2019年07月08日

長野県にて、蕎麦、伝統野菜と在来種を守るため独自の条例制定さる~SBCラジオJポイント

はじめに

 日本の多様なタネを守ってきた「種子法」が2018年4月に廃止されて以降、SBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」というコーナーは「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきた。

 そして、7月5日(金)では、県側が提起した条例が、可決された。これについては、信濃毎日新聞、日本農業新聞北越版、そして、日経新聞も報じた。
 例えば、日経新聞はいち早く、当日の夜20時にはこう書いている。

「長野県議会、種子条例を可決 安定供給や保護明記。長野県議会6月定例会が5日、閉会した。2018年に国が廃止した主要農作物種子法に代わる「主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例(種子条例)」などを原案通り可決した。種子法と同様に、県がコメや麦など主要作物の種子を安定供給することを定めたほか、新たにソバや伝統野菜の保護、種子生産者への支援も明記した。施行は20年4月。

 一般社団法人長野県原種センターが種子管理団体として生産や保存、需給調整などをする。将来にわたる種子の安定供給を明文化し、農家の不安を払拭する考え。県などが種子生産者に対し、生産体制の整備や採取技術の継承などに必要な支援をすることも定めた。

 種子の継承が課題となっている伝統野菜の保護も手厚くする。県が定める「信州の伝統野菜」(現在は76種)の保護に努めることを明記した。

 一部地域でしか生産されていない作物が災害などで失われないよう「バックアップ」となる種子を県の主導で保存する。これまでは数品種のみが保存の対象だったが、新条例の施行後は段階的に76種全てを対象にしたい考えだ。信州の伝統野菜には、野沢菜や「松本一本ねぎ」「ぼたんこしょう」などが含まれる。

 日本のタネを守る会のサイトには、「種子条例制定状況」のマップが出ているのだが、これにも晴れて乗ることができるようになった。では、この条例はどのような想いで策定されたのか。SBCラジオの放送で、阿部知事と農政部の伊藤洋人技術課長のインタビューがなされたので、この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

種子法とはなんであったのか、改めておさらい

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久保正彰 6月県議会は、最終日の先週の7月5日金曜日に「主要農作物種子法」の廃止に伴う県独自の「種子」、タネに関する条例案を可決いしました。「種子法」で対象としていた、主要農作物の稲、麦、大豆、これに加えて、ソバと伝統野菜なども条例の対象として、種子、タネの保存に取り組んでいくという内容ですね。今日は、この条例について取材を続けてきました生田 明子アナウンサーの報告です。

生田明子 おはようございます。長野県のこの条例、正式名称は、「長野県主要農作物および伝統野菜等の種子に関する条例」です。

 種子法が廃止されてから、今、全国の自治体で種子法に代わる「種子条例」を制定する動きが広がっている中、長野県は、全国で11番目の制定となりました。

 まず、この条例ができた背景、改めてお伝えいたしますと、2018年の4月に、「主要農作物種子法」という国の法律が廃止されました。通称「種子法」です。これは、日本の米や麦、大豆など主要作物の種子について、都道府県が優良品種を開発するなど、その種づくりをしっかり予算をつけて行い、その土地にあった種を守るように義務付けてきた法律なんですね。けれど廃止されたことで、農業関係者は混乱しました。種の開発や生産には、交雑を防ぐために驚くほどの手間もかかりますし、一つの品種が開発されるまでには最低10年、種として販売されるまでに行う増殖には4年がかかると。莫大な時間も、費用もかかりますが、県の種は、JAを通して、農家が安く購入できるようなシステムになっているんですね。そして、その種から農作物を作ることによって、例えば、各地域の銘柄米を、消費者が手ごろな値段で口にできたというわけです。

久保正彰 私達が毎日頂いているお米もですね、膨大な労力、費用もかかって種が守られてきたということなんですけれども。 税金で賄ってきたから 手ごろな価格で我々は頂けたということなんですね。

生田明子 そうなんです。けれど、法律がなくなった今、都道府県は、予算をつけて守る義務がなくなったわけです。ここに、民間の企業が参入してくることも見込まれる中で、農家としては、「種の値段がこれまでより上がってしまうのではないか?」「食の安全は守っていけるのか?」といった様々な不安の声があがりまして、長野県としては「条例」を作って、農業をしっかり守っていこうという方針が打ち出されました。

 では、この条例の意義について、阿部知事、会見の中でこう語りました。

県全体としてタネを守り、農業関係者の人々の不安を払拭していく
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阿部知事 未来にむけて、主要農作物の種子の確保というものを条例にしっかり制度的に位置付けることによって確実なものにしていくと。そのことによって農家の皆さん、あるいは農業関係者の皆さんの不安を払拭していくという役割がひとつあるというふうに思います。

 それから今回の条例制定によりまして、単なる前年度の予算措置で取り組んでいくということではなくて、県議会の意思も明確なわけでありますから、県全体としてこの種子の確保について、しっかり取り組んでいくと。

 長野県の特色ある農作物、こうしたものについても、しっかりと守り育てていきたいと言うふうに思ってます。

76の伝統野菜や在来種も守っていきたい

生田明子 では、詳しい条例の中身について、長野県農政部、伊藤洋人(ひろと)農業技術課長 です。

伊藤洋人 主要農作物種子法が規定していたことを、将来にわたってしっかり維持継続することに加えまして、県民の大切な財産であります「蕎麦」ですとか「伝統野菜」、そしてあの在来種の種を含めてですね、長野県の種を幅広く守っていく内容にしたというところが特徴かと思っています。

 あの、主要農作物については「奨励品種」という制度がありまして、現在45の品種がその指定を受けているんですけれども、これとあと伝統野菜については76の品種について、信州の伝統野菜として認定するということにしております。

 ですから、これらの種を中心に、あと、在来種についてもですね、長野県でこれから将来にわたって守っていかなければならないというものを知事のほうで、指定をさせて頂いて、そういったものを含めて守って行こうという考え方です。

生田明子 長野県らしさが存分に表れた条例となりそうです。また、この条例については、骨子案を作り、パブリックコメントも行われ、県民の意見を幅広く聞きながら作られました。

久保正彰 はい。さきほどちょっと見ましたが、幅広くいろいろな意見が出ていたようですね。

生田明子 では、どんな意見がよせられたのか、再び、伊藤課長です。

遺伝子組み換えが怖い、交雑が不安、自家採種できなくなるが県民の声

Hiroto-Ito.jpg伊藤洋人 「条例制定にまあ賛成だ」と。「大変にいい条例なので、是非作ってもらいたい」ですとか、あるいは「伝統野菜など品目を拡大したのが大変いいね」という内容ですとか、それから、遺伝子組み換えの関係のご意見です。

 法律が廃止されまして、今後遺伝子組み換えの食品がどんどん増えていってしまうんじゃないかということを心配する声ですとか…あるいは、県内の作物に遺伝子組み換え作物が、交雑というか、掛け合わせになってしまって、そういったものが入った作物ができてしまうではないかというご心配。

 それから、種を自分でとっている農家さんっていうのもいらっしゃるんですけども、そういうことが、今後できなくなっちゃうんじゃないかと言うような不安。これらのものが多かったというふうに考えております。

久保正彰 そういう県民の意見が幅広く寄せられたということですが、条例の中に反映されたものもあったんですか。

生田明子 はいこちらをお聞きください。

今年度中にガイドラインを策定する方針で準備

伊藤洋人 今回、ご意見の中で条例に盛り込んだ部分としましては、まず条例の名称ですね。ここに、「伝統野菜」とかですね、あるいは、「在来種」をいれた名称にした、というところがひとつ意見を反映した点だと思います。それから後、伝統野菜の種の生産にかかる支援について、ちょっと表現的にわかりにくいなというご指摘がありましたので、そこをわかりやすくしたということ、それから種子生産者の支援についてですね、新たな種子生産者を支援しますよ、という最初記載になっていたんですけども、現在種子を作っている方もしっかり支援すべきだというご意見を頂きまして、そういったことを明記した点などが反映したところだと考えています。

久保正彰 なるほどね。先ほどのパブリックコメントの中で不安だという 遺伝子組み換え農作物。これについてはどうなったんですか。

生田明子 はい。今回の条例の中には盛りこまれませんでしたが、遺伝子組み換え作物と、県内で栽培されている普通の作物との交雑を防止するための「ガイドライン」を今年度中に作る方針で準備がされているということです。

条例が制定されたことで生産者と県内外の消費者のための命の源の礎を確保

久保正彰 なるほどねえ。この条例ができたことによって、長野県の農業は、今後、どんな展開になりそうでしょうか。

生田明子 再び、伊藤課長です。

伊藤洋人 まさに、種というのは「命の源」というふうに言われておりますけども、すべて農業を行う上での基本になる部分と考えています。特に主要農作物についてはですね、だいたい、のべ面積で、4万2千ha位が長野県で栽培されているんですね。長野県の耕地面積って、10万6千haぐらいなので、4割ぐらいが、こういったものになっているところです。こういったものをですね、将来に向けて安定的に生産するその「礎」のところが、今回、条例よって定められたかなと思ってます。

 将来にむけてそれが安定的に実施できる体制ができたというところが大きいかと思っています。あの、これによりまして、生産者の皆さんにとっても種が安心して供給されるんだなという安心につながると思いますので、農家の方にとっても意義があるとことでありますし、消費者の皆さんにとってもですね、この種というのは安心で安全な食糧の安定的な供給というものの「礎」になるというふうに、我々考えておりますので、長野県の消費者の皆さん、それから全国の消費者の皆さんにとっても、県のこういった作物がしっかりこれから作り続けられる基礎が出来たというところで、大きな意義があるというふうに考えているところでございます。

長野県条例は日本農業のお手本、消費者は食料主権を意識せよ
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生田明子 と言うわけで、長野県の場合は、稲、麦、大豆だけでなく、蕎麦、さらに、様々な地域の伝統野菜ですとか在来種も守っていうという条例案になったことは、全国的に見ても画期的なことです。

 長野県の種子、タネを守っていこうという明確な意思を表せたことは、これからの日本の農業のお手本になっていくと思いますし、何より長野県のこれからの農業を守る1歩になると、感じています。で、ここで、消費者にとっては「何を食べるのか」、一度問い直してもらえたらと思います。

 なぜかと言いますと、これは、農家にとって、「何を作るのか」ということにつながるからですね。自分で食べたいものを選んで決めていく権利を「食料主権」といいます。

 国産のものにするのか。それとも長野県産のものにするのか。遺伝子組み換え食品、ゲノム編集食品についても、どう選択していきたいのでしょうか。一人一人が、自分たちに与えられた「食料主権」を意識して、口にする食べ物について、この条例案をきっかけに、少し考えてもらえたらと思います。

「考えて買う」ことも、同じように大切です。

久保正彰 今地区の仕事で、水田の見回りっていうのをやってるんですけどね、この時期って、水を得て、水田の稲が順調にこう伸びていく姿を見ているとやっぱり日本ではこういう風景っていうのをやはり守っていかなきゃいけないってことを毎回強く思うんですけれどね。この「長野県・主要農作物および伝統野菜等の種子に関する条例」制定しまして、来年度 4月1日に施行されるということです。

編集後記

 日本農業新聞信越版 2019年7月6日(土)も種子法について書いた。転載しておこう。

長野県が種子条例可決「伝統野菜」も対象〜農家や専門家ら評価

 長野県議会は5日、主要農産物種子法(種子法)の廃止に伴う「長野県主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例」を全会一致で可決した。県内の農家や専門家からは評価する声があがっている。

 条例は、主要農作物の稲、大麦、小麦、大豆に加え、ソバや県が認定する「信州の伝統野菜」も対象としたのが特徴。県やJAの長野県グループなどでつくる一般社団法人長野県原種センターが種子管理団体となって、種子の安定供給や保存に当たることも示された。

Fujiko-Ouchi.jpg 中野市で「信州の伝統野菜」の「ぼたんこしょう」を作る「斑尾ぼたんこしょう保存会」会長の大内ふじ子さん(65)は「伝統野菜を守ってくれるのはありがたい」と喜ぶ。「伝統野菜は土地に合っていたからこそ残ってきた作物。昔ながらの形をそのまま残す努力をしていきたい」と話す。

 信州大学植物遺伝育種学研究室の松島憲一准教授は「伝統野菜は経済作物であると同時に文化財でもあり歓迎できる。種苗センターなどに任せきりにせず、農家自身が種採りを確実に継承することも重要だ」と評価した。

 元農林水産省関東農政局職員で、農家や研究者らでつくる「NAGANO農と食の会」で条例制定を求める活動を続けてきた長野市の吉田喜美夫さん(56)は「伝統野菜も対象にした長野県らしさが光る、全国でも例がない画期的な条例だ」と話した。

 伝統野菜に加え、知事が継続じて生産する必要があると認めた在来品種も対象とする。県農業技術課は「2020年4月の施行まで、対象とする品種の定義付けを慎重に行っていく」としている。
(2019年7月8日投稿)
(2019年7月11日改正)

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
阿部知事の画像はこのサイトより
伊藤洋人課長の画像はこのサイトより
大内ふじ子さんの画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年7月8日、 モーニングワイド ラジオJ


posted by José Mujica at 10:36| Comment(0) | 種子法廃止 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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