2018年06月20日

慶尚南道の在来種農産物保存・育成に関する条例

[施行 2016.12.29.]
(制定) 2008-07-03 条例第 3317号
(一部改訂) 2010-08-19 条例第 3526号
(一部改訂) 2012-10-04 条例第 3743号
(一部改訂) 2016-12-29 条例第 4260号

South-Gyeongsang.jpg第1条(目的) この条例は我が国の自生する在来種農産物を保存·育成することによって伝統農産物に対する対外競争力と安全性を確保し、農業者等の所得増大に寄与することを目的にする。

第2条(定義) この条例で使う用語の意味は以下の通りである。

1. “在来種農産物”とは、山野また河川等自然状態において生育・自生する野生種及びある地域で栽培されて他地域の品種と交配されずその地域の気候風土に適応した在来種として別に道知事が指定したものを言う。
2. “農業”とは「農業·農村及び食品産業基本法」(以下 “法”という) 第3条第1号による産業を言う。
3. “農業者等”は、法第3条第2号による農業者及び「農漁業経営体育成及び支援に関する法律」 第16条による営農組合法及び同法第19条による農業会社法人を言う。

第3条(道知事の責務)

1. 道知事は在来種農産物の品種保存・育成に関する諸施策を樹立してこれを施行しなければならない。
2. 道知事は農業者等が在来種農産物を保存・育成に自ら参加するよう努めなければならない。

第4条(保存・育成計画の樹立) 道知事は在来種農産物の品種保存と育成等のために以下の各事項が含まれる総合計画を樹立·推進しなければならない。

1. 在来種に指定された品種に対する保存・育成に関する事項
2. 在来種農産物の販売・消費促進に関する事項
3. その他に在来種農産物の保存及び育成と係わり必要と認められる事項

第5条(在来種栽培地域の支援) 道知事は在来種農産物を保存・育成するために集団で栽培する地域に対して道が推進する各種施策開発事業と絡めて優先的に支援することができる。

第6条(在来種栽培計画の提出) 農業者等は地域地元在来種農産物を保存・育成するために栽培したり支援を受けようとする際には営農計画を樹立して管轄市長・郡守に播種の50日前に提出しなければならない。

第7条(所得保全直接支払金の申し込み)

1. 農業者等は第6条の営農計画による在来種農作物を収穫した後、 道知事が予算の範囲で決めた金額に対して管轄市長・郡守に所得保全直接支払金(以下 “直接支払金”という)を申し込むことができる。
2. 第1項による直接支払金の申し込みは道知事が別に決めた手続き及び方法による。

第8条(直接支払金の支給範囲)

1. 農業者等が在来種農産物を保存・育成するために在来種農産物を栽培した時には第7条第1項によって予算の範囲内で平方メートル当たり一定金額を直接支払金で支給することができる。
2. 単一品種に対する直接支払金の支給回数は年間 1回, 5年間とする。

第9条(直接支払金の支給対象の決定)

1. 第7条によって直接支払金の支給対象者に決めようとする場合には法第15条によって設置された市郡の農業·農村及び食品産業政策審議会の審議を経て市長・郡守がこれを決める。
2. 道知事は在来種農産物の保存·育成のために毎年直接支払金の支給対象の需要を把握してこれを予算に反映しなければならない.

第10条(施行規則)この条例の施行に必要な事項は、規則で定める。

編集後記

 印鑰智哉氏の2018年6月18日付のFacebookにはこう書かれている。

「日本農業新聞が5月15日に農水省が自家採種を原則として禁止することを検討し、種苗法改正も視野に入れるという記事を掲載し、大きな反響を呼んだ。この問題に関して本日、参議院議員会館で農水省の担当官を招いて院内集会が開かれた(略)。日本政府は今回の政策的変更をEUの例を使って正当化する。つまりEUでは新品種は原則自家採種禁止だから、EU並に合わせる必要があるという。これまでEUでは農家による種子の売買は禁止されてきた。しかし、EUは農家の種子の売買を2021年から認める決定を最近行っている。農家が持つ固定種(在来種)の価値が再認識されているといえるだろう。

 EUだけではない(略)。お隣韓国の慶尙南道も在来種農産物保存·育成に関する条例を2008年に制定して、農家が持つ在来種の保全が図られている。未だに農水省の人びとは「生物多様性条約や食料及び農業のための植物遺伝資源条約」が南の農民のためのものであって、日本は対象外と考えていることだ(略)。現存する遺伝資源をしっかりと守っていくためには、種苗法の他に、在来種などの種子を守る法律が不可欠ではないだろうか?(略)。種子の多様性を守るための在来種保全法と公的種子事業法の2つをどちらも確立(再確立)する必要があると思う(略)。種苗法だけしかないならば近い未来、農水省は不要になり、経産省の一部局にならざるをえないのではないか。植物遺伝資源という工業製品に還元できない自然に基づくのだから、農業は自動車産業と同じ産業ではありえないし、農水省も経産省の一部局になることは許されない。その意味で、農水省に本来の仕事に立ち返ってほしいと思う。その意味で、この問いは農水省にとってもきわめて重要であると思う。そして、市民社会にとって、農業に直接関わるか関わらないかを問わず、大きな問題であることは言うまでもない。

 ということで、韓国の慶尙南道の条例には印鑰智哉氏も着目していることがわかる。そこで、いささかマイナーとは思いながらも、同道の条例を紹介する。慶尚南道で在来種の種子に関する条例が制定されたのは、2008年のことだが、それ以外の自治体でも、この慶尚南道の条例をベースにしているという。なお、当該条例では「在来種の種子」ではなく、「在来種の農産物」と表現されているが、これは金石基氏によれば、農民が在来種の種子を栽培し販売できるようにするための法的根拠のためだという。なお、ハングル語の翻訳は金石基氏にしていただいた。多忙な時間を割いて拙ブログのために邦訳の労をとっていただいた同氏にこの場を借りて、お礼を申し述べたい。
(2018年6月19日投稿)

【画像】
慶尚南道(キョンサンナムド:경상남도)の画像はこのサイトより


posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 講演・学習会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする