2019年11月17日

千曲川決壊でほくそ笑むのは誰か

「堤防決壊の真の犯人はだれか」大災害の背景を考える

2019年11月16日雑司ヶ谷
拓殖大学政治経済学部関良基教授

蓮舫の仕分けによって人々は被災したのか

 高尾で午前中に講義をしていた。いまは、コマ数を消化しなければならないため、大学の都合で休講にしてもその日の穴埋めを土日にしなければならない。学生も土日はバイトで大変である。され、高尾山は紅葉シーズンでものすごい人でバスが動かない。そこで、ギリギリとなりました。

Yanbadam.jpg さて、震災の度には「民主党が悪い」、「蓮舫が悪い」とツイッターで飛ぶ。本当にこれを信じる人が多い。マスコミの一部までそう信じて流している。例えば、フジテレビのホームページでは、平井文夫上席解説委員が「民主党政権のマニフェストどおりに八ツ場ダム工事を中止していたら、あの水が全て利根川に」「もし荒川が決壊したら東京の東部は甚大な被害を受けただろうが、あの地域を洪水から守ることができるのは、民主党政権の事業仕分けで中止を決めたスーパー堤防だけ」とコメントしている。

 つまり、水害の度にダムとスーパー堤防への礼賛が起り、仕分けたのが悪いとされる。

 民主党の通りに八ッ場ダムを廃止していたら大変なことになっていた。そして、守れるのはスーパー堤防だけであると。マスコミまでネトウヨかしたかと思う。だいたい批判者の正体はわかる。自民党は、ネット・サポーターを持っている。

 けれども、スーパーヒーローであると言われている八ツ場ダムだが、これは一晩で水が溜まっている。もし、これが利根川に流れていたらどうなるか。印象だけで語っていて数字が出ていない。

 実は八ッ場ダムから流れた水、利根川は下流の関宿で別れ、江戸川に流れるものと銚子に流れるものに別れる。利根川は、神流川があり、烏川があり、吾妻川があり、その上流に八ッ場ダムがある。八ッ場ダムの水が集めるのは全集水面積のわずか4.2%でしかない。

 そして、国土交通省のダム建設の理屈は、堤防があり、堤防ができたら「ここまで耐える」という破堤しないところを決めている。これを「計画高水流量」という。

 要するに、上流でダムを作れば、100年に1度の雨が来て、上流に10ものダムを作ればその水位が下がる。それができれば堤防が耐えるので200年に一度の洪水が大丈夫であるという論理である。

 けれども、いまは100年、200年に1回の雨が数年で来るのでそのことが絵に描いた餅になってしまっている。

堤防の構造は泥の塊〜もともと水が入れば壊れる

 それではなぜ、計画水量に堤防は耐えられないのか。堤防は土の塊である。水が浸透すれば壊れる。となれば、水が浸透しなければいい。けれども、遮水シートと護岸がされているのは、計画高水位までである。小さなモグラの穴があっても、そこに水が入れば壊れる。土の塊が壊れる。今回は130カ所で壊れているが、その8、9割は越流のためである。越流すれば土が水を吸って砕け散るからである。

 今回の堤防決壊もそれが一番多い。それではなぜ、土の塊なのか。土の塊での堤防を作ったのは中国の古代王朝だが、今は21世紀である。それから2000年も経つのになぜいまだに土のままなのか。なぜ、その構造を今も継承しているのか。

八ツ場ダムは今回の台風被害防止に寄与したとマスコミが印象づけている

Teruyuki-ShimazuS.jpg その前に今回の八ッ場ダムの活躍を見てみたい。東京科学研究所にいた嶋津暉之氏の試算結果によれば、利根川の中域域の危ないところ、久喜市の栗橋の観測地点では最高水位が9.67m。計画高水が9.9mであったので、ギリギリ大丈夫であった。もし、八ッ場ダムがなければ、例えば、10.9mになっていたとすれば、効果が大きかったと私も認める。けれども、実施にはダムによって下げられた水位はわずか17cm、0.17mである。となると、仮にダムがなかったとしても、最高水位は9.84mで計画高水以下である。となると、八ッ場ダムが救ったわけではない。

 けれども、国土交通省はネットの写真で印象だけを流布している。マスコミも、上流にある「八ッ場ダム群」が水位を1mも下げたと主張している。例えば、日経がそういうことを書いているのだが、「八ッ場ダム群」という言葉は私は聞いたことがない。そのような言葉を勝手に作り出している。

 さらに、八ッ場ダム群とは1兆円もの予算をかけている群馬県の上流にある7つである。それで1mということは、1mを7で割ればcmになってしまう。

 さらに、今回は八ツ場ダムは試験湛水中で、たまたまほぼ空っぽであった。貯水能力が高かったので7500万㎥を貯留できた。それでも17cmである。利水用に水が入っていたので、八ッ場ダムの貯水能力は6500万㎥である。そこに台風19号が襲来すれば緊急放流していたはずである。だから、偶然にすぎない。

 さらに、それとあわせて嶋津氏が指摘されているのは、砂が溜まって河床が上昇していることである。そこの掘削をやっていれば70cmは低下していた。八ッ場ダムの建設費は5700億円だが、この河床掘削になぜ経費を振り向けないのであろうか。

Chikumagawa.jpg もう少し、計画高水との関係を見ておくと、久喜市の栗橋は先ほど指摘したように、計画高水が9.9mで最高水位が9.67mであったが、多摩川は調布市の石原で計画高水が5.94m、最高水位が6.24mで越えていた。それに対して、これは、長野市の穂保地区の写真である。千曲川は目もあてられない。新幹線が水没し300億円がパーになった。中野市の立カ花は、計画高水位が10.75m、最高水位が12.44m。それも、長時間続いた。そのため耐えられずに崩れた。

 ということは、頑丈な堤防があれば耐えられた。ダムで防ぐよりも堤防を頑丈にしたら余裕ができるのではないだろうか。

信濃川では越流しても耐えられる堤防工事が始まっていたがキャリア官僚の命令でそれが中止させられた

 さて、いま見せしているのは、私がいま住んでいるのは浅川の支流だが、その堤防強化の説明資料である。この図でHWLとあるのが国土交通省の計画水量である。ここまでは護岸基礎工がしてある。けれども、「そこよりも上までブロックを張って欲しい」と言っても、「ここまでしかやってはいけない」となっているとしか応えられない。それから質問しても答えられない。現場の人も国土交通省からそのように指示されているため仕方がないのである。

 逆に言えば、計画高水位を超えると破堤するように堤防は設計されている。なぜ、耐えられないように設計されているのか。国土交通省のOBがそう考えたからという説がある。

 というのは、かつて、越流しても破堤しない、アーマーレビー堤防(鎧型堤防)というものが提案された。これは、完全に水が浸透しないようにするもので、上に土をかぶせると見栄えもさほど悪くない。

 よほど劣化しなければ越流して水が流れても土が壊れるはずがない。そこで、土木研究所が開発し、一部の河川で実施し、2000年にはその推進の姿勢を見せたのだが、2年後に突如として中止する。

Katsuyoshi-Shimazaki.jpg ここに、東京新聞の茨城版がある。ここに建設省の技術者であった81歳の石崎勝義さんの記事が掲載されている。当時、建設省は、設計指針の想定以上の雨があって防げるように「フロンティア堤防」の名称で頑丈な整備を始めた。全国で信濃川、那珂川等、計13カ所で整備をしていたのだが、2年後に突然中止された。

 ただの建設省のOBにすぎないが、近藤徹という元キャリア官僚が「ダムの妨げになる」として止めさせた。それ以前は、250kmもの計画が計画対象であった。もし、これをやっていたならば破堤していなかった。那珂川も千曲川も越水はしているが、越水と破堤とは違う。越水での被害はたかだか床上浸水程度であって、家が壊されることはない。

 よく、「蓮舫が止めさせた。前原が八ッ場ダムを止めさせた」と言われるが、これは20年前のことである。もし、これを20年やっていたならば、今回、130カ所の被害のうち、かなりが救われていると私は思う。

30年前に加古川で試験的に導入されたアーマーレビー工法の堤防は無傷
〜日本で開発された低コストの技術を米国は活用するも国交省は認めない

2019111701.jpg 実は、兵庫県の加古川下流で試験的にやられている。看板を見れば、30年前に建設されていることがわかる。そして、H16年に「計画高水」を超えたが、堤防の被災は皆無で、補修工事の必要もなく無傷であった。けれども、国土交通省はその後は、一切やっていない。

Takashi-Okuma.jpg また、フロンティア堤防の事例としては、インプラント工法もある。これは、鉄の板を打ち込むもので、さらに、新潟大学の大熊孝教授はTRD工法も提唱されている。ソイルセメント(砂とセメントの混合物)を堤防の中に注入していくもので、TDR壁が破堤を妨げる壁となる。これはかなりコスト的に安く、米国においては導入されている。もともと日本で開発された技術なのだが国土交通省のキャリア官僚によって止めさせられた。

あえて壊れる堤防を作り続けている国土交通省の罪は問われない?

 ここからわかってくることは、堤防は破堤されるように作ってあるということである。国土交通省の基本方針とは上流にダム群を建設することによって、200年に1度の豪雨があっても、計画高水位以下に下げるというものである。この国土交通省の水位を下げるという理屈によれば、今後も、利根川では10ものダムが建設できることになる。

 本質的な問題とは、計画高水位に達すると破堤するような堤防を放置し続けることなのではないではないだろうか。ネトウヨはそれを批判すべきではないかだろうか。「住民の安全をおろそかにした民主党政権」と批判されているが、民主党が政権を担っていたのはわずか3年だけである。なぜ、それ以降も130も壊れるのか。これは、国土交通省の責任だとしてネトウヨは叩くべきはないだろうか。

 また、国土交通省は、「越流しても破堤しない堤防はスーパー堤防だけである」とネット上で情報を発信している。これが、公式見解である。

 事実、スーパー堤防は江戸川の河口で実施されていれる。これは堤防の高さを30倍にもするもので、家を一度立ち退いてもらい、再移住させるものである。このスーパー堤防では100m幅で50億円がかかるのだが、アーマーレビー工法ではこの100分の1の5000万円ですむ。また、スーパー堤防は水害ではいいとしても地震でも壊れるリスクがある。また、現実には、盛土の下にがれきも入れているという。となれば、強度も保てていない。そして、これほど膨大な泥をどこから持ってくるのか。山を崩すことになる。

 つまり、「スーパー堤防を潰した連坊がいけない」と言われているのだが、100分の1のコストでできる工法があるのである。別に私は民主党政権がすべて良かったとは思っていない。つまり、スーパー堤防のようなものではなく、アーマーレビー工法での堤防を作るべきであると提唱すべきであった。つまり、あの人たちも反省すべきことはある。統治能力がないし、政権をとる能力がなかったと思っている。

越流しても壊れない堤防が技術的に不可能とした土木学会

Tadashi-Yamada.jpg さて、このことに理論的根拠を与えたのが、2008年の日本土木学会である。この学者、「耐越水堤防整備の技術的な実現性検討委員会」の委員長、中央大学理工学部の山田正教授、岐阜大学の宇野尚雄名誉教授、岐阜大学の藤田祐一郎教授、名古屋大学大学院の辻本哲郎教授、京都大学の防災研究所の中川一教授、岡山大学大学院の西垣誠教授、群馬大学の清水義彦准教授が、耐越水堤防を止めるように勧告した。その理由は「現状では、計画高水位以下で求められる安全性と同等の安全性を有する構築物、すなわち、耐越水堤防とすることは、現状では技術的に困難である。その設計技術は現状では確立されていない」というものである。この見解ははたして正しいのであろうか。

 実は、見事な御用学者の文書である。正しいが間違っている。なぜか。例えば「同等の安全線」という基準を勝手に作っている。誰も、そんなものは求めてはいない。論理的に100%安全なものは作れない。とはいえ、この論理によって止めた。

 この技術委員長の山田正教授は、今回の水害でも「堤防が弱い」「堤防の幅を広くしろ」と言っている。それしか知恵がないのかと。つまり、反省の色がない。要するに、耐越水堤防を仕分けたのがこれら国土交通省の御用学者たちである。ネトウヨは彼らを叩くべきである。

 実は、私はもともと森林の保水機能を研究している。そこで「緑のダム」を提唱しているのが、「そんなものは幻だ」と山田正教授からは言われた。森林の保水機能を高めていくと水は保水できるし、水田もきちんと整備すればいいのだが、それもダメだと言っている。

ダムの費用対効果を高く見せるには被災した方が良い

 さて、国土交通省の官僚、宮本博司氏は、「計画高水までは遮水し、護岸ブロックで破堤しないように対策し、計画高水を越えると簡単に破堤するようにしておく」と述べている。なぜか。ダムの費用対効果を高く見せるためである。これこそ、チコちゃんでやってもらいたい(会場)。

 つまり、財務省が費用対効果が求めてくる。費用対効果が1を上回らないと公共事業をやってはダメだとなっている。そこで、費用が500億円だと効果が700億円以上、1.4倍程度はないとダメである。それには、破堤して700億円程度の被害が出てくれるといい。越流しただけであると被害は10億円ですんでしまう。したがって、キャリア官僚からすれば、破堤してくれないとむしろ困るのである。そうすれば、ダムの事業効果は1を超える。

 こういう恐ろしい理屈でキャリア官僚たちは動いている。宮本氏はその中にいる人物だから知っている。考えた当事者の一人だからわかっている。タイガーマスクとして虎の穴を裏切った伊達直人、ショッカーを裏切った仮面ライダーのようではないか。要するに、この理屈は財務省を説得するために作られたのである。

間抜けな県庁の役人は馬鹿正直だが霞ヶ関のキャリア官僚はそれほど愚かではない

 実際に、元建設省土木研究所の石崎勝義氏はこういう見解を述べられている。

「国土交通省が堤防を決壊しやすい状態のまま放置している理由は、国土交通省の予算が大きく『社会保障費に回せ』という圧力が高いからである。けれども、堤防が決壊すれば、それを跳ね返して予算を確保することができる。つまり、国土交通省の役人は今回のように決壊するのが都合がいいと思っている」

 実際、今回の惨事に便乗して、自民党のネットサポーターズ・クラブは、政権を安定化させることができ、国土交通省も大万歳である。まさに、ナオミ・クラインの言う「ショックドクトリン」である。新自由主義を導入するときには経済危機を起こしてパニックを起こす。そして、全く嘘なのだが、新自由主義へと行かせてしまう。こうして、災害を起こすたびに予算を獲得できる。

 いま長崎県では石木ダム建設で揺れている。長崎県の河川課長は10月30日につい本音で「災害は追い風」と言ってしまった。後で、陳謝していたが、国交交通省の官僚はもっとガードが高いからこのような愚かな発言は思っていたとしてもおくびにも出さない。

 2018年7月7日の西日本豪雨では、愛媛県肘川上流の鹿野川ダム、野村ダムが緊急放流した。西予市の野村ダムが夜中に放流。下流の大洲市の鹿野川ダムが朝の6時に緊急放流し、逃げ遅れた住民が8名死亡した。もし、ダムがなければ水位が高まり「もう逃げよう」と早めに逃げることになる。しかし、安心していたところでいきなりきた。これは、自然の流れではない。

 2015年には鬼怒川も破堤した。これを受けて国土交通省は何をやったか。堤防の裏の裏面にコンクリートを張り、危機管理型ハードとした。けれども、やはり土のままにしておいた。2018年7月7日の倉敷市真備町は長時間越流してバックウォーターで被害がでた。破堤した。結局、土が長時間露出されていればダメなのである。

マスコミとネトウヨの言説によって民主主義が実現されずにいる

 次に国土交通省のダム予算をみていただきたい。民主党政権時にこそカットされたが、安倍政権になってV字回復。いまはダムに年間で2400億円が投じられているが、これを使えば、年間500kmもの耐越流堤防を整備できる。これを作るのと、いったいどちらが住民の安全性を高めるのか。

 大学の授業で学生たちに聞いてみた。5000億円で八ツ場ダムを建設する。利根川中流では17cmほど水位が低下する。けれども、計画高水を越えてしまえれば破堤の可能性があり、ダムの治水容量を越える降雨では緊急放流するしかない。もうひとつは、5000億円で1000kmのふつうの堤防を耐越水堤防に強化する。水位は下がらないが、たとえ越水が発生しても破堤のリスクは低減される。

 後者の方が、安全度はかなり高まるのである。例えば、多摩川の下流7kmをスーパー堤防化する計画がある。これは3500億円かかる。この予算があれば700kmの堤防が耐越水堤防にできる。多摩川は全長138kmだから支流を含めてもお釣りがくる。

 実は、学生たちには授業で八ッ場ダムを批判していたのだが、その学生たちですら今回は「やはり八ツ場ダムが大事だ」と言っていた。それほどネットの力は強いし、八ッ場ダムが首都圏を救ったと思われている。誰もが蓮舫が悪いと思っている。私がこのようなことを言っても、圧倒的な自民党の情報発信の力に比べれば1000分の1で焼け石に水なのだが、それでも拡散していただけると嬉しい。

 本来の選択の判断をするのは、国民である。けれども、日本では、官僚と御用学者が判断している。そして、御用学者は本当に悪い。大学の業界を見ていて本当に絶望をする。

本来の治水は400年前の武田信玄の治水対策にあり

Shingen-Takeda.jpg ネットで「アーマーレビー」を検索しても石崎さんの個人のホームページくらいしか出てこない。国土交通省からは全部情報が消されている。かつては広がったが2002年に凍結してから出てこない。過去はなかったことにしてしまう。そこで、誰もがスーパー堤防しかないと思ってしまう。その情報操作は素晴らしい。今すぐ、過去のアーマーレビーを復活して早急に整備すべきである。

 そして、未来の治水は400年前の思想にあり、ということで、武田信玄の治水対策を紹介したい。

 いまの状況は、気候変動ではなく、クライメート・クライシスと呼ぶべきものである。水害が来れば緊急放流に至ることが多い。

 さて、新潟大学の大熊孝氏によれば、信玄堤は「霞堤」である。市街地を守るために釜無川で上流の水源地帯に水を集めさせ、逆八の字型で水を意図的に溢れさせる。そして、そこには、水害防備林があり、さらに、水害が起こりやすいところに居住する際には、そのリスクを知ったうえで住んで欲しいと諸役を免除していた。水に浸かるので保証を与えインセンティブを与えていた。この溢れさえることはよかった。河川で流れた泥で土壌が肥沃となり収量が増えたりするからである。つまり、いまの堤防では国土の安全は守れない。霞堤。越流させることがこれからは必要である。

質疑応答

会場 ダムが作られるには、利権もあると思うのだが。

関教授 別のパワーポイントの資料で八ッ場ダム利権の話をしたい。民主党政権時代に、共産党の塩川鉄也議員が関連企業への天下りを調べているのだが、2004〜2011年で、ダム関連の公共法人に (財)ダム水源地環境整備センター25人が天下りしている。(社)関東建設弘済会は25人。コンサルタント会社、地質コンサルタント等企業へは合計で79人が天下りしている。また、中之条元町長には765万円、群馬県選出の国会議員小渕優子には108万円、中曽根は604万円等が献金されている。

Tooru-Kondo.jpg 近藤徹氏は昭和34年に東大工学部土木工学科卒で、河川局長を経て建設技監と技術官僚のトップに立った人物だが、平成5年に退職している。その後、平成6年に天下ったのが環境整備センターの理事長で、平成8年には水資源開発公団の総裁。平成15年には独立行政法人の理事長。平成16年は東北電力の常任顧問。水力発電のダムの専門家として平成16年には(財)水資源協会理事長となっている。平成18年からは(社)河川協会の会長で、平成21〜22年には日本土木学会の会長になっている。土木学会はここまで腐っている。その学会で何かを言えば村八分にされる。土木学会では口がさけても言わない。まさに、皇帝である。ちなみ、耐越水堤防は利権にならない。ダムの方がこれから400年も整備できる。つまり、ダムができるのは利権の関係である。

ダムの寿命から撤去する時代に

会場 ダムの寿命はどれだけもつのか。

関教授 実は米国のダムは決壊の危機にある。2015年にサウスカロライナ水害で18の小規模ダムが決壊し19人が死亡し、2017年2月にはカリフォルニア州のオロビル・ダムが決壊し、放水路に穴が開いて20万人が緊急避難した。

 米国では2000基ものダムに決壊のリスクがあり、監視対象となっている。米国ではすでに撤去が始まっている。日本では熊本県の荒瀬ダムが実験として撤去されたが、米国ではかなり乱暴に撤去している。

 日本もダムが決壊したらとんでもない。人事ではない。緊急放流しなければ決壊する可能性が十分にある。

会場 愛媛県松山市では緊急放流して死者が出たが、今年も神奈川でもやるという。どうも傲慢である。事前放流が必要なのだろうが、取水権者がいるのでダメだといわれている。この取水権者というのは誰か。自治体か。

関教授 河川法52条では事前放流をしていいことになっているが、やった試しがない。国土交通省が大臣判断でやることはやっていいのだが、それは、これまでこのような緊急事態に直面したことがなかったからである。

会場 テレビのコメントでは下流の水利権者がいけないと言っていたが。

関教授 それはおそらく御用学者がそう言わしているのであろう。これからは、命を守るためにダムを空にしておくので、節水しておく時代になる。例えば、お風呂を我慢してということに納得するであろう。

森林があれば20%、6つのダム7%よりも保水できている

会場 先生が土木学会から批判されたという森林がダムになるという話を詳しく聞かせて欲しい。

関教授 私は森林が専門である。例えば、利根川上流の1947年の榛名湖の北側をこれは米軍が撮った写真だが完全に禿山である。これに対して、今の方がはるかに保水力がいい。このときにはカスリーン台風が襲来して、3000人が死んでいるの。さて、当時と比べれば森林が出来ているので、被害が減るはずなのだが、国土交通省は違わないと言っている。

 国土交通省は1998年に洪水をモデル化している。雨が降るときにどうなるかを試算してピッタリ合っていると言っている。この白いグラフは1950年代のデータから計算したものだという。そこで、私は裁判をしたので、計算をしてみたら嘘であった。1950年代の山のままであればこれだけの水が流れる。それに対していまは20%は下がっていると。それに対して、6つのダムでどれだけ水位を下げているのかというと7%ぐらいは下げている。森林は20%。産経新聞も7つのダムで1mと言っているのだが、㎝メートル単位では苦しいからであろう。

会場 樹種はどうであろうか。

関教授 針葉樹はダメである。杉檜に変えてきたが、ブナの森の方が保水力は高い。土壌の状態が違う。針葉樹では土がカチカチだが、ブナ、楢では落ち葉が美味しいため、土壌動物が繁殖し、ふかふかとなっている。針葉樹ではさほど水はたまらない。これを林学者が認めないのは、自分たちが悪かったことを認めないのであって卑怯である。

会場 どの程度、違うのか。

関教授 土壌の隙間が全然違う。針葉樹の葉は虫が全然食べない。

水田にも貯水効果がある

会場 水田の貯水効果はどれだけあるのだろうか。

関教授 今、新潟県では田んぼダムをやっている。畦畔に調整版を作って出ていく水を絞る。例えば、0.01㎥/時間しか出ないように狭くすると、水田に水が蓄えられる。新潟県では実際に田んぼダムを流域治水対策としてやっている。これを全部の水田でやるとどうなるか。例えば、八ッ場ダムではピーク流量のカットは平均で2.7%だが、これだけの山間地でも水田が流域に面積で3.5%もある。ここが平均80%の降雨流量をカットすると2.8%のピークをカットできる。つまり、水田が少ないところでも、ダムに匹敵する。そして、この工事費八ツ場ダムと比べて1億円もかからない。

会場 稲が水没しても駄目になるのではないか。

関教授 台風のシーズンの秋は稲穂が育っているし、畦畔までは30cm程度なので死なない。

会場 江戸川区のハザードマップを見ると被害が大きい。海に近いし高潮はどうか。

関教授 高潮は怖い。

会場 ショック・ドクトリンの話があったが、行政が作っているハザード・マップを本当に信じていいのであろうか。意図的に彼らはマップを作っているのではないか。例えば、高潮を想定してあるのだろうか。

関教授 荒川と江戸川でのスーパー堤防は30万人を移住させる100年事業だがハザード・マップでは高潮は想定していない。

会場 地下鉄はなぜ大丈夫だったのだろうか。

関教授 本当に水が来たら駄目であった。

会場 地下鉄のところに水を全部いれたら洪水がある程度防げるのであろうか。

関教授 地下鉄は量的にたいした空間ではないので、そこに浸水させてもたかがしれている。

会場 先ほどの先生のインプラントとアーマーの組み合わせた事例は諸外国ではあるのだろうか。それをしたらどのような効果があるのだろうか。

関教授 私が知る限りやった例はない。ただし、一緒にやったら本当に効果があると思う。

会場 スーパー堤防の予算はどう見たらいいのか。

関教授 都市の再整備もあり、ものすごい利権の巣窟なので全体像はなかなか掴めない。また、治水にかこつけた再開発を一番やりたいのではないか。

会場 先ほど、キャサリーン台風のときの写真で榛名山がでてきたが、なぜ禿山になったのだろうか。

関教授 昔は薪炭林として活用されたからである。石油がないときには山がエネルギー源だったからである。

会場 足尾銅山は鉱毒で禿げ山になったと聞いているが、今は元に戻ったのだろうか。

関教授 まだ完全には戻っていない。

会場 僕は埼玉県から来たが、武甲山も石灰採掘で荒れている。

会場 まことしやかな噂だが、武蔵小杉が被害を受けたのは堤防に反対したからだと聞いているがどうなのか。

関教授 真相は私にもわからない。反対運動をやっているプロ市民を叩けという動きがあると思う。

御用学者にならないには政府からマネーをもらわないことが大切

会場 先生は御用学者を批判されていたが、そうならないためにはどうしたらいいのだろうか。

関教授 文部科学省から金をもらわないことだ。だから、歴史の研究をしている。それであれば、図書館にいくだけでかなりのことができる。文系は救われます。工学部や農学部はバックに産業がついている。農学部は農薬メーカーがいるし、薬学部も厚生労働省とくっついている。比較的、産業界のバックが少ないのは理学部。工学部、農学部、医学部、薬学部は駄目です。その意味で、文系が御用学者になるのはとんでもないことだ。

台風は陰謀説ではなく地球が温暖化したため

会場 千葉からきた。台風15号で変なものを感じた。千葉はずっとなぎの状態であったのに夜中にいきなり雨風が来た。子どもの頃に体験していた台風とはまったく違う。雲を見ていてもケムトレイが蒔かれているのではないかと思うし、柏市には国の気象大学校がある。今回の台風は人工台風ではないだろうか。

関教授 単純に地球が温暖化したからです。ピンフォール効果がある。海水温度が2℃違えば、明らかに違う。つまり、今回のは気候変動です。

砂防ダムをどう考えるのか

会場 天竜川の中流出身だが、砂防ダムが大量の中小河川にある。これはどう考えるか。

関教授 砂防ダムでせき止められ砂が下流に行かなくなるので、国土が狭くなる。河床に砂が溜まると水が流れる量が減る。土石流を止める効果はありますが、国土が狭くなる。つまり、プラスマイナスがある。

会場 美和ダム(長野県伊那市にあるダム)はほとんど埋まっている。

関教授 流すものは流す。さらに掘削はしたほうがいいですね。ダムを国が壊して土砂をのける。そういうことに金をつけたいと思います。

編集後記

 種子法廃止、種苗法改正、ゲノム編集、消費税値上げとあまりにも時代の動きが早すぎてついていけないのだが、個人的に少しでもフォローしたいと思っている。で、昨日は雑司ケ谷で関教授の話を聞いた。日消連のゲノム編集の講演もあるのだけれども、同じ時間には、第2回「種子法の廃止と遺伝子組み換え・ゲノム編集について考える」で科学ジャーナリスト、天笠啓祐氏のゲノム編集のレクチャーがあり、これはこれで大事なのだけれども、関教授の講演の方を優先した。千曲川の決壊を間近に目にしたものとしては、こちらの方が身に迫る。そして、大きく見れば、根は同じなのだと持っている。

 草の実アカデミーという団体は知らなかったし、初参加でもあったのだが、関教授は上田市ご出身ということもあって、長野県にも関心を抱いておられた。そこで、懇親会にもずうずうしく参加させていただき、上田出身の幕末の偉人、赤松小三郎や現在執筆中の新刊のお話等、なかなか他では聞けないエピソードもお聞かせいただいてしまった。

 もちろん、現状は厳しい。そして、一級河川は国の所管である。とはいえ、二級河川都道府県の管理下なのだと言う。そして、関教授によれば、長野県の阿倍守一知事は全国的にもみても最も健全な立派な知事であるという。そこで、千曲川の決壊という惨事を経験した長野県の県民から声をあげ、県が中心となって二級河川で「耐越流工事」を行うことから、県民の命を救うことを始めてくれないかと逆に示唆をいただいてしまった。確かに、コストも安い。これこそが国土強靭化であろう。

「ただ、その際に鍵となるのが信濃毎日新聞です。信濃毎日新聞ですら、今回の惨事は防げなかったと書いてしまっている。信毎が私が今日話したようなことをきちんと伝えてくれれば県民の意識もずいぶんと変わるはずなのです」

 信濃毎日新聞というのは長野県のローカル新聞である。上田高校ご出身の関教授は、信濃毎日新聞に目を通されていた。その意味で、ネトウヨに負けることなく、正しい情報を発信し、知的劣化を防ぐことの大切さを改めて強調された。

 なお、上記の議事録は会場で私がパソコンで叩いたものである。主催者の草の実アカデミーがさっそく動画をアップしている。関心をいだかれた方は、以下のサイトから講演と質疑応答を見ることができる。是非、ご確認いただきたい。

「堤防決壊の真の犯人はだれか」大災害の背景を考える~基調講演の動画
「スーパー堤防を仕分けた蓮舫が悪い!」はデマ!スーパー堤防への期待は、惨事便乗型の利権獲得戦略〜質疑応答の動画

2019年11月17日(投稿)
【画像】
八ッ場ダムの画像はダムを賞賛するこのサイトより
千曲川が決壊した長野穂保地区の写真はこのサイトより
関良基教授の画像はこのサイトより
嶋津暉之氏の画像はこのサイトより
石崎勝義元長崎大学教授及びダム決壊のイメージ画像は、東京新聞の記事のサイトより
山田正教授の画像はこのサイトより
大熊孝新潟大学名誉教授の画像はこのサイトより
近藤徹氏の画像はこのサイトより
武田信玄の画像はこのサイトより


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2019年11月10日

グローバルからローカルへ〜日本における大転換への道筋

2019年11月10日
明治学院大学戸塚キャンパス

種子法が廃止されても各都道府県が条例を作ることで抵抗

Masahiko-Yamada.jpg山田正彦 種子法廃止で、コシヒカリとかあたりまえのようにあった伝統的な米が食べることができなくなる恐れがある。三井化学の「みつひかり」というF1米や豊田通商の「しきゆたか」等が開発されているが、ゲノム編集でのコメの種子がいよいよ出回るようになってきた。伝統的な米、麦、ダイズは、国が管理して都道府県に作ることを義務付けしてきた。県が指定した圃場で発芽率90%とか厳しい審査で安価で農家に提供されてきたのだが、そのことを取り止めた。「民間が作ったコメとかダイズとか麦を食べろ」というのが政府の説明である。

 けれども、この2年間で地方から各都道府県で種子法に代わる地方の法律、条例ができている。すでに北海道、九州等26と道府県で年内にできる。過半数の同県が種子条例を作ることになった。だから、従来どおり昔ながらのコメ、ムギ、ダイズを食べることができる。けれども、なぜ、こうしたことができたのかというと、まさに地方の田舎の市民たちが「なんとか種子法にかわる条例を作って欲しい」と願って動き出したからだ。各市町村で一人一人の市民の皆さんが地方の町議会、市議会に「種子条例を作ってほしい」という意見書を出した。そして、地方自治法では意見書が出されるとそれを審議、採決しなければいけない。その過程で議員さんたちも勉強する。そして、「おかしい」としてどんどん声をあげていった。例えば、新潟では柏崎市があげていったので県が種子条例を作った。やればできるということを示してくれた。

種苗法改正の論理の矛盾~外国に流出と言いながら農業競争力支援法で流出を推進

 けれども、いま、大変なことが起ころうとしていることを聞いてほしい。種子法ではなく「種苗法」なのだが、自家増殖禁止に向けて、今年の5月から5回も検討会が開かれている。種苗法では種子は自由に自家採種してどこに販売してもよかったのだが、「それを一律に禁止する」という種苗法の改定案を次の通常国会で出す。このことについて、9月26日の検討会がなされた。そして、12月15日に第6回の検討会があって終わる。

 横田農場というコメの専業農家がいる。50haの農業生産法人だが、11種類のコメを7t自家採種している。全部購入するとなると500万円がかかりという。そして、これがコシヒカリとか公共の種子がなくなると、民間の例えば、「みつひかり」のF1はその10倍する。となると、日本のコメ農家は5000万円のタネ代を支払わなければならない。モンサント等多国籍企業は日本の野菜の種子の90%を抑えているのだが、コメ、ムギ、ダイズもそうなってしまう。多国籍企業にタネを支配され、そういったものを食べざるをえなくなっていく。なんとかして、これを阻止しなければならない。

 この前の農水省の説明はシャインマスカット等の日本の育種知見が海外にでていくのを防ぐために禁止という法律が必要になったと言っている。けれども、その一方で、種子法廃止と同時に農業競争力強化支援法の8条4項で日本の独立行政法人、農研機構。農水省が人件費を入れて2000億円もかけて運営しているのだが、この頭脳が持つ育種知見に加え、各都道府県の優良な育種知見も民間に出せとういう法律を皆さんが知らないところで通している。

 この前の検討委員会では、私たちの税金で運営される農研機構の知見が民間に行ったときにどうなるかの説明があった。また、もうひとつ大事な説明は、裁判になったときだえる。農水省は「伝統的な固定種は大丈夫です。登録されたものだけが自家採種禁止になります」と言って国民を安心させているのだが、タネは生き物で変わっていく。土地によって気候によって変わっていく。だから、今の種苗法では登録された種子とは区別ができない種子も原則自由である。すでに自家採種が禁止されたキノコは6件の裁判がなされている。モンサントの裁判は有名だが、この自家採種禁止の法案も地方からなんとか変えられないか。自分たちで自家採種を守る条例をできないか。種子法がそうであったように、今年から来年にかけて地方から変えていく。種子法の撤回法案も自民党も審議している。地方が変われば中央も変わる。

植草一秀 誰もが笑顔で生きている政治を実現したいと思っている。それをガーベラ革命と言っている。実は、愛は利他である。鳩山氏も友愛を提唱されている。いま、一番欠けているのは、他者に対する愛である。サティシュ・クマールが寄せているメッセージは、愛の重要性である。地球を私物化して破壊している。それが気候変動であり、貧困、飢餓、孤独にして人々を不幸せにしている。この社会を変えていかなければならない。そして、我々が提言のうち、れいわ新撰組の8つの公約のうち7つはそれを取り入れてくれたものになっている。具体的には消費税の減税や最低賃金1500円である。

 さて、社会を変えるには三ステップがある。まず、私たちが変わること。二つ目は周りにいる人を変える。変わってもらう。そのために情報を伝えていく。それによって政治全体を変えることだ。

 これまで、社会運動と政治運動とは関係していなかったが、新しい考え方を社会に埋め込むと同時に、政治のプロセスも入れなければいけない。なぜか。世間と異なるコミュニティを作り、閉じ籠ってそこの中で生活を送ることは可能だが、世界全体、地球全体は変えられない。つまり、三つ目のプロセスが大事である。

 パトリシア・ミゲル氏によれば、メキシコでは「トセパン・モデル」、つまり、森を守ることに変わっている。イタリアでは5つ星運動が第一政党になって政権を掌握した。ヘレナさんと山田正彦さんは現地でお会いしたという。イタリアでも政治運動が始まっている。それを社会全体にどう広げていくかが今日は聞ければいいと思っている。

グローバル資本がゲノムすらオーガニックと言い始めている

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堤未果 「幸せの経済フォーラム」には多くの海外からのゲストが来ている。昨夜、色々な作戦会議をした。それぞれのゲストの活動地域において困っている共通課題は何か。各国では運動があるが、それぞれが小さくバラバラになっている。それが、もっとコラボレートすれば数の力ができる。大きな圧力となっていくのにはどうするのか。例えば、経済や政治の話はなかなかわかってもらえない。その一方で、ウォール街の視点から見ると、グローバル企業がいま投資商品として力を入れているのは、食、水道、情報である。社会的な共通資本をダイナミックに奪いに来ている。先ほど種子の話を山田正彦さんがしてくれたのだが、種子法やGMOに誰もがびっくりしている間に、ゲノム編集まで入って来ている。

 GMOは別の遺伝子を導入することでいじくるものだが、これに対して、ゲノム編集は「編集」という言葉を用いて、より正確だと言われているが、実はとても危ない。どのような突然変異が起きるのかが未知数である。そして、これを進めている米国とイギリスは、「予防原則」よりも「イノベーション」を重視するという、それも数パーセントの人たちの論理で進めている。日本、イギリス、米国は足並みを揃えていて、「ゲノム編集」は遺伝子組み換えよりも危ない。なぜか。外から遺伝子を入れていないので、規制する必要がないとの判断を厚労省がしてしまい、さらに、「オーガニックのカテゴリーにもゲノム編集を入れてしまえ」という動きもある。いま、世界中がオーガニックを選ぶことが一番効率が良く確実に安心ができている中で、オーガニックの中にゲノムを入れられたら出口がなくなってしまう。消費者の食を選ぶ選択肢がほとんどない。

地方議員を教育することが大切

 その点で、山田先生が言われた自治体の条例は非常に効果的である。パブリックコメントもできる。もちろん、よほどの数がないと、パブリックコメントは、「市民の意見をちゃんと聞きました」というアリバイ作りになってしまうので、まずは地方議員に意見を言う。そして、教育をして、一人一人の地方議員に「これは、危ない」と実感してもらう。そうしたこともできそうな議員すらいなければ自分が立候補する。

 そして、いま、女性の地方議員がとてもパワフルである。女性には、女性の有権者を巻き込む力がある。さらに、野党であって女性で、かつ、若ければ、だいたい通ってしまうという現象がある。こうしたことで、危機感がない議員さんにはやめてもらう。一方、女性議員であっても、長年経つと「おじさん化」するので、若い女性がベストである。また、女性はよく喋る。男性が1日に1000ワードしか話さないのに、女性は3000ワード話すと言われる。そして、グローバルにもパワフルで横のつながりを作っていく。

行政に大量のファックスを送りつけ事務を麻痺させる

 実は水道の民営化の問題も、女性がコネクトしやすい。今、私は各地で民営化の講演をしているのだが、ほとんど誰も知らない。水道民営化の急先鋒は、宮城県である。元自衛隊の知事が、ショック・ドクトリンのやり方を使って、東日本大震災の後、海を使う権利をイケイケどんどんで外資に売り渡した。水道の民営化もほとんどの人がそれを知らなかった。そこで、私が話すと会場にいたほとんどの人が実感を持ってくれた。そして、その場で何をしたのかというと、政府のホームページにスマホから意見を書いてもらった。500人は書いてもらった。そのおかげで、行政のサーバーがパンクした。これも一つのやり方である。自治体であるとそれでかなりインパクトがある。

 自治体の事務所は小さいので大量の意見が来ると麻痺する。実は、メールで送っても受信トレイが膨らむだけであまり効果がない。そこで、スマホよりもさらにファックスの方がインパクトがある。行政は遅れているのでまだファックスを使っているところが多い。そうしたところで、ファックスの紙が延々と流れて来ると物理的に仕事にならない。その意味でアナログに戻るのがパワフルで効果的である。

刺激的な情報しかメディアに流れないという問題

 三つ目がメディア。実は、これは気をつけなければいけない。SNSが到来した時に、世界の果ての少数民族の声すらも大国のところにまで届く。瞬時で生かせる民主主義のツールとして歓迎されたのだが、実は、企業もSNSは所有しているので悪用もできる。

 また、同じライフスタイルの人たちが同調して集まりやすいのだが、大きなテーマを扱うときに難しい。経済や医療や税金等の大きなテーマは、保守派とリベラル派との間にうまく橋をかけないと大きな運動になりにくい。そして、米国ではFBに政府が介入している。ニュースの順番もFBが決めている。それを見ていると、自分が見たいニュースだけが上位に出て来てしまう。そこで、気をつけなければいけない。

 また、いま、メディアも買収が進んでいる。フジテレビはすでに29%は外資が持っている。だから、ワイドショーの内容も偏ってきている。私はジャーナリストなので、スピードアップするニュース・ソースは危ないと思っている。というのは、考える時間がない中で、次から次へとニュースが来る。すると、本当のジャーナリストが取材する時間がなくなる。なぜか。人間のニュースをみる頻度はほとんど変わらない。

 で、グルーグルやヤフーは頻繁にニュースを出しているが、センセーショナルな内容でないと上位にいけない。そこで、ゆっくり、じっくりと地味な記事を出すことがジャーナリストの使命なのだが、それが、できなくなって来る。この問題は、一緒にディスカッションいていけばいいと思っている。

問題はグローバル化にあるのでありローカル化で乗り越えられる

植草一秀 昨日の会議で、「世の中を変えるためにはビックピクチャー」ということをヘレナ・ホッジさんは言われていたが、次にお願いしたい。

Helena-Norberg-Hodge.jpgヘレナ・ノーバーグ=ホッジ 日本に来るのが少し遅すぎたと思っている。そして、先ほどの話を聞いて、日本でも考え方が変わりつつあると感じている。それは、グローバル化らローカル化へのシフトを理解しようとしている動きである。日本の種子の問題は本当に残念なことだと思うし、ソーシャル・メディアのインパクトの話も聞いている。

 さて、いま、世界では気候変動、鬱、自殺願望、原理主義、怒り、差別がどこでも起きている。こうした世界の潮流は同じである。さらに、働くだけの意味がある仕事がなく、家の値段も高くなっているという問題もある。しかし、こうした問題は実はすべてつながっている。その根にグローバルな経済システムがあることが理解できれば、それをしっかりと認識すれば危機を解決できる。つまり、種子、貧困、気候といった事象をバラバラに見るのではなく、つながりを見ることが大切である。昨日、ウェン教授が言っていたように、これは経済システムの問題なである。

 もちろん、グローバルな経済の全体の詳細を知る必要はない。けれども、大きな目で見ることが大事である。こういうことを言うとあまりにもシンプルで一般的だと思われるかもしれない。けれども、問題とはグローバル化の問題なのであって、どの文化であれ、それが理解できれば解決策は意外にシンプルである。例えば、エネルギー消費やパッケージを減らすことができるし、それによって二酸化炭素の排出量を軽減することができる。不足感ではなく足るを知れば、経済的な安定感も確立される。同時に生産性も高まる。生物多様性も農業でも自然環境も豊かになっていく。そして、コミュニティで人と人とのつながりを高める。そして、魂の健全さを高めていく。ローカルなレベルで民主的なパワーを高めていく。

 このメリットは論理的ではない。実際に、世界中で何百もの人がローカル経済を変えることで具体的なメリットを高めている。

具体的に情報を伝えて人を変えていく

 「ビックピクチャー・アクティビズム」とは、自分や他の人に対して、きちんと情報を伝えて、ローカル化することで経済的な問題が解決できると知らせることである。そして、地域内には多くのオルタナティブがある。ある側面で動いているものをつなげることができれば、例えば、ローカルなフードムーブメントが出て来る。それが重要である。パーマカルチャー、エコビレッジ、スローフード、エディブルスクールヤード、CSA、バイオダイナミックファーミング、ファームショップ等たくさんがある。

 そして、大局を掴んで、活動するには、何をしているのかをわかりやすくする必要がある。欲望があるから仕方がない、人口が多いからダメだとよく言われる。あるいは、もう人類は絶滅するのだからやっても遅すぎるという考え方もある。けれども、まずは、気候変動で絶滅するという考え方を脇に置いて、どうやったら自分や子供を健康に、幸せにできるから考えることもできる。世界では成功事例が出ている。マイケル・シューマンのような経済の専門家もいる。さらに効果的な地域経済を作っていくことが大事である。

真実の情報を感性から探し求める

 さて、大企業の力で知識や情報がコントロールされて真実が手に入りにくいと言う問題がある。これにはどうするか。まず、メインの情報がどうなっているのかを常に考えて、小さくても本物の情報が得られるようにしたい。つまり、ビックシステムで見たとき、エコシステム、健全さ、心理について、まず一引いて大局で見て欲しい。そして、深いところで「これが本当だ」と感じられることを積極的に探すこともビックピクチャー・アクティビズムでもある。自然と共にいればもっと自然になれると思う。

現状を変えるにはどうするか

植草一秀 残りの時間が15分しかなくなった。多国籍企業が、メディアと政治を支配し、制度や法律を変えることで人々が洗脳されている。これを乗り越えるのが、ビックピクチャー・アクティビズムであると言う。そして、流される情報に騙されずに行動することが大事である。それでは、どうしたら現状が変えられるのか。

今治市の条例のように地方から抵抗する

山田正彦 堤さんからゲノムの話があったが、2週間前の9月30日にゲノム編集のものが果たして有機かどうかの検討会が開かれた。高オイレン酸ダイズが非GMOとして店に並ぶ日も近い。それに対して、私たちはどういう戦いができるのか。四国の今治市には「食と農のまちづくり条例」がある。これを見ると半年以下の懲役。50万円以下の罰金とされている。だから、ゲノム編集も遺伝子組み換えであるとして、このように規制する条例を私たちの住んでいる街で作っていく。署名運動や法律を作ることでそうしたことができる。地方から私たちの生活を守ることができる。私たちの戦いは必ず勝つ。頑張りましょう(拍手)。

住民の声があれば自治体は変わる

堤未果 山田さんが言っていることは本当にできると思う。水道法の改正による民営化もほとんどの人が知らず、メディアでも忖度している人たちがネットでかなり大量のデマ情報を書いている。「山田は信じられない」と言う記事もある。けれども、だいたい特定の個人の名前をあげて批判している記事は危ない。そして、市議会議員、町議会議員にかなり市民から電話がいっている。そこで、水道民営化を懸念する自治体がかなり増えている。例えば、神戸市、青森、秋田だ。その一方で、大阪、名古屋、奈良、宮城は水道民営化をやろうとしている。私が驚いたのは、最初に民営化したのが浜松だったのだが、水道民営化を凍結したことだ。イケイケどんどんだと思っていたら、静岡では凍結された。理由は、あまりにも市民が騒いだからだ。選挙寸前であると撤回せざるを得ない。と言うのは、選挙直前は敏感になるからだ。当初は安倍政権側と思われていた首長も変わってしまう。

子どもの保育園を有機化して健康を実現せよ

 そして、私がローカル政府ができることで応援して見たいのは、公共サービスがどんどんカットされていることだ。実は、カットされているのは投資商品でもある。それが、民営化されるとどうなるか。利益は民間が得て、何かあった時にだけ自治体が責任を持つことになる。つまり、ローリスク、ハイリターンのものなので、民間すれば美味しい。そこで、保育園がいま公共が危うくなっている。予算がカットされて栄養士も入れられないとなっていく。けれども、そこで、それを逆手にとって保育園の給食を有機にできないか。するとどうなるか。生産者からすれば、有機農産物が大口で民間業者に買ってもらえる。さらに、行政は自分で赤字が出せないのだが、子ども達の精神状態と健康状態が良くなることでマクロで見ると黒字になっていく。

 実は、水面下で草の根でこうした動きは進んでいるのだが、実はかなり広まっている。さらに、公立保育園は規模が小さいのでかなりできる。それで地域経済の活性化になる。

 給食を有機にすれば家庭が変わる。これを広げていく。子ども達が有機に変わると実際に、味が濃すぎると普段の家庭の添加物が入った食事が食べられなくなっていく。そこで、お母さんのネットワークで家庭の食事も変わっていく。つまり、何かをやるには「食」の入り口がいい。2020年はおそらく「食」がテーマになるため、そことリンクする。するとまず保育園が目玉となる。

老人ホームを有機にせよ

 また、地方は医療費も税収が少ないから、国が出さなくなって「自分でやれ」と言われている。高齢化していく中で、次にターゲットとなるのが老人ホームである。有機化は介護施設でもできる。

 金を削られた時に何をするのか。最初にするのは食の質を落とすことだ。数年前に中国の冷凍業者が問題になったことがある。汚染米もあった。では、それはどこに普及していたのか。調べたところ、老人ホームであった。つまり、補助金を切られるとしわ寄せは、そこにいく。

 悪い輸入品が増えることはウォール街的からすればいいのだが、ローカルな地産地消ができるとどうなるか。「公共」が変わると「中間共同体」ができる。ゆっくりと考えて、違う価値観を持つ物理的な空間ができる。パブリックなものと地産地消。地域の共同体をコラボさせることが静かに進んでいけば、うまく成功している。それは、大きなメディアが取り上げないが、地方政府を巻き込む最大のメリットは、仕組みを変えることとお金がもらえるようになることだ。

 こうして地域社会で具体的なメリットが見えてくれば、誰もが地方選挙にいくようになり、選挙民が地方議員と話すようになれば、有権者の意識が高まっていく。誰もが国政選挙は「どうせ変わらないだろう」と諦めているが、地方選挙から変わる。これは海外で起きているムーブメントとも橋をかけられるので一気に変わる可能性がある。

山田正彦 韓国に行ったら韓国は有機の給食が無償だった。それも、地方自治体が条例でやっている。日本もそれができると思っている。アメリカにも行ったが、お母さんが子どもや孫のためにオーガニックを選んで、それがスーパーにあふれている。5年前にはカリフォルニアでもどこで有機を買ったらいいかのわからなかったのにである。そのアメリカを変えたゼンさんが12月2日に来日する。東京の憲政記念会館で話をしてもらうので是非来てください。

植草一秀 女性と子供がムーブメントの鍵を握ると。実は、自公に入れているのは25%である。それをうまく政治に生かすことが必要である。そして、ローカルを横につなげる「インターローカリズム」も大事になってくるかと思っている。最後に、ヘレナさんから一言。

ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ ローカリズムとナショナリズムも違う。ローカルの地元の有機が大きい。食を中心に据えていくことが大事である。

【画像】
山田正彦さんの画像はこのサイトより
堤美果さんの画像はこのサイトより
ヘレナ・ノーバーグ=ホッジさんの画像はこのサイトより

編集後記

201911001S.png ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、山田正彦、堤美果。この3人の対談がなされるというので、戸塚にある明治学院大学の横浜キャンパスに聴講に行ってきた。正門から講演会場に向かうキャンパス内の谷戸をまたぐ「遠望橋」はその名のとおり眺望がよく、秋の晴天に富士が白峰を輝かせていた。

 さて、会場でのビデオ撮影はできないとのことで、パソコンに叩いたメモを元に作ったものである。だから、正確さを欠いているところがあることは十分にご理解いただきたい。そのうえで、改めて感じたのが堤美果氏の切れ味だ。

 まさに、メディア・リテラシーの部分で日々戦争状態にあることがよくわかる。そして、浜松市では水道の民営化を延期に持ち込んだという。素晴らしい。そして、グローバル化に対抗するための具体的な手段もいい。とはいえ、学校給食、公共調達による地域経済再生、ゲノム編集、種苗法改正、水道民営化とまさに、拙ブログが追ってきたテーマがそのままズバリというのも意外だった。

 あえて、主催者側に苦言をひとつつけるとすれば、このセッションの長さが1.5時間と短すぎたことであろう。スタンド・アローンでも3時間はできる人たちばかりだ。午前中に1時間ずつの講演。それを受けての3時間たっぷりのパネルディスカッション。それくらい聞いてみたい内容であった。

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2019年05月14日

学習会のお知らせ

信州発! 持続可能な農業国際シンポジウム
 長野から有機農業の波紋を打ち出そう

日時: 2019年6月2日(日)13:00~17:30
会場:勤労女性会館しなのき 2Fホール
 〒〒381-0000長野市西鶴賀町1481-1
主催長野県有機農業研究会NAGANO農と食の会、OBUSE食と農の未来会議、須坂市環境保全型農業の会、総合地球環境学研究所 FEASTプロジェクト 
問合せ カネマツ物産内 NAGANO農と食の会事務局 
〒381-1231 長野県長野市松代町松代583
電話: 026-278-1501
メール:kanematsuclub@gmail.com小山まで

お申し込み このサイトからお申し込みください。お問い合わせは上記メールでお願いします。

プログラム(予定)
 12:30 受付
 13:00 開会 主催者挨拶 長野県有機農業研究会会長 勝山卓栄
イントロダクション「食と農から見た環境・経済的に持続可能な信州」
 スティーブン・マックグリービー
基調講演 なぜ、いま時代は有機農業なのか (仮題)
 ミゲール・アルティエリ カリフォルニア大学バークレー校教授
 15:30
 シンポジウム〜女性の視点から見たいのちを育むこれからの食と農業
国際家族農業年+10 フランスにおける有機農業・学校給食
 関根佳恵 愛知学院大学准教授(ビデオ・メッセージ)
クララ・ニコルーズ カリフォルニア大学バークレー校 常任講師
国際ジャーナリスト 堤未果
松本市内有機農家  斎藤えりか
池田町町議会議員  松野亮子
 17:00 閉会

なぜ、いま持続可能な農業国際シンポなのか?

 来る6月15日、16日にG20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合が軽井沢町で開催されますが、長野県は、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて優れた取組を提案する「SDGs未来都市」として、平成30年6月に全国で初めて選定されたところです。

 「しあわせ信州創造プラン2.0(長野県総合5か年計画)」の推進に当たっても、世界的な課題であるSDGsを意識し、誰一人取り残さない(インクルーシヴ)持続可能な社会づくりに取り組むとともに、SDGsの理念を信州から世界に発信していくこととしています。また、「長野県版エシカル消費」では、人、地域、社会、環境への配慮に加え、長寿県としての特徴を持たせ、健康も重視し、食育への取り組みを重点事項として盛り込み、地消地産の推進、地域産有機野菜の消費拡大による地域内経済循環の拡大をうたっています。第3期長野県有機農業推進計画に基づき、交流の場づくりによる消費者・生産者の結びつきの強化、有機農産物の情報発信、有機農業への理解と支援を図ることとしています。

 一方、平成32年までに1兆円の農産物を輸出するとの国の方針を受け、長野県においても、ぶどう、りんごを中心に、米、野菜、花きを海外へ輸出することとしています。「地域循環共生圏(エシカル消費・SDGs認証制度)」においては、SDGsに取り組む企業のブランド化を図り、全国・世界的なエシカル消費の拡大をすることが課題となっていることから、信州産有機農産物として世界に情報を発信し、ブランド化を図っていく必要があります。

 さて、世界に目を転じると、いま世界では有機農業(アグロエコロジー)が主流になっているのをご存知でしょうか。2008年の食料危機を背景にFAOは有機農業を推進することとし、2019年から「国際家族農業年+10」が始まっています。また、「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」が12月の国連総会で採択されたところです。

 ヨーロッパではSDGsや地球温暖化への危機感を背景に、有機農業を実践する小規模家族農家の育成に向けた農政転換が進んでいます。これを支えるのが学校給食等での公共調達と消費者の高いエシカル意識です。フランスでは学校給食の6割を家族農家が生産した有機農産物・地消地産農産物とすることが決まっていますし、有機100%給食を実現した自治体もあります。

 ですが、私たちの長野県も負けてはいません。実は、長野県佐久市(旧臼田町)は、日本の有機農業運動の発祥の地のひとつです。若月俊一医師の慧眼によって1970年代に早くも提唱されていた有機物の土壌への還元、農薬汚染の環境や身体への影響、食を介した農と医療との連携といったメッセージは、いま、FAOやSDGs、そして、フランスの農政大転換といった動きを介して、ようやく世界が気づいたことなのです。まさに、半世紀という時を介して世界の最先端がやっと長野に追いついて来たとも言えるでしょう。

 そこで、世界的な有機農業の権威、カリフォルニア大学バークレー校のミゲル・アルティエリ名誉教授の来日を記念して、地域内経済循環や食に詳しい総合地球環境学研究所のスティーブン・マックグリービー準教授、国際アグロエコロジー学会長の同大学クララ・ニコルス常任講師、国際ジャーナリスト、堤未果氏を招聘し、県内で有機農業を行う女性農業者、学校給食に有機農業を取り入れることで町おこしを考える女性議員とともに、世界の最先端の話題を聞きながら、命を育む女性の視点から小規模な家族農家でも豊かな暮らしが成り立つ持続可能な経済のあり方を考えてみませんか。

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●長野県有機農業研究会 農業生産者、加工業者、消費者、医師、研究者、ジャーナリスト等、有機農業に関わる幅広い人々が集い、1981年に発足。「環境破壊を伴わず、地力を維持培養しつつ、健康で質の良い食物を生産する農業の探求・普及、ひいては持続可能な社会をつくりあげること」を目的とし、マジメな社会問題から楽しい暮らしの巧みに至るまでを話題とし、現在も「有機農業」を共通項に、年代も立場も様々な約200名の会員が楽しく活動している。

●NAGANO農と食の会 有機農業者、渡辺啓道、久保田清隆、有機農産物の流通業者カネマツ物産の小山都代が共同代表となり2013年3月に発足。月1回の定例会も76回を迎える。「野菜で変わる生きる形―」を掲げ、「安心して家族に食べさせられる食べ物」を軸に、農の寺子屋、食の寺子屋、学校給食への取り組みを含め有機野菜ヘの理解と普及等多様な事業を展開している。

●OBUSE 食と農の未来会議 子ども、孫たちのために未来の小布施町を考えるコミュニティグループ。農家、消費者、食と農に関わる事業者、行政など、食と農に関心のある人の情報交換、学習を目的として2018年12月に発足した。食と農について学ぶ勉強会や講演会、学校給食を考えるワークショップ等を開催。今後は、有機農業体験なども行い安全な食に対する意識を地域で広げる活動をしていく。

●総合地球環境学研究所 地球環境学の総合的研究を行う文部科学省大学共同利用機関のひとつとして2001年3月に創設。人と
地球の未来のあるべき姿を考え、その多様性も含めた理解と解明のための研究を進めている。FEASTプロジェクトは、持続可能な地球社会の基盤を支える食と農の新たなあり方を目指し、実践的な研究を進めている。FEASTプロジェクトは、持続可能な地球社会の基盤を支える食と農の新たなあり方を目指し、実践的な研究を進めている。

パネリスト紹介

Miguel-Altieri.jpgミゲール・アルティエリ (Miguel Altieri) カリフォルニア大学名誉教授。生態学の理論を用いて、生産性が高く、かつ資源の節約に適した農業システムを研究・設計・維持・評価する学問分野「アグロエコロジー」の提唱者。ラテンアメリカにおいて、アグロエコロジーの実践を通じて資源に乏しい小規模農家を支援している。

Clara-NichollsS.jpgクララ・ニコールズ(Clara Nicholls) カリフォルニア大学ラテンアメリカ研究学センター常任講師。ラテンアメリカ・アグロエコロジー学会代表。コロンビア出身の農学者。害虫を生物学的に制御する生物多様性に富んだ農業生態系の発展に焦点を当てた研究を進める。また、ラテンアメリカにてアグロエコロジーのアプローチを用いた農業の持続可能性向上に向けた活動を幅広く行っている。

Steven-McGreevyS.jpgスティーブン・マックグリービー (Steven McGreevy) 京都大学農学博士。総合地球環境学研究所准教授。実践プロジェクト「持続可能な食の消費と生産を実現するライフワールドの構築―食農体系の転換に向けて」(略称:FEAST) プロジェクトリーダー。農業および農村地域の持続可能な開発、食やエネルギー転換等を活用した農村の活性化への新しい取り組みや、地元のコミュニティにおける食の消費と生産方法の連携について研究をしている。

mika-tsutsumi.jpg堤未果(Mika Tsutsumi) 国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。徹底した現場取材と公文書分析による調査報道による多数の著書は海外でも翻訳され高く評価されている。最新刊は「日本が売られる」(幻冬舎新書)。夫は参議院議員の川田龍平氏。

Kae-SekineS.jpg関根佳恵(Kae Sekine) 愛知学院大学准教授。京都大学大学院で博士号(経済学)。世界食料保障委員会専門家ハイレベルパネルの報告書「食料保障のための小規模農業への投資」の執筆に日本人として唯一参加。小規模家族農業の専門家として、小規模・家族農業ネットワーク・ジャパンの設立を呼びかける。2008年度はFAOで客員研究員を務めた。

Erica-SaitoS.jpg斎藤えりか(Erika Saito) 有機農家。千葉大学卒業。学生時代から、環境問題、貧困問題の現状を学ぶため世界30カ国に足を伸ばす。NGO職員として、アフリカのマラウイとスーダンにて1年ずつ貧困支援活動に従事。現地での活動から、先進国での消費行動が貧困や環境問題を引き起す一つの原因であることを目の当たりにし、帰国後、有機農業の道に進む。農薬も肥料も使わない方法で多品目野菜を栽培中。

Ryoko-MatsunoS.jpg松野亮子(Ryoko Matsuno) 池田町議会議員。津田塾大学国際関係学科卒業。イギリス、ケント大学で法学博士号。内分泌かく乱物質や遺伝子組み換え食品が次世代に及ぼす影響に危機感を覚え、帰国後にコンサルタントを経た後、自給自足の生活を目指して池田に移住。オーガニックタウンの実現を目指している。
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