2017年12月30日

種子法なき以降の世界~山田元大臣の夢


種子が支配されるとどうなるのか?

種子法廃止の裏にはTPP協定や日米並行協議がある?

Masahiko-Yamada.jpg 皆さん、今日は。こうした由緒ある家でこうしたイベントができて本当によかった。今日は、JA全中の元常務の福間莞爾さんもお見えになっていますね。私は『日本の種子(たね)を守る会』の顧問をしているのだが、種について簡単な話をさせてもらいたいと思う(1)

 TPPというのは皆さん聞いたことがあると思うが、主要農産物種子法が廃止されたのだが、実は、それと非常に関係している(1)。2016年の2月4日にニュージランドで日本を始め12カ国が協定文に署名して、この協定が成立したのだが、その時に出された日米の交換文書がある(1,2)

 これは誰もが読むことができるものなのだが、どのようなことが書かれているのかというと、こう書かれている。

「日本政府は、米国の投資家の要望を聞いて、つまり、この投資家には、モンサントやデュポンとかシンジェンタとかも入るわけだが、その要望を聞いて、その意向を各省庁に検討させ、必要なものは『規制改革会議』に付託し、同規制改革会議の提言に従う」となっている。こんな覚書をすでに交わしているのだ(1,2)。酷い話だ。独立国とはとうてい言えない話だ(1)。おまけに、これはTPPと同時になされている「日米並行協議」が発効しなければ無効となっていたのだが、安倍政権は「いや有効だ」と言っている(2)。それによって、農協潰しの法律や農業競争力強化支援法が制定され、カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)が改正され、来年の通常国家では市場法の廃止が予定され、水道法も改正されていく(1,2)。こうした中に主要農産物種子法の廃止もあって、それで廃止されたのではないかというのが私の見解である(2)

野菜の種子はすでに多国籍企業に握られている

 いま、2014年のデータでは、世界の種子市場は、遺伝子組換えではないものも含め、モンサント、デュポン、シンジェンタといった上位8社の種子会社のものが78%を占めてそこが支配している(1,2)。シンジェンタも中国企業が買収したから、6社が握ることになる(2)。皆さんが、家庭菜園をするためにホームセンターで買う野菜の種子は、どれも海外で生産されている(2)。いま野菜の種子は90%が海外産なのである。ではどこが生産しているのか(1)。私は、タキイやサカタが海外で生産しているのだと思っていた(2)。確かに、10年前にはタキイやサカタもあった。けれども、今は、化学会社の配下になってしまっている。この8月に日本モンサント社の見学会に行ってきた(1)。そして、リーフレットを見ると「自分たちが作っている」と書いてある(2)。現場でも「日本の野菜の種子は我々が生産している」と言われた。けれども、野菜の袋とかに『モンサント』とかは一言も書かれてはいないではないか。すると「委託生産、委託販売をさせている」とはっきり言われた(1)

F1種子になると値段が上がり子どももできなくなる?

 つまり、野菜の種子は外国のメーカーが生産している種子、F1、ハイブリッドになってしまっている。種子がそういう品種となり外国で作られるとどうなるか。まず値段があがる。例えば、メロンやイチゴの苗は30年前までは1円から2円であったものが、今は40円から50円になっている(1)

Isao-Noguchi.jpg さて、F1品種は、「雄性不稔(ゆうせいふねん)」(注:不稔とは雄しべや葯に異常があり花粉を作れない又は花粉の機能不全を意味する。動物での男性不妊・無精子症等に相当する)、すなわち、男としての種の機能がないものをベースにして作られている(1)。ミツバチの女王蜂は数匹だけ雄蜂を産むのだが、これを媒介させていたミツバチでは何匹かの雄蜂が不妊症になったとの欧米の記事を読んだことがある。日本人の男性の精子の数も1ccあたり30年前には1億5000あったものが、今は4000万に減り、男性の2割が不妊症である(1,2)

 野口種苗の野口勳さんは、これはハイブリッドの種子が原因ではないかと言っている(1,2)。もちろん、科学的ではないが、アスベストも有害であることがわかったのは40年後だった(2)。そして、三井化学の「みつひかり」も多収量米と日本晴れとの掛け合わせのF1種である(1,2)。もし、そうであるとすれば、F1品種の野菜だけでもこうなるのであるから、主食のコメもF1品種になったらどうなるのだろうか(1)

コメ、コムギ、ダイズの種子は種子法によって国産が守られて来た

 これまでは、コメ、麦、大豆は、100%国内で生産されてきたが、それは、種子法によって国が管理して、各自治体に種子供給、原種、原原種の生産を義務付けてきたからである(1,2)。それによってこれまでは、各農家に安定して廉価に種子が供給されてきた(2)。それでは、どういうことをやっているのか。

 茨城県の原種種苗センター、農業試験場等、原種を作るところを何回も見に行って来た(1)。茨城県だけでも種子センターが6つくらいある(2)。例えば、まず原原種を作る。原原種を作る現場では、コシヒカリだけで1系統。これを27系統。あきたこまちも27系統を作っている。なぜ一本ずつ植えるのかというと、種子は放置しておくと先祖返りして、「赤米」になるからである。そこで、受託事業をして花が咲く時期や葉の長さや丈を揃えたりしている(1)。さらに、「異株」がないかをどうかきちんと調べ、発芽率が90%はなければいけないとか何回も審査をしていく(2)。純粋なコシヒカリをまず1年かけて作り、2年目に県の振興公社が1年かけてこの原原種を元に原種を作り、これを元にして、種もみを花粉が混ざらないところで57人の農家が生産している。茨城県だけで種子だけで100万トン作っている。これだけのことをやって4年目にやっとできる(1)

 つまり、それだけ大変な予算を組んできた(2)。こうしたことで、コシヒカリ等の優良な品種を農家は500円、400~600円程度で手に入れることができてきたのである(1,2)

種子法で300種もの多様な種子が廉価に生産・守られて来た

 そして、日本は縦に長く、亜寒帯から亜熱帯まである。そこで、どこでも米が作れるように様々な品種がある(2)。コメだけで300種あり(1,2)、伝統的な古代種も入れると1000種類ぐらいある(2)。数多くの品種があるということは、例えば、ある種がウィルスや病気になった時にそれ以外の種が助けるということである。アイルランドのジャガイモ飢餓のように品種が少ないと大変なことになってしまう(1)。ここのコメは、30年前に福井県から最初のコシヒカリを持ってきたものだが、すでに茨城県の土壌や風土に合ったものになっているので、今更、この種子を福井県に戻しても育たないだろうと茨城県の農業試験場の場長に言わせると言っていた(1)。つまり、米、麦、大豆は種子法があったから伝統的な品種が守れてきたのである(2)

種子法が廃止されると農家の種子代負担が増す

 では、この種子法が廃止されるとどうなるか。まず、種子の値段が高くなる(2)。日本モンサント社の「とねのめぐみ」は3倍、「つくばSD」は3~4倍、住友化学の「みつひかり」は9倍、7~10倍である(1,2)。農家からすれば種子が反4kgは必要なので、これまで2000円程度ですんでいたものが、「みつひかり」を使うと9倍とかになってしまう(2)

農民を奴隷化し遺伝子組換えの恐怖

農家が賠償責任を負う一方的な契約書

 実は日本モンサント社の「とねのめぐみ」は丈が低い品種で、既に色々なところで作られている(1)。そこで、その生産現場を色々と見てきた(2)。まず、丈が低いため倒伏しない。そして、最初の年は無料で提供されるそうである。けれども、農薬と化学肥料とセットになっている(1)。さらに、日本モンサントの代理店の契約書を手に入れたとこんなことが書かれている。「指示に従わない場合には日本モンサントに対して農家が損害賠償責任を負う」と書いてある(1,2)。そこで生産者に「読みましたか」と聞いたら「いや読んでいない」と。「でも、あなたはサインしているでしょう」と言ったら「はい」とのことであった(1)

 住友化学の「つくばSD」の契約書はもっとすごい(1)。これも生産者の方と2回お会いしたが契約書が12pあり(2)、種子と化学肥料と農薬とがセットで、住友化学が指定するものを全量使い、かつ、できた生産物も住友化学が指定したところに全量出荷しなければ契約に反して、損害賠償責任を負うとなっている(1,2)

 この前、水戸で「つくばSD」を生産した人の話を聞くとともに食べて見た。「食べたら違反になるのではないか」と思ったのだが、実は、検査用のコメだと(1)。「生産者の私も食べられない。だから、先生の立会の上で試食しましょうよ」と(2)。生産者ですら作ったものを食べられない。全量出荷というのはおかしい。そして、僕は美味しいとは思わなかった。モンサントの「とねのめぐみ」も食べているのだが(1)

 もっと酷いのは、災害や天候不順でコメが不作になった場合である。私は弁護士なのでこの契約書をちゃんと読んだが、住友化学は化学肥料も農薬もセットでやっているので、会社は損害を受ける(1)。そこで、災害という項目では「甲、つまり、住友化学に責めを帰すべき事由がない場合には、乙、すなわち、生産者が責任を持つ」という契約書になっている。つまり、賠償責任を生産者が負うというすごい一方的な契約になっているのである(1,2)

 私は、三井化学の「みつひかり」の契約書も手に入れたいのだが、まだ手に入れてはいない(2)。つまり、契約書でがんじがらめになっていく。これが南米、インドでやってきたモンサントのやり方である(1)

事前にチェックされるみつひかりはコンバインが痛み、収量も取れない

 さらに、もっと怖いのは、事前にチャックされていることである。富山県で6、7年も「みつひかり」を生産された農家の方に会ったが「来年止める」と。その理由を聞くと(1)、収穫前に三井化学の若い社員が来て「これだけの収量ありますね」と言われたというのである。「何を素人の若造にうちの収量がわかるのか」と思っていたが、コンバインで収穫時に気づいたのは、稲穂が所々一株ずつ抜かれていたことである(1,2)。つまり、すでにモンサント並みの調査員が三井化学にもいて、この圃場にはどれだけの収量があるのかを調べあげているのである。窒素肥料や農薬をきちんと使っているかどうかを調べ上げているのである。そして、その通りにならないと莫大な損害賠償を課す。このように非常に怖い話になっている(1)

 さらに、この方が止める理由としてあげたのは、最初は収量があったが、どんどん収量が落ちて来たことである。さらに、飼料米は、私が農水大臣の時に始めたものだが、多収量品種と各種インディカ系を掛け合わせたもので丈夫である。「みつひかり」も掛け合わせのため、丈が高く丈夫である。だから、コンバインを入れると歯が折れる。2反をやったら悪くなってくる。20万円修理代がかかったので止めることにしたという(2)

種子が寡占状態になれば独占されると価格はあがる

 さて、私は、TPPの反対を7年やってきたのだけれども、一番心配しているのが多国籍企業である。これは本当に日本を狙っている(2)

 それまで私はTPPの狙いは医薬品だと思っていた(2)。例えば、1本7万円で子宮頸癌ワクチンをご婦人方に打つことを日本政府は強制的に義務づけたのだが、これは、日本政府がアイザックとかの製薬会社から数万円で買わされているわけで、その原価は100円足らずである(1,2)。トランプ大統領が言った中でも、私が「いいな」と思ったのは、「医薬品は天文学的数字だ。下げろと。このままでは医療保険が持たん」と言ったことだ(2)。けれども、寡占状況になると値段があがるのは種子も医薬品も同じである。普通の種子が遺伝子組換え種子になり寡占化されるとアメリカでも全部値段があがっていく。いくらでも価格をあげられる(1,2)。つまり、TPPは医薬品だけではなく種子も狙いであることがわかった(1)。では、そのツケをいったい誰が払うか。我々だ(2)

知的財産が外国資本に奪われるとき

ロイヤリティ代も科されるメキシコの農民たち

 トウモロコシはメキシコが原産国なのだが、このような形で、北米自由貿易協定(NAFTA)によって、トウモロコシの特許、知見をモンサント、デュポン、シンジェンタに奪われた(1,2)。それまで生物に対する特許はなかったが、最初にアメリカ、次に日本。そして、最近はカナダも認めた。けれども、ドイツは未だに認めていない(2)

 要するに、メキシコのトウモロコシ農家は、特許料(ロイオヤリティ)を支払わないとトウモロコシを作れなくなっている(1,2)。日本でも優良な品種の知見を向こうに取得されたらどうなるか。F1、遺伝子組換え、ゲノム開発して特許申請されれば農家は高い手数量を払わないといけなくなる(2)。種子代が高くなる上に特許料を支払わないと作れなくなる可能性が十分に出てきたのである(1)

日本の知的財産がモンサントに奪われる

 さて、TPPの第8条4項は「これまで日本が蓄積してきたコメ等の原種、原原種、優良種苗の知見をすべて民間に提供する」ということとなっている(1)

奥原次官2.jpg さらに問題なのが、11月15日に出された事務次官通達である。これを出した農水省の奥原正明事務次官は、「農水省は経産省の一部局でいい。私の役割は農水省を潰すことにある」と公言してはばからない大変な人物である。そこで、僕が大臣の時に地方に飛ばしたのだが、この次官が通達を出した(1)

 この事務次官通知を見ると種子法を廃止した後「都道府県は一律に制度を義務付けていた種子法及び関連通知は廃止するものの、と都道府県が、これまで実施して来た稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを直ちに取り止めることを求めているわけではない」と書いてある(1,2)。ということは、いずれは止めざるをえなくなるとは受け取れないだろうか。僕にはそう読める(2)。 


「民間事業者、すなわち、住友化学、三井化学、日本モンサント等による稲、麦類、及び大豆の種子生産の参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子生産に係る知見を維持し、これを民間事業者に対して提供する役割を担う」と書かれている(1,2)

 酷いものである。これを読んだ時に僕は信じられなかった。

「以前には全国を回って『これまで通り原種の維持に努めます』と農水省は言ってきたのに「今度は知見を全部民間に提供しなさい」と言って来ている(1)

「参入が進むまでの間は」ということは、どういうことか。独立行政法人の農研機構には明治以来蓄えてきた6万種類もの知見がある。各都道府県にもそうしたものがある。確かに、依命文書ではモンサントやデュポンやシンジェンタに知権がいかないように契約書を準備するとなっている。だから、大丈夫だとの見解もある(2)。けれども、「そう言ったものを海外に提供するのかどうか」と国会で問われたときに大臣はどう答弁したか。「知的財産の譲渡先は、公平で平等に扱う。海外の会社も差別して否定するものではない」。つまり、モンサントのような外国企業も含めて日本の知見を提供すると国会で答弁しているのである(1,2)。もし、モンサントが農研機構に「出せ」といってくれば、合理的な理由がないと断れない。ISD条項で訴えられるだろう。日本の知見だけを守ることはできない(2)

16年前から狙ってきたモンサント

 さて、日本に対してモンサントは関心がないとの見解もある。けれども、モンサントがグリフォサートとともに、日本で遺伝子組換えのコシヒカリを栽培しようとしたのは16年前の2001年からである(2)。したがって、「モンサントは日本に関心がないとか、日本が狙われていない」というのは私からすれば希望的な観測である。私はそうではないと思っている(2)。20年ぐらい前から早くもモンサント、デュポン、シンジェンタは日本のコメ市場を狙っていたのである(1)

 筑波で開発されているコメの遺伝子組換え種子、「WRKY45」の知見もモンサントに奪われるのではないかと心配している(2)。トウモロコシやダイズがラウンドアップとセット販売されるのは1995年からだが、すでにモンサントは1997年にグリフォサートの耐性除草性のコメ品種を開発している(1)。そして、2000年に入ってからは、コシヒカリの遺伝子組換え品種を愛知県の農業試験場と共同研究しており(1,2)、筑波にある独自の試験場でドンドン遺伝子組換え種子を開発している(2)

表示義務がなくなれば遺伝子組換え栽培はすぐに始まる

小麦でも遺伝子組換えが始まる

 BSEやTPPの問題で私は10回も米国に行ってきたのだが、「米農務省になぜ麦を遺伝子組換えで作らないのか」と聞いてみると「小麦は人間が食べるものだからだ」と。そして、「とうもろこしや大豆でなぜやるのだと聞いたら「これは家畜が食べるものだからだ」と言っていた。そして、先日に全米麦生産者協会の会長にお会いしたら「いよいよアメリカは小麦をやると。ただし、米国人には非常に抵抗が強いのでまず日本人に食べてもらいたい。日本政府よろしくお願いしますと。農業新聞の記事では「GM小麦日本も視野」と書いているが、「日本が視野」なのである。さらに遺伝子組換えサーモンも入ってくる(1)

遺伝子組換えコメがいつでも栽培できる段階に

 そして、コシヒカリや日本晴れ等、すでに70種類の遺伝子組換え種子の一般圃場での作付けを日本政府は承認している(1,2)。もちろん、カルタヘナ法の承認が必要だが、この法律も、この間の国会で改正された(1,2)。つまり、いつでも作れる体制に今やなって来てしまっている(1)

  色々と見ていくとまずF1で席巻し、次に遺伝子組換えの米ではないかと。そして、そうなったらば、農水省はそれを承認するのかしないのか。

 「今でも明日に栽培することは可能か」とある人に聞いて見たのだが、「一応カルタヘナ法による承認が必要だが、承認はすぐに降りる。『食品安全委員会』が「遺伝子組換え食品は安全だ」と言っている以上、128種類については明日でも植え付けられるようになっているので、コメについても断る理由はないと思う」とのことであった(1)。私にそう言ってくれた人の名前は言わないけれども、つまり、日本の農家が遺伝子組換え農産物を作ろうと思ったら作れないわけじゃない。132種類はすぐに作付けできる(2)

表示義務があるために遺伝子組換え栽培は防げている

 実際、遺伝子組換え農産物を作りたくてウズウズしている農家はいる。雑草がなくていいからだ。けれども、作られなかったのはなぜか。今の現行法制度では、遺伝子組換え食品を作ってもいいのになぜこれが作られないかというと、遺伝子組換え食品の輸入は、原則禁止で、かつ、表示義務があるからである(1)。現行法制度では5%以上は表示が義務付けられているからである(2)。それがなくなれば、農家は除草しなくてもいいという遺伝子組換え品種になってしまう(1)

肉の国産表示もできなくなる

 肉の国産表示もできなくなるという問題がある。北米自由貿易協定があるのだが、カナダ、メキシコの牛肉を米国国民は表示があれば米国産の牛肉を食べるというので、いわゆる貿易の障壁にあたるとして裁判された。そうしたらアメリカ政府が負けた。そこで、アメリカは昨年から国産表示を牛肉でできなくなった。この協定は、TPP協定で準用されていたので、日本でも反対すれば、米国のタイソンという大きな会社が「反すると訴えられたら」、日本も肉の国産表示ができなくなる(1)

野菜、果物等の産地表示もできなくなる

 TPPの第18章33条ではお酒の表示はできるが、「果実酒などを除いて、領域で日用語として使われ、種類を示すもの」となっている(1)。つまり、これからは、地理的な産地表示ができない(2)。日本では国産表示ができなくなり、産地表示が認められるのはサツマイモくらいでそれ以外は全部規制される(1,2)

 今、EUと交渉をしているのだが、パルメザンチーズはダメだと言っている。日欧協定で日本が認めるのはEUでは47種類。EUが日本のチーズで産地表示を認めるのは17種類。これから自由貿易協定では産地表示ができなくなる。産地表示をするとその産地のものしか売れない。それが自由貿易の推進にはならないという考え方である(1)

健康に異常があることが立証できれば遺伝子組換えは防げる

 日本が署名、批准したTPP協定の第2章19条で現在のバイオテクノロジーによる農産物、魚、加工品を定義し(2)、第2章27条8項では「遺伝子組換え農産物の貿易の中断を回避し、新規承認を促進すること」となっている(1,2)

 もちろん、「ヒトの体に異常がある時にはこれを避けられる」という条文もTPPにはあるのだが、これは入れる側が立証しなければならない。そして、また、日本の食品安全委員会は『遺伝子組換え食品は安全である』と明言している。つまり、国が表示することを日本独自のものでは決められなくなっていく(1)

御用学者の食品安全委員会が作る規格では表示は骨抜きに

 米国ではバーモンド州等、一部では遺伝子組換え表示をする法律ができていたのだが、これが連邦法で表示してはならないとなっている。つまり、米国では遺伝子組換え食品の表示ができなくなってきている(1)

 第8章7条ではこの表示について「強制規格等はモンサント等利害関係者の意見を聴取し、それを考慮しなければならない」となっている(1,2)。つまり、アメリカの通商代表部の意向を受けることで日本独自の任意規格が決められなくなる(2)。さらに、TPPの交換文書では、強制規格等については、日米の間で作業部会を作るとなっているのだが、もう作業部会ができているのではないか(1,2)

 そのような中で、消費者庁で今、食の安全の審議をしているところである(1)。けれども、食品安全委員会も消費者団体が入っておらず、御用学者ばかりである(2)

「日本の種子(たね)を守る会」の杉山さんが、この会場に傍聴に行って来たら、パチパチと写真を撮る人がいた。そこで、「個人情報の肖像権の侵害ではないか。名刺ぐらい出しなさい」と名刺を出させたら米国の大使館員であった(1,2)。食品安全委員会は、法律に基づかず、内閣府令に基づく組織である。つまり、安倍晋三と呼び捨てにさせてもらうが、内閣総理大臣が決めればいつでも変えられる。遺伝子組換えの表示ができなくなる(1,2)

 つまり、安倍の一存で、「食品安全委員会が安全だと言っているのだから、遺伝子組換え食品の表示をしなくてもいい」ということになるのである(1)

グリフォサートの400倍の規制緩和は日本での作付けの露払い?

 さらに、今年の7月に品種によっては、ラウンドアップ、グリフォサートの安全基準を400倍に規制緩和した(1,2)。つまり、いよいよ遺伝子組換えコメを作る準備ができたわけである(1)。ウクライナもルーマニアも、ロシアも、中国も遺伝子組換えが駄目だと言っている時に、日本だけがグリフォサートの規制を400倍に規制緩和した。これは恐ろしいことである。遺伝子組換えのコシヒカリを作るのに変えられたのではないか(2)

種子の多様性を失わせる

 さらに、もう施行されている「農業競争力強化法」を見ると「銘柄が多すぎるから集約する」となっている。種子の多様性は非常に大切なのだがこれを止めてしまうとなっている(1)

 種子法が廃止され、いずれ運用規則も廃止されるから国の予算もつかないと。すると「みつひかり」とかのF1とかそれ以外の品種は作れない。遺伝子組み換え以外には作れなくなってしまう。コメ、麦、大豆で遺伝子組換えのものを食べなければならなくなってしまう。これが現状である(1)

 そして、遺伝子組換え作物は多くの文献も出ているが、科学的な問題が色々とあり、収量も減っていく。グリフォサートで土壌が収奪され、窒素肥料も大量にやるため取れなくなっていく。インドでは20万人の自殺者がでた。大変なことになる。本当に今危機的状況になっていく(1)

世界の中で逆行する日本

主要国の食料自給は所得保障で維持されている

 主要国の農家の農業所得で補助金(所得保障)が占める割合は、スイスが100%(1)、ドイツとフランスが7割、英国も8割で自給率を維持している(1,2)。日本では2012年に個別所得保障が38%だったが、その金銭が農協に行ったりするので、僕が大臣をやった時に計算してみると実際に農家にいくのは29%だった(2)。全米麦会長は「うちだけは補助金をもらっていない」と威張っていたが、米国も日本よりも高く4割なのである。そして、日本では来年からその個別補償も廃止される(1,2)

 つまり、「農業は産業である」という考え方そのものが違う。命の糧なのである(2)。農業は産業でなく食料、我々の大事なものなので、多国籍企業の金儲けの材料にされてしまっては絶対にならない。従来の制度でも「みつひかり」とかもちゃんと作られて来たのであるから、このままでよかった(1)

地産地消費が出来なくなった韓国で広がる反対運動

 そこで、韓国は地産地消の学校給食はできなくなりつつある(1)。米韓協定を結ぶことで、韓国も国内法を200本ほど変えた。韓国では学校給食の地産地消の法律の内容を9割変えた。これからはそうなっていく。お隣の韓国も1000万人が署名をしている(2)

スイスのように食料主権を憲法に位置づけよう

 それでは、これからどうしたらいいのか。種子法に変わるものを作らなければならない。実は、このあいだ11月にスイスに行ってきた。これは標高2500mで20頭の牛を飼育しているある農家の写真である。スイスには農業の戸別所得保障があり、国からの所得保障がなんと年間700万円も出され、その保証で食べている(1)

 さらに、スイスは国民投票で憲法に食料安全保障を盛り込む(1,2)ということで行ってきたのだが、行ったその日に78%が賛成でこれが通った。そして、第1項目が「優良農地を転用してはならない」と。つまり、農業、農地は公共のものであると位置付けている(1)。戦争ができるような国にするのではなく、国民発議によって国民投票によって安全な食べ物を食べられる国にした。言って見れば、食料主権である(2)

 種苗法は開発者の権利を守るものだが、これに対して、種子法は作付けしてきた農家が自家採種してきたものである。どうしても、種子は劣化していくために優良な種子を入れていかなければならない。今の米農家は60代、70代。自家採種してやれと言ってもやっているのは1割だけである。なかなかやれない。石川県でも随分と話したが、徐々に雑米になっていく。「3年に1回は良い種子を入れなければダメですね」となっている(2)

 アメリカでも小麦は主要農産物で、3分の2は自家採取だが、3分の1は公共で州立の大学等で生産している(1,2)。カナダもそうである。したがって、日本も廃止をする必要性はまったくない(1)。私は公共の種子が必要だと思っている(2)

 種子のための補助金はなくなり一般財源となった。一般交付金は県は自由に使えるが、それも縛れるのも根拠法があるからだ。予算編成の時期を前に運用規則まで廃止してしまうとは僕は思わなかった。やはり法律が必要だ(2)

 私は議員立法でBSE法案を作ったのだが(2)、スイスやオランダのように食料安全の法律を議員立法で作ろうではないか。そのために署名活動をやろう(1)。すでにかなり集まっている。そして、是非、「日本の種子(たね)を守る会」にもご参加いただきたい(2)。個人会員も増えているが、JA、生協、企業も団体開院として加入いただいている(1)。自民党の先生方も皆不安に思っている(2)。なんとか自民党も一緒に食料安全保障を盛り込んだ新たな種子法案を立ち上げる運動をやろうではないかと思っている(1)

会場質問 先ほど出て来た日本食品安全協会とはどのような組織か

山田正彦 BSEの時に議員立法で野党で作ったのだが、異常プリオンを審査するために、食品が安全であるかどうかを決める大事な委員会である。学者、消費者団体、企業から役員が選ばれている。けれども、今回は、御用学者や企業から委員がきて消費者団体は干された。「遺伝子組換え食品は安全である」と断言している。表示ができなくなるのは時間の問題かもしれない(1)

会場質問 困りますね。マスコミも御用記者になっている。

山田正彦 本当に日本は報道しなくなった。今日(12月16日)も「月刊日本」とかはきているが、小さな独立メディアは来ているが。

会場質問 国民の健康を守るのが基本的であるはずなのに、どういう理念であのような11月の通達が出るのか。それに対して、どのようにお感じになっているのか。

 当時の農水省からすれば考えられない。いま、完全に官邸主導である。官邸の言うことをきかないとぜんぶ飛ばされる。次の次官候補として優秀なのが3人ぐらい皆辞めた。だから、人事がめちゃくちゃになっている。官邸のいうことを聞かないのは止めるか飛ばされる。

 前川さんのように面従腹背で戦うという気概ある官僚はいなくなった。ましてや食品安全委員会は御用学者ばかりである。本当に大変なことになっている。国民に全く危機感がないことが心配である(1)

編集後記:ケヤキに囲まれた古民家で語られる未来のお話

2017121601.jpg 一歩踏み入れば街の喧騒とはまるで別世界。このキャッチフレーズは嘘ではない。西部池袋線の駅を降りて10分ほど歩くと市街地の中に忽然と樹齢を百年は越したであろうケヤキの巨木が見えてくる。築150年も経つ幕末に建てられた古民家が、未来へと残し、伝えることをテーマに多くの人々の手によって「けやきの森の季楽堂」として再生されたのだ。

 この古民家で去る12月16、17にかけて、「日本の種子を守る会」の主催によって山田正彦元(1948年~)農水大臣と作家島村菜津さんの講演会が催されたので聴講に行って来た。

 テーマはご存知のとおり、「主要農産物種子法」が来年の4月から廃止された以降の話だ。何も手を打たなければおそらく大変なことになる。けれども、災害転じて福となす。これは戦後の近代農業によって病み続け、息も絶え絶えとなってきた日本農や食が健康なアグロエコロジーへと生まれ変わる一大チャンスでもある。また、ひとり一人の「いのち」よりもお金を大切にしてきたあり方が見直され、それをきちんと憲法や法律によって守るという世界の潮流に日本が乗るための飛躍のトリガーにもなる。そんな未来への夢を山田元農水大臣は語ってくれた。

Jose-Muchica.jpg 「世界で一番貧しい大統領」の形容詞で知られるウルグアイのホセ・ムヒカ(José Mujica, 1935年~)元大統領が、リオ会議(Rio+20)で行ったスピーチは世界の人々を魅了した。口先だけではない。ムヒカは大統領になる前には農業大臣であり、国民を飢えさせないための着実な政策が見事に成果をあげ、「彼こそを大統領に」という評価が国民の間で広まったことで大統領になれたのだ。

「なぜ、日本にはこんな政治家がいないのか。文化か、風土か、はたまた遺伝子か人種の問題なのか」

 そう悲しくも思ったりもした。けれども、ここに、いた。

「農業は金儲けの道具ではない。命の糧なんだ。戦争をできるような国よりも、安全な食べ物を食べられる国にしたい」

 人々を前に静かに情熱をかけて語る元大臣の顔がなぜか私にはムヒカに重なって見えた。2日間の別々の場所でなされた山田元大臣の講演のまとめ。いかがだったろうか。筆者の感動が少しでも読者諸兄と共有できれば幸いである。
(2017年12月29日投稿)
【画像】
山田正彦元大臣の画像はこのサイトより
野口勳氏の画像はこのサイトより
奥原事務次官の画像はこのサイトより
ホセ・ムヒカ元大統領の画像はこのサイトより
【引用文献】
(1) 2017年12月16日:山田正彦元大臣講演「種子法廃止とこれからの日本の農業について」練馬区
(2) 2017年12月25日:「種子法廃止とこれからの日本の農業について」港区神明いきいきプラザ、主催NPO法人農都会議


posted by José Mujica at 17:09| Comment(0) | 講演・学習会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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