2019年03月20日

第3弾:伝統野菜を守れ

はじめに

 1月31日の「県主要農作物等種子条例(仮称)」の骨子では、他県に類を見ない伝統野菜が位置づけられたが、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきたSBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」の2月4日、2月25日のテーマはまさに「伝統野菜」の抱える問題だった。まさに、種子の保存問題が根幹でどれほど深刻な問題を抱えているのかがよくわかる。まことに時宜を得た放送といえるだろう。そして、3月18日も第三弾ということで現場の状況がリアルで放送された。ということで、この放送をテープ起こししたものも紹介しておこう(1)

久保正彰 今朝はスタジオに生田明子アナウンサーに入ってもらってきています。このコーナーでは、「農業」についての様々な話題をお送りしてきました。とりわけ、タネについ、信州の地方野菜の種が海外で採種されているものが、大変多くなっているという話題をお届けしましたが、今朝は何ですか。

伝統野菜を守っていく素晴らしい条例骨子案を絵に描いた餅にしないために

生田明子 今日は、信州の伝統野菜の作り手の高齢化の問題を取りあげます。

Masaaki-kubo.jpg久保正彰 農家の高齢化、担い手不足は信濃毎日新聞にも掲載されていましたし、いろいろなところで話題になっていますね。

生田明子 はい、ここまでお伝えしてきたように、信州の伝統野菜だけでなく、一般に出回っているおよそ9割もの種が外国産になっている。その背景には、農家の高齢化とそれを担う人の激減があることがわかってきました。

 信州の伝統野菜というのは、地域の私たちの食文化と密接につながっているものです。それをなんとか守ることができないかということで、阿部知事が今年の6月県会に条例案を提出する方針を明らかにしている「県主要農作物等種子条例」、(仮称)なんですけれども、これの中で、伝統野菜についても守って支援していくという方針が盛り込まれると伝えられています。ただ、この条例は素晴らしいのですけれども、それが絵にかいた餅にならないように、今日は、その高齢化について考えていきたいと思います。

 まずは、その現状を知ることから始めたいと思いまして、長野市戸隠で、信州の伝統野菜のひとつ「戸隠大根」の生産者に今日はお話をお聞きました。戸隠大根は、辛味がある地域に根付いた地大根のひとつなんですが、長年の自家採種によって特徴が崩れてしまったため、元の状態に戻そうと地元の皆さんが努力されまして「戸隠おろし」として種苗登録されています。生産者グループ 「戸隠おろし振興会」会長の横田久(ひさし)さんです。

伝統野菜の担い手が高齢化~需要があっても重いから作れない

20190220戸隠振興会S.jpg横田久 だいたい今年は30a、10tを超えましたでしょうかね。生産者がいまたしかに減っているんですよ。管理まではいいんですよ。ただ収穫になるとですね。大変重いもので、我々みたいに高齢化になってくるとですね、大変な作業になってくるので、栽培者が年々やっぱり減っていくということですよね。まあ、そんなことで、中学生に今ちょっと作って頂いて、中学生が作って収穫して食べてみて、それで、その感想を家庭に持ち帰って「こういう大根が地域にありますよ」という話をしてくれということで、学校と学習の一環としてやっているんですけれど、そこに私ども参加させて頂いて、たとえ、一軒でも、生産者を増やしたり、また地域にこういう伝統的な野菜があるんだっていうことも理解を頂きたいと、いう取り組みをしております。

久保正彰 なるほどね。中学生にかかわってもらおうということなんですね。長野市の「小森ナス」の場合は農業高校とタイアップして農業高校が種を採るということがありましたけれども、こういうことがカギですね。それにしても、お元気な様子が伝わってきましたが、横田さんはおいくつなんですか。

20190220戸隠収穫S.jpg生田明子 横田さんは、現在81歳なんですね。戸隠おろしのグループでは30人ほどの方が生産されていますが、70代の方がほとんどで、グループの最高齢は84歳。長野県は長寿県ですからやっていけているものの他の県では成り立たないのではないかなと感じます。インタビューの中で「収穫の時に大変重い」とおっしゃっていましたが、大根の単体としては20センチ程度で重さは200~300gですが、それを出荷のためにコンテナに入れて運ぶと20kgになります。畑の中まで車が入れるような条件のいい畑ばかりではありませんので、自力で運ぶか、手押し車で運ぶか。20kgです。自分が80歳になった時に20kg運べるかと考えましたら私は自信ありませんねぇ。

 そして、先日、信州の伝統野菜の生産者の方が集まる会に取材をかねて参加してきたんですけれども、だいたい60歳の定年を過ぎてから地方野菜、信州の伝統野菜の魅力にとりつかれて、はや10年になるかなという方という方とも多くお話をさせて頂きました。そうすると現在は、70代、80代前半の方が多いかなという印象を受けました。

タネを守っている高齢者が病気になれば遺伝資源は消滅

久保正彰 高齢の方が多いということは、その年代が担っていると、体調面でちょっと病気になってしまったりすると大変なことになってしまいますね。

生田明子 そうなんです。信州の伝統野菜の場合は自分で種採りをなさっている方が非常に多いんですね。そうしてしまったら種採りの技術が廃れてしまうことになります。

久保正彰 となるとギリギリの状態だということですよね。

生田明子 はい。これは、すなわち、その品種が消えてしまうことにもつながっていることになるんですよね。そこで、今年、長野県は、信州の伝統野菜を栽培する農家を対象にした採種指導会、種採りの指導会を今まで以上に増やして、10カ所で行うとのことです。

久保正彰 安定したその品質の種子が採れるように県も後押しをしようと。こういうことなんですね。

生田明子 そして、作ったら、今度は売れると作る意欲もわいてきます。地域に根付いた食文化ですから、地元で消費が一番好ましい形となります。

久保正彰 戸隠おろしの場合は、これはどうなんですかか。

生田明子 はい、再び、横田さんです。

横田久 江戸時代ですね、戸隠のお蕎麦の薬味として、一番たぶん使われはじめた。

生田明子 戸隠そばのお店はたくさんあるんですけど、その中で「戸隠おろし」を使ってるところは、やっぱり多いのですか?

横田久 今あまりないんですよ、残念なことに。一時、相当、何軒かの人達が使っていたんですけど今、実質的には1軒か2軒だね。ちょっと残念なんですね。

生田明子 というと、いま主にどこにおろしているのでしょうか。

20190220木の花屋漬物S.jpg横田久 今は、私どもは宮城商店さんさんといって、製品になると、木の花屋さん。そこにおろしています。戸隠おろしのたくあんということで、漬物屋さんから販売をしていただいています。大変実は固いんですね。そして辛味がありますので、漬けると甘みが出てまいります。だから、おかげさまで大変評判がいいということで、なるべく多く出荷してくれっていうふうに言われるんだけれども、さきほど申し上げたとおり、なかなか重いもので、生産が少し落ちぎみです。

生田明子 今日は、戸隠おろしで作られました「ぬか漬け」をお持ちしました。この「ぬか漬け」はこだわりで、漬け材料のところに、米ぬか、果物の柿の皮、なすの葉と書かれていました。昔ながらの作り方、付け方ですね。

久保正彰 この味ですね。この歯ごたえ。これはやはり戸隠の大根ならではですね。これだけおいしいのに、作りたいのに重いとか作れないというのはジレンマでしょうね。

伝統野菜は文化的、学術的、経済的にも重要

生田明子 おいしいからもっと広めたい、けれども生産量がこれ以上増やせないという状況は、他の伝統野菜も同じようでした。最後に、前回出演してくださいました、信州の伝統野菜の認定委員をつとめる信州大学農学部植物遺伝・育種学研究室の松島憲一准教授にもお話をお聞きしました。

Kenichi-Matsushima.jpg松島准教授 長野県の農業、やはり高冷地から割と低いところまで、さまざまな農地があるっていうことで、バラエティに富んだ農作物が作れるっていう利点がありますよね。で、何よりもやはり、信州ブランド、我々素晴らしい景色の中で農業してますので、その中に昔から培われてきた伝統野菜が各地域に76もあるんですよ。これは今の日本の他の県でも山形の次ぐらい多いんですよね。こういうバラエティがある長野県の農業は、各地域の食文化とセットになって残ってきてますので、文化として残していくことも大切ですし、やはりそれで他の地域には、ない野菜ですよって言うことが売りになりますから、そういう経済的な面でも重要なんですよね。で、もう一つはですね、我々学者側からすると、昔からずっと作られてきた作物ですので、今の一般に売られている品種にはない遺伝子、病気に強いだとか、倒れにくいですとか、わかんないですけど、そういう遺伝子が残っている可能性がある。これを遺伝資源というんですけど、遺伝資源として保存していく必要も、学者サイドからもあるんですよね。ですから、学術的、経済的、文化的な重要性が伝統野菜にはすごくあってですね、そういうものが長野県には76もあるということですので、文化的、経済的、学術的に農業を下から支えている伝統野菜を大切にしていきたいなと思ってます。

久保正彰 文化的、学術的、経済的。ねぇー、お年寄りにとってみれば健康のためですよね。今日も天気がよいですから外に出ると気分がすかっとしますよね。


生田明子Akiko-Ikuta.jpg 農業のおかげで信州が長寿ということもありますよね。松島先生のお話の中に遺伝資源という言葉があったんですけれども、来年度は、健康志向の高まりに対応して伝統野菜のブランド力をさらに高めるため、県内の大学に栄養成分の分析も36品目で行われるということです。さらに、販路開拓に向けた商談会も開く計画があるということです。認定を受けた生産者グループの信州の伝統野菜には、「信州の伝統野菜・認定マーク」がついていますので、見かけられましたたら、ぜひ手に取ってみてください。

久保正彰 今朝は、伝統野菜の担い手が高齢化している、ギリギリのところにあるという話題、生田アナウンサーでした。

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
横田久氏の画像はこのサイトより
戸隠大根の収穫風景はこのサイトより
戸隠大根の漬物は「木の花屋」のこのサイトより
松島憲一准教授の画像はこのサイトより

【引用】
2019年3月18日、モーニングワイドラジオJ


posted by José Mujica at 23:28| Comment(0) | 種子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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