楽しみにしてビザを取っていたのだが、父親が脳梗塞で倒れた。そこで、話してもらいたかった内容をビデオ録画で放送できないかと相談をして水曜日にネットでインドとつないでビデオ会議を行い、それを録画して字幕をつけた。彼女のレクチャーは30分だが、印鑰智哉氏と農民連の斎藤敏之氏の解説をしたいと思っている。

シャリニさんのビデオ放送要旨

バイテクではなくこれからは伝統の知恵とアグロエコロジー

Shalini-Bhutani.jpg 公正なフードシステムのため、フードやシードで日本と交流が可能である。1995年のWTOによって、インドは最低基準を強いられた。そして、25年が経過したが、それをはるかに超える経済システムが登場して来ている。インドにはローカルのシード・システムがある。日本もプライドが持てる食があるが、インドにもアグロバイオダイバシティがあり、バイオカルチャーがある。種子は中心で神聖なものである。今も無料である。

 1996年に種子法が出来たが、それは種苗を規制していない。高収量種子にだけ適用されるようにしている。しかし、新世代の種子法は、農民の種子保存を規制する可能性がある。これがインドの市民社会が懸念していることだ。

 また、2002年にBTコットンをインド政府が認めた。環境省が科学技術省の協力を得て認めた。そして、食用GMOを入れる動きがある。GMO唐辛子やGNOナスである。けれども、これからは、伝統の知恵、アグロエコロジーが大切である。忘れられてきた農民の血をローカルカルチャーを取り戻すチャンスである。

インドでは日本政府がISDで訴えている

 インドには農業セクターで活動している日本企業がある。2006年現在、350社がある。クボタ・インディア、タキイ、サカタ、JTB等。そして、アジア・ジャパニーズ・バイテク・アソシエーションは、インド環境省と関係している。昨年、日産がIDS条項でインド政府を訴えた。

マネー化を克服せよ

 インドでは農民自身が知的所有権を登録できるようになった。けれども、これが農民の間で分裂を引き起こした。我々は、植物品種保護法の外側にあるべきものを探るべきだと思っている。ソリダリティ。エシカル。食文化。ダイローグが大事である。そして、種子バンク。何十万という種子がある。そして、自分たちでやれることもある。都市農業、ベランダ農業だ。

日本での種子問題~国際連帯でどう種子を守れるか?~印鑰智哉氏による解説

種子の権利を守ってきたインドに学ぶべき

 皆さん、シャリニさんのお話を伺ってどうだったでしょうか。僕は「すごいな」と。本当にこれまで、インドの運動を追って来たのだが、すごいなと。これからの日本社会を支えるためにもインドにいって学ぶしかないなと思っている。

 インドでは種子企業がモンサントに買収され、BTコットンが農家が莫大な債務を課してそれで農民が自殺している。そうした非常に困難な状況にある。そこで、やられた方ばかりを見て来たのだが、逆に政府に対して種子の権利を認めさせている。日本よりもインドの農家の方が勝利を治めていると。そこから、学ぶことが多いなと。

生命の特許権を認めていないインド

 生命の特許。アジアの農民たちが何千年もかけて育成して来たものが生命の権利、種子の権利となり、それが一企業だけに認められる。特許はもともと工業製品に認めることなのだが、それを生命にも認めるという異常なことを米国政府が始めてしまった。そのことを日本もEUも認めている。そして、米国は普通の種子にも認めている。だから、遺伝子組換え大豆の研究すらできない。一方、EUは普通の種子に対しては認めていない。けれども、インドはいずれも認めていないのである。

 さて、種子と国際連帯を考えたい。UPOV条約が1961年に作られ、当時、種子は農民たちの特権であったのが、1991年に否定された。しかし、インド政府は批准していない。とはいえ、WTOTRIPS条約(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)を結んだ。

 そして、種子企業は膨大なロビー活動を行い、同時に世界各地の種子企業を買収していく。世界の南の地域では、例えば、アフリカでは市場に依存しない農家が9割もいる。しかし、そうではない多くの地域で、遺伝子組み換え企業によるモンサント法案が襲って来ている。

 日本ではTPPを国会が批准したため、廉価な農産物が入ってくるがそれだけではない。1991年UPOV条約への参加も義務付けられている。この条約では国内法によって農家の種子の権利を制限しなければいけないのである。

 日本の種子政策の変遷を見てみると、1998年に育成者の権利を認める。種苗法は種子の権利を奪うことが法制度的には可能になっている。たねを分け合う時、それが、企業の種子であれば共謀罪となる可能性がある。そして、1999年の特許法の改正で遺伝子組換え意外の植物も特許の対処となった。育成者権利、特許は非常に強い権限である。

二つの法律から一つの法律へ

 さて、いま、日本では種苗法だけになっている。これは、企業の権利、開発した側の権利を守るものである。農家の権利を守るための法律ではない。種子法は国や都道府県の役割を明確にした法律である。それがない以上、行政の責任はどうなっているのかというと、無政府状態になっている。種子法の流れを見てみると、1991年に25年だけの新品種をカバーする法律を制定したものの、それ以外の種子を保存するものがない。そして、1998年以前は自家増殖には育成者権が及ばないこととしていたが、例外を減らしている。2004年から研究会で検討をしており、それを2018年に日本農業新聞にすっぱ抜かれた。

世界の動きとまったくズレている日本

 日本の遺伝子組換えの承認件数は2018年1月2日段階で309。米国はザルの可能性もあるので197だが、インドはBtコットンは認めたものの11でしかない。遺伝子組換えマスタード、ナスがあるが承認されていない。

 日本ではこうしたことをしていたら種子の多様性が急速に失われてしまう。コメも300種あったのは風土に適した品種を種子法が守って作ってきたからである。多様性を失うことは生態系を失うことで病気に強い品種を失うことでもある。

 さて、生物多様性条約、遺伝資源条約は144カ国が批准しているがUPOV条約は56カ国しか批准していない。どの国も遺伝資源の条約の方が大切だと思っている。そして、この条約は遺伝資源を守って来た主役は農民であると明記してある条約である。そして、種子では農民の参加する権利を政府が保証しなければならないとなっている。農民の意見を聞かずに種子法を廃止したことは国際条約違反なのである。

 また、来年から国際家族農業の10年が始まる。力強い企業的農業みたいなことを言っている政府は日本ぐらいしかない。だから、国連総会でも決まったのは家族農業だったのである。そして、小農及び農村で働く人々の権利宣言が採択されようとしている。この中で種子も重要なものになって来ている。これを日本政府は妨害しようとしている。

 確かに種子企業はヨーロッパが強く、大手3社はヨーロッパである。けれども、EUでも有機農家の種子売買を承認できるような決定をしようとしている。日本はまったくこうした動きに無頓着である。日本がカバーしているのは種苗法だけである。農家の種子を守らなければいけない。

フェミニズムなくしてアグロエコロジーはありえない

 インドではNavdanyaが124ものコミュニティ・シード・バンクを設立し、インドの22州でコメだけで4000品種も集めている。ただ種子法を復活させよと言ってもダメである。各都道府県も種子を守るという宣言をしていく。すでに3県が条例を作っているが、こうした条例を作ることが大切である。最後に今日の集会のタイトルでもあるのだが、女性の権利が種子とは密接に重なっている。女性たちはもともと力を持っていた。近代農業が女性の役割を周辺化、排除しタネと命を商品化したのである。アグロエコロジーはフェミニズムなしにはありえない。Sem feminisumo nao ha Agroecologiaである。

会場との意見交換

 札幌から来た安川誠二です。日本農業新聞の記者をしております。北海道も条例化を検討している。コメ麦大豆である。そして、道の農政部が考えているのは小豆である。ただし、農政部のスタッフも少なくマンパワーが少ない。新しいルールは作ると言っているが、条例を作るとまでは言っていない。公的種子事業をきちんとしてもらいたいと思っている。東京からの皆さんの声もプレッシャーになるかと思います。

内田聖子 みつひかりは最初は成果があるが環境に負荷があるのではないか。5年、10年たつとどうなってしまうのか。

斎藤敏之 3年ぐらいで収量があがらなくなる。また、倒伏を防ぐために茎がしっかりしているためコンバインの歯がダメになる。印鑰さんが話したようにそれが思ったよりは広がらない理由だ。

内田聖子 そうした現場の情報は本当に役に立つ。

韓国との交流でUPOV条約のすさまじさを知った

20180623saitoS.JPG斎藤敏之氏 私は船橋の野菜農家である。韓国の女性農民会との交流がきっかけで種子法に関心を抱くようになった。韓国では以前には数多くの種子屋があったが、それがあっという間に外資系に吸収された。10社になってしまった。そこで、外資系から在来種子を守らなければならないと言う意識が高まった。

 自分でも、種子法が廃止されるまではどれほどすごいことをしていたのかを意識していなかった。あるべきものだと普通に思っていた。

 さて、4年ほど前に生物多様性条約の関係で外国に出かけた時に「日本は守られているので大丈夫です」と言った記憶がある。ただ「おかしいな」と思ったのは、千葉県には「オオマサリ」という大粒の落花生があるのだが、この種子を買った時に、「自分で作る分には良いが、それを有償で人にわけてはいけません」と言う誓約書を書かされたことだ。

 さて、印鑰さんから種苗法の説明があり、韓国に出かけた時に初めてUPOVという国際条約があることを知った。そして、大変なことであることがわかった。ビア・カンペシーナとはずっと付きあって来たのだが、インドネシアの人とも話をしたのだが、ずっと調べて行くとUPOVを巡って大変なせめぎ合いをしていることが見えて来た。

本来、あるべきもともとの権利が企業から与えられる権利になっている

 私が、一番、驚いたのはカナダで有機農業をやっている農家が隣の畑でモンサントの花粉が飛んで来て「損害賠償を払え」と言われ、カナダの最高裁で争って、モンサントが勝ち農民が負けたことだ。信じられないが汚染された方が被害者なのにそれが負ける法体系になっている。

 UPOV第15条では、農民が作ってもいいものがあることとされているが、いま議論になっているのは、本来、自由にやっていいはずのこと、本来の権利としてあるべきはずのものが、条約に書き込まれている権利となり、企業から与えられた農民の特権となっていることだ。こういう構造であると、企業側は特権を止めさせたければ、いつでも止められると。そして、種子法を廃止するために種苗法で管理していくと。そして、日本農業新聞には農民の特権をなくすと書かれていた。要するに、企業側からすれば、種子法は邪魔で仕方がない法律であった。

自民党が反論できない苦しさ

 さて、国会で話を聞いていたのだが、最後に自民党の議員がこう言った。野党の人とも一致することがある。実は自民党はそこまで押し戻したのだと。農薬取締法がそうだと。だが、種子法はそれとは関係ない。そして、委員会が終わったらどうするのかというと何もしないと。なぜならば、自民党は地元に帰ったら「なんで反対しなかったのだ」と言われて何の反論もできないからだ。そういう状況になっている。地域で運動を進めていけば広がっていく。農村でも今は誰も心配していないが種子を買うごとに誓約書が書けるかと。種子を取るということは農民にとって大変なことである。そして、韓国がすごいなと思ったのは、それを生協がやっていることだ。

質疑応答

自家採種のために在来種保護法を制定せよ

印鑰智哉氏 育成者権は一部の種子だけである。ジーン・バンクはその国の主権が及ぶことで生物多様性条約でも認められているため、たとえアールセップがあっても否定はされない。家庭菜園でも否定はされない。

 ただ、これから企業から買わなければいけないことが進んだときに産地銘柄でそれを売ってくれることがあるのかということだ。そこで、私が提案したいと思っているのは、在来種保護の仕組みである。日本の遺伝資源条約を元にすれば作る根拠がある。在来種保護法を作れば拮抗できる。売ることができる。

インドは法の外部に出ることで抵抗している

内田聖子氏 条約は国内法よりも上位なので、それはUPOVで禁じられているのではないか。インドでは法律の罠に陥らないように法律内で認めてもらうのか、法律外にいくのかというラディカルな問いかけがあった。そして、法の中に回収されていかないように抵抗している。そこで分断が起こっている。要するに、入らない立ち位置をしている。インドはそういう主張をして来ている。例えば、インドが守っているのは医薬品の特許である。ガンジーの頃からジェネリックを開発して来ている。自国で安い医薬品を作るのが主権である。TPPで企業が特許権を得ようとしているのに抵抗しグローバルの流れでなんとか食い止めている数少ない国がインドなのである。

 ただし、日本ではそういう法の外の領域がなくなりつつある。そして、貿易協定が被せられようとしている。昨年7月にインドに行った時に日本政府の知的財産が有害そのものであろうと。そこに、日本とインドとの間で共同できることがあろうと。そうしたきっかけができればと思っている。

種子法廃止は日本企業のグローバル戦略に忖度した政府の公共政策自壊政策

会場O氏 この集会のちょうど前に明治大学においてシンポがあり、京都大学の久野先生が言われていたのは、直接的に種子法廃止では被害がなく、利害関係よりも純粋にイデオロギー的に廃止したにすぎないと。そして、あまり多国籍企業が介在する余地はないと楽観的に言われていた。つまり、TPPのための露払い的にしたのだと。けれども、皆さんは厳しいところで体験して来ているので、これについて伺えればと思う。

印鑰智哉氏 種子法を廃止しようという動きは2016年に出されたが、2007年の種苗法を改定したあたりから邪魔だという人たちがかなりいた。そう考える人たちとは、多国籍企業のモンサントとか住友や三井といった多国籍企業である。いま日本市場は小さくなっている。そして、日本市場だけではしぼんでいくのが避けられないため、住友化学が打ち出しているのは海外に行くことだ。例えば、米国では除草剤耐性雑草がはびこり、グリホサートが効かなくなってきているため、モンサントはラウンドアップの代替えとして、2-4-Dを混ぜたり、ジカンバを使っている。その彼らが頼みとしているのが光合成を狂わせる住友化学の技術である。こうしてモンサントと住友化学は組むことにしている。

 こうした大きな構図の中では種子法はメインの標的ではない。潰したいものの一つにすぎない。ただし、その意味でこちらからストレートに無くしてくれとは言えない。僕はこれは政府の側からの民間企業後押し策だと思っている。つまり、公共政策を壊してしまっていると。農業競争力強化支援法は多くの面のひとつでしかない。実際、日本モンサントのコメは売れていない。モンサントから圧力をかけたとは思えない。そういう関係にある。要するに、公共資源を守るという中で、種子法を守ることをやっていかなければならない。

農業は経産省の知的所有財産戦略のパーツにされた

斎藤敏之氏 印鑰智哉氏も言われたが昨年11月の事務次官通達では「提供しなさい」と書いている。ということは、日本の素晴らしい種子の遺伝子が欲しいことは間違いない。ゲノム編集も含めて育種技術はすごいものになってきている。彼らにとっては喉から手が出るほど欲しいものなのだろうと思う。

内田聖子氏 印鑰智哉氏が言うように種子法だけで見てみるとそうなのだが、実は私は知的財産を専門としてきた。そして、アニメ映画や知的財産が活発になっている。種苗法の改定される中で実は2002年に日本では内閣の下で「知的財産戦略会議」が作られた。これが規制改革会議の前身の前身である。そして、2003年に知的財産基本法ができている。これから知財強化して行くと。このあたりからが新自由主義と言ってもいい。多国籍企業と貿易交渉で毎年レポートを出しているのだが、2017年のリポートでは、競争力強化法で、様々な知的財産が生み出されることから「農業」は、知識産業、情報産業として位置付けられる。つまり、知的財産権になったのである。

オープンソースが伸びるのに誤った戦略

印鑰智哉氏 これからは権利を売る側になると。夏に経産省がまとめようとしているのだが、これから南の国に知的財産を売っていくと。けれども、この戦略が間違っていることは、どんどん落ち込んでいるマイクロソフトが証である。そして、発展しているものはオープンソースである。そして、ヨーロッパで一番伸びているのは有機農業である。このような戦略を取ればさらに落ちると思う。バカなことだなと思っている。

会場W氏 根本的に生物に特許を与えると言うのは間違いだと思うのだが、生物への特許をダメだという動きは世界的にあるであろうか。

内田聖子氏 サリニーさんも言っているが知的財産に対する抵抗は各地にある。貿易交渉しか私は知らないが、現状では知的財産権を推進する側の力があまりにも強い。私たちも知的財産の恩恵を受けて買い物をしている面もある。だから、全ての知財を否定すべきではないと思っている。しかし。。。。

印鑰智哉氏 ノーパテンツ・オン・ライフ。生物への特許を認めない。生命で特許を認めるのはおかしい。オープンソースの種子であるべきである。世界で一番動いているのはアンドロイドである。スマホのプログラマーは独占してはいけない。その方がよほど進歩していく。だから、在来種を守る制度を。それは条例でもいいと僕は思っている。

20180625.jpg斎藤敏之氏 日本でも昭和40年代までは至るところで農民たちは種苗交換会をやっていた。で自分のところにあるものがどうなのかというと、今はそれが農機具の展示会になっている。もう一つ小さな動きだが登録品種ではないもの。交換会としてやっているところが出てきている。最近、秩父に「借金いらず」と言う大豆があることがわかって蒔いている。法律の網にかからないものを作っていきたい。

グループディスカッション~各グループの感想

第1グループ 今後どう言うアクションをしていくか。日本人はもともと知財戦略とかが得意ではないのに、真似をして今さらやってもダメなのではないか。自然と調和したアグロエコロジーであろうと。日本の強いものを求められているのではないか。

 また、自治体を動かしたりするのは日本人は苦手である。どうすれば自然に動かせていけるのか。今日のような集会があっても解散した後で力を合わせるのが難しいのであれば、どのように動いたらいいのか。そこに興味がある。

第2グループ このグループは名古屋、群馬、鹿児島から来た人たち。種子が知的財産であること、そして、日本が決めたことが世界に影響することがわかってよかった。多国籍企業に知的財産を渡したところでメリットがあるのか。グローバリゼーションとして種子をいじることで植民化が起きるのではないか。ゲリラ的に種子を交換すればいいのではないか。恵泉女学院では有機農法をしなければならないという制度がある。地元の生協に対してきちんと食べられるものを提供するように求めていく。

第3グループ システムそのものが作られてしまっている。非常事態に陥った時に食料自給率がどうなるのか。餌そのものに穀物が大量に使われているので米に集中すれば非常時には大丈夫だろう。今ならばなんとかなる。だから今が大事である。年賀状とかで危機的状況を知らせたい。DVDを送ったりしたい。返信用を添えて署名をしよう。うどん粉から自分で食べるものを作ると言う意見もでた。

 また、今の日本政府は多国籍企業の手先で信じられない。信頼できる組織を、インドのような種子のバンクを作りたいと思った。在来種の保護法も効率よく有志の力で作りたい。

第4グループ このグループでは感想を出す前に問題が提起された。地方自治体の条例は三つしかできていない。兵庫と新潟は知事から部局にやれと。埼玉は自民党の政調会長が山田元大臣の講演を聞いた選挙区の人の声を要望と勘違いして動いたらしい。政治的な力関係だけでは素直には動かないし、単純には行かないが、政治をどのように動かして行くべきかという議論となった。岡崎さんがこのようなWSは珍しいと言われたが、行政でまちづくり懇談会はこんな感じになる。

 個人的な感想だが国際会議にいって先進国である日本でなぜ食料主権が問題になるのかという論理を突破するのが大変であった。種子の問題を通して重要な問題になるなと思った。

第5グループ 種子の問題は初めて知った。TPP反対と言っても興味がわかないが種子に関わるのは若い人がいるのでいいと思った。そこを突破口に新自由主義に反対できればいい。中学1年生の息子が農業をやりたいといっている。それもあって来た。息子はインドに行くしかないと思った。

編集後記

 シンクロニシティというのはあるのかもしれない。反GMOで英文ネットを検索するとまずヒットするのが韓国やロシアである。ということでこのブログでは韓国の在来種の取り組みを紹介してきた。そして、梨花女子大学でアグロエコロジーを研究する若手研究者の「女性の経済、種子の経済」というキーワードをゲットすることができた。そこで、種子保全を考えるうえでは女性もキーワードになるのではないかと感じてはいたのだが、この会場で、まさに韓国の女性農民協会と交流している斎藤敏之氏や印鑰智哉氏の「Sem feminisumo nao ha Agroecologia」というスローガンにぶつかるとは思わなかった。

 あいにく、この意見交換会では深まらなったが、グローバル多国籍企業による種子独占と知的財産化に対抗策としては

 ロシアのような国家と財閥が連携した国家による保護

 韓国のように州政府と農民が連携した自治体レベルでの保護

 韓国やブラジルやインドのように女性を中心とした脱経済化

 という三つの流れになるのではあるまいか。おそらく、一番恐れなければならないのは、百姓たちのレベルでの種子をマネー化したグループ間での対立だ。そして、韓国では神戸女学院大学の内田樹名誉教授が指摘されるように確実に「脱マネー化」が進行している。

 講演後の講演会では斎藤敏之氏は面白い話を紹介してくれた。稲作経営者会議に加盟している大規模稲作組織の幹部も「子どもには後を継がせたくない」と愚痴を言うという。

 「政府に散々持ちあげられて、大規模化のために借金して農機具をそろえ、補助金は減らされるではこうした思いになるのも当然ではないでしょうか。北海道でも100haの稲作経営農家が離農したそうです」

 種子と同じく技の伝承というキーワードで見れば、子どもが後を継ぎたくないという職業は明らかにどこか間違っている。やはり、脱マネーと贈与もどこかキーワードで水面下で流れている。そして、借金を逃れる脱マネーのための百姓たちの戦いということでは、このブログでは「秩父事件」も取り上げてきたのだが、斎藤敏之氏は「秩父在来」のまさに「借金いらず」と言う大豆を見つけたという。あわててゲットしようとネット検索してみると「借金なしダイズ」という商品名でかの野口種苗が扱っていた。残念ながら売り切れだったのだが、まさにすべてがつながってくる。愉快ではないか。

(2018年6月26日投稿)

【画像】
パルクのシンポジウム案内はこのサイトより
シャリニ・ブタニ(Shalini Bhutani)女史の画像はこのサイトより
斉藤敏之氏の画像は山崎農業研究所のこのウェブサイトより
野口種苗の「借金なしダイズ」の画像はこのサイトより
posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 講演・学習会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする