2019年02月07日

伝統野菜を守れ~SBCラジオJポイント

はじめに

 1月31日の「県主要農作物等種子条例(仮称)」の骨子では、他県に例がなく伝統野菜が位置づけられたが、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきたSBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」の2月4日のテーマはまさに「伝統野菜」の抱える問題だった。まさに、種子の保存問題が根幹でどれほど深刻な問題を抱えているのかがよくわかる。まことに時宜を得た放送といえるだろう。ということで、この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

全国的にも例がない、条例への伝統野菜の位置づけ

Masaaki-kubo.jpg久保正彰  この時間でも種子法に関しては何回もお伝えしてきましたけれども、先週の2月1日、金曜日の信濃毎日新聞の1面に掲載されましたが、県が制定を検討している種子法の骨子案が明らかになりましたね。種子法で対象としていた稲や麦類、大豆に加えて、長野県独自にソバの種子生産、それから、地
域に根付く伝統野菜の種子の保存に取り組む。これが明記されているということで、県によりますと、「種子条例の対象に伝統野菜を加えるのは全国でも、例がない」ということなんですね。その伝統野菜について、今日はスタジオで生田アナウンサーが報告をしてくれます。

生田明子 おはようございます。よろしくお願いします。いまご紹介しました「県主要農作物等種子条例(仮称)」なんですけれども、この条例については、阿部知事が今年の6月県会に条例案を提出する方針を明らかにしていますが、信州の伝統野菜についてはですね、作るグループの皆さんが高齢化しているところも大変に多くて、その普及が心配されています。作る皆さんが、しっかり種をつないでいけるように、種とりの指導ですとか、保存も県はさらに今後力を入れて行っていくという方向だそうです。骨子案は、県のホームページで公開されていまして、現在、県民からの意見を募集しております。

 そういった地域に根付く伝統野菜のあり方について、今日は皆さんに一度考えて頂きたい話題をお届けします。まずは久保さん、こちらをご覧ください。長野市で販売されている種子なんですが。

久保正彰「戸隠地大根」と「ネズミ辛味大根」とありますね。

生田明子 これはそれぞれ、どんな大根かご存知ですか?

20190206戸隠大根.jpg久保正彰 戸隠の地大根って短くってね。

生田明子 はい。

久保正彰 ちょっと辛みがあって美味しいですよね。そして、ネズミ大根もそうですよね。坂城町でしたかね。

生田明子 はい。どちらも、蕎麦の上に薬味として載せて食べるということも。

久保正彰 そうそう。天麩羅でもいいですよね。

生田明子 そうですよね。そういった地域で昔から作られている「伝統野菜だよねぇ」と思われる方が多いかと思いますが、その種子の袋の裏側を見てもらっていいですか?

久保正彰 250粒って書いてありますけれども、裏側をみますと、生産地。あれ。「中国」って書かれていますね!。あれ、両方そうですね。信州伝統野菜じゃないんですか?

信州の伝統野菜制度

生田明子 伝統野菜なのにいいんですか、と多くの方がそういう反応をするかと思います。改めてですが、久保さん、長野県が行っている「信州の伝統野菜」という制度はご存知ですか?

久保正彰 そう。もう10年以上も前ですか、小布施の丸ナスだとか、それから戸隠の辛味大根もそうですし、坂城もそうでしたし、松本一本ネギもそうですよね。

生田明子 そうですよね。

久保正彰 たくさんありますよね。

生田明子 平成19年、2007年から始まった、長野県が実施する「信州伝統野菜認定制度」によりまして野菜が選ばれています。どんな制度なのか。長野県農政部園芸畜産課の課長、丸山秀樹さんに詳しく聞いてきました。

20190206丸山課長.jpg丸山課長 信州の伝統野菜は長野県が作った制度でして、野菜の中でもですね、地域固有の特性があったり食文化がある。現在まで受け継がれてきている貴重な野菜を一定の基準に沿って選んで、それからまた認定するという制度であります。で、現在までに76種類の信州の伝統野菜を選定をしておりまして、その中で46グループ、48種類の野菜について認定をしているところであります。

生田明子 この制度は、昔から地域で食べられてきた野菜を「信州の伝統野菜」として選びまして、その品種の特性、来歴。どんなふうに入ってきたのか。食文化を調査し、その保存と継承を図るためのものです。また、「伝承地・栽培認定基準」を設けまして、認定を受けた生産者グループのみが「信州の伝統野菜・認定マーク」を表示して出荷・販売することができます。この制度もできてから10年が経過しましたので、今度は販路の拡大をして産地の活力をあげることも行っていこうというと、このたび横山たか子先生監修の「信州の伝統野菜のレシピブック」を作成。信州の伝統野菜が販売されているスーパーですとか直売所などにも置かれますので、ぜひ見かけられましたら手に取ってみてください。

20190206dentouyasaimark.jpg久保正彰 はい。で、この認定を受けたグループだけが「信州の伝統野菜の認定マーク」を表示できるということですけれども、先ほどの「戸隠地大根」「ネズミ辛味大根」はその認定マークはついていませんよね…。これいいんですかね?

生田明子 はい。いいんです。そのことを確かめるために、この種を持って長野県農政部を訪ねました。再び、丸山課長です。

丸山課長 いま、拝見しますと、販売されているこれ、これは信州の伝統野菜ではないと思います。

久保正彰 ん。ではないと。

20190206ねずみ大根.jpg生田明子 どういうことかと疑問を持たれる方もいると思うんですが、この種を販売しているのは、長野市信州新町で70年以上の歴史がある「信州山峡採種場」という種子の生産農家が集まって作られている会社で、信州の伝統野菜として認定されているグループではありません。

 そしてもう1点、この信州伝統野菜の制度は、平成19年度にできたもの。つまり、野菜の品種としては、制度ができるよりも もっと昔からあるものなんですね。ですから、この認定されたグループのみが作っているわけではなく、地域で多くの方も作っているという現状もあります。

 この信州の伝統野菜の認定制度は、グループ以外の人が作ることを規制する制度ではありませんので、この中国産の種に関しては、「制度の規則外」ということになります。

久保正彰 なるほどね。そうはいっても、中国で種を取って「戸隠地大根」という名前でこの種を販売するっというのは、どうなんですかね?。 

信州の伝統野菜の種が中国で作られている?

生田明子 この種を採種して販売しています、信州山峡採種場の金子量昭(かずあき)社長にお聞きしました。

20190206金子.jpg金子社長 信州の地方野菜がなんで外国産なんだって、ちょっと驚かれると思うんですけども、遺伝子的には完全に伝統野菜なんですよ。あの、ちょっと、うちの農場の隔離のいいところで、原種選抜して、で、そのちょうどいい原種を中国の農家の方に配って、それを生産しているので、遺伝子的には100%地方野菜なんです。中国で生産したからって遺伝子が変わるわけではないんですよ。日本人が外国に住んでいたからといって日本人のままですよね…。

久保正彰 なるほど…遺伝子的には地方野菜と。でも、「戸隠」という名前が付いていると、これ、種を買う人はですね。これは「長野県」で種を取っているのかなと思ってしまいますよね。

生田明子 はい。では、この会社では、どうして、中国で種子を採取するようになったんでしょうか。

儲からないから高齢化で生産農家が激減

金子社長 きっかけはあの13年前。大根の農家とごぼうの農家が減り続けてしまって困っているという話を知り合いにしたら「中国で信頼できる人がいるから、紹介してあげるから、そこで試作してみないか」と。

生田明子 そんなに採種農家さんって今減っているんですか?

金子社長 そうですね。まあ、人数的にはね。平成の始めには450軒ぐらいあったものが、今170軒ぐらい。まあ3分の1に減ってきていますし、一人の生産の量も減ってきている。当然高齢化しますのでね、人数も3分の1だけれども、一人当たりの生産高も、3分の1どころじゃなくて、もっと減ってきていますよね。3分の1×3分の1で、9分の1ですからね。もちろん地元の採種農家が増えれば、ぜんぜん外国にまで行く必要もないですが、採種という大変な作業ですので、作り手がなくなってきているのが現実なのでね。それを認識しないと会社としてもやっていけないということなんですね。

久保正彰 はあ。高齢化と農家の減少という理由があって中国で作っていると…そしてもう13年も前から…。

生田明子Akiko-Ikuta.jpg そうなんです。いまご紹介しました450軒ぐらいあったものが、今170軒ぐらいとありましたが、これは「信州山峡採種場」に登録している農家の数ということです。そして、農家の高齢化と後継者不足で中国にということでしたけれども、実は「大根の種とり」というのは、とても大変な仕事なんだそうです。再び金子社長です。

金子社長 種をまいて植えて、交配の時に手間がかかる。花粉つけの作業なんですけど、昆虫が入らないように、前日つぼみに袋をかけて、で、袋をとって花粉つけをして、また虫が入らないように袋をかけると。で、花が咲いて実がつく頃に倒れてくるので、支柱建てをして、紐張りをしなくちゃなんない。で、種ができると鳥が食べにくるので、防鳥網っていう網を張らなくちゃいけない。そして特に収穫が7月中旬。梅雨の末期なんですね。ちょうど借り入れるべきタイミングで雨が3日連続で降ると、種がその場で発芽してしまうんですね。全滅というのが過去にありまして、そういう意味では刈り入れ時に梅雨でない時期の場所で取った方がいいと。刈り取った後は、脱穀をして種になるんだけど、やっぱり単価的に大根は、そんなに高くないので、やっぱりお金にならないので、労力に比べて合わないというところが正直なところなんですね。

久保正彰 なるほどねぇ。大根の花ってとても小さいですよね。大変な作業になるんですね。

生田明子 それにそのつぼみ1つ1つに袋をかけて…。

久保正彰 まあ、機械化もできない大変な作業なんですねぇ。まあ、そういうこともあって、採種農家が減っているということなんですね。

生田明子 ここまで、取材しまして、生産農家もそれから種を採る採種農家も高齢化とその減少が、私たちが知らない間にあまりにも進んでしまっていると。そういう中でのグローバル化が起きていたんだという現実を、つきつけられたような気がしました。

なんとか採種農家が増えていくような支援方法がないものか…。これは非常に深刻な問題だと痛感しました。そして、中国で種が生産されるようになったのは、今回紹介したものだけではありません。実は、信州の冬の漬物として欠かせない、あの野菜もです。

 詳しくは、次回お伝えします。

久保正彰 TPPも発効されましてね。食糧もますます海外に、外国に依存する割合がちょっと高くなっていくんではないかと。そういう心配がありますけれども、「信州の伝統野菜」を作っているグループの皆さん。種採りも自分たちでしっかり行っているという話も聞くんですよね。今日の報告では、原種はこちらのものなので遺伝子的には信州の地方野菜…と言う。そういうお話もありましたけれども…。種をとった土地の影響は受けないのかなぁと…。そういう、クェスションマークもいくつか並びますので、次回はそのあたりもまた生田さんにリポートしてもらいたいと思います。生田明子アナウンサーでした。

生田明子 ありがとうございました。

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
戸隠大根の画像はこのサイトより
ねずみ大根の画像はこのサイトより
丸山課長の画像はこのサイトより
伝統野菜のマークの画像はこのサイトより
信州山峡採種場金子社長の画像はこのサイトより

【引用】
2019年2月4日、モーニングワイド ラジオJ


posted by José Mujica at 00:51| Comment(0) | 種子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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