2018年11月21日

食料安全保障と健康の切り口から、農協、タネを守るための条例制定を支援す~SBCラジオJポイント

はじめに
 日本の多様なタネを守ってきた「種子法」が2018年4月に廃止され、日本農業は大きな転換点にさしかかっている。SBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」というコーナーは「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきた。4月30日の第1弾では山田正彦元農業大臣が登場し、6月4日の第2弾では「日本のタネを守る会」の事務局アドバイザー、印鑰智哉氏が出演した。7月9日の第3弾では、種苗法の改正問題で再び印鑰氏が登場した。
 さらに、8月からは、第4弾、第5弾、第6弾ということで、在来種保全や小森ナスが放送された。8時15~30分まで15分ほどだが、コンパクトになぜ在来種の保全が大切なのかがまとめられており、かつ、それを実践している方の生の声も聞ける。
 第7弾では、長野県の山本農政部長が登場し、長野県の動きが紹介された。さらに、第8弾では、条例制定に向けた農業関係者の受け止めということで、JA長野中央会の春日十三男専務理事が登場した。ということで、この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

タネの生産で農家が生活していける仕組みを作ることが大切

久保正彰 今年4月に日本の稲や麦、大豆の種子の生産・普及を都道府県に義務付けていた主要農作物種子法が、民間企業の参入促進などを目的に、廃止されました。この背景には農業のグローバル化を目指すTPP=環太平洋パートナーシップ協定があるとされていますが、これを受けて、長野県では、県独自の条例を作って、主要農産物の種子を守ろうとしているわけですね。

Masaaki-kubo.jpg生田明子 はい。県独自の条例ですが、今は、仮の名前として「農作物種子条例」と言われていますが、県では来年6月の制定を目指しています。知事は、条例の制定にあたり、様々な立場の人から意見聴取を行うと述べていますが、その代表がJAです。今日はJA長野中央会の春日十三男専務理事にお話を伺いました。

春日専務理事  条例にはですねえ、3点ほどございまして、一つは、本県には県と JAグループと市町村とで出資をして設立しております、一般社団法人、「長野県原種センター」というのがございます。これが、種子生産と供給を担っていたわけでありますので、これは他県にはない機能でございますので、その役割をきちんと担っているということを、条例の中にきちんと位置づけておけばいいのではないかなっていうのがひとつ。

 二つ目は、種子生産は非常にその場所が限定される、特定の地域で隔離しないと、混ざってしまうとなかなかうまくいかないってところがございまして、それがまた非常に高齢化してきていると。生産者はその種子をとることによって、生活していける、非常にその意欲が持てるような、財政面での支援をやはり条例に入れるべきじゃないかと。

 三つ目は、県の予算全体の中にその条例を維持していけるような必要な予算措置をきちんととるような条例にしといてもらいたいっていう、3点でございます。

長野県原種センターがきちんと種子を作り、JAが流通してきたからご飯が食べられてきた

久保正彰 「県原種センター」というのは、時々ニュースになったりするので、他県にもあるんだと思っていたんですが、他県にはない組織なんですね。

2018102903.jpg生田明子 長野県原種センターは昭和62年に設立されまして、長野県の農業関係の試験場で育成されたオリジナル品種を中心に、高品質な種や苗の安定的な生産と供給に取り組んできた施設です。例えば、米の種子の場合、原種センターでまず素になる原種、原原種を作り、それをさらにプロの農家に頼んで増やして、稲作農家に籾の形で届くまでに最低4年以上。こうしてできた種を、すべてJAが安定価格で買い取って、公共品種の種子として、農家が買う仕組みがあったおかげで、私たちはコメが食べられてきたのです。

久保正彰 そんな大変な作業を担う種子農家への支援も要望されてましたね。

生田明子 農業を支える農家の方の8割は60歳以上ですが、種をつくる農家も高齢化しているんですね。でもその種ができなければ、農家も作物を作れないわけですから…。種を作る農家も、食物を作る農家も 両方守るような条例ができれば、一番いいですよね。

久保正彰 ただ、一方で、種子はどれも同じじゃないの。特段、守る必要はあるのかという声も聞こえてきますね。

多様なタネが残されていなければ、食料の安全保障が担保されないという問題がある

生田明子 いえ、種子はどれも同じではないんですね。種子は最も基礎的な農業資材で種子の在り方が農と食の在り方を左右するともいわれている位、大切なものなんです。また、種子法は民間企業の参入を促すために廃止したと言われていますが、民間が開発しているのは、たった数種類のお米なんですね。いま国内には現在300種類以上のコメの品種があるのですが、各県が条例で守らなければ、消えてしまいます。

久保正彰 300種類以上。なぜそんなに、いるんですか。

生田明子 ええ、ちょっと考えると非効率にも思えます。ですが、企業は採算がとれなければ止めてしまいますが、これについても、お話を伺いました。

春日専務理事  世界中が1企業、2企業の種屋さんに取られていけば、同じものを同じ種で作るんで一気に病気になったら全部がダメになるということなんですよね。もうそれだけしか作ってないと、今度は、食料難になっちゃうっていうことですから。それじゃなくて、違ったいろいろな品種のものが近いものであるけども、それはこの病気には強いかもしれないっていうのを残してかないと、食料確保は大変なことになる。

生田明子 農作物の種類が多ければ、万が一、台風や疫病でコメがやられたとしても、他の地域に別の品種が生き残っていれば、主食が手に入らないという国レベルの惨事は防ぐことができるというわけなんです。これまで東北で冷害があったときには、岩手県では籾が手に入らず、石垣島が応援して助けたということがあったんですね。

組合員の健康を守るためには非GMOが大切

生田明子  種子法の廃止はTPPを背景に行われたわけですが、TPPをきっかけに、遺伝子組み換え農産物が、日本に大量に入ってくることも危惧されています。そこでJAとしては、それをずっと反対してきたわけです。

春日専務理事 日本の農家が作ってる、畜産物が食べてるものっていうのは、ある程度遺伝子組み換えをはじいて、使ってる。そういうものは材料にいれないよ、そうでないやつを入れて餌にして、こっちに運んで来てる。で生産した肉や卵やそういうものが市場に出てる。だからある程度安全にしてるという状態になっているんですよね。

Akiko-Ikuta.jpg生田明子 春日専務のお話に登場した選別は、アメリカにあるJA全農の子会社=全農グレインが行っています。主に牛や豚などの家畜の餌を世界中に輸出している会社です。

 現在アメリカ国内で作付けされている大豆、綿、トウモロコシの9割以上で 既に遺伝子が組み換えられ、流通しているといいます。 日本に輸入される遺伝子組み換え作物は 国の安全性審査を経たものですが、 そうしたものを避けたいというニーズに応えるため、この会社では 遺伝子組み換え作物の混入を最大5%以下となるように 一部、 区分管理して、日本国内に入れているとのこと。 そうして配合飼料の製造から提供までを一貫して行っているんです。 一方アメリカでは、遺伝子組み換えをしていない農産物や、 有機農産物ブームが起きています。 現在日本国内では、遺伝子組み換え農産物の商業生産は認められていません。 だからこそ、安心安全な食べ物を作っていく点からも種子が大切だと 春日専務はおっしゃいます。

春日専務理事  安倍さんが食べるものは、外国から安く仕入れりゃそのほうがいい!っていう風に考えてるのかもしれませんよね。それに対しては我々としたら、できるだけ地元のもの、日本のものは日本の中で生産していける、そういう自然な形できちんとやっていけるような、農地を作り、そういう生産者を作って確保していく。その皆さんが生活できるような支援を、やはり県としても国としても、していく必要があるんじゃないかと。

 地場で育った野菜ってのは、それなりに淘汰されて残ってきてるものですから、一番地域にあった形のものになっているわけですよ。きちんと地域にあるべき種は、地域で守って行けるんだっていう形にしないと。そういうことを訴えていかなくてはいけないんじゃないですかね。

久保正彰 効率性よりも多様性というものがなんの世界でも必要じゃないかという気がしますね。

生田明子 条例が制定されるのを前に、今、県内各地では種子や種子条例を巡る勉強会が活発化しています。今日、ご紹介したJA長野中央会などが共催して行われるのが、12月9日(日)「食の安全とタネのはなし2」午後1時30分~3時30分まで、 駒ケ根市のJA上伊那アイパルです。

その他にも、121日と2日には、このコーナーにも登場して下さった印鑰智哉さんの講演会が池田町と筑北村で行われます。イベントについて、詳しくは、このあと番組のHPに掲載しておきます。来週も農業関係者の受け止めをご紹介します。

編集後記

 今、米国では遺伝子組み換え農産物のボイコットと有機農産物ブームが起きている。米国では売れなくなった遺伝組み換え農産物を処分したい。そんな米国にとって、このJA全農の子会社=全農グレインの存在は目の上のたんこぶであろう。農協共同組合法に基づく組織だから買収もできない。オーストラリアには類似した組織があったが、株式会社化されるとわずか一月後に米国のカーギルが買収している。「全農を株式会社して効率化せよ」と言われているのもこうした世界の動きを見ると別の裏の目的があるのではないかと思えてしまう。

 郵政民営化もそうだったが、漁協も解体、農協も解体とJAも組織変更するように、そして、事業を分離するようにと、規制改革会議から叩かれている。農協や漁協等が行ってきた協同組合とは、小規模生産者でも安定して供給できる、相互扶助の組織として、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。日本が守ってきたともに助け合うという「共済」の精神は、資本主義の競争社会の中では理解されない。そして、年内に遺伝子組み換えの表示をなくす改正も消費者庁が進めているが、これも消費者の選択肢をなくすためであろう。疑わしきは安全サイドに立つのが、国民の命を守る政府の責任であるはずなのに日本国中央政府は完全に米国の言いなりになっているように思える、と鈴木宣弘東大教授は述べている。となれば、安心安全な食べ物をつくっていく視点からも種子が大切だとの春日専務の主張は非常にまともに思えてくる。

 JAというととかく既得権益の温存と保身にだけ走る悪の権化のように思える。けれども、もし、そうしたステレオタイプのイメージで農協という組織を見ていたとしたら、それこそ、多国籍企業が仕掛ける洗脳の罠に陥っているのかもしれないのである。こうした世相だからこそ、私たちは人間の善意を信じ、一人一人ができることをしていくしかない。このマイナーなブログもそんな草の根の一人のささやかな抵抗なのだ。
(2018年11月21日投稿)
【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
春日専務理事の画像はこのサイトより
原種センターの画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2018年11月19日、 モーニングワイド ラジオJ
(2) 2018年11月10日、日刊ゲンダイ「ブレーキ役の環境省が…ゲノム編集作物を野放しにする理由


posted by José Mujica at 06:00| Comment(0) | 種子法廃止 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする