2018年12月26日

大欧州、2050年に有機自給に向けて転換か~ブラジルからのダイズ輸入ゼロに

トリビューン誌 アグロエコロジーとは何なのでしょうか。

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ジャマリー・オベール博士 私どもの研究は、20世紀の幕開けの時にまでさかのぼるシンプルな定義から始めました。それは自然循環を最大限に使用する農学と実践のセットです。この原則には、作物と家畜が含まれます。

 まず、アグロエコロジーでは、地力は最も狭い領域で循環します。今日は、そのかわりに、地力は大量の窒素投入に依存しています。それは、ラテンアメリカからの家畜飼料用のダイズの輸入と化学肥料の使用によって可能となっています。環境に対するそのネガティブな影響にもかかわらずです。

そして、農薬の影響も不確実です。消費者の健康に関してはまだ確実ではありませんが、農業労働者の健康に関しては証明されています。そこで、私どもはそれらを完全になくすという最も頑強な選択を選びました。

トリビューン誌 アグロエコロジーは気候変動の解決策となるのでしょうか。

ジャマリー・オベール博士 ええ。これが私どもの研究の主な成果のひとつです。提案をしている「アグロエコロジーのための10年」というシナリオに従うことによって、ヨーロッパ農業は40%も排出量を削減できることがわかります。より詳しく申し上げますと、農業実践と結びつく直接的な排出量(窒素肥料、反芻動物のゲップ、機械によるエネルギー消費、家畜排泄物等)が32%削減され、輸入家畜飼料の製造と関連した森林伐採を含めて、間接的には8%減少します。

 また、私どものシナリオでは、より多様化された農業を重視し、とりわけ、ローカルな生物多様性が維持されるおかげで、標準的なものよりも、レジリアンスがより考慮され、適応性が高いというポジティブな効果もあります。

トリビューン誌 生物多様性 …。あなたのモデルではどれほどそれは保護されるのでしょうか。

ジャマリー・オベール博士 私どものシナリオは、生物多様性を維持しつつ、地球温暖化に対処するという目標とのバランスを図ることを目指しています。そこで、カーボン中立を目的とするものとは互換性を持ちません。この理由から、私どものシナリオは、例えば、バイオガスやバイオ燃料の形で、再生可能エネルギー生産用のバイオマスを提供しないことを選びました。同じ理由から、炭素隔離のための再植林用の農地もとても狭い面積しか確保しておりません。再植林用に農地を解放するために、集約的な農業生産を行い、したがって農薬の使用量を増やすことに重点をおく、それ以外のシナリオとは違うのです。とはいえ、私どものモデルは、アグロフォレストリー、生け垣、自然の大草原の開発を中心に据えていますから、炭素隔離の機会はこれらから提供されます。私どもはまだそれらを定量化していません。

トリビューン誌 ですが、このアグロエコロジーは増加する国民を養うことができるのでしょうか。

ジャマリー・オベール博士 はい。生産量は約35%低下します。にもかかわらず、私どものシナリオでは、2050年に5億3000万人のヨーロッパ人を養うことができます。これは、確実に食が変わることを意味します。

 とはいえ、消費者の健康、気候、生物多様性を保全するため、果物や野菜の割合を増やし、カロリー、動物性食品、そして、砂糖の消費量を減らす必要については、今も科学的なコンセンサスがあります。

 食料の生産量のニーズを計算するために、私どもは、文化的な伝統を尊重しつつ、フランス人、ヨーロッパ人、そして、WHOの推薦を考慮しました。

 私どものモデルでは、輸出能力を維持することも可能です。開発途上諸国で起こる可能性がある食料危機に対応するための穀類。そして、ヨーロッパの貿易バランスで重要な役割を演ずる酪農品やワイン製品においてもです。

トリビューン誌 ヨーロッパはどうすればこの方向に向かうことができるのでしょうか。

ジャマリー・オベール博士 EUとその加盟国は、食料問題を政治問題としなければなりません。ですが、現在、食料問題には、気候変動問題や生物多様性問題が組み込まれず、健康や栄養的に安全な食べ物に限られています。

 ヨーロッパでは農業や食の部門はGDPの最初の項目となっており、輸出によってかなりの外貨の供給源となっているのみならず、雇用の最大の提供元でもあることから、その経済的な理由から、社会現象としての食料は公的な権力を脱しています。

 ですが、EUは貿易競争の問題にも対処しなければなりません。今日のWHOでは、社会や環境的なスタンダードに基いて生産方法を統治し、関税障壁を導入することも許しません。この文脈によって、ヨーロッパの農民が転換することが難しくなっています。一部の国民は、持続可能な農産物を選択することが優先されない。あるいは、金銭的に可能ではありません。そこで、私たちが支持するアグロエコロジー的な転換の原則には縛られない輸入品を消費してしまうのです。

 ですから、この転換に農産物価格の値上がりが付随すれば、アグロエコロジーのシェア率を高めることができます。2つの面もリンクできます。消費者が持続可能な生産方法の必要性を確信すればするほど、そして、それを選択するための経済手段を手にすればするほどより自然に最も価値(virtuous)ある農産物へと目を向けることとなり、規制もより必要ではなくなるのです。

トリビューン誌 このトランジションは先進諸国のためだけの贅沢なものなのではないのですか。農業の生産性がいまだに課題となっている国においても可能なのでしょうか。

ジャマリー・オベール博士 慣行農業と比較して、アグロエコロジーは高価な「贅沢品」だと見られることも時にはあります。ですが、それは慣行農業システムではトータルなコストが反映されていないからだけなのです。健康へのコストや環境の劣化はとりわけそうで、そのネガティブな外部不経済の代償を社会が支払っているのです。

 第二に、ヨーロッパにおける「収量」低下は、ある文脈では、システムの収量低下と革新不足という悪循環に閉じ込められますが、アグロエコロジーはおそらく「生産性」の向上につながるはずです。アグロエコロジーは、すこぶる知識集約型のプロジェクトなのです。とはいえ、そこにおける「イノベーション」は、ハイテクの開発よりも、むしろより生態学的なプロセスの理解に基づくものなのです。

編集後記

 2018年12月14日に衆議院多目的ホールで開催されたゼン・ハニーカットさんの講演では、農薬(グリホサート)カット、そして、牛が草をはむ草原の再生とカバークロップによる土壌への炭素隔離が主張されていて驚いた。
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 二酸化炭素の削減とアグロエコロジーとは、まさに世界的にホットな話題となっているのだ。まさに、築地書館から出版されている『土、牛、微生物』の世界そのものだ。どうも農政もかなり発想を柔軟にして考えなければならない時代になってきたようだ。

 ロシアが反GMOで有機農業で自給を目指している程度の情報ならば、「反米のプーチンならばいかにもやりそうなことだ。それは、反GMOという文脈に違いない」と政治的な視点から解釈できる。けれども、かの大欧州が脱グリホサートで自給を目指すとならば、いかなモンサントといえどもひるむのではあるまいか。

「露、独、仏、西、伊、大欧州、生態農業に向けて一大転換す。欧州の農政情勢は不可解なり。我が帝国農政も緊急に再考の要あり」

 戦前、昭和天皇の御代ならば、新聞の一面にこうした記事がデカデカと載り、農商務省と内務省とは緊急に検討を着手したはずである。けれども、いまは、なぜか新聞にこうした情報が載らない。これは驚くべきことのように思える。拙ブログがこうした情報をちまちまと発信しているのも、そのためなのである。
(2018年12月26日投稿)

【画像】
ジャマリー・オベール博士(Pierre-Marie Aubert)の画像はこのサイトより
築地書館の『土、牛、微生物』の画像はこのサイトより

【引用文献】
1)archyworld, "The European Union must make food a political subject" (Pierre-Marie Aubert), Archy Worldys, Dec20, 2018.


posted by José Mujica at 07:00| Comment(0) | アグロエコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする