2019年10月04日

化学薬剤で処理するファストな技術はSDGsになじまない?・下

水民営化を推進する法律が10月から施行されている

Masaaki-kubo.jpg久保正彰 さて、先週のラジオJでもお伝えしましたが、水道事業についての法律、改正水道法。明日10月1日から施行されます。これまで市町村が担ってきた水道事業の運営に、民間企業が参入しやすくなるということなんですが、今日は「改正水道法でどう変わるのか」。7時台のJのコラムでは、長野県がどうなっていくかについてご紹介していきます。スタジオは、生田明子アナウンサーです。おはようございます。

生田明子 おはようございます。まず、改正水道法、法律改正の目的は「水道基盤の強化」です。背景には、水道施設の老朽化が深刻化していまして、設備の更新が急務になっている上に、人口が減少していますので、料金収入が減って、経営環境が悪化している。といった現状があるからです。この法律では、施設の所有権を自治体が所有したまま、民間企業に水道事業の運営をゆだねるという「コンセッション」方式の導入を自治体の水道事業でも推進しているということが、柱のひとつになっています。

久保正彰 コンセッション方式ねぇ。

waterDVDs.jpg生田明子 まず、この「コンセッション方式」について、世界の水事情に詳しいNPO法人アジア太平洋資料センターで『どうする?日本の水道~自治・人権・公共財としての水を~』 というDVDを制作し、水道の民営化について、問題提起している、内田聖子(しょうこ)さんに解説して頂きます。

情報の透明性、水質、料金、災害時。懸念だらけのコンセッション方式

内田聖子 「コンセッション方式」というのはですね、私達はほぼ民営化だと思っているんですけど、その経営に関わる全ての権限ですね、これを自治体から民間企業に、売却されるという話なので。例えば、経営の方針を立てるとか、それから料金の設定だとか、職員は何人雇うかとかですね、水質をどうするかとか、あらゆる運営に関わる判断を企業の側が持てるようになると。ただ、施設の所有権、つまり、浄水場とか、水道管とかですね、インフラは自治体が持つと。という非常に分かりにくいスキームなんですけども。経営や運営に関わる権限というのはですね、非常に大きなものです。民間の手に移ってしまうということはですね、情報の透明性の問題ですとか、それから料金が上がるという懸念もありますし、水質は大丈夫なのかとかですね。それから災害の際に、これまで公共で点検をしてきたような復旧作業ができるのかとかですね、様々な懸念というのがあるわけですね。

 これがその運営が民間企業に移った場合ですね、責任の体制はどうなのかとかですね、連絡などもしっかり取れるのかとかですね、あるいはその後で費用がかかってきますので、そういう負担の問題とかですね。まあ今も、実は山のように懸念する点があるという状態ですね。

生田明子 人口減少で、苦境に立つ水道基盤の強化が目的なんですが、災害時の対応に不安を残したまま、民営化のハードルが引き下げられたという形になっています。このコンセッション方式については、長野県内では、今のところ検討している自治体はありません。では、長野県としては、どうなるのか、長野県環境部水大気環境課水源水道係専門幹 斎藤正幸さんにお聞きしてきました。

長野県では広域連携を推進することで問題を解決しようとしている

斉藤正幸 ただちに日常の水道使用に何か変化があるかといいますと、まったくそんなことは感じられないかと思います。しかし、皆様に水道を供給する立場の側としましては、将来を見据えた対策を今からおこなっていかなければならないといったことが、改めて法律上、明記されたということができるかと思います。その意味でも危機感をもって、取り組んでいかなければならないわけです。そのための基盤強化の有効な手段の一つとしまして、広域連携の推進が今回の改正法では盛り込まれています。そこでは、私ども県の方に広域連携の推進役としての責務を課せられているところでございます。

 長野県では、特に規模の小さい水道事業者が多いのが特徴です。水道事業の直面している課題を解決するためには、施設や経営の効率化・基盤強化を図っていくといったことにあるわけでございますが、それらを、市町村の境を超えて一緒にやっていこう、ということがいえるかと思います。連携の形態としましては、水質検査を共同で行う共同委託、あるいは水道施設の維持管理業務の共同委託、経営の一体化などが考えられるところでございます。これらも各地域の実情といったものがございますので、それを踏まえながら可能性を探っているところでございます。

生田明子 水道法改正の柱としましては、国は、民間企業の参入の他にもですね、広域連携の推進を掲げています。

久保正彰 ですから、長野県としては、こちらの広域連携で水道事業の難局を乗り切ろうとしているということなんですね。

生田明子 はい。

久保正彰 この法律の改正によって、水道事業は転換期を迎えているといってもいいかと思います。このあとの、8時15分からのJポイントでも、引き続き、生田明子アナウンサー、水道について解説をしてまいります(1)

上田市では水道料金徴収をフランス企業ヴェオリア・ジェネッツに委託している

久保正彰 水道事業についての法律 改正水道法。明日10月1日から施行されます。これまで市町村が担ってきた水道事業の運営に、民間企業が参入しやすくなります。今朝の7時台のJのコラムでは、改正水道法の柱のひとつとなっている「コンセッション方式」について、そして、長野県がどうなっていくのか紹介いたしました。このコンセッション方式とは、施設の所有権を自治体が持ったまま、民間企業に水道事業の運営をゆだねるというこういう方式です。8時台でも水道について考えていきます。生田明子アナウンサーです。

生田明子 改めてよろしくお願いします。今度は、世界の状況も紹介しながら 水道の民営化について考えていきます。実は、水道事業に関わる自治体の職員が減少していることから、多くの民間企業によって業務委託されていることを皆さんご存知でしょうか。先週お話を伺った上田市の県営水道長野県企業局、上田水道管理事務所浄水係長の軣廣人(とどろき、ひろひと)さんです。

轟廣人 上田水道につきましては、二種類、業務委託を行っておりまして。料金徴収業務につきましてはヴェオリアジェネッツさん。と、浄水場の運転管理業務につきましてはメタウォーターさんに委託をしておると。県の定めた仕様に基づいて委託業務を行っているという状況になりますので、県で決めたやり方でやってくださいと。あくまで自治体が主の業務になります。                     

生田明子 でてきましたヴェオリアジェネッツは、フランスの企業。メタウォーターは、東京の企業です。

久保正彰 ほう。

生田明子 長野県内の水道事業、こちらだけではなく、かなりの自治体で、料金の徴収をはじめ、浄水場の運転管理業務。それから、水道管の修繕等も含めた維持管理業務等を民間事業者に委託しているということなんですね。

久保正彰 普段あまり見えないことですからわかりませんよねぇ。既に水道事業には多くの民間企業が関わっているわけなんですね。そして、今、フランスの企業名がでてきましたねぇ。フランスではこれ水道は民営化されているんですか。

生田明子 はい、そのあたりの事情を、7時台に続きまして、NPO法人アジア太平洋資料センター 内田聖子さんです。

フランスではヴェオリアに民営化したところ役員報酬が見えず料金が倍になった

Shuko-UchidaS.jpg内田聖子 例えば、あのフランスのパリ市、1985年にヴェオリアとか、スエズというメジャー企業と契約をして、コンセッションをやってきたんですけれども、当初契約するときは、民営化で全てうまくいくんだと、自治体もコストかからなくなるし、効率的なサービスが提供できるということでみんな次々にやっていたんですけれども、例えば、自治体の側にですね、企業の財務状況ですね、いくら儲けてるのかとか、役員報酬はいくらだとか、そういう情報がきちんと開示をされなくてですね、非常に水道事業というのが自治体の側から見えにくくなってしまったという点や料金が2倍近くにあがっていったんですね。20、年30年という間にですね。料金のことはもちろんですが、水質が実は悪化してしまったとかですね。等々の問題がありまして、実は2010年に再公営化といって、もう1回公営に戻すということに成功した自治体なんですね。

久保正彰 一度コンセッションを取り入れて、また公営化したわけですね。

生田明子 そうなんです。長野県内では7時台にもお伝えしましたが、コンセッション方式を検討しているところは今のところはないようですが、水道法が改正される前から、宮城県などの自治体では検討されています。その背景とは。

コンセッション方式に転換するよう国は補助金で推奨している

内田聖子 宮城県の場合はですね「コンセッション」を導入するとですね、いろんな国からの補助金というのがいまつくことになっていまして、財政的なインセンティブを色々つけて国はやってくださいということを自治体に推奨してるんですけども、そういうメリットというのも感じてる自治体もあるかもしれません。

久保正彰 うーん。日本の自治体は、どこも財政難ですからねぇ。「補助金という特典がつくならば、うちもやろうか」と考えるところが多いでしょうねぇ。きっとねぇ。

生田聖子 内田さんは、これから、このコンセッション方式を取り入れる自治体は、増えていくのではないかとおっしゃっていました。けれど、ここで立ち止まって考えて頂きたいんですね。最後に、内田さん、このようにおっしゃっていました。

脱大量消費のSDGsの時代には限られた資源をわかちあうべき

内田聖子 これからの時代は、大量生産大量消費ではなくてですね、限られた資源をいかにみんなでシェアをして使っていくかっていう時代に、もう転換しているはずなんですけども、民営化という方向性はですね、それとは逆行していると思います。やっぱり企業は利益を求めてですね、たくさん水を使って欲しいっていう話になってくるので、持続可能性とは真逆だなと。

 日本の水道は、明治からずっと公共がやってきたっていうところでですね、非常にクオリティーが高いんですね。素晴らしいゆえに、私たちは恩恵を何も考えずに享受しちゃってるっていう現実があります。

 ただやはり人口が減っていく中で、今までのように無関心、無意識ではもういられないとふうに私は思っていまして、自分たちの地域の水道がどうなってるのか、どうしたいのかっていうことをできるだけ住民が参画するような形で取り組んでいくことが必要だと思っています。

久保正彰 うーん。

Akiko-Ikuta.jpg生田明子 私達は水がなければ生きていけません。まずは、身近な自分の飲んでいる水がどこの浄水場からきているのか。そして、それが、どんな方法で浄水されているのか。調べてみるのもいいかもしれません。明日、改正水道法が施行となります。

久保正彰 日本は治安がよい国であると。そして、公共の水が美味しいと言われておりますけれども、その効率的なサービスといわゆる公共性、透明性。このへんのバランスですよねぇ。きっと。明日から改正水道法施行ということで、生田明子アナウンサー、3回シリーズで、持続可能な水道について伝えてくれました(2)

編集後記

 結局はグローバル企業とカネの問題か。このブログでは、タネの問題を扱ってきたのだが、まさに、水道もタネと同じ構図にあることがわかる。そして、食や水の安全性を考えた時に鍵となるのは「予防原則」である。

 当然と言えば当然なのだが、「予防原則」という概念は、私的に言えば「安全な水道水」と密接に関連して生まれた。舞台はロンドン。時は1854年。かのフローレンス・ナイチンゲールがクリミア戦争に赴いた年だ。ヴィクトリア朝の大英帝国は、地球の陸上の四分の1を支配し、栄華を極めていた。けれども、首都、ロンドンでは夏に謎の疫病が発生。死亡率はソーホー地区では12.8%に及び終息する9月末までに616名が死んだのだ。

 当時のロンドンは、産業革命で離農を強いられた人々が押し寄せ、ゴミや糞尿処理もままならず最下層の人々は悪臭が漂う劣悪な生活環境で暮らしていた。

 病気の元は空気で伝わる悪臭であるに違いない。「瘴気説」をもとに良心的な役人は「不快除去及び伝染病予防法」の施行。街中の汚物を下水として河川に流す政策を講じた。

John-SnowS.jpg だが、瘴気説を疑う一人の医師がいた。人々の健康を守るため、被害が生じている地域や人の属性等から要因を見つけ出す学問を「疫学」と呼ぶ。この疫学の祖といわれるジョン・スノウ(John Snow, 1813~1858年)だ。

 地道な聞き取り調査から、スノウは「井戸水が怪しい」と見抜く。かつ、当時、疫病発生地区には2社の水道会社が水を供給していたのだが、テムズ川の下流から取水するサウスワーク社の利用地区で病人が多発していたのに対して、上流から取水するランベス社ではほとんど患者がいないことに気づく。

 謎の奇病を防ぐには、井戸水の使用を直ちに止める以外にはない。かつ、テムズ川の上流から取水すればよいのではないか。そう考えたスノウは、渋る公衆衛生局を説得。結果として、謎の奇病は終息したのだった。

 結論から言うと、この疫病の正体はコレラだった。コレラは水中に生息し、コレラ患者の排せつ物に含まれ、菌が含まれる水を飲むことで発症する。けれども、当時のパラダイムは、瘴気説だった。ドイツの細菌学者ロベルト・コッホ(Robert Koch, 1843〜1910年)がコレラ菌を発見したのは、この事件の約30年後のことだ。「町を清掃すればよい」と考えた役人たちの努力でコレラ患者の排泄物がテムズ川に流し込まれることで、逆にコレラ患者を拡大再生産させていたのだ。

 コッホのコレラ菌の発見には科学的な価値はある。けれども、刻一刻と患者が増える状態に対策を打つためには、時間をかけて研究をしている場合ではない。メカニズムがなんであれ、疫病を防ぐにはコレラ菌が含まれない水道に変えるという結論には変わりはない。

 スノウの凄みはそこにある。スノウの主張は「科学的ではない」「確実な証拠がない」と学会や行政からは批判された。が、スノウのアドバイスにしたがって、菌に汚染された水の使用を止めた町ではぱたりと疫病が止まったのだった。

 そこで、今回の「そのとき歴史が動いた」という日を1984年。スノウの予防原則に従って、ロンドン市の役人たちが信じられていた瘴気説に相反する政策を勇気を持って講じたその日としたい。

 君子危うきに近寄らず。触らぬ神に祟りなし。原因がわからないにせよ、危ういものは使わないにこしたことはない。そう。予防原則の概念はまさに水道から誕生したのだった。けれども、日本国中央政府が予防原則に立脚していないことはいうまでもない。だから、グリホサートにせよ、ネオニコチノイドにせよ、環境ホルモンと言われる内分泌撹乱物質にせよ、世界に冠たる日本の科学技術によって明確な因果関係が立証されるまで、いつまでも使い続けることができる。となると、日本は、まだ「歴史が動いていない」ともいえる。本日も最後まで御拝読ありがとうございました。
(2019年10月4日投稿)
【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
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「どうする?日本の水道―自治・人権・公共財としての水を」のDVDの画像はこのサイトより
内田聖子氏の画像はこのサイトより
ジョン・スノウの画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年9月30日、 モーニングワイド Jのコラム
(2) 2019年9月30日、 モーニングワイド ラジオJ


posted by José Mujica at 07:00| Comment(0) | 水道民営化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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