2018年01月14日

獅子身中の虫〜我が敵はモンサントのみにあらず

ぶっちぎりの超規制緩和大国

GMO.jpg まずはこの図を見て頂きたい。遺伝子組換えの普及のためモンサント等が設立した団体、「国際アグリバイオ事業団(ISAAA= The International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications)のデータベースから国別の遺伝子組換え承認件数を出してみると、日本政府の承認件数が世界で突出していることがわかる。2017年と比較してもフィリピン、ロシア、インドは新規承認ゼロ、中国が1件だけ、米国は2件、EUは4件、韓国が15件なのに対して、日本はなんと77件も承認している。米国政府の承認はザルだから実際の承認品種に対して承認件数が少なめに出ているかもしれない。けれども、世界の政府が遺伝子組み換え新規承認に慎重になっているのに対して、日本政府のこのぶっちぎりさはあまりに極端で声が出ない。

 農水省の人と話すと「承認はスピーディーにやるのが義務付けられている。それがスタンダードだ」という意識になっている。けれども、そのようなことをやっているのは世界では日本政府しかない(20180102)。日本は世界で最も早く、かつ、大量の遺伝子組み換えの承認を行っているのである(20180112)

新たな遺伝子組換えトウモロコシが登場

 例えば、農水省は新たにモンサントの遺伝子組換えトウモロコシの1品種、絹糸抽出期における高雌穂バイオマストウモロコシ(識別名MON-87403-1)を飼料用、食品用、栽培用に承認した。これによって農水省が日本において耕作を承認する遺伝子組換え作物は133品種となった(20171221)

 従来の遺伝子組換えトウモロコシは虫を殺す毒素を細胞の中に作り出す「害虫抵抗性」とラウンドアップをかけても枯れない「除草剤耐性」の2つが基本であって、収穫高をあげる組換えはなされてこなかった。

 遺伝子組換え企業は、害虫や雑草による被害を容易にコントロールすることによって生産性が上がると宣伝してきたが、実際には3年もすると害虫も雑草も遺伝子組換えに耐性を持つものが出現し、生産性はあがってこなかった。米国の科学アカデミーもそれを認めている。それどころか、遺伝子組換えすることでむしろ生産性が低下するケースも報告され、遺伝子組換え企業が言う遺伝子組換えは生産性を向上させるという宣伝は虚偽であると批判されてきた。

 けれども、この高雌穂バイオマストウモロコシはこれまでの遺伝子組換えトウモロコシとは違う。従来の品種よりも2%の収穫増が見込めるとモンサントは主張する。ちなみに、生産性があがるものとしては、それ以外にも、遺伝子組み換えシャケと遺伝子組換えユーカリがある。遺伝子組換えユーカリは通常熱帯地域では成育に7年かかるがこれを4年に短縮できると言われている。けれども、まだ商業栽培には至っていない(20171221)

 そして、わずか2%の増収と引き換えにどんなマイナスが生み出されるか、まだわかっていない(20171221)

親系統が認められれば一括して掛け合わせも認証

 今後、モンサントは自社のトウモロコシにこの系統を入れていくことを予定している(20171221)。遺伝子組換え作物の場合は、親の系統の掛け合わせでさまざまな種類の新しい遺伝子組み換え作物が作られる。そして、従来であればその1つ1つについて申請が必要だった。けれども、それが2014年末にそのプロセスが簡略化され、一括して承認されている親系統の掛け合わせはまとめて包括的に申請が可能な形に変わった(20171215,20180111)。つまり、日本では親系統が承認されるとその掛け合わせは容易に承認されてしまうため、ここ数年のうちにあっという間に広まってしまうことが予想されるのである(20171221)。掛け合わせた際に、単独では起きない問題が起きる可能性もありうるのに、どのような影響が出るかの実験はされず、「影響は出ないだろう。問題はおきないに違いない」という推論だけですべての組み合わせが承認されてしまう安易な審査となっている(20180111,20171215)

米国で訴訟され世界が認めない除草剤ジカンバを日本の食品安全委員会は安全と承認

 かくして、日本政府は、世界断トツのトップで、遺伝子組換え食品を承認しまくっているのだが、2017年12月15日に、モンサントの遺伝子組換え大豆3品種の承認のためのパブリックコメントがまた新たに出された。

 今回対象となっているのは、高オレイン酸含有大豆(DP-305423-1)、除草剤グリホサート耐性大豆MON89788系統及び除草剤ジカンバ耐性大豆MON87708系統からなる組合せの全ての掛け合わせ品種(既に食品健康影響評価が終了した除草剤グリホサート耐性大豆MON89788系統及び除草剤ジカンバ耐性大豆MON87708系統を掛け合わせた品種を除く)の食品安全性の審査結果に対するコメントを求めるものである(20171215)

 これらは、どのような性格を持つ大豆なのであろうか。最初の「高オレイン酸含有大豆」は、2020年までにシェアを80%にする目標が持たれている大豆で、この背景には、米国において2006年に「トランス脂肪酸」の表示が義務付けられた結果、大豆油がそれ以外の食用油にシェアを奪われ始めたことがある。オレイン酸大豆の油は高温状態での安定性が高く産業用油にも適している。このため、トランス脂肪酸を避ける食品市場だけでなく、その方面からの需要で拍車がかけられることだろう(20171215)

*なお、トランス脂肪酸とは、自然界に存在するシス型の脂肪酸とは異なり、人工的に作られた異性体の脂肪酸分子であるため、人間の消化システムは消化できない。このため、体内に入り込むと免疫反応、炎症を引き起し、毎年米国内で発症する心臓病による突然死、3万人の原因とされている。このため、米国はもちろん、ドイツでも以前から禁じられている。けれども、なぜか日本だけが安全であるとして、表示義務も課されず、マーガリンに含まれている。これについては、このブログにも書いたので、ご興味のある方は、合わせてご覧いただきたい。

Spraying.jpg 次の「グリホサート」と「ジカンバ」耐性大豆は、現在、米国において集団訴訟の対象となっている。グリホサートに対する耐性雑草が出現し、その効果が落ちてきたため、ジカンバを混ぜて、その効力の落ち込みを補い、グリホサートを延命させようというモンサントの苦肉の策で出てきた大豆だが、ジカンバは流出しやすく、周辺の農場や生態系を破壊する。さらに、残留農薬による人体への影響も懸念される。すでに日本の全農地面積の三分の一にあたる農地が米国で被害を受け、農家同士の紛争も起き、一人が死亡している。このため、米国ではモンサントに対する集団訴訟も起こされているのである(20171215)

 このため、世界の他の政府はなかなか追従しない。けれども、日本の内閣府食品安全委員会は「安全だ」としてお墨付きを出してしまっている(20171215)

日本は米国の従属国だから遺伝子組換えや農薬を認めているのか?

 さて、前述した組換えトウモロコシを承認している国は、日本以外では、米国、台湾、韓国、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアである。国名を見れば、米国の従属国であり、このため、食もその体制下に置かれていることがわかる(20171221)。このため、日本政府が、世界トップで遺伝子組換え作物を承認しているのは米国追従のためであるとして見る向きも少なくない。けれども、日本政府がバイオテクノロジー技術につぎ込む予算等を考えれば、これは単なる追従ではなく、遺伝子組換えを国策として推進しようとしているのではないか(20180106)。そう印鑰氏は主張する。

ジカンバを熱心に認定する日本政府の裏には住友化学?

 農水省と環境省がこれまでに使用(耕作あるいは食用、飼料用への使用)承認したモンサントのジカンバ耐性遺伝子組換え品種は9つにものぼる。なぜ、日本政府はここまで熱心にジカンバを支持するのであろうか。その背景にはモンサントだけでなく、住友化学の存在がある。

 住友化学はモンサントと連携して「2017年シーズンからモンサントのジカンバ耐性作物(Roundup Ready XTENDシステム)に適合性の高い新たな製剤(VALOR EZ)を投入」するとしている。2010年10月からは米国で、2014年12月からは南米において、住友化学はモンサントと遺伝子組換え農薬で技術提携をしている。つまり、モンサントの利益が住友化学の利益となるのである。ちなみに日本でラウンドアップを売っているのは販売委託契約をしている日産化学であって、住友化学ではない。住友化学によって、日本の食・農薬政策はずたずたになされ、その影響は北米や南米にも及んでいるのである(20170728)

世界的に規制が進む蜂を絶滅させるネオニコチノイド系農薬を許可

 日本政府は2017年12月25日の通達でグリホサートを大幅に規制緩和したが、この日に緩和されたのはグリホサートだけではない。人類の食の多くは蜂による花粉の交配に依存している。蜂の死滅、減少で生存できなくなる動植物の数はあまりに多い。蜂がいなくなれば人類は消滅せざるを得ない。こうした懸念から蜂を絶滅の危機に追いやっているとしてネオニコチノイド系農薬は世界的に規制が本格化している。米国においてすら「ネオニコチノイド系農薬スルホキサフロル」は一定規制している。

GreenPeace.jpg けれども、こうした中で、日本政府は「ネオニコチノイド系農薬スルホキサフロル」も新規農薬登録=使用許可を出した。蜂の大量死滅だけでなく、鳥にも大きな被害を与え、人間に対しても神経に作用することで自閉症、認知症等の被害をもたらしていると指摘されている農薬である。しかも、その使用を許可しないように市民団体が声を上げ、多くの人たちの賛同が寄せられている中で許可をしてみせた。

「あまりに常軌を逸しており声もでない」と印鑰氏は書く。

 グリホサートの大幅規制緩和とネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの使用承認は、日本が米国政府や米系多国籍企業に支配されているだけではなく、米系多国籍企業のコバンザメのように住友化学等の日系多国籍企業が米国以上の規制緩和を日本政府にやらせることができていることを意味する(20171228)

モンサント条約を世界で推進する日本政府

 米国に端を発した生命への特許による社会の支配。その脅威は年々増加している(20171031)。「植物新品種保護国際同盟(UPOV=Union internationale pour la protection des obtentions végétales,ユポフ)の1991年条約は「モンサント法」を義務化すると言われる条約である。この条約は種子を開発した企業の知的所有権の優越を批准国に強いる条約だが、特許を持っているのは先進国であるケースが多く、その先進国の企業に支配されることになる。事実、ラテンアメリカ諸国においては米国との自由貿易協定によって、UPOV1991年条約と共に「モンサント法案」が押しつけられていった。このため、南の国としては積極的に批准したくはない。けれども、TPP等の自由貿易協定によってでは参加国には強制されてしまう。ベトナムもこのUPOV1991年条約を受け入れた後、遺伝子組み換えトウモロコシ栽培国となっている。そして、ブルネイとミャンマーのUPOV1991年条約加盟については、それを斡旋しているのは日本政府なのである(20170728)

 すなわち、現在は、米国ばかりではなく、日本やEUも自由貿易協定によって南の国々に押しつける存在になっている(20170728,20171031)。TPPであれ、RCEPであれ、日本政府の動きは、自由貿易協定によって遺伝子組換え企業や種子企業の知的所有権を守り、彼らを利する条項を各国に強制し続けてきたように見える(20171028,20180106)

*なお、UPOVについては、本サイト内のブログ「なぜか世界の潮流とズレている種子法廃止」及び「木を見て森を見ず~種子法廃止はフード支配の前哨戦」にも書いたので、ご興味のある方は、合わせてご覧いただきたい。

敵は我が腹中にあり~日本は遺伝子組換え大国

 日本政府はただ米国に隷属しているから仕方なくてやっているのではなく、日本の中もすでにその政策の享受者が存在している(20171031)。そして、この延長線上に主要農作物種子法廃止の問題も位置付けられよう(20171028)。例えば、コメの遺伝子に関するバイオテクノロジー特許の数で見てみよう。2000年の段階の古いデータだが、世界のトップ15社のうちの 5社が日本企業である。農家から種子を奪う日本政府の政策はこうした企業を利することになる(20171031)

 さらに遺伝子組み換えバラの栽培、遺伝子組み換えカイコの飼育もすでに始まっているそして、医薬品、人工甘味料、調味料等の分野では日本はすでに世界最先端の遺伝子組み換え生産国なのである(20180106)

 例えば、遺伝子組換えされた微生物の糞を原料とした人工甘味料にアスパルテームがある。糞だからカロリーがないが、神経を刺激することで砂糖の200倍もの甘みを感じさせる。糖分ではなく神経を刺激する化学物質であり、さまざまな深刻な慢性疾患を作り出すと指摘されている。そして、味の素はアスパルテームよりもさらに刺激を二桁強くしたアドバンテームという人工甘味料を作っている。日本はすでに遺伝子組換え微生物の開発大国になっているのである(20180111)

遺伝子組換え微生物を経産省が推進

 そして、さらなる遺伝子組み換え推進に向けて農水省と経産省が本腰を上げようとしている(20180106)。農水省と経産省が2018年の夏に遺伝子組換え産業の国策的な推進に向けた提言をまとめるとの記事が2018年1月5日に出された(20180106,2018011)。また、遺伝子組換え微生物について経済産業省が「包括確認制度」を1月11日から開始するとの通達が出された。これまで遺伝子組換えに関係してきた省庁は、農水省、環境省、内閣府食品安全局及び厚労省であったが、経産省が前面に出てきている(20180111)

 これまでの遺伝子組み換えは既存の遺伝子をコピー&ペーストしたり、その機能を止める(遺伝子をオフにする)ものだったが、この先にはさらに恐ろしいものが存在する。究極の遺伝子組換えとよばれる合成生物学である。

 合成生物学では遺伝子そのものをゼロからコンピュータを使って設計し、生命を作り出す。すでに藻等の微生物を作り出すことに成功し、オイル等を作り出すことができるようになっており、合成生物学を使った化粧品、洗剤、バニラクリーム等が実用化されている。

 こうした技術は生命が何億年かけて環境を破壊せずに進歩してきたものをわずかな日時で実現しようというものだが、残念ながらその安全性は保障されない。大きな環境破壊、健康破壊につながる可能性がある。そして、世界では、こうした新しい技術に対する疑念とそれを使う企業への不信が表明されている。良心的な科学者たちは十分な検証を求めている(20180111)

無関心から多国籍企業や経産省に支配されていく日本の消費者

 米国政府に従属してきたのは第二次世界大戦後ずっとであろうが、ここまで多国籍企業によって政治が支配されるようになったのはここ10数年のことではないか。その変化についてあまりに鈍感になりすぎてはいないだろうか(20171228)

 このままでは日本に未来はないし、世界にも悪影響を与えてしまうだろう。けれども、まだ終わりではない。例えば、今回のネオニコチノイド系農薬の使用を禁止しても農家は困らない。ネオニコチノイド農薬が必要とされるのは「白いコメ」にこだわる市場ゆえである。消費者がそのこだわりを捨てれば全廃することは可能である。「神経を脅かすコメ」と「安全なコメ」のどちらを食べたいか、と問われれば答えは明かである。その情報をすべての消費者が知れば、これは変えられる。要は、消費者次第なのである。消費者の無関心が悪循環を広げている(20171228)

編集後記

Tomoya-Innyaku.jpg 本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。さて、このブログの冒頭に掲げたグラフは印鑰氏が調べられた数値を見やすいようにグラフ化しただけだが、まんじりともせず見るだけで、「農水官僚の意識は、承認はスピーディーにやるのが義務付けられている。それがスタンダードというものだが、そのようなことをやっているのは世界では日本政府しかない」という印鑰氏の発言がリアリティを帯びてくる。そこで、今回も編集後記と題する小生の「駄文」をだらだら続けるよりも、印鑰氏が書かれたものを整理して転載してみることにして見た。知ることの大切さを改めて自分自身が学んだ気がした。


 先進国が原発を止めつつある中で、日本だけが原発推進をやめない等おかしな方向に向かっている(20180102,20180111)。けれども、遺伝子組換え承認件数が突出していることを知っている人も本当に少ない(20180102)。それは、日本政府だけが突出して遺伝子組換えの承認をしている異様さをマスコミが伝えようとはせず、この問題を扱うことが希だからある(20171215,20180102)。日本ほど多国籍企業のいいなりになる政府は存在しておらず、そしてそのことがほとんど市民に知られていない(20171228)。それによって起こりうる被害について、日本列島の住民は何も聞かされていない(20180111)
(2018年1月13日投稿)
【画像】
農薬散布の画像はこのサイトより
ネオニコチノイド系農薬への反対の画像はこのサイトより
印鑰智哉氏の画像はこのサイトより
【引用文献】
2017年7月28日:印鑰智哉氏のFacebook
2017年10月28日 :印鑰智哉氏のFacebook
2017年10月31日 :印鑰智哉氏のFacebook
2017年12月15日:印鑰智哉氏のFacebook
2017年12月21日:印鑰智哉氏のFacebook
2017年12月28日:印鑰智哉氏のFacebook
2018年1月2日:印鑰智哉氏のFacebook
2018年1月6日:印鑰智哉氏のFacebook
2018年1月12日:印鑰智哉氏のFacebook


posted by José Mujica at 07:00| Comment(0) | GMO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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