2017年09月14日

遺伝子組換えで有機農業が急増する米国

毎年3割で急増する米国の有機市場

 印鑰智哉氏は言う。

Innyaku.jpg「海外と日本とでは、いま非常に状況が違ってきています。海外では食の危険性が語られ、その結果、有機農業も大きく前進しているのです」(5)

  意外に思えるが、いま米国ではオーガニック市場が毎年3割以上の勢いで急速に伸びているという。そして、その背景には遺伝子組換え食品に対する消費者の不 信感の高まりがある。例えば、市民団体「マムズ・アクロス・アメリカ(Moms Across America)」は、全米各地の母親たちをつないで、遺伝子組換え食品にNOを唱える運動を展開している(2)

大人よりも長く生きられない米国の子どもたち

 印鑰智哉氏によれば、今、米国では慢性疾患が急増している。3人に1人が慢性疾患、糖尿病だという。

「自閉症の子どもたちが増え、パーキンソン病、アルツハイマーも増えています。そして、平均寿命も短くなってきている。今、私たちの子どもたちは私たちよりも短い人生しか生きられないのです」(5)

 驚くべきことだが、いま米国では子どもの3人に1人が肥満、6人に1人が学習障害、9人に1人が喘息、12人に一人が食物アレルギー、20人に一人が発作性疾患を持っている(1,2)。多くの子どもたちがADHD、食物アレルギー、自閉症等の疾患を抱えている。「食べもののアレルギーで子どもが死ぬこともある」。これが米国の新たな常識なのである(1)

 「それでは、何がこの原因なのか。このグラフをご覧いただきたい」と印鑰氏はパワーポイントで糖尿病患者の割合とグリフォサートの使用量がパラレルであることを説明する。

「もちろん、相関関係があるからと言って、そこに因果関係があるとは言えません。複合的な関係も考えられ、その原因は遺伝子組換え農産物だけではないかもしれません。ですが、遺伝子組換え食品が慢性疾患を起こすという研究結果も急増しているのです。そこで、米国のお母さんたちが今、面白い動きをしています。子どもたちのアレルギーを防ごうと、自分たちの台所から遺伝子組換え食品を追放する運動を始めているのですが、子どもたちの病状が激変して改善するのです」(5)

アレルギー反応で生死をさまよった息子

「私は学者でも医者でもありません。でも母親のプロです」

Zen-Honeycutt.jpg  前述したマムズ・アクロス・アメリカを設立したゼン・ハニーカット(Zen Honeycutt)さんはこう言う。今は、遺伝子組換え食品反対運動の急先鋒の活動家として世界を飛び回るゼンさんだが、少し前までは、子どもたちのアレルギーに悩む、どこにでもいる母親だった(3)。そして、三人いる息子たち全員がアレルギーで(2)、感謝祭のディナーに入っていたクルミが原因で一人はアナフィラキシーショックで生死をさまよった(2,3)

「子どもを思う母親の調査能力はFBIにも勝るという言葉がありますが、私もそんな母親の1人になったのです」とゼンさんは言う(3)

 息子の食品アレルギーをなんとかしたいと、食べものや米国の子どもたちの健康状態を調べ、世界中の優秀な科学者や医師、農家から話を聞く中で米国人が世界で最も多くの遺伝子組換え食品を消費しているという食品の問題にゆきあたるのである(2,3)

世界最大のGM消費大国

「その大きな原因の一つが、遺伝子組み換え作物に使われる農薬(除草剤)であることは間違いありません。米国人は世界で最もGM食品を食べ、最も不健康と言えます」(1)

 ゼンさんによれば、米国では加工食品のうち、85%に何らかの遺伝子組換え原料が使われているが(1,2)、表示義務はない(1)

「遺伝子組換え作物は主に3種類にわけられます。一つは殺虫毒素を持つBt細菌の遺伝子が組み込まれ、作物そのものが殺虫成分を持つものです。Btコーンは、 米国では農薬として登録されています。二つ目は、除草剤グリフォサート耐性を持つものです。そして、三つ目は、望む形質を持たせるため特定の遺伝子を発現 させたり、眠らせたりしたものです。こうした操作をすると、本来発現すべきでない遺伝子が発現したり、本来は機能しなければいけない遺伝子を眠らせてしま いかねないと懸念する遺伝学者もいます。こうした食べ物を子どもが食べたとき、何が起きるのかはわかっていません」(2)

 では、Bt毒素、グリフォサート、抗生物質耐性タンパク、予想不可能な突然変異物質、様々なアレルゲンがどのような問題を引き起こしているのか。具体的に見てみよう(5)

虫の腸を破壊するBt毒素はリーキガットを引き起こす

  遺伝子組換えトウモロコシそのものが殺虫剤として登録されているのは、それに含まれるBt毒素は虫の腸に穴を開けて殺すからである。食べた虫は腹が膨れあがって破裂する。だとすると、人間を含めて、哺乳類の腸にも穴が空くのではないかという懸念が起きる。印鑰智哉氏は言う。

「企業は、Bt毒素が消化液によって分解されてしまうため、遺伝子組換え農産物は哺乳類には問題がなく、大丈夫だと言ってきました。ですが、カナダのシェルブ ルック大学病院センターの産婦人科の医師たちが調べてみると、妊婦の血液の93%、胎児の血液の80%からBt毒素が発見されているのです。そして、いま、リーキーガット症候群が問題となっていますが、遺伝子組換え農産物を食べたラットはリーキーガットになっているのです」(5)

グリフォサートは腸内細菌を殺す

 第二の問題がモンサントの除草剤、グリフォサートである(5)。グリフォサートは、植物を全部枯らす除草剤の主成分だが、草が枯れてしまうため、これまでは体内に摂取されることはなかった。けれども、遺伝子組換え技術によって除草剤を散布しても枯れない作物が登場する。その作物は散布された除草剤を大量に吸収している(1)。遺伝子組換え作物の80%は除草剤耐性で、この栽培とセットとして使われるのが(2)、モンサントが開発した農薬ラウンドアップである。そして、その主成分グリフォサートは2015年にWHOも発癌物質と認めた危険な化学物質なのである(1,5)

 では、グリフォサートの何が問題なのか。印鑰智哉氏はまず、腸内細菌がダメージを受けることを指摘する。

  生物にとってベンゼン環を合成することはさほど容易ではない。事実、動物にはベンゼン環の合成能がない。このため、ベンゼン環を有するアミノ酸は必須アミノ酸として食べ物から摂取しなければならない。けれども、植物には「シキミ酸経路」と呼ばれる経路を持つ。この経路によってベンゼン環が合成されているこ とが知られている。そして、グリフォサートで植物が枯れるのは、このアミノ酸を合成するシキミ経路のプロセスが破壊されるからなのである。

 けれども、微生物も「シキミ酸経路」を持ち、これでアミノ酸を合成している。そこで、グリフォサートは善玉菌の活動を乱す(5)。グリフォサートは抗菌剤としても登録されており、善玉菌を殺し、サルモネラ菌や大腸菌といった悪玉菌が増殖してしまう(1,2)

  人間は腸内細菌が合成するビタミンを摂取したりミネラルを吸収することで健康に生きているため、腸内細菌のバランスが壊れると過敏性腸症候群が起きる。そして、自閉症も腸内細菌の乱れ、腸に疾患があることが原因であることがわかっている。腸の問題が脳に影響を及ぼすのは意外に思えるが、腸と脳とは「迷走神経」によって密着している。そして、腸は第二の脳とも呼ばれる。つまり、腸に問題が起きることで自閉症になるメカニズムがあるのである(5)

子どもの発達障害を引き起こすグリフォサート

 グリフォサートには神経毒性もある(1,5)。善玉菌が殺されることによって善玉菌が生成しているセロトニン(インシュリンを抑制、感情をコントロール)やメラトニン等の重要なホルモンも不足するが(2)、グリフォサートそのものもセロトニン、メラトニン、ドーパミンの働きを抑制する。メラトニンは睡眠ホルモンであるため、これが不足すると寝られなくなる。また、ドーパミンは意欲をもたらすホルモンで、このバランスが壊れると精神疾患が起きる(5)

  グリフォサートが直撃するのは、子どもたちの、とりわけ、デリケートな胎児や乳幼児の発達途中の脳である。有害物質から脳を守る役割を果たす脳関門が未発達なため、脳に入り込む可能性が高い。脳の神経細胞が繋がっていくためのシナプスの働きを阻害し、神経伝達がうまくいかなかったり、興奮状態が収まらないといった異常が起きている。米国の小児医学会は、農薬が子どもたちの発達に異常をもたらすことを認めている。その危険性を裏付ける様々な研究が欧米でなされ、憂慮すべき結果が報告されている(1)。つまり、幼児や胎児が最もダメージを受け、自閉症やADHDを起こす(5)

グリフォサートはミネラル吸収を阻害する

  ラウンドアップは1970年にモンサントが開発した除草剤だが、その主成分であるグリフォサートは農薬として開発された農薬ではない。その10年前に産業用の配管洗浄液として特許が取られていた。つまり、グリフォサートには金属イオンと結合する性質がある。このため、配管が綺麗になる。モンサントの化学者 は上述した植物の生育抑制効果があることから除草剤として特許を取ったのだが、グリフォサートの金属イオンと結合する性質が問題なのである。

 体内には鉄や亜鉛等、金属が重要な役割を果たす酵素が数多くあるが、そこにグリフォサートが結合するとその酵素の作用を阻害してしまう(4)

 金属イオンと結合すると植物もミネラル分を吸収できなくなってしまう。今、栄養失調になっていく子どもたちが多いのだが、これもグリフォサートが原因とされる(5)。つまり、グリフォサートは体内に必要な栄養素を取り込めなくもする(1,2)

 なお、グリフォサートは2000年に特許が失効。そして、誰もが作れるようになる。このドル箱を失うことを恐れて、モンサント社は遺伝子組換え農産物を作り出したとも言われている(5)

 さらに、グリフォサートは、DNAの突然変異を起こし(1)、発がんとの因果関係が指摘され(2)、米国の環境保護局(EPA)の資料でも、内分泌かく乱作用を引き起こしたり、肝臓や腎臓を損傷してしまう可能性が指摘されている(1,2)。生殖にも影響を及ぼし、女性の流産や不妊、男性の精子破壊、性同一性障害の原因とも言われている(1,5)。とはいえ、米国政府は身体への影響についての検査を全く行っていない(1)

抗生物質が効かなくなる

  遺伝子組換え農産物にはさらに問題がある。それは、抗生物質の問題である。抗生物質と遺伝子組換え技術は切っても切り離せない。遺伝子組換え農産物は電子銃や遺伝子を組換えるバクテリア(アグロバクテリウム)の性質を使用して、強制的に遺伝子を埋め込む技術なのだが、その成功率は数パーセントにすぎない。 そして、組換えに成功したかどうかを確かめるため、抗生物質をマーカーとして使っている。それに耐えられるものは死なない。そこで、こうした抗生物質耐性 がある食べ物を20年食べ続けるとどうなるか。おそらく、抗生物質が効かなくなってくる。

 このため、ノルウェー政府は魚の餌に抗生物質を入れることを禁じている。一方、チリで養殖された魚は遺伝子組換え大豆が餌なので入っている。

 また、グリフォサートそのものが抗生物質である。米国の抗生物質は80%が工業型畜産で家畜を対象に使われている。感染症を防ぐことと、抗生物質を摂取させると太るためである。そこで、豚そのものが抗生物質が効かなくなってきている。

  人間でも、現在、最大の脅威になってくるのが耐性物質耐性菌である。現在、世界ではこれが原因で70万人死んでいるが、2050年には1000万人が死ぬとも言われている。耐性物質耐性菌の増加の推移をみていくと、ファクトリー・ファーミングでまず増え始め、次に1996年の遺伝子組換え農産物で増えているのである(5)

市民の手で、グリフォサートの残留検査を実施

 ゼンさんに話を戻そう。ゼンさんは、食卓からGM食品を排除して有機食品に切り替えたところ、息子たちの病状は改善した(3)。アレルギー指数は19から0.2と軽くなり、医師からは、もう生死をさまようような危険はないと言われる(2)

 人間には自然治癒力がある。印鑰智哉氏もこう言う。

「人間の体は食べているものでできていますが、身体の成分は変わっています。そこで、有機野菜を食べると2週間で健康になるとのデータがあります」(5)

 また、マムズ・アクロス・アメリカのフェイスブックには1週間で30万人近くの訪問があり、子どもの体調が改善したという同様の経験談が寄せられる。けれども、遺伝子組換え推進派は「科学的証拠がない」と攻撃された。そこで、ゼンさんたちは証拠を集めることにした(2,3)。GM作物で使われる農薬ラウンドアップの主成分グリフォサートの母乳の尿の検査を実施したのだ(3)

「市民による初のグリフォサートの検査を行いました。2番目の息子の尿からは、1リットル中に8.7μgという値が出ました。これは、ヨーロッパで環境保護団 体が行った同様の検査の最大値1.82μgの4倍以上の数字です。私は非常に怒りを覚えました。遺伝子組換えをやめて約1年もたっていたのに、なぜこんな 数値が検知されるのかと。そこでわかったことのは、グルテンにアレルギーがある他の息子たちと違って、この子だけが小麦を食べていたということです」(2)

コムギやワクチンも危険だった

「米国では、遺伝子組換えでなくても小麦や大豆の収穫時に乾燥を早めるためにグリフォサートが使われています。小麦は遺伝子組換えでないのに、有機でない限りはグリフォサートが使われているのです。そこで、とにかく有機の食品を選び、グリフォサートを徹底的に除去する食生活に変えました。さらに腸の善玉菌を増 やすために発酵食品をとるようにしました。その結果、6週間後にもう1回検査をしたら、グリフォサートは不検出になっていました」(2)

 印鑰智哉氏も警告する。

「小麦は除草剤で枯れません。そこで、収穫に便利なので刈り取り前に小麦に散布をし始めているのです。いま、アレルギーやセリアック病が増えていますが、それは、小麦でもグリフォサートが使われ始めていることが大きいのではないかと思います。

 今、日本政府はひまわりでは基準値を400倍に緩和しています。小麦は6倍の緩和だけですが、トータルでの消費量は小麦が多い。うどんにもソバにも入っています。そこで、遺伝子組換え農産物を避けているだけでは防げません。小麦が危ないのです」(5)

 さらにゼンさんはワクチンすら危ないという。

「私たちが行った検査では、驚くべきことに、癌の子どもの栄養補給剤や(2)、子ども用ワクチンの検体5本すべてからグリフォサートが検出されました。ワクチンは牛や豚由来のゼラチンで作られており、遺伝子組換えの飼料にグリフォサートが残留しているためだと思います(1,2)。けれども、アメリカ食品医薬品局(FDE)やアメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、全くこのことを取り上げていません」(2)

胎児は危険にさらされている

  マムズ・アクロス・アメリカは、情報公開法を使って、遺伝子組換え大手企業によるグリフォサートの安全評価資料を入手した。クルマエビの一種、ホワイト シュリンプは、グリフォサートの含有濃度が5.2ppmを超える環境だと4日間で死亡するという記述があった。けれども、アメリカでは砂糖の原料になる甜 菜には25ppmのグリフォサートの残留が許可されている。それ以外の研究では濃い塩水の中でも、グリフォサートが325日間活性を続けるということがわかっている。

 ゼンさんは言う。

「胎児の最初の大きさはエビぐらいです。そして羊水は濃い塩水です。妊婦たちが毒性にさらされていると疑わざるをえません」(2)

母親たちが地元でできる運動を展開

「とはいえ、国が安全として認めている以上、危険性はないのではないか」という会場からの質問に対して、印鑰氏はこう警告する。

Steven-Druker.jpg「遺 伝子組換えの危険性については、スティーブン・M・ドルーカー(Steven M. Druker)博士が書いている『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実(私たちはどのように騙されてきたのか?)』(2016)日経BP社が参考となりま すが、そもそもFDAの安全性のルールを作ったのはモンサント社なのです。日本でも90日間動物実験したところ問題がないとされていますが、フランスの カーン大学のセラリーニ教授がそれ以上の期間の動物実験をして見たところ、90日をすぎると腫瘍ができることがわかりました。つまり、今の安全性は紛い物の安全性なのです」(5)

 このフランスの実験結果や前述したカナダ・シャーブルック大学の調査によって妊婦の体内にGM作物と関連した除草剤や殺虫毒素が蓄積し、胎児に移行している可能性があることを知って(3)、子どものアレルギーで悩み苦しむ母親たちとともにゼンさんは、2013年に前述した「マムズ・アクロス・アメリカ」を立ち上げるのである(2,3)

 そして団体の設立と同時にゼンさんたちは、GM食品の表示を求めた(3)。さらに、多くの母親たちに遺伝子組換え食品の危険性の問題を知らせ、無理なく地元でできる運動をどのように展開すればよいのかを考えた(2)。そこで、ゼンさんたちが考えたのが、多くの人が集まる7月4日のアメリカ独立記念日のイベントを利用することだった。ワシントンDCまでは行けないとしても、地元で行われるパレードなら参加できる(2,3)。そこで、参加を呼び掛けたところ、2013年には44州で172のグループが食品表示義務を求めるデモが行われた(2,3,5)。これを聞いてカナダ、アフリカとアイルランドの母親たちも同様のネットワークを立ち上げていく(3)

成功した表示と連邦法による後退

 母親たちによるデモは全米に広がっていく。全米各地で反対運動のうねりが起こり(2)、2014年にはバーモント州で、全米初となる遺伝子組換え食品の表示義務化法が成立した(2)。EUと同じく0.9%以上の混入がある食品に表示を義務付ける法案が可決された(1)。けれども、モンサントもさるものである。政府へのロビー活動によって、2016年7月には合衆国連邦議会で、遺伝子組換え食品表示義務化法(通称、GMO表示義務法)を成立させた。これによって、先に成立した州法が無効化され、大きな抜け穴ができてしまったのである(1,2)。 とはいえ、「消費者には知る権利がある」と表示を求める市民の声は大きくなる一方である。非GM食品の需要も急速に高まっている。GMOを排除し非GMO の表示をする大手食品会社も次々に現れ、多くのスーパーでは非GMOと表示した食品がGM食品の隣に陳列され、消費者が選択できるようになっている(1)

有機は健康のことを考えれば高くない

「有機の食品は高いといわれますが、健康被害や遺伝子組換えに使われている税金などのことを考えれば、本当はとても安いのではないかと思います」とゼンさんは言う(2)

 印鑰智哉氏も言う。

「い ま、ウォールマートでは非遺伝子組換え食品が5年で4倍も増えています。非GMで作った肉が4年で7倍も増えています。スーパー、コストコ (COSTCO)でも入荷する都度、有機農産物が売れてしまう。毎年10%で伸びているのです。そこで、『作ってくれ』と農家にスーパー側から依頼しているようにすらなっているのです」(5)

私たちの手で未来は変えられる

 ゼンさんたちの原動力は、子どもたちの健康がGM食品で脅かされている現状を何とかしたいという思いである(3)。「食べものを買うのは85%が母親です(1)。選ぶ権利は母親の手にあります(3)。母親たちが非GM食品や有機食品を買えば、非GMOの生産者も増えます(1)。有機食品を買うだけで、私たちの健康、未来、国の未来も変えることができます。地元の農家を守り、豊かで健康な大地を取り戻すこともできるはずです(2)。母親たちが自分たちに食べものを選ぶ決定権があることを自覚し、自分たちで変えていけると知ることが大事なのです(1)。私たちは絶対にあきらめません。なぜなら、子どもへの愛は絶対に終わらないからです」(2)

 子どもの健康や未来だけでなく、国の未来、世界を変えることができると、ゼンさんは確信を持って活動している(3)

口コミで広がる草の根のしたたかさ

  母親たちの止められない愛の力で現状を変えていこう、まず自分の地域の母親たちに広げ、それを全米に広げていく。「マムズ・アクロス・アメリカ」では地域 毎のリーダーがホームパーティなどで10人に話し、それを聞いた人がまた10人に伝えるというように活動を広げてきた。現在600人の地域リーダーがボラ ンティアで活動している。地域でも小学校でも機会あるごとに話し、SNSも活用している。

「誰かがやってくれる」ではなく、「自分が動く」ことが大事です。一人ひとりができることをすれば必ず、生産現場も市場も、ひいては国も動かすことができるはずです(1)

世界の動きは種子を守る反GMOに

 印鑰智哉氏も言う。

「実は、遺伝子組換え農産物は、壁にぶつかって2015年に初めて減少しました。生産している28カ国のうち2カ国が止めたからです。例えば、ブルキナファソでは遺伝子組換えコットンを始めたところ、高品質が落ちてしまい、大被害を受けてしまった。そこで、遺伝子組換えを止める動きが起きているのです」(5)

  世界には6つの遺伝子組換え農産物を作っている企業があるが、彼らが種子市場を独占している。種子市場の6割が彼らの支配されている。しかし、南の世界の 農民の9割は自家採種している。そこで、それを犯罪にして、種子を独占しようとする法律が世界を駆け巡っている。2011年にその一つが、メキシコで法案として出た。このモンサントの法案は、ラテンアメリカでの強力な反対運動によって廃案となったという(5)

  そして、種子の多様性条約や資源条約を批准する国は世界中で増えている。印鑰智哉氏によれば、それが世界の潮流の主流だという。食べたいものは食べたいと 人々は、食料主権やアグロエコロジーを求めている。2013年にはブラジルで「クリオーロ種子条項」が作られている。国連でも「小農民の権利宣言」を作ろ うとしている。これも、背景にはビア・カンペシーナという農民の運動がある(5)

 遺伝子組換え農産物には、乾燥地帯でも育つというポジティブな部分があると言われてきた。そして、GMOを用いなければ世界を養えないとも言われてきた。けれども、これも誤った神話だ、と印鑰智哉氏は言う。

「米国科学アカデミーは保守的な団体なのですが、2016年に『遺伝子組換えでは収量は上がらない』とはっきり述べています。遺伝子組換え企業は『乾燥に耐えるためには遺伝子組換え農産物が必要だ』と言っています。ですが、そもそも、遺伝子組換え農産物は灌漑設備を整備された米国の圃場を前提としています。そして、化学肥料や農薬の使用も前提としています。インドやアフリカのような天水農業の地域では播種しても全滅してしまうのです。一方、在来種には遺伝子を入れなくても乾燥に耐えているものがあります。つまり、乾燥に耐えるモノには遺伝子組換え農産物もあれば在来種にもあるのです。そして、在来種で十分に耐 えられるものがあるのであればその方がいい。遺伝子組換えがなければ食糧危機が克服できないというのは大きな嘘なのです(5)」。

世界と逆行する日本の動き~規制緩和を進める日本は遺伝子組換えのゴミ捨て場に

  日本でも2004~2015年にかけ、発達障害児が約5倍に急増している。子どもたちの15人に1人の割合にのぼる。文部科学省もようやく発達障害児の 増加を認めるようになった(3)。ところが、今、日本では非遺伝子組換えトウモロコシの割合が3割に減っている。以前は7割もあったのが減っている。なぜか。印鑰智哉氏の説明を聞いてみよう。

「その理由の一つが、発泡酒の糖類です。2015年からこっそりとビールで使い始めているのです。値段が高い本物のビールはいいのですが、安いビールはダメです。森永と和光堂は頑張っているが、明治はひどい。コナミルクにもGMOが入っています。

Jeffrey-Smith.jpg  実は、日本は世界で一番遺伝子組換えを承認している政府で、132種類も使っていいとしています。米国の反GMO活動家で、ドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』の監督でもあるジェフリー・M・スミス(Jeffrey M. Smith,1958年~)氏は『日本は遺伝子組換えのゴミ捨て場になる』と警告しているます」。

  遺伝子組換えでは農民は儲からないことは見えてきた。大規模機械化された農場では、100haで2人しか働けない。つまり、地域に雇用も創出できない。そして、この20年で種子の値段だけはあがっていく。農民は儲からない。それに抵抗するというのが世界の潮流なのだと印鑰智哉氏は言う。

「そこで、次にアフリカが攻撃されています。世界銀行も農業における企業活動での障壁であるとして、これを撤廃させる動きをしています。この動きに沿って、日 本政府は4月14日に主要農作物種子法を廃止してしまいました。農家のタネから企業のタネになっていく。その結果、種子の値段は値上がり、都道府県の農業 試験場が縮小していくでしょう。

 この背景には、日本企業そのものが、遺伝子組換えによって利益を あげようとしていることもあります。三井化学の「みつひかり」は吉野家で使われ、住友化学の「つくばSD」はセブンイレブンのお米となっている。そして、 日本モンサントは「とねのめぐみ」を作っています。こうした動きが進めば、産直は不可能になります。種子の多様性が危ない。けれども、こうした世界の動き は、日本のマスコミには一切出てこない。日本も世界の底流とつながっていく必要があります。種子の多様性条約をバックアップする国内法があってもいいし、 それを作る必要があると思っています。さもなければ、難民、食糧危機、社会不安等が起こるでしょう」(5)

編集後記

 2017年9月2日。静岡県浜松市の「春野山の村」で開催された第3回ラブファーマーズ・カンファレンスに参加した。そこで、印鑰智哉氏の講演も聞いた。氏は有機農業やアグロエコロジーの専門家である。そして、種子を守るということが演題のテーマだった。けれども、実際 に講演が始まると、糖尿病、腸内細菌、リーキーガット症候群とまさにこのブログが追ってきた「食」がメインテーマとなっていた。シンクロである。
 印鑰氏は2013年7月10日付のご自分のブログ記事「生物多様性・免疫・アグロエコロジー」 で「生物多様性・免疫・アグロエコロジー」をテーマに私見をまとめつつある、と書かれている。そう。免疫がやはりキーワードになっているのだ。ということ で、氏の講演を内容を中心に、なぜ、米国で有機農産物市場が急増しているのか。そして、その背景に腸内細菌とメンタル障害と遺伝子組換え農産物があったのである。
(2017年9月14日投稿)

【画像】
印鑰智哉氏の画像はこのサイトより
ゼン・ハニーカット氏の画像はこのサイトより
スティーブン・M・ドルーカー博士の画像はこのサイトより
ジェフリー・M・スミス氏の画像はこのサイトより

【引用文献】
(1) 2017 年 4月 1 日「『Moms Across America』代表Zenさんをお招きしての講演会in福岡」共 生 の 時 代第 374号:グリーンコープ共同体理事会
(2) 2017年4月10日天笠啓祐「遺伝子組換え食品から子どもを守る! 全米各地で動き出したママたち」生協の宅配パルシステム
(3) 2017年4月24 日:纐纈美千世「つながろう世界のママたち 遺伝子組み換え食品はいらない!」消費者リポート4月号特集、日本消費者連盟
(4) 2014年12月08日落合栄一郎「ラウンドアップ物語」日刊ベリタ
(5) 2017年9月2日印鑰智哉氏講演


posted by José Mujica at 07:00| Comment(0) | 講演・学習会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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