2019年01月25日

種子法廃止に抵抗せよ

2019年1月25日(金)・日本農業新聞(1面)

種子法廃止に危機感 条例化・準備 10道県 市町村議会 制定へ意見書続々 本紙調べ

 主要農作物種子法(種子法)の廃止を受け、日本農業新聞が47都道府県に聞き取り調査した結果、同法に代わる独自の条例を既に制定したのは5県、さらに来年度施行に向けて準備を進めるのは5道県に上ることが分かった。その他、市町村の地方議会から種子法に関する意見書を受け取っている県議会は10県。米や麦、大豆の種子の安定供給への危機感は強く、条例化を求める動きが自治体で広がっている。

 条例を既に制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫。全国筆頭の種子産地である富山県は、1月に県主要農作物種子生産条例を施行した。種子生産者に安心して栽培を続けてもらう考えだ。

 来年度の施行に向けて準備をするのは北海道、福井、長野、岐阜、宮崎の5道県。福井県は種子の品種開発や生産に関する独自の条例の骨子案を示して2月4日までパブリックコメントを募集する。4月施行を目指す。

 政府は、米、麦、大豆の種子の生産と普及を都道府県に義務付けていた種子法を2018年4月1日で廃止した。公的機関中心の種子開発から民間参入を促す狙いだったが、行政の取り組みの後退や将来的な種子の高騰、外資系企業の独占などを懸念する声が続出。農業県などが先行して条例化に踏み切っている。

 条例に向けて具体的な動きを示していないものの、地方議会から意見書が提出された県は10県に上った。要領・要綱などで種子法廃止後も栽培体制を維持するものの、農家らから品質確保などで不安の声が広がっているためだ。

 滋賀県は県内19市町のうち大津市、東近江市など14市町の議会から県条例を求める意見書が出ている。同県は「他県の状況や生産現場の声を踏まえて研究していく」(農業経営課)と強調。福岡県も、18年12月時点で県内全市町村の2割に当たる12市町議会から県への意見書が出ている。

 18年12月には栃木県上三川町議会、千葉県匝瑳市議会などが県に条例制定などを求めた。上三川町は「農家である議員の発案で国と県に要望書を出すことにした」(議会事務局)と説明。年明けも、種子法に関する意見書を市町村議会が出す動きが相次ぐ。福岡県小竹町議会は1月16日、宮城県栗原市議会は18日に県に意見書を出した。

 条例を既に制定した県は「他県から参考に教えてほしいという問い合わせが相次いでいる」と明かす。条例を制定しておらず、地方議会から意見書を受け取っていない県の担当者も「廃止後も従来通りの対応を要領で進めているので問題ない。ただ、農業に力を入れる中で他県での条例化の動きは無視できない」などと話す。

 JAグループや農業、消費者団体などから陳情や要望されている県も複数あり、今後も条例化の動きは広がる見通しだ。

<ことば> 主要農作物種子法

 1952年に制定、2018年4月に廃止された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産、普及することを義務付けていた。農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及させており、種子開発への民間参入を阻害しているなどとして、17年の通常国会に同法の廃止法案を提出。自民党などの賛成多数で可決、成立した。

2019年1月25日(金)・日本農業新聞

種子を守れ うねり 地方から 生消一体、与野党超えて

 政府が2018年4月1日付で廃止した主要農作物種子法に対し、農家らが都道府県に代替の条例制定を求める声が高まっている。各自治体は要領・要綱など内規で従来通りの対応を進めるものの、超党派で県に条例を求める意見書を採択した市町村議会も相次ぐ。国会にもここ2年で地方議会から100を超す種子関連の意見書が提出されるなど、廃止に危機感が広がる。

安定供給へ「条例必要」

 種子産地の福岡県大牟田市。同市議会では18年9月、県に条例を求める意見書を可決した。共産党から公明党、無所属、自民党議員23人が全会一致で賛成した。

 同市で水稲「ヒノヒカリ」1㏊、麦5㏊の種子生産を手掛ける境公司さん(71)は、自民党議員で同市議長を務める。

「農家として米や麦、大豆の種子を安定的に確保する必要がある。農家の将来を左右するので、党派超えて条例の必要性を県に求めていく」と境さん。国政での自民党の決断に反旗を翻すのではとの見方もあるが、農家にとって「種子は根幹」。条例は必要だとの考えを貫く。

 グローバル化や市場競争、民間参入などを全否定するわけではないが、種子法廃止で将来的に、品質の担保や安定的な農家への種子供給、奨励品種の後退など課題が生じる恐れを懸念するという。

 同市では、消費者と農家の有志ら20人でつくる「いのちのたんぼの会」が種子法に関する勉強会を開き、問題意識を広く共有してきた。代表の樋口茂敏さん(72)は「種子法廃止も水道法改正も環太平洋連携協定(TPP)も根幹は同じで、米国に追従するもの」と訴える。

 支持政党や政権への考え方は異なる境さんと樋口さん。これまで接点は乏しかったが、種子を尊ぶ気持ちは同じだ。「農家の所得向上や規模拡大は重要だが、ここ最近の農政は地域を置き去りにし、バランスを欠いている」と口をそろえる。2人は今後、条例化に向け協力していく。

 県に種子に関する条例制定を求めた市町村議会は、八女市など昨年末までで12市町に上がる。4月に控える県知事選で、境さんは「種子の条例化は争点の一つになる」と見る。

 条例を制定した5県、条例化に向けて準備を進める5県では、党派の枠組みを超えて議会で議論が進んだ。岐阜県は種子法と同様に種子の安定供給などをうたう条例を4月に施行する見通しだ。同県議会では、自民党系会派が条例の重要性を他党会派に呼び掛けて議論してきた。自民党員で大垣市議の稲作農家、岩井豊太郎さん(74)は「阿部政権が廃止した種子法だが、なぜ廃止か、いまだに納得ができず、条例が必要だと考えた。種子に自民も野党も関係ない」と見る。

 国会には、種子に関する100を超す意見書が地方から寄せられる。衆議院請願課によると、17年1月から19年1月22日までに衆院に地方議会から出された件名に「種子」が含まれる意見書は126。同期間で参院は142に上る。内容は種子法の復活や新たな法律制定、種子保全の要望などだ。署名約17万筆を集めた「日本の種を守る会」も昨年11月、与党国会議員に要請している。種子への関心は全国的な高まりで、大きなうねりとなってきた。

 愛知県岩倉市は1月、種子法廃止に伴い、安定供給を求める意見書を国会や安倍晋三首相らに提出した。元JA愛知北職員で農家の市議、櫻井伸賢さん(45)が働き掛け、全会一致で採択になった。櫻井さんは「国は種子を大切に思う現場の気持ちを受け止めてほしい」と願う。



posted by José Mujica at 07:00| Comment(0) | 種子法廃止 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする