2018年06月27日

種子法廃止後のたねのゆくえ

2018年6月23日、明治大学リバティタワー

吉森弘子代表挨拶 みなさん。こんにちは。この会は2013年に立ち上げ、今日、5回目の設立総会をしました。最初は遺伝子組み換え農産物を考える場でしたが、今回は多様な種子の持つ豊かさ、可能性について勉強して、それを広げるように活動の趣旨を変えました。活動をする中で、ネガティブからポジティブへの大転換があったのです。今日の会もそのような形で開かせてもらっています。

 昨年、『君たちはどう生きるか』がベストセラーになりました。世界から俯瞰すると違って見えて来るものがあります。種子法についても世界の中から見てみると見えて来るものが違っていました。

 公共の種子システムを考えるだけでは終わらないのです。日本は相変わらず競争です。ですが、2007年、2008年の食料危機で世界は小さなコミュニティでの食料、種子に変わってきています。子どもの権利、食料の権利を考えるきっかけにしたいと思います。

都道府県に対するアンケート調査結果の報告
運営委員、藤木千草

 全都道府県にアンケートを送付した。そして、全都道府県から返事をもらった。もちろん、中には出し渋る県もあったが「おタクだけ出ていませんよ」と脅した(笑)。予算が減った自治体、増えた自治体と色々ある。2018年は北海道の予算が一番大きく1億5643万円。大阪府が最も予算が少なく28万8000円である。東京都は種子事業から撤退していてゼロである。奨励品種決定のための試験実施している。

 2018062703.jpg 種子生産ほ場の指定は2017年は東京都以外の46の道府県が実施していたが、2018年は25の道府県と53%しない。2017年に民間と協力したところは兵庫、三重、愛知だけでいずれもJAである。2018年に実施する予定は4県あり、前者に加えて青森県である。都道府県から国への意見書を提出したのは愛知県が29年12月、長野県が30年3月。議会で審議したが不採択となったのが茨城県である。区市町村段階では山形市が1である。なお都道府県は把握していなくても64の市議会から提出されている。また、不採択も表に出てこず、茨城県は自己申告してくれたが、4つの県議会、石川、千葉、福井は出せなかった。そして、6月議会でも結論が出るところがある。継続審議になっているのが7つの市村議会だからである。長野県議会も種子の安定供給は審議したものの新たな法制度については継続審議にしている。

 以前に、遺伝子組み換えの反対運動をやっていて、全国の全部の約6割の地方議会からの意見書が出されて国が動いたことがある。この経験をまた活かしていきたい。

基調講演
  グローバル・食料主権・種子法廃止後のたねのゆくえ
京都大学大学院久野秀二教授

Shuji-HIsanoS.jpg アンケートについてのコメントを含めてお話ししたい。食料主権と地域農業、食料・生活について話をしたい。「食料主権」という言葉は農業新聞でも使われている。龍谷大学の西川芳昭教授も言及されているが、食料主権という言葉だけが一人歩きしている。重要な課題であり、普通に話せば90分では終わらないが、種子の仕組みについては兵庫県の担当者が話してくれるのでサクサクといきたい。

 1年前に院内集会でも講演をした。ディスカッションペーパーとして私が発したメッセージはこういうことだ。

「主要農産物種子法廃止の影響は必ずしも短期間のうちにドラスティックに表れるというものではない。主要生産県を中心に長期にわたって現在の体制が維持されるものと思われる。それでも、現在の政治を大きく転換しない限りは、公的種子事業が直面するだろ財政的・制度的な困難な影響は避けがたく、ボディブローのように体力が蝕まれていく可能性がある。しかし、見方を変えればそれだけの時間的猶予が与えられたとも言える。したがって、今後も継続して国及び都道府県の公的種子事業を予算や人員の配置を含めて監視・調査し、彼らが果たすべき本来の役割を十全に果たさせるための働きかけをしていくことが肝要である」

 要するに、ほとんどの県が事業を継続していくと。これは、心強い。とはいえ、根拠法は失っている。

 また、こうも書いた。

「主要農産物種子法廃止は単独の動きでは決してなく、農業・食料分野はもちろん、それ以外の生活関連分野を含む公的セクターや協同組合セクターに対する攻撃を強める強権的新自由主義政策(アベノミクス)の一環であることを理解する必要がある(略)。今回の種子法廃止はその提案者が想定したかどうかはともかく、そのような問題の本質、対立軸の所在に光を当てる契機にはなっているのである」

種子は誰のものでもない

 さて、種子は重要なものである。遺伝資源として捉えてみれば、種子が持っている価値は、農や食料全体を規定する。したがって、「種子を制するものは世界を制する」という表現はあながち誇張ではない。

 そして、種子は誰のものでもあるが、誰のものでもない。多様な遺伝資源は全人類の共通財産である。ただし、それは農の現場だけでなく、公的な働きとの合作であった。野菜等では民間企業の役割もある。要するに、誰のものでもない。だからこそ、社会的な合意の下で管理していくことが大切である。全人類の共有の財産として使いながら守っていくことが必要なのである。

種子法廃止は矛盾だらけ

 さて、種子法の目的や概要、廃止の経緯は一気に飛ばし、その後の動きを見てゆきたい。内外で論じられてきた論点についてふれたい。そして、対立軸として食料主権について述べたい。

 2018062705.jpg まず、種子法は、優良種子の生産と普及における都道府県の役割を規定してきた。増殖制度と種子審査制度とを規定してきた。ここであえて英語にしたのは、こうしたプロセス、現原種、原種、一般栽培というプロセスはノースカロライナ州においても同じだからである。都道府県によって、システムは違うが日本では現場レベルでは様々な制度が作られてきた。このシステムを含めて全てが廃止されてしまった。

 種子法廃止にあたって農水省は「民間事業者が育成した品種が採択されない」と言ってきた。しかし、1986年に制度を変えたことで民間事業者の参加が可能になっている。制度改正によって、色々なプロセスで種子育成に関われるように制度上なっていた。そして、民間企業が育成した品種はいくつかある。撤退した事業者や倒産した事業者もあるが、実際に広がっている。

 けれども、種子法は規制改革推進会議から提案され、きちんとした説明や議論がないままにアレヨアレヨという間に法案が採択され、あわせて12時間で廃止が決まってしまった。

 政府側の説明理由としては、

①現在の種子制度では、都道府県育成品種が優先されることが構造的に避けられない。つまり、民間に対して補助金がつけられない。
②都道府県の枠を超えた広域的・戦略的な品種開発、種子生産ニーズに対応できていない。
③種子の生産供給の体制はすでに安定しており、全道府県(東京都は止めている)に一律に種子事業を義務付ける必要性がなくなった。各都道府県にまかせればよい、というものである。

 国会における質疑では、私や龍谷大学の西川先生を含めて問題提起をした。そして、色々な問題が明らかになったのだがそれは解消されてはいない。そして、政府側は問題ないとしている。しかし、根拠法令がない中で予算をどう確保するのか。国はどうするつもりなのか。また、「都道府県の知見を出せ」というのはどういうことなのか。また、これと連動するものとして品種開発はどうするのか。全国種子計画はどうするのか。それはいずれも不透明で種子法廃止が「規制改革会議」で提起され、生産資材の価格を下げるという文脈の中に無理やり押し込められている。それは疑問であり、本当に農業生産者所得は向上するのか。生産者所得を上げることが廃止法案の目的となっているのだが、それはどうなのか。その上、外資参入の懸念もある。

食料主権には国家の主権と人民の主権とがある

 例えば、日本農業新聞の論説では2017年2月2日には「主食の種子は食料主権の根幹に関わると知るべき」2017年4月15日では「食料主権の後退を許すな。社会的な公共財である主要農産物の種子を守ることは主権を守ることに他ならない」という主張になっている。確かに、種子は食料主権の根幹なのだが、ここで「主権」とは何かを考えるべきである。というのは、主権には、国家の主権と消費者・生産者を含めての人々の主権という二つがあるからである。国際的に使われている主権にもこの二つが混在している。そして、世界的には農業者の遺伝資源を守っている権利が中心課題になっている。つまり、この概念を理解した上で主権のことを理解する必要がある。

種子法だけでなく暮らしを守る公的セクター全体が攻撃されている

 さて、競争力強化支援法の8条で、次に掲げる措置を講ずるものとされている。

 1項は農薬で、政府の説明によれば1から3項は種子ではないとされている。けれども、これは非常にモヤモヤしている。さらに問題視されているのが4項である。このことをさらに、11月15日に出された農林水産事務次官通知でも述べられている。

 農水省も種子が大事であることはわかっている。ただし、官民の総力を挙げて国際競争力を高める必要がある。一律的に義務付ける主要農産物種子法は、官民の総力を挙げた体制の構築と矛盾する。農業を成長産業にしていく。国際競争力にそぐわないものは廃止していく。農協や卸売り制度もあるべき姿と矛盾する。だから廃止する。農協を作り変えていく。こういう一貫にあるのである。ただ種子法だけが出てきたわけではない。今、農業食料、生活に関わる部分、公的セクター、協同組合セクターが攻撃を全体として受けているのである。

成長産業としての農業を応援するので心配無用というのが政府のスタンス

 戦後の食料増産という目的は達成された。変質した。だからいらないというわけである。さらに、直ちに取り止めるわけではなく、農業競争力強化という枠組みの中で事業を続けて欲しいとなっている。

 民間事業者の知見を高める農業競争力強化法が目指すのは、我が国を成長産業にすることである。そして、多国籍企業については「留意されたい」となっている。実のところ、日本企業も多国籍企業なのだが、それは、心配しなくてもよろしいというのが政府の立場である。そこで「心配しないでいただきたい」と言っている。

主要農産物種子法廃止を懸念する声

 さて、地方では13都道府県63地方議会から意見書が出されている。そして、新潟県、兵庫県、埼玉県が主要農産物種子条例を可決している。一方、大阪府、奈良県、和歌山県が審査業務を民間移行する方針を表明している。

 これを受けて、国会でも野党共同で種子法復活法案が出されている。種子法の条文を復活させ、農業競争力強化支援法から「知見提供」規定を削除し、国及び都道府県以外の者の能力を活用したという部分を国内事業者に限定しようというものである。ただし、これは審議しているだけで棚ざらしになるようである。

主な論点1 長期的に都道府県の公的種子事業はどうなるのか

 それでは、論点を見ていこう。第一に懸念されるのは予算である。種子の予算は一般予算に溶け込んでいるために切り分けられない。政府は直ちに事業を取りやめるわけではない。民間事業者への参入が進むまで当面は問題がない。さらに、総務省も予算を配分すると言っている。ただし、状況が変われば見直すとも言っている。農水省も予算を確保する方針だが、長中期的にはわからない。

 各都道府県に対するアンケート調査では、ほぼ同額で事業継続を明記している回答もあるが、県によって違う。ただ17年と18年の2年だけでは変化では見えない。また、県としての責任は継続していく上でかなり苦労がしのばれる。京都府の担当者に聞いたのだが、実態は変わらないとしても、「指定」を「認定」、「審査」を「検査」にするとか言葉を変えて工夫をしている。そして、トーンが落ちている。対応に苦慮している様子が見られる。また、独自の要綱・要領も設けている。

 さて、私は民間との協力は否定しない。大切なのは結果であると考える。そして、各地で育成普及してきた公共品種に対する生産者と消費者の需要がなくならない限り、全都道府県が撤退することは想定できない。ただし、きちんとした社会的な要請、要望を続けていくことが必要である。

 また、民間企業側も、みつひかりのように、独自に生産できる種子もあるが、種子を開発するにあたり、民間企業も公共の種子を必要としている。けれども、民間での品種を普及していくのが政府の方針であれば、長期的には公的種子のエリアが削がれていく可能性はある。

基礎研究と現場での種子確保は切り離せない

 海外の事例を見てみると、民営化が進む中で、公共機関が基礎研究、民間が応用研究という役割分担もが生まれた。けれども、これはあまり機能していない。基礎的研究と現場において優良品種を作り確保していくことは一連の取り組みであってバラバラには切り離せないからである。これを切り離すと弱体化する。両者が一体となって初めて発揮されるのである。

民間を参入させなければ消費者需要に対応できないいというのは矛盾

 次に、民間企業の参入だが、官民を一体となって推進する上で、国は、「家庭内需要を志向した画一的な品種開発を目指してきた。ブランド米を競い合って来た。中食や外食の需要が増え、品質がそこそこであって価格が安いものが求められている。それに対応できない」と述べて来た。「国が画一的というのは何事か」と思う。多様な状況に応じて多様な趣旨を作ってきたのはまさに各地域だからである。そして、外食・中食への需要対応という点では弱かったことは確かだが、業務用米の開発に国も取り組んできたし、それをしてきた県もある。

 また、種子法があるために奨励品種に採用されなかったとも言われているが、それは違う。各県の状況に応じてきちんと対応している種子が奨励品種に採択されてきたのであって、これだけの理由で種子法を廃止してしまうというのは乱暴であった。運用規則の改正で十分に対応できたのではないかと思う。そして、価格についても種子の価格は上がるであろう。

Kazunuki_OhizumiS.jpg そもそも国際競争力の強化とは何か。宮城大学の大泉一貫(1949年〜)特任教授は、規制改革海外のメンバーでもあるのだが、2017年10月の『農業と経済』にこう書いている。

「この農政は、輸出などの農産物市場開拓を目指し、経営者重視の構造改革推進に重点を置いており、それまでの稲作偏重、その根源にあった兼業農家維持の保護農政とは一線を画している」

「市場に敏感な農業生産の構築が重要」「まずもって稲作偏重、兼業農家維持政策の象徴でもあった計画経済で作付けがなされるコメの生産調整を見直す必要」

「実質的に地域組合と化している農協に攻めの農政の隊列に加わってもらう必要(これが農協改革)」「グローバルフードチェーンの構築が必要である。海外で売ろうとする輸出事業者が国内産地と結びつきを強化し、産地・物流・販売事業者・海外消費地の全体がつながる仕組み」。

 そして、意思決定に関しては「農水省(食料・農業・農村審議会等)に限らず当該省庁の審議会の旺盛院はステーク・ホルダーの集まりで、審議のベクトル報告は現状維持か保守的なところにとどめる傾向」「農水省に期待しつつも、現状では規制改革会議や未来投資会議、国家戦略特区のような機関が牽引するよりほかないということ」。つまり、どうしても保守的になってしまう。だから、強引に牽引するしかない」と述べている。

 けれども、そもそも国際競争力の強化と農業の成長産業化とはどういうことか。

Hiroshi-Isoda.jpg 所得階層別に世界的な規模で再編が進む農産物・食料消費市場に合わせたバリューチェーンの階層別再編(富裕層向け、中間層向け、貧困層向け)に日本農業を投げ込むものである。そう解釈されているのが、九州大学大学院農学研究院の磯田宏准教授である。

 なるほど点は育つかもしれない。そして、施設型の植物工場は点でもよい。しかしながら、グローバル市場競争に参画できる一部の農業経営者を重点的に支援する一方で、大多数の農家・農村知識を切り捨てる政策であり、点を育てるために面をないがしろにする政策である。とりわけ、耕種型の農業は面がないと持たない。ところが、そうしたところに目がいっていない。

 さて、グローバルなものとしては、国際貿易のシステムがあるが、消費者は、環境、安全、倫理にも関心がある。こうした動きがローカルからも生まれている。それがメインストリームの企業が取り組んでいる。小さな農業と共存する、アントレプレナーマインドを持った人も少なからず生まれている。そうした人の感覚からしても今の農業政策はおかしい。

 そして、日本農業が持っているものは、あるべき農業を作り直す意味では可能性を持っている。そこで同時にそこに光をあてることを考えることが大事である。種子だけ守ればよいといことではない。

kagawaS.jpg 龍谷大学の香川文庸(1967年〜)教授は2018年1月2日の『産業と経済』で「多様な経営様式がかみ合うモザイク型農業像による未来:大規模経営・営農組織と「小さな農業」の支えあいによる地域農業の維持」を提唱されている。

なんで廃止されたのかもよくわからない。よくわからない。イデオロギー先行の動きだったのではないか。国際競争力を絶対という人が、地域農業切り捨て、公共財の払い下げの一環なのであろう。

対抗軸としての食料主権論の意味と可能性

 さて、食料安全保障についてFAOは何度も改定をしているが、「すべての人がいかなる時にも活動的で健康的な生活のための食生活の必要と嗜好に合致した、十分で、安全で、栄養のある食料を物理的、社会的、経済的に入手できるときに達成される」としている。栄養、社会的、物理的という要素が入っている。これはおそらく、食糧安全保障の定義としては最高の到達点なのであろう。けれども、これに対して、「食料の入手機会の向上」を入れた点は評価するとしても、政策のあり方として、どのような食料がどこで誰の手によって生産されるのかという構造的な視点が欠落していると批判したのが、ビア・カンペシーナである。

 この団体に加盟している農民連の真柄良孝氏は、わかりやすくこう説明されている。

「すべての国と民衆が自分たち自身の食料・農業政策を決定する権利」より具体的には「すべての人が安全で栄養豊かな食料を得る権利であり、こういう食料を小農・家族経営農お民、漁民が持続可能なやり方で生産する権利」であり「多国籍企業や大国、国際機関の横暴を各国が規制する国家主権と、国民が自国の食料・農業政策を決定する国民主権とを統一した概念」である。

 権利は、義務と一対の関係性の概念である。しかし、基本的な人権は無条件に与えられた権利である。そして、その権利主体は国民で義務主体は国家である。国家が責務を負っているとしたのが「国際人権法」の体系なのである。私に言わせれば、食料主権は政治的なスローガンである。国際的な論点が大切で、大事なものは国連人権理事会である。

 2018062701.jpg 国家の主権は大事である。投資の自由化も大事である。しかし、国民である消費者不在、農民不在の国家では意味がない。食べる人の権利を守るのは国家の責務である。主要農作物種子制度も国家の義務である。そして、この法制度はその役割を果たしてきた。種子だけでなく、どのような農業、社会を目指していくのか。そういう議論が大切な時である。

 最後に何をすべきか。

第一は主要農産物種子制度の役割・意義を正しく理解することである

 ・公的種子事業の必要性を国・都道府県に訴え事業継続を応援する

 ・各都道府県の主要農産物種子事業に対する予算措置を継続的に監視する

第二は地域と日本農業を守る運動と一体となって種子を守る運動を進めることである。

 ・日本の自給率はコメ98%、小麦15%、大麦・裸麦9%、ダイズ7%である。

 ・在来種を守る取り組み、タネ採りの取り組みや有機農業の実践とも連携を強めつつ公的種子事業を守る運動について裾野を広げる努力をする

 ・公的制度を民主的に再構築しながら守り、政府に本来の責任を果たさせる

第三に種子法廃止の背景にある政治経済の流れを理解することである

 ・農業・食料分野をはじめ、公的セクターや協同組合セクターに対する攻撃を強めるアベノミクスと批判を弱めるための全体主義的風潮に対抗するため、市民的・政治的な連帯を強めることである。

兵庫県種子生産条例報告
 兵庫県農政環境部農林水産局農産園芸課寺尾勇人氏

 兵庫県のPRをしたい。兵庫は但馬、丹波、攝津、播磨、淡路と5地域からなっている。そこで営まれる農業は人口550万人の大消費地であり、農家数も全国3位の農業県である。山田錦、酒米が全国シェア1位である。丹波黒。黒大(くろだい)。関西では必ずおせちに入っている。これは大豆として食べるが枝豆として食べても絶品である。淡路島の玉ねぎも全国3位である。北海道産に比べたら本当に甘い。肉用牛もトランプ大統領も食べた但馬牛というブランドがある。

 さて、県が担って来た役割は奨励品種の指定。地域の気象や土壌条件に適したものにお墨付きを与えている。二つ目が原原種と原種を生産する義務を県が負う。三つ目が種子生産ほ場の指定で、県が指定している。四つ目がほ場と生産された種子の審査である。そして、農業改良普及員が「異形」なものを確認して審査する。特定の病気や雑草が入っていないかどうかも審査する。例えば、種子伝染性で「バカ苗病」があるがそうしたものがないかどうかをチェックする。また発芽率もチェックする。

 奨励品種は原則3年は調査しなさいとなっている。また、奨励品種の決定は関係者が入って審査していく。

 品種育成では10年とかの歳月がかかり、これができたものに対しては品種登録が行われる。育成者の権利も与えられる。それを勝手に増殖したりはできなくなっている。

 そして、奨励品種として定められ、やっとここで種子が生産される段階となって、やっと一般農家の元に届くという流れになっている。つまり、何年もの年月がかかる。

 ただし、これはあくまでも奨励品種制度での場合である。奨励品種に指定されなくても種子生産は可能である。つまり、この枠外でやることもある。ただしその場合、種子の品質は自己責任で販売することになる。

 奨励品種になると有利なのは、栽培適性を県が保証しているし、栽培ごよみもあるからである。兵庫県の奨励品種の一覧は以下の通りである(略)。

 それでは、なぜ種子法は廃止されたのだろうか。国の言い分はこうである。

「農業の戦略物質である種子については、多様なニーズに対応するため、民間ノウハウも活用して、品種開発を強力に進める必要がある。しかし、都道府県と民間企業の競争条件は対等になっておらず、公的機関の開発品種が大宗を占めている」

 確かに、県が開発した品種と国が開発した品種をあわせるとほとんどが国と県であることがわかる。奨励品種に限って言えば、民間の開発品種は2品種だけ、JAグループが開発したのと個人が開発した品種である。この事実は確かにある

条例の制定について

 なお、普通、条例制定には半年から1年がかかると言われているが、作り始めたのは今年の1月末になってからである。僕の前任が1月で作利上げ議会にあげて施行された。担当者は、奥歯が欠けたと言っているが、なぜ条例にしたのかというと県知事からの指示があったからである。要綱では簡単に廃止できないようにしたということである。

新潟のたね場より現場からの声
 堀井修氏

県議会の質問から知事は条例制定を決意

 2018062702.jpg「保守的になれ」とトランプ大統領も良いことは言っている。新潟県は良い知事を選んだのだが、原発を動かすかどうかの論点で負けてしまった。我々が押している女性候補が「断固原発を動かさない」と言えばよかったのだが、検査するとか言ったので対抗馬も似たようなことを打ち出して焦点がボケてしまった。新知事はさっそく霞が関に「いかがしましょうか」とお伺いを立てている。政権与党にとっては良い流れになっている。

 種子法の条例については、12月の県議会である議員が質問をしたら「新潟県は全国一のコメの生産地であり何としても守っていかなければいけないので条例は作ります」と知事が答えたからである。1月から条例作成の準備に入ったということで担当者はそれなりに苦労されたようなのだが、始めたのが早かったのに兵庫県に3日遅れた(笑)。

 さて、大きな問題点はこれからである。主管省庁は「ヤメよ」と言っている。そして、「奨励品種」という言葉も出た。そして、新潟の名前がついた「コシヒカリ」というバカな品種がある。何が馬鹿げているのかというと、同じコシヒカリと言っても微妙に違うからダル。地域地域にコシヒカリという品種はあるのである。なんでそのようなことが起きるのかというと、育種をした人間に聞いたところ、イネは育てていれば地域地域で自然にその地域にあったものに変わって言ってしまうと。地域・地域で作っていくことが大事であると。例えば、種子法を活用することで北海道は総力をあげて美味しいコメをつくり出した。新潟よりもうまくかつ値段も高いコメを作るようになった。これが地方自治であろう。均一化してどうするんですかと言いたい。そして、業務用がないというが、そのようなものはとっくに作られている。そして、コシヒカリは美味だけれども収量が取れない。一番のブランドは魚沼である。1俵、2俵が3000円するが、コシヒカリは8俵しか取れない。一方、今でも15、16俵取れる飼料米がある。改良すれば収量は取れるけれども地域・地域の問題点が非常に大切で、量にしても味にしても出てくる。

 この会場で値段が安くてもいいという人はいますか。けれども、農家もそれで生活をしているんだと。例えば、この15年でコシヒカリの値段は3万円から1万5000円に半減している。そこで、面積を増やせと国は言っている。けれども、実際に広くやるための農業機械は高い。規模拡大したところは、今年から止めている。つまり、国はでっかくしておいて頭を殴るという卑怯なことをしている。我々にとって種子法の廃止は、良いものを作ろうとする努力を妨害をするものであると。地域の独立性を無視することが一番の問題だと思う。

F1やターミネーター種子

 さて、これまでのお二人のお話で欠けているなと思ったのは、民間が新しいコメを作るとしたらどうするか。こっそりと自分で山の中で作れる。そして、地域・地域で同じものを作っていても同じものにはならない。そういう性格があるんだ。それでは民間は儲からない。そこで、ハイブリッド、F1を作るんですよ。種子屋からF1を買ってきてもバラバラのものになってできない。いま野菜でそれがやられているんですよ。トウモロコシ。作って美味いなと思って撒いても獲れない。そういうふうにさせられているんです。それを麦、大豆、コメにしようというのが問題なんですよ。そこが理解されていない。

 遺伝子組み換えによって芽が出ないというとんでもない種子ができている。2000年にWTOの反対でシアトルに行った時に、米国の友人から「ターミネーター種子というのがあるよ」ともらって農水省に持ち込んだんだが、「なんでお前がこんなのを持っている」と言われたのだが、これは撒いても腐るだけ。

 自然は違う。例えば、子どもは親と似たようなものはできるけれども親とは違うでしょう。それが自然の摂理なんですよ。田んぼの中で一番いいものを選ぶ中でいまの種子はできてきたんですよ。

種子法は強化されパテント料を百姓は奪われる

 そして、種苗法は廃止されていない。むしろ強化されている。パテント料を払いなさいと。このことをずっと免れていたんだな。百姓は。今度はそうはいきませんよと。

 だいたい、種子法が廃止されても安い種子にならない。調べてみたら「みつひかり」は、だいたいコシヒカリの10倍だ。野菜の種子はそうなっている。家庭菜園ならば10粒300円でいいが、農家が1000単位で買うと高い。

食料主権は国のものではなく国民のもの

食料主権は国のものだけでなく、国民のものでもある。北朝鮮が危ないとかいって何千億円を投じているが、その前にやることがあるでしょう。これが食料主権なんですよ。それが種子なんです。芽がでないタネ。本当にこの問題をどう考えるのかです。

三井化学アグロの取材報告
 フォーラム運営委員 高澤 裕考

三井化学アグロの取材をして来た。民間の参入で言われているのでどういう形態なのかと。みつひかりはダントツで普及している成功例であると。そこで、拡大するチャンスかと聞いてみたのだが、結論から言うと三井化学アグロはチャンスだとは思っていない。それどころか、種子法があったからといって妨害されていないと。三井化学が政府と組んで廃止させたことが言われているが非常に戸惑っていると。F1はすごく手間がかかる。自家受粉と他家受粉があるが、コメは一つの中に雄しべと雌しべがあり、放置しておくと親と同じになる。それをあえて合いの子を作るのは非常に手間がかかると。効率が悪いため事業として成功していない。利益があがっていないと断言していた。

すると、脇にいた広報の人があわてて「利益については答えられない」とお茶をにごしていた。つまり、ハイブリッドで入ってくるとは思えない。民間の参入も1986年から参入できるし、その後は、販売してもいいのがなっているし、妨害はされていないと。どちらでもいいと当社としてはと言うことであった。

パネルディスカッションと質疑応答

 2018062704.jpg久野秀二教授 種子事業を担う改良普及員や試験場がどのように変わるのか。今後、品種開発がどうなっていくのか。種子の増殖体制を含めて生産者との関係を知りたい。

寺尾勇人氏 品種改良に関しては種子法が定めてきたものではないので、兵庫県は変わらないと思う。県では、農林水産技術総合センターが品種開発を担っている。品種開発の育成に取り組んでいるが、種子法が廃止されたとしても変わるわけではない。アンケートでも抱えてもらっているが、JAとも連携してオリジナル水稲品種を開発しようとしている。流通面でも実需者のニーズはJAが知っているのでアドバイスをもらいながら進めている。

堀井修氏 私も普及のOBで普及員をやめてもう30年になるが、新潟県だと原原種だけで740㏊もある。全体で13万㏊もあるから、どれだけ発芽するかが問題だ。バカ苗病は農薬で防げるが変わった個体は取り除かなければならない。

 この供給部分を断とうというわけだからとんでもことをやろうとしている。育種と供給とは切り離せない。ここを切ってしまえば農業試験場がいらなくなる。かろうじて残っているが県の自由裁量である。それは、法律があるので回していた。大阪はもうやめたと。東京はとっくにやめている。けれども、東京だって島にだって百姓がいる。多摩にだって百姓がいる。1、2年は変わらないが、数年先に変わる可能性が出てくる。それは地域自治に関わっってくるのではないか。

久野秀二教授 4月の農業新聞の記事によれば、大阪府、奈良県、和歌山県が一部の事業を関係団体に委ねるとあった。ただし、この3県はコメ生産では大きくはない。奈良も104戸、和歌山は4戸、1.7㏊。大阪もほとんどない。そういう県がどれだけあるのかわからないが、これから他県との連携が求められるのだろうか。富山県は他県にも種子を提供している。そして、富山、石川に次いで兵庫が提供している。県の連携の可能性はどうであろか。

寺尾勇人氏 「種子の生産が可能か」ということは聞かれたことはある。ただし、具体的にどこかに提供するという話はないが。もちろん、他府県に供給していきたいという思いはある。しかし、種子生産農家も高齢化している。一気には増やすことはできない。原原種や原種は圃場も限られており現実的に増やしていくことは難しい。具体的な話はまだないが担当者としてはそう考えている。

圃場審査を半分が止めた事実は現場にはショッキング

司会(高澤裕考) では、寺尾さんの方から質問を。

寺尾勇人氏 堀井さんに質問です。私も以前は普及員をしていたが、いま本庁に来ていて現場から離れている。種子法廃止に対して現場の農家の声はどうなのだろうか。それを聞かずに兵庫県では「条例作らなあかん」としたのだが。

堀井修氏 農家は変わらんだろうと。けれども、今回配られたアンケートの4pを見て唖然とした。半分しか圃場指定をしないと。実際に芽が出なかったら大変だ。千粒で何グラムとか農協を通じて生産して売っているのだが、今は現場は他人毎だ。けれども、この4pの情報は「おい、他人毎ではないぞ」と使える。新潟は740㏊も原種を作っているのでいいデータをもらった。新潟は24の農協があり、全農内に種子協会がある。種子協会に知らしてあげなきゃならんな。ある日突然になくなって驚くと。

寺尾勇人氏 また、圃場指定をするか続けるかという議論が県内でもあったが、「兵庫県指定」という看板が立つのは農家の誇りにもなり、それでやってもらっているので、なんとか維持させてくれと。日本ではこういう仕組みがあって公的制度があったわけだが、諸外国はどうなのだろうか。次に久野先生にお聞きしたい。外国の何か知見があれば参考にしたい。

欧米でも主食の種子は公的に守られている

久野秀二教授 全てを詳細に調べているわけではない。そして、欧米では小麦が主要作物だが、例えば、米国ではビジネスが先行しているイメージがあり、大豆はほぼ100%がGMOになっているのだが、小麦については各州で作られている。例えば、州立大学。土地交付大学という19世紀に作られた制度、エクステンションセンターが重要な役割を果たしている。もちろん、これは、品種改良のレベルだが州それぞれがやっている。民間育成品種を含めて今でも小麦については公的機関がきちんとやっている。

 カナダでも公的機関が品種改良を含めてきちんとやっている。オーストラリアでは規制緩和や制度改革によって民間化が広がっている。

 米についてはアーカンソ州とカリフォルニア州で生産されているが、カリフォルニア州は以前は公的機関がやっていた。今は生産者団体がやっているが。要するに、公的機関、生産者団体、農協といったものが果たす役割は大きい。そして、それを民間化することのメリットとデメリットが議論になって来たと。そして、いまどう維持していくかが議論されている。

小規模なムラを守るためにはどうしたらいいのか

堀井修氏 久野先生に是非お伺いしたいのだが、今の時代の言い分は安くである。そこで、規模拡大しなければならない。集中できるところはいい。私の集落も63戸で80㏊の水田があるが、それは6戸に集中している。確かに10㏊程度でやっている。一番大きいのが15㏊だ。けれども、その家も、お母さんは勤めており息子は後を継いでいない。兼業農家ということだ。そして、80㏊はたった一人だけではやれない。水管理ができない。今の農政はどうもムラがなくしていくように見えるのだが。これに対して妙案は。現状はよく分析されるのだがどう対処したらいいのか先生のお考えを。

人と自然の境界領域の里山の守り手が必要

久野秀二教授 農業経済学として、現場から離れたところで仕事をして来たので私の同僚が聞いたらバカにされるかもしれないが。要するに、一部の担い手に集中するしか生き残れなくなっている。けれども、畦道の管理や水管理がいるし、里山という言葉も古くからあり、それは、国際的にも着目さている。つまり、人と自然との境界領域に文化や自然があり、それが管理する人がいなければそれは継承できないと。そういう人を含めて生産にかかわってもらう。生活空間を守っていく必要がある。

 では、どのように各地域でそれを守っていくのか。そのことを議論をして取り組むべきである。国も集落営農ということで推進はしている。けれども、東北と西日本とでは実態が違う。地域農業を維持していくために農業生産法人として経営としてもまとめていく。そういうものが色々な社会的機能を果たしていく法人として期待されているのだが、協同組合セクターも経営体としても維持しなければならないため苦労している。要するに、たとえ法人化してもビジネスだけでなく地域社会を守ろうとしている人たちはいる。そういう人たちをサポートする政策が求められる。

 もちろん、農水省も推進しているし、兵庫県も進めているのだろうが、地域から切り離された担い手は生き残れない。また、そうしたグループを消費者としても支えていくことが大切ではないか。このように農村を守る中で種子も守られていくのではないか。

会場質問 イネの話はわかったが、丹波黒のタネはどうなっていくのだろうか。

寺尾勇人氏 在来種で品種登録されていないものを保存していくのは難しい問題がある。「これが黒大豆や」と言って売っても誰も規制できない。品種登録されていないし、種苗法があっても昔からある品種なので。実際に、丹波黒とはとても言えないものが売られているということなので、優良系統は、カワキタ、ハベグロ、そして、県が開発した兵系黒3号。これだけを丹波黒と言いましょうとしているが、何分、丹波地域は京都にもまたがっているので。

ジーン・バンクか現場保存か

吉森弘子氏 ノルウェーが有名だが久野先生にはジーン・バンクのことをお聞きしたい。寺尾さんには先進的な独自の条例づくりがなぜできたのかを聞きたい。国に対してどうこう言えないとしても制度を廃止した県もある。そして、堀井さんには高齢化で田んぼが減少していく中で、小さなコミュニティで種子の多様性を維持することは大事だと思うのだが、どうすれば農業が小さくなっていくことに歯止めをかけて巻き返せるのかをお聞きしたい。

久野秀二教授 西谷先生が一番のご専門かと思うだが、種子の保存はつくばの研究機関を含めて、大学が分担してやっている。北海道にも大きな遺伝資源貯蔵庫がある。京都府は亀岡にセンターを持っている。ただし、生産から遊離した冷蔵庫のようなところで保存するものである。いくら技術が進歩したとは言ってもそれは確実ではないし、同時に作り続けることによって遺伝資源は守られていくという考え方もある。確かに、多様性を作り出すのであればそれは作り続ける中でのみできる。もちろん、その中で失われるものもあるが、もともとそういうものだ。そして、その中間が広島県のジーン・バンク。保管されているものの一部を現場の元に返す。西川先生が野菜で紹介されている事例だが。

種子条例を制定しても国からはクレームはなかった

寺尾勇人氏 県の状況は私はよくわかっていないが、冷蔵庫のような保管もしているが一部はタネを播種することで保存している。

 さて、条例制定にあたって議論があったのかというご質問だが、国からは特に何か言われてはいない。「作ったらあかん」とは言われてはいない。ただ民間参入を促進するために廃止したということから、法を超えていないかどうかを文章課がチェックして民間参入を阻害しないような内容にはしている。ただ、種子生産には専用の乾燥機、コンバイン等が必要なのですぐに民間が参入するとは考えられない。

堀井修氏 すでになくなってしまっている種子もある。例えば、神楽南蛮(かぐらなんばん)という種子は作り続けると劣化していく。混ざるに決まっている。理論的には温度と湿度がコントロールできれば100年は持つとされているし、それは大丈夫であろうが。

 農水省の高官から聞いたところでは、元事務次官が後継者を指名したのに官邸から相手にされなかったと。次の事務次官は経産省から来るんじゃないかと。で、私は新潟県で有機農業をやっている農家の事務局もやっているが、1㏊とかを作れるわけがない。大規模化できない。そういう価値観でやっていく必要があると。じいさんばあさんが健在なうちは。ここ20年は家が減っていない。わかりやすいのが色々なものを作ってみる有機だ。

会場質問 種子法の廃止によってバイオメジャーが席巻するようになるのではないか。10年、20年後にそれが懸念されるのではないか。久野先生に解説を

久野秀二教授 レジュメの16pにも書いたが、日本モンサントが「とねの恵み」を消費財化しているが、コメは容易ではない。バイエルは農薬企業として重視している。シンジェンタはハイブリッドを開発しているが、これはインディカである。ダウ・デュポンもハイブリッド品種(長粒)だけである。

 BASFも開発して米国では一定のシェアを得ているが、これは日本人好みのコメではない。彼らが得意としているのは大量生産型モデルなので、日本では多国籍企業にとっては旨味のない市場。みつひかりが苦労されているがそれは旨味がないから。だから、参入しない。消費者の嗜好を変えれば入る余地はある。彼らが作っているのは食料ではない。日本の今の農業に入る余地はない。ただ、セグメント化した小さいなところでマージンを取るというビジネスモデルがあれば入ってくる。

 ただそれでも残る懸念は過去の事例である。公共品種があっても安心はできない。大豆がそうである。イギリスの小麦もそうだ。ただ、日本のような小さな大豆、実需者がある以上は米国で起きたような事態は想定できない。

高澤裕考氏 今後どうなっていくのか。いくつかの県は条例を作ったりしているが全部の県の義務はなくなった。条例や要綱をいくつかの県が作っていくことでこれまで通り進められるのであろうか。

寺尾勇人氏 しばらくは変わらない。条例を策定したのも、まずそういうことはないのだが、例えば、新しい部課長が来た時に要綱だけだと止めろと言えなくもないからだ。そして止めた県は他府県から種子をもらうことになるのだろうが、種子農家も高齢化で担い手不足だ。畢竟、民間が種子生産を行うことになる。ただ県が審査しないと品質も不安になる。圃場も純粋性が保てない。民間は利益だけを追求するためだ。

高澤裕考氏 民間がカバーできないものは残るのだろうか。

寺尾勇人氏 根拠はなくなったが今の都道府県で残す必要があるものだと考えている。

堀井修氏 基本的に全部の県が条例を作るべきだと思っている。主食が米である限り守っていかなければならないだろうと。こんなに廃止案を通すとは思っていなかった。一昨年の2月だよ。私が気づいたのは。民間がやろうとしているのは三井化学の話が出たが私は嘘を言っていると思っている。野菜でF1を作ったのは雄性不稔で作っているんだから。農水省も不可逆的に後戻りできない状況にしておいて、OBとかをヘッドハンティングして、貯蔵体制ができているわけで。そういうわけで皆さんも真っ当なものを食わせろ声をあげていくべき。全体の市場原理主義。その一局面なのだと。報道もない。誰が悪いというよりも一般市民の無関心が問題だと思う。食料への権利をこれからも大事にしていく。できるだけ大事にしていく。自分の問題として取り組んでいくことが必要かと思う。

【画像】
久野秀二教授の画像はこのサイトより
大泉一貫特任教授の画像はこのサイトより
磯田宏准教授の画像はこのサイトより
香川文庸教授の画像はこのサイトより

(2018年6月27日投稿)


posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 講演・学習会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする