2019年09月04日

SDGsになじむのは微生物で浄化される美味しい水・上

はじめに

 2018年4月に「種子法」が廃止されて以降、SBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」というコーナーは、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきた。けれども、どうやら、売られているのは「タネ」だけではないらしい。ベストセラー作家、堤未果さんの『日本が売られる』(2018)幻冬舎では、以下のように資産も未来も売られていくと記述している。

1 水が売られる(水道民営化)
2 土が売られる(汚染土の再利用)
3 タネが売られる(種子法廃止)
4 ミツバチの命が売られる(農薬規制緩和)
5 食の選択肢が売られる(遺伝子組み換え食品表示消滅)
6 牛乳が売られる(生乳流通自由化)
7 農地が売られる(農地法改正)
8 森が売られる(森林経営管理法)
9 海が売られる(漁協法改正)
10 築地が売られる(卸売市場解体)
11労働者が売られる(高度プロフェッショナル制度)
12日本人の仕事が売られる(改正国家戦略特区法)
13ブラック企業対策が売られる(労働監督部門民営化)
14ギャンブルが売られる(IR法)
15学校が売られる(公設民営学校解禁)
16医療が売られる(医療タダ乗り)
17老後が売られる(介護の投資商品化)
18個人情報が売られる(マイナンバー包囲網拡大)

 そう。堤さんの著作ではタネは三番目で、水がトップなのだ。インタビューの中では、堤さんは、2018年12月に成立した「改正水道法」について、自治体が公共インフラである上下水道等の施設を所有権したまま、運営権(通常15~20年)を民間企業に売却する「コンセッション方式」の導入が促進されることによって、料金の値上がりや水質の悪化という問題が起きるのではないかと懸念する。

 この改正水道法が10月1日から施行されることを受け、「Jスポット」は、「持続可能な水道」をテーマに3回シリーズで水道問題を扱うという。ということで、この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

水の浄化法にはファストとスローがある

Masaaki-kubo.jpg
久保正彰 さて、水道ですね。水道事業についての法律。改正水道法が来月10月1日から施行されます。これまで市町村が担ってきた水道事業の運営。これを民間にゆだねることが可能になるんですね。今回の法律改正の目的「水道基盤の強化」。これを図ることが必要であることが目的となっておりますけれども、この背景には「水道施設の老朽化が深刻化しておりまして、設備の更新が急務」という現状があるということです。今月は、3回シリーズで「持続可能な水道とは」というテーマで生田明子アナウンサーのリポートです。

生田明子 おはようございます。第一回は「安全・低コスト・省エネという持続可能な浄水施設」として世界中で注目を集めています「生物浄化法」について取り上げます。まず、その方法を紹介する前に、水をきれいにする浄水処理技術には、大きくは2つあるんですね。

 ひとつは「急ぐ速度」と書く「急速(きゅうそく)ろ過」。水中の小さな濁りや細菌類などを「薬品」によって沈殿させ、水をきれいにするという方法です。

 二つ目は「ゆるやかな速度」と書く「緩速(かんそく)ろ過」。200年前イギリスのロンドンで開発されました。砂の層に水をゆっくり通すことによりまして、濁りを取り除くだけでなく、感染症のリスクを下げる効果というのも認められたことから世界各地にこの技術、広がっていきました。開発された当時はゆっくり水を通すことからこの名前がつけられていたのですが、顕微鏡の発達でいろいろなことがわかるようになってきまして、15年ほど前から「生物浄化法」という名前になって、世界に広がりを見せています。提唱者は、プランクトン研究の専門家でいらっしゃいます、なんと信州大学の中本信忠(のぶただ)名誉教授です。

上田新聞S.jpg中本名誉教授 35年前から一生懸命研究して、昔は顕微鏡が発達してないから、砂できれいにしていると思って名前つけられてて、実は顕微鏡が発達してよく見てみたら、いや微小生物の活躍だったよってことがわかった。じゃ微小生物が活躍できるようにどうしたらいいかって考える必要があるよということで名前を新しくしたんです。スマートテクノロジーっていったらいいかな。薬は使ってない、電気は使ってない、動力もかかってない、自然の仕組みのね、賢い活用っていうわけ。新しい浄化法としての発祥地、それが、染屋浄水場なんです。上田市にある。

上田市には世界最先端の微生物浄化水道があった

生田明子 そこで、中本先生と一緒に、上田市にある染屋浄水場に行ってみました。先生のおっしゃった通り、あたりを見渡してみても、電気を使う機械というのは見当たらずとても静かなんですね。そのかわり「ろか池」には「藻」がたくさん生えていたんです。

久保正彰 写真ありますけれども、結構、大量に発生していますね。

生田明子 はい!。いいんですよ。

NakamotoS.jpg中本名誉教授 最初、これを見た小学生が、「わあ、汚い」って言うんですよ。いや、これは汚くないんだよ。これが役にたってるんだよ。これが水をきれいにしてるんだよ。という解説。おいしい水を作る小さな主役たち。水をろ過する砂の表面に、無数のプランクトンがいます。藻といってもわかんないから、プランクトンにしてるんでしょ。中でも浄水場にとって強い味方は、メロシラ・バリアンス(Melosira varians )という、ケイ藻です 。これね。この茶色いやつ。彼らは、春から秋にかけて繁殖して、水道水に不要なものを除去します。そして、光によって酸素を放出し、その浮力でゴミと共に浮かび上がります。この繰り返しにより美味しい水が作られます。濁りが取れますと。

生田明子 へぇー。

中本名誉教授 だから、これ有用生物だってわけ。それを私たちは毛嫌いしちゃった。だから、いやーこれは役にたってるよって。

維持経費もかからずきれいで美味しく安全でいいことずくめの微生物の威力

生田明子 中本先生は、「生きている藻は臭くないし、藻は自動ごみ取り装置」だというふうにおっしゃっていました。

 この藻や砂を顕微鏡でみてみましたら、小さな生き物たちがいっぱいいたんですね。藻は、微生物たちの餌になっていたんですね。さらに、アメンボなどの昆虫もいたんですが、こういった微生物や昆虫による食物連鎖で水が浄化されているということを研究によって証明し、世界にこの方法を伝えているのが中本先生なんです。では、微生物たちは、川の水をどのぐらいクリーンにしたでしょうか?水の濁りを表す濁度計の数値を見てみました。

中本名誉教授 最後の砂ろ過した後は「0.000」の水なんです。濁度基準というのは、0.1度を目標にしなさいと。何桁も下位のきれいな水です。もう細菌もいないですからね。ちょっと飲んでみて。

Akiko-Ikuta.jpg
生田明子 いただきます。美味しいです。蛍がこっちの水は甘いぞって。

中本名誉教授 そう。つまり刺激が何もない水は、実は僕らは甘く感じるんです。だから別名、甘露水て、甘い露の水って呼んでます。この本物の水を知らないんです、みんな。

生田明子 最後に、もうひとつおっしゃっていたのが、染屋浄水場の生物による浄化法は薬品類をほとんど使わないため、水道管等の設備も長持ちするのでメンテナンスも最小限で済むとのことなんですね。ですから、大正12年に作られたので100年近くたっているのですけれども、この施設でも現役でいまも活躍しているんだと力強くおっしゃっていました。

 染屋浄水場では、中本先生の解説つきで、月に一度無料の見学会が行われています。「水が第一」という気持ちで、第一水曜日です。今月はあさっての4日(水)午前9時から、来月は2日(水)午前9時からです。

久保正彰 ここまでねぇ、お話を聞くていると、緩速ろ過は、メリットがだらけというか、いいところばかりのようなのですが、この緩速ろ過は、上田市染屋以外にも県内に何カ所かあるんですか。

生田明子 はい、平成26年の5001人以上の給水人口のものに対しての「長野県水道統計」のデータによると長野県内には、緩速ろ過は26あります。対して今日紹介しなかった薬品を使う急速ろ過の浄水池は、58と、急速ろ過のほうが多いんですね。どうして、この急速ろ過を多く採用しているのか、次回以降に、またご紹介いたします。

編集後記

 農業、食の世界では作家、島村菜津さんの「スロー・フード」が良く知られている。防腐剤等の食品添加物を利用して工業的に大量生産される「ファスト・フード」に対して、微生物の力を活かし自然に発酵していくチーズや味噌はまさに「スロー・フード」と言える。けれども、同じ図式で薬剤を利用した工業的に大量浄化される「ファスト・ウォーター」と微生物の力を活かして自然に浄化されていく「スロー・ウォーター」があるとは意外だった。しかも、このスロー・ウォーター研究の第一人者が信州大学の中本名誉教授であり、その実践事例も上田や飯田にあるという。

 微生物は地球にやさしい。浄化された水は、阿寒湖やバイカル湖の水よりきれいなうえ、薬も使わないから甘い。薬を使わないので配管の老朽化も起こりにくく、機械も使わないため阪神大震災でも東北大震災でも施設は壊れなかったという。なんとなれば、これは東京都市大学の枝廣淳子教授が「しなかやかな強さ」と訳されている「レジリアンス」そのものではないか。

 ちなみに、「レジリアンス」は農業の世界で着目されているキーワードだ。FAOの小規模家族農業の専門家、竹之下香代さんによればSDGSでは「オーガニック」よりも「アグロエコロジー」と「レジリアンス」がいま一番のキーワードになっているのだという。次回の放送に期待したい。
  (2019年9月4日投稿)
【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
中本名誉教授の画像はこのサイトより
緩速濾過浄化地の記事の画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年9月2日、 モーニングワイド ラジオJ



posted by José Mujica at 06:00| Comment(2) | 水道民営化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
適格に伝えて下さりありがとうございます。気になるのは、染谷でなく染屋です。生田アナは私の解説を聞いて本当に驚いていました。2004年頃に緩速ろ過という名前は浄化の仕組みの本質を表していないと気づいて生物浄化法と名前を提案しました。スローは、速度でなく、生物群集にやさしいという意味でした。水道統計には給水人口5,001人以上の施設の統計で、大規模の施設の統計です。長野県は、5,000人以下の施設も多数あります。簡易水道といい、水道統計に含めないという詭弁があります。簡易水道には、多数の、緩速ろ過施設が現存し、稼働しています。簡易水道を含めると浄水場の数では、急速ろ過の施設の数より多いです。
Posted by 中本信忠 at 2019年10月02日 15:29
ご指摘ありがとうございます。音声を聞いて売っているものでチェックし切れない所がありました。「染谷」を「染屋」に修正します。
Posted by at 2019年10月04日 21:18
コメントを書く
コチラをクリックしてください