2018年06月11日

韓国の地元種子保全運動

地元種子とは何か?

 originseed5.jpg地元種子とは 「土着化された種子」「形質が固定されて毎年安定的に収量が取れることを検証された種子」と定義されている。すなわち、原産地やどれほど長期間栽培されてきたのかという側面を飛びこえ、土壌や気候に適応して持続的な生産が可能な地元種子を見直すものである。

なぜ地元種子が大切なのか?

originseed4.jpg「身土不二」という言葉があるように、土壌や気候に適応した地元種子から身体に最もよくあう農産物ができる。数万数千もの種子の中から食べることができ、身体に良いものが選ばれ選択されて来たからである。

 国内においても地域によって大きく違うように、変化して来た地元種子も非常に品種が多様である。多様であることは環境変化に対して適応力があることを意味する。もし、伝染病や自然災害が発生したとしても、一部の品種は生き残り食料供給の安全性を守ってくれる。

 また、地元種子は誰もが採種可能な種子である。今年収穫された種子をきちんと保存して来年にまた播種したときに安定的な収獲が保障される。農民たちは種子会社が販売する 1回毎の種子を毎年再び購入しなければならないという負担から脱することができる。

 地元種子には、長い歳月をかけて農業をしながら種子とともに経験や実験を通じて農村共同体が積み重ねて来た知識がそっくりそのまま盛り込まれている。そして、種子はひとたび消え失せれば二度と修復したり蘇生させることができない。

originseed8.jpg食べ物の商品化、種子の商品化、地元種子の危機!

 地元種子は、食べ物が商品化される過程で「お金にならない」「収穫量がいくばくもない」との理由から軽んじられてきた。農民たちも商業的な農業構造の中で自由がない現実の中で、地元種子は次第に消えて死んでいる。

 WTOは貿易関連知的財産権(TRIPs)協定を通じて生命体や遺伝子に対しても特許で認めて企業が種子に対する支配力を持つようにしてきた。韓国の辛味の青陽唐辛子も世界最大の種子企業、米国のモンサントにロイヤルティを支払いながら使われている。過去一年で外来種子及び種苗購入の対価に支払われたロイヤリティだけ で200億ウォン(20億5千万円)を超えた。

 そのうえ、輸入された種子はずっと使うことができない。利潤を目的とした企業が遺伝子組み換えを通じて種子が一度しか播種しないように仕組んでおいたからである。F1(雑種1代)品種、ターミネータートレイト等は1回性の品種であるため、農民たちは毎年高額の種子を新たに購入しなければならない。

 企業で生産された種子たちはますます増加する化学物質投入に依存しなければならず、野生では生き残ることができない。多国籍種子企業は種子市場を独占することによって、その種子に必要な農薬等の化学薬品の販売までも掌握している。

 農民たちが栽培面積を増やし、骨身を惜しまず耕作して見ても、種子代、農薬代としてすべてを企業に奪われる構造になってしまっている。

 自然に逆い、次世代の生産が不可能になるように操作されてしまった種子、化学薬品に依存して栽培するしかないようにされてしまった種子、品種の多様性を打ち捨てて多収穫と流通の便宜性を中心に画一化されてしまった種子、企業によって商品化されてしまった種子たちは人民の健康にとって脅威である。

originseed7.jpgまた撒く時に生命力が保存される本物の種子

 我が国の農業振興庁種子銀行には 14万余もの種子資源(遺伝資源)が保存されている。冷凍庫で保管されて眠っているこの種子たちは何十年後の変化された環境において再び播種された時に、はたして生き残ることができるのであろうか。長く保存された種子は発芽率が落ちる。この種子が必要となってそれを再び生かそうと思った時に、気候、系統、病害虫が行き違っていて消滅してしまうこともある。これを活かそうとする意図的な努力がない種子は、ただ種子銀行が保存している剥製化された資源にすぎない。

 種子は毎年、大地に播種され、収獲が確認されるプロセスによって、その生命力が検証される。暑さに強い種子、 冷害に強い種子、日照りに強い種子等、多様な地元種子を毎年播種して保存することによって、各地域の気候や土壌に最も相応しい種子を模索し、多様な環境で生産可能な遺伝資源を確保することが必要なのである。

originseed2.jpg地元種子を守るために女性農民たちは何をしているか?

・地元種子保有現況実態調査 全国各地の女性農民たちが、各家 で大切に保管されている地元種子の保有現況を把握し保存するための努力の一つである。

・地元種子採種圃の運営 女性農民たちが捜し出して確保した大切な種子が消失しないように販売や消費ではなく種子用の種子を目的に栽培する採種圃を運営している。

・姉さんたちの店を通じた地元農産物の直接取引 全国女性農民連合の会員たちは 一人 一人が地元種子保存を実践し、そこで、生産された地元農産物は姉さんの店を通じて地元種子栽培の大切さを理解している消費者の食卓へとつながれる。

・CSAを通じた地元農産物生産と消費の連携 CSAの生産者会員は 1人 3種の地元種子栽培を実践してここで生産された地元農産物はCSAを通じて安定的な消費を保障することで地元種子農業が持続することを可能にしている。

・地元種子祭り 一年の地元農業のプロセスを振り返り、苦労した互いを励まし収穫した地元種子展示とわかちあうことを推進する。

女性農民と一緒に地元種子を守ろう

originseed6.jpg「万原義の幸せ」に参加してください!

 人類の歴史とともに長い歳月をかけ、幾多の人々の手によって伝承されてきた種子とそれに関する多様な知識や情報は人類共同の資産である。種子に対する権利は、企業や個人が独占することができる領域ではない。利潤追求の対象になってはいけない。

 地元種子を守ることは「知的財産権」や「特許」の名前のもとに企業が奪った種子を選択して保存することができる権利を農業を行う農民の手で取り戻すことである。種子を保全して、再生産して、交換できる農民の権利、 そして、遺伝資源に農民たちが自由にアクセスできる権利を保障するため、国民がともに参加しなければならない。

「万原義の幸せ」とは 1年に一万ウォンの基金を納め、女性農民たちが地元種子を守る活動を保障することで、 地元種子を守ろうとする主旨に賛同する人なら誰も共にできる小さな実践である。

「万原義の幸せ」に参加してくだされば、家庭菜園で植えられる地元種子 3種を送ってさしあげます。

編集後記

 韓国では、慶尙南道が条例を定めて在来種子を守る運動を進めている。けれども、いくら行政が条例を定めたからといって、現実に在来種を守る主体がなければシステムは動かない。いったい韓国ではどのように種子保全は進められているのだろうか。そんな素朴な素人の疑問を『在来種の逆襲』の著者でもある金石基氏にぶつけてみたところ、こんな回答が帰ってきた。

「韓国ではこのようなやり方で働いています。まず、地域の農業関連団体、とりわけ、女性農民会が先頭に立って該当地域の在来種の種子を調査します。次にこの調査を通じて獲得しされた在来種を直接栽培して増殖するプロセスに入ります。この際、種子を無償で配るイベント等を通じて在来種子について関心を持つ一般市民の関心を集めたりします。

 韓国においても「種子産業法」があるためにむやみに種子を販売できません。そこで、各団体や女性農民会では在来種を種子ではなく、食べ物に加工して販売しています。在来種というある種のブランド化がなされているのです。これと関連して女性農民会が推進している事業はこのページでご覧になれます。不十分ではありますが、お役に立てれば幸いです」

 ということで、さっそくページを開いてみたが、あいにくハングル語でさっぱりわからない。すると金石基氏はわざわざ翻訳文をテキストで送ってくれた。ということで、これを紹介する。なお、「万原義の幸せ」とは、「一万ウォンの幸せ」という意味で、この種子の運動に一万ウォン(約1000円)を納めれば幸せになれるという意味で、同農民会が掲げているいわば、スローガンである。多忙な時間を割いて拙ブログのために邦訳の労をとっていただいた金石基氏にこの場を借りて、お礼を申し述べたい。
(2018年6月11日投稿)


posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 種子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする