2019年07月08日

長野県にて、蕎麦、伝統野菜と在来種を守るため独自の条例制定さる~SBCラジオJポイント

はじめに

 日本の多様なタネを守ってきた「種子法」が2018年4月に廃止されて以降、SBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」というコーナーは「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきた。

 そして、7月5日(金)では、県側が提起した条例が、可決された。これについては、信濃毎日新聞、日本農業新聞北越版、そして、日経新聞も報じた。
 例えば、日経新聞はいち早く、当日の夜20時にはこう書いている。

「長野県議会、種子条例を可決 安定供給や保護明記。長野県議会6月定例会が5日、閉会した。2018年に国が廃止した主要農作物種子法に代わる「主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例(種子条例)」などを原案通り可決した。種子法と同様に、県がコメや麦など主要作物の種子を安定供給することを定めたほか、新たにソバや伝統野菜の保護、種子生産者への支援も明記した。施行は20年4月。

 一般社団法人長野県原種センターが種子管理団体として生産や保存、需給調整などをする。将来にわたる種子の安定供給を明文化し、農家の不安を払拭する考え。県などが種子生産者に対し、生産体制の整備や採取技術の継承などに必要な支援をすることも定めた。

 種子の継承が課題となっている伝統野菜の保護も手厚くする。県が定める「信州の伝統野菜」(現在は76種)の保護に努めることを明記した。

 一部地域でしか生産されていない作物が災害などで失われないよう「バックアップ」となる種子を県の主導で保存する。これまでは数品種のみが保存の対象だったが、新条例の施行後は段階的に76種全てを対象にしたい考えだ。信州の伝統野菜には、野沢菜や「松本一本ねぎ」「ぼたんこしょう」などが含まれる。

 日本のタネを守る会のサイトには、「種子条例制定状況」のマップが出ているのだが、これにも晴れて乗ることができるようになった。では、この条例はどのような想いで策定されたのか。SBCラジオの放送で、阿部知事と農政部の伊藤洋人技術課長のインタビューがなされたので、この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

種子法とはなんであったのか、改めておさらい

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久保正彰 6月県議会は、最終日の先週の7月5日金曜日に「主要農作物種子法」の廃止に伴う県独自の「種子」、タネに関する条例案を可決いしました。「種子法」で対象としていた、主要農作物の稲、麦、大豆、これに加えて、ソバと伝統野菜なども条例の対象として、種子、タネの保存に取り組んでいくという内容ですね。今日は、この条例について取材を続けてきました生田 明子アナウンサーの報告です。

生田明子 おはようございます。長野県のこの条例、正式名称は、「長野県主要農作物および伝統野菜等の種子に関する条例」です。

 種子法が廃止されてから、今、全国の自治体で種子法に代わる「種子条例」を制定する動きが広がっている中、長野県は、全国で11番目の制定となりました。

 まず、この条例ができた背景、改めてお伝えいたしますと、2018年の4月に、「主要農作物種子法」という国の法律が廃止されました。通称「種子法」です。これは、日本の米や麦、大豆など主要作物の種子について、都道府県が優良品種を開発するなど、その種づくりをしっかり予算をつけて行い、その土地にあった種を守るように義務付けてきた法律なんですね。けれど廃止されたことで、農業関係者は混乱しました。種の開発や生産には、交雑を防ぐために驚くほどの手間もかかりますし、一つの品種が開発されるまでには最低10年、種として販売されるまでに行う増殖には4年がかかると。莫大な時間も、費用もかかりますが、県の種は、JAを通して、農家が安く購入できるようなシステムになっているんですね。そして、その種から農作物を作ることによって、例えば、各地域の銘柄米を、消費者が手ごろな値段で口にできたというわけです。

久保正彰 私達が毎日頂いているお米もですね、膨大な労力、費用もかかって種が守られてきたということなんですけれども。 税金で賄ってきたから 手ごろな価格で我々は頂けたということなんですね。

生田明子 そうなんです。けれど、法律がなくなった今、都道府県は、予算をつけて守る義務がなくなったわけです。ここに、民間の企業が参入してくることも見込まれる中で、農家としては、「種の値段がこれまでより上がってしまうのではないか?」「食の安全は守っていけるのか?」といった様々な不安の声があがりまして、長野県としては「条例」を作って、農業をしっかり守っていこうという方針が打ち出されました。

 では、この条例の意義について、阿部知事、会見の中でこう語りました。

県全体としてタネを守り、農業関係者の人々の不安を払拭していく
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阿部知事 未来にむけて、主要農作物の種子の確保というものを条例にしっかり制度的に位置付けることによって確実なものにしていくと。そのことによって農家の皆さん、あるいは農業関係者の皆さんの不安を払拭していくという役割がひとつあるというふうに思います。

 それから今回の条例制定によりまして、単なる前年度の予算措置で取り組んでいくということではなくて、県議会の意思も明確なわけでありますから、県全体としてこの種子の確保について、しっかり取り組んでいくと。

 長野県の特色ある農作物、こうしたものについても、しっかりと守り育てていきたいと言うふうに思ってます。

76の伝統野菜や在来種も守っていきたい

生田明子 では、詳しい条例の中身について、長野県農政部、伊藤洋人(ひろと)農業技術課長 です。

伊藤洋人 主要農作物種子法が規定していたことを、将来にわたってしっかり維持継続することに加えまして、県民の大切な財産であります「蕎麦」ですとか「伝統野菜」、そしてあの在来種の種を含めてですね、長野県の種を幅広く守っていく内容にしたというところが特徴かと思っています。

 あの、主要農作物については「奨励品種」という制度がありまして、現在45の品種がその指定を受けているんですけれども、これとあと伝統野菜については76の品種について、信州の伝統野菜として認定するということにしております。

 ですから、これらの種を中心に、あと、在来種についてもですね、長野県でこれから将来にわたって守っていかなければならないというものを知事のほうで、指定をさせて頂いて、そういったものを含めて守って行こうという考え方です。

生田明子 長野県らしさが存分に表れた条例となりそうです。また、この条例については、骨子案を作り、パブリックコメントも行われ、県民の意見を幅広く聞きながら作られました。

久保正彰 はい。さきほどちょっと見ましたが、幅広くいろいろな意見が出ていたようですね。

生田明子 では、どんな意見がよせられたのか、再び、伊藤課長です。

遺伝子組み換えが怖い、交雑が不安、自家採種できなくなるが県民の声

Hiroto-Ito.jpg伊藤洋人 「条例制定にまあ賛成だ」と。「大変にいい条例なので、是非作ってもらいたい」ですとか、あるいは「伝統野菜など品目を拡大したのが大変いいね」という内容ですとか、それから、遺伝子組み換えの関係のご意見です。

 法律が廃止されまして、今後遺伝子組み換えの食品がどんどん増えていってしまうんじゃないかということを心配する声ですとか…あるいは、県内の作物に遺伝子組み換え作物が、交雑というか、掛け合わせになってしまって、そういったものが入った作物ができてしまうではないかというご心配。

 それから、種を自分でとっている農家さんっていうのもいらっしゃるんですけども、そういうことが、今後できなくなっちゃうんじゃないかと言うような不安。これらのものが多かったというふうに考えております。

久保正彰 そういう県民の意見が幅広く寄せられたということですが、条例の中に反映されたものもあったんですか。

生田明子 はいこちらをお聞きください。

今年度中にガイドラインを策定する方針で準備

伊藤洋人 今回、ご意見の中で条例に盛り込んだ部分としましては、まず条例の名称ですね。ここに、「伝統野菜」とかですね、あるいは、「在来種」をいれた名称にした、というところがひとつ意見を反映した点だと思います。それから後、伝統野菜の種の生産にかかる支援について、ちょっと表現的にわかりにくいなというご指摘がありましたので、そこをわかりやすくしたということ、それから種子生産者の支援についてですね、新たな種子生産者を支援しますよ、という最初記載になっていたんですけども、現在種子を作っている方もしっかり支援すべきだというご意見を頂きまして、そういったことを明記した点などが反映したところだと考えています。

久保正彰 なるほどね。先ほどのパブリックコメントの中で不安だという 遺伝子組み換え農作物。これについてはどうなったんですか。

生田明子 はい。今回の条例の中には盛りこまれませんでしたが、遺伝子組み換え作物と、県内で栽培されている普通の作物との交雑を防止するための「ガイドライン」を今年度中に作る方針で準備がされているということです。

条例が制定されたことで生産者と県内外の消費者のための命の源の礎を確保

久保正彰 なるほどねえ。この条例ができたことによって、長野県の農業は、今後、どんな展開になりそうでしょうか。

生田明子 再び、伊藤課長です。

伊藤洋人 まさに、種というのは「命の源」というふうに言われておりますけども、すべて農業を行う上での基本になる部分と考えています。特に主要農作物についてはですね、だいたい、のべ面積で、4万2千ha位が長野県で栽培されているんですね。長野県の耕地面積って、10万6千haぐらいなので、4割ぐらいが、こういったものになっているところです。こういったものをですね、将来に向けて安定的に生産するその「礎」のところが、今回、条例よって定められたかなと思ってます。

 将来にむけてそれが安定的に実施できる体制ができたというところが大きいかと思っています。あの、これによりまして、生産者の皆さんにとっても種が安心して供給されるんだなという安心につながると思いますので、農家の方にとっても意義があるとことでありますし、消費者の皆さんにとってもですね、この種というのは安心で安全な食糧の安定的な供給というものの「礎」になるというふうに、我々考えておりますので、長野県の消費者の皆さん、それから全国の消費者の皆さんにとっても、県のこういった作物がしっかりこれから作り続けられる基礎が出来たというところで、大きな意義があるというふうに考えているところでございます。

長野県条例は日本農業のお手本、消費者は食料主権を意識せよ
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生田明子 と言うわけで、長野県の場合は、稲、麦、大豆だけでなく、蕎麦、さらに、様々な地域の伝統野菜ですとか在来種も守っていうという条例案になったことは、全国的に見ても画期的なことです。

 長野県の種子、タネを守っていこうという明確な意思を表せたことは、これからの日本の農業のお手本になっていくと思いますし、何より長野県のこれからの農業を守る1歩になると、感じています。で、ここで、消費者にとっては「何を食べるのか」、一度問い直してもらえたらと思います。

 なぜかと言いますと、これは、農家にとって、「何を作るのか」ということにつながるからですね。自分で食べたいものを選んで決めていく権利を「食料主権」といいます。

 国産のものにするのか。それとも長野県産のものにするのか。遺伝子組み換え食品、ゲノム編集食品についても、どう選択していきたいのでしょうか。一人一人が、自分たちに与えられた「食料主権」を意識して、口にする食べ物について、この条例案をきっかけに、少し考えてもらえたらと思います。

「考えて買う」ことも、同じように大切です。

久保正彰 今地区の仕事で、水田の見回りっていうのをやってるんですけどね、この時期って、水を得て、水田の稲が順調にこう伸びていく姿を見ているとやっぱり日本ではこういう風景っていうのをやはり守っていかなきゃいけないってことを毎回強く思うんですけれどね。この「長野県・主要農作物および伝統野菜等の種子に関する条例」制定しまして、来年度 4月1日に施行されるということです。

編集後記

 日本農業新聞信越版 2019年7月6日(土)も種子法について書いた。転載しておこう。

長野県が種子条例可決「伝統野菜」も対象〜農家や専門家ら評価

 長野県議会は5日、主要農産物種子法(種子法)の廃止に伴う「長野県主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例」を全会一致で可決した。県内の農家や専門家からは評価する声があがっている。

 条例は、主要農作物の稲、大麦、小麦、大豆に加え、ソバや県が認定する「信州の伝統野菜」も対象としたのが特徴。県やJAの長野県グループなどでつくる一般社団法人長野県原種センターが種子管理団体となって、種子の安定供給や保存に当たることも示された。

Fujiko-Ouchi.jpg 中野市で「信州の伝統野菜」の「ぼたんこしょう」を作る「斑尾ぼたんこしょう保存会」会長の大内ふじ子さん(65)は「伝統野菜を守ってくれるのはありがたい」と喜ぶ。「伝統野菜は土地に合っていたからこそ残ってきた作物。昔ながらの形をそのまま残す努力をしていきたい」と話す。

 信州大学植物遺伝育種学研究室の松島憲一准教授は「伝統野菜は経済作物であると同時に文化財でもあり歓迎できる。種苗センターなどに任せきりにせず、農家自身が種採りを確実に継承することも重要だ」と評価した。

 元農林水産省関東農政局職員で、農家や研究者らでつくる「NAGANO農と食の会」で条例制定を求める活動を続けてきた長野市の吉田喜美夫さん(56)は「伝統野菜も対象にした長野県らしさが光る、全国でも例がない画期的な条例だ」と話した。

 伝統野菜に加え、知事が継続じて生産する必要があると認めた在来品種も対象とする。県農業技術課は「2020年4月の施行まで、対象とする品種の定義付けを慎重に行っていく」としている。
(2019年7月8日投稿)
(2019年7月11日改正)

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
阿部知事の画像はこのサイトより
伊藤洋人課長の画像はこのサイトより
大内ふじ子さんの画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年7月8日、 モーニングワイド ラジオJ


posted by José Mujica at 10:36| Comment(0) | 種子法廃止 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月06日

長野県主要農作物等種子条例(仮称)骨子案説明会

はじめに

2019020505S.jpg 2019年2月5日、長野県上山田文化会館大会議室で、長野県農政部による「主要農産物など種子条例(仮称)」の骨子案の説明が開かれるというので、NAGANO農と食の会のW氏、H氏らとともに聴講に行ってきた。以下は、その現場でのメモである。とりわけ、後半の質疑応答や意見交換の部分は私なりの解釈も入っているのであくまでも参考にということでお読みいただきたい。

県農政部伊藤洋人農業技術課長挨拶

 ただいまご紹介いただきました県、農業技術課の伊藤です。本日は長野県主要農産物種子条例の骨子案の説明会でお忙しいなかをご参加いただきまことにありがとうございます。また、皆様は様々なお立場から、長野県政の推進、とりわけ、格別のご尽力をいただき、まことにありがとうございます。

 さて、平成30年の4月1日に主要農産物種子法が廃止されまして、イネ、麦、大豆の優良な種子の普及をするための県の義務付けがなくなったところでございます。そこで、長野県では種子生産に関しては基本要綱を制定し、高品質の種子の安定供給に取り組んでいるところでございます。しかしながら、県民の皆様方から、種子の安定的な生産供給体制が確保されるのかといった多くの不安が寄せられているところでございます。また、種子生産の現場では、採種地の減少ですとか、高齢化、技術の老朽化等、様々な問題を抱えているところでございます。さらに、信州の伝統野菜も信州の食文化を支える野菜を維持することも課題となっています。これらを踏まえまして、長野県主要農産物等種子条例、仮称ですけれども、これを制定するところとしたところでございます。

 具体的な骨子案の概要につきましては後ほど詳しく説明させていただきますが、長野県らしい条例としていくため、対象品目に、これまで種子法で規定されておりました、コメ、麦類、大豆に加えまして、蕎麦も加えた他、種子生産者の支援や長野県原種センターを種子管理団体として位置付けたところでございます。また、県の多様な食文化を支える伝統野菜の種子の保存と維持も位置付けたところでございます。

2019020504S.jpg 条例の制定によりまして、主要農産物の種子の安定供給を図るとともに、本件農業の持続的な発展に寄与し、また、信州の食文化を支える伝統野菜等の継承するため、将来にわたって高品質の安全安心な食料を供給してまいりたい、と思っております。

 本日の説明の中で、ご不明の点等がございましたら、遠慮なくご質問をいただきますとともに、骨子案の内容についてご意見をいただければと思っております。

 なお、この骨子案につきましては、現在、パブリックコメントを行っているところでございます。1月の31日から2月いっぱいまでということで、ご意見を自由に寄せていただきたいと思います。また、本日もせっかくの機会でございますので、是非、この骨子案に対するご意見ですとかご要望を遠慮なく出していただければと思います。今後とも長野県農業の発展、そして、信州の豊かな食文化の維持について、皆様の格別なご協力をいただけますようお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。本日は短い時間でございますが、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

条例骨子案の説明

条例制定に係るこれまでの経過

2019020501S.jpg大池英樹氏 条例の骨子案の作成にあたりまして、作成の作業にあたりました県農政部、技術課の大池と申します。本日は担当の宮原と二人で条例の私案作成にあたりましたので、我々の方から内容についてご説明させていただきます(略)。お手元の骨子案の説明資料、四つの項目についてご説明させていただきます。

 まず、なぜ今回、条例制定をするに至ったか、これまでの経過について若干ふれさせていただければと思います。冒頭のご挨拶のところでもふれさせたいただいたところでございますが、一番のきっかけとなったことは、国の主要農産物種子法という法律が廃止されたことがすべてのきっかけになったとお考えいただければと存じます。まず、この種子法とはどのような法律であったのか。すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんけれども、おさらいをさせていただければと思います。この主要農産物種子法というのは、昭和27年、戦後の食料不足の時代に制定された法律でございまして、戦後の食料難を背景に、国や都道府県が主導して優良な種子を確保するため、主要農産物と言われる稲、麦類、大豆の三つの種子の生産普及を各都道府県に義務づけていたという法律でございます。具体的に2Pに種子法の条文を載せてございますが、全体が8条からなる非常にシンプルな法律になっております。この法律の特徴なんですが、定義はご覧の通りなんですが、3条以下の冒頭の文言をみていただきますと、各都道府県は何々をやりなさいと、都道府県に種子生産に関わる業務を義務付けている法律でございます。都道府県による奨励品種の選定をしなさいですとか、圃場の指定をしなさい、その審査をしなさいということが書かれている法律でございます。戻っていただきまして1Pですが、種子法の仕組みを図式化したものを1Pに掲載してございますので、ご覧いただきたいと存じますが、左側から種子の生産をして、種子の販売をして、栽培をしていくという経過でございます。品種開発は、県の研究機関や民間がしているわけでございますが、種子法はこの品種開発の部分にはからんできてはおりません。よく今回の種子法廃止にあわせて、「試験場での品種開発がなされなくなってしまうのではないか」とのご不安で意見もいただいているわけでございますが、種子法は開発以降の部分、品種ができてからの部分を網羅している法律でございます。具体的に種というのは、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、原原種、原種とセットで書かれておりますが、農家さんが実際に使われているものを「種子」と言います。この「種子」を作るための、種子の元になる種のことを我々は「原種」といい、その「原種」の元になる種を「原々種」と呼んでおります。ですので、1年間、原種を作って、取れた種を「原種」にして、この「原原種」を播いて、タネの元となる原種を作り、できたものを県下の育種作業を行っていただいている農家さんにおくばりして、採種農家さんがこれを栽培することによって、種子、タネを作っていただきますので、結果的に、このタネ生産に至るために3年の歳月がかかっている。種生産を始めてから農家さんの手元にいくのは4年目からになるというのが実態でございます。この原種の生産から種の生産までを網羅しているのが主要農産物種子法でございます。

 さて、その下に条文の中身を噛み砕いて書いてございますが、「都道府県による」と書いてございますが、「優良な品種(奨励品種)を決定するための試験の実施、そして、選んだものの原種、原原種の生産を都道府県がやる。そして、できた原種、原原種を使いまして、都道府県による種子生産ほ場の指定であったり、採種圃場の審査であったり、生産物の審査であったり、合格したものの審査の証明書を交付すること。あるいは、採種栽培をされている農家さんに対する助言及び指導を行うというのが種子法の中身でございます。さて、この種子法が皆さんご存知の通り、平成30年の4月1日に廃止されたわけでございますが、ただ国は種子法を廃止したしましたが、「都道府県がこれまで行ってきた種子生産にかかわる業務を直ちに取り止めろ」と言っているわけではございませんので、これまでどおり、うちの県では採種作業を続けていくと考えておりましたし、地方交付税として種子生産に関わる経費を国が地方公共団体に交付しているわけでございますが、これについても種子法廃止後も現在も配布が継続されているという実態がございます。

 それでは3の本県における現状でございますが、長野県は昭和62年に県と市町村、JAグループ等の関係団体の出資によりまして(社)「長野県原種センター」を設置してございます。これは本来、県が行うべき業務を原種センターに担っていただくということで、全国にも例がない組織でございまして、農協が種子生産を担っているという体制でございまして、他県にはない組織でございます。それを設立しまして、主要農作物でございますとか、長野県が育成した品種の採種作業に取り組んでいただいているところでございます。種子法、4月1日に廃止されましたが、原種センター、JAグループが引き続き、農家の皆さんに適性価格で優良な種子を供給しているわけで、種子法に変わる基本要綱要項ものを新たに制定して、これまでの体制を維持してきているところでございます。

 さて、資料の3Pに基本要綱をのせてございますので、またご覧いただきたいと存じますが、これまで種子法に書かれていたものはきちんと網羅して、引き続き基本要綱で種の安定生産に取り組んでいるところでございます。また、よくご心配いただくのですが、予算について「種子法が廃止されて県の義務づけがなくなったから、予算はどうなっているの」という話をよく聞く訳でございますが、30年度につきましてはほぼ前年度と同額を確保しているところでございます。ただし、やはり法律で定められていた、県がきちんと義務づけされていたものと、いつでも県が変更可能な基本要綱とではやはり重みが違うであろうということもございまして、色々な県民の方々から種子法廃止の不安の声をお聞きしたところでございます。今後も農家の皆さんが安心して使う種が供給されて、そこで作られた農作物が消費者の皆さんに届けられるようにと。そんな意味合いも込めまして、条例を作るべきではないかというご意見を色々な団体さん。あるいは、市町村の方からも要請としていただいたところでございます。そのようなことを受けまして、県としても条例を制定しようという動きになりまして、昨年の9月の県議会の定例会におきまして、県政議案の説明において知事の方から条例制定の表明をさせていただいたところでございます。その後、色々な皆様方から条例の骨子案を作成するにあたって、ご意見をいただく中で、今回、発表させていただいた骨子案の策定にあたってきたところでございます。

条例骨子案の作成に関する意見徴収の状況

 皆さんからお聞きしたご意見について若干ふれさせていただきますが、資料5pに飛んでいただきまして、条例骨子案作成に関する意見聴取の状況でございますが、昨年の9月に議会で表明をさせていただいてから、皆様からご意見をお聞かせいただきました。ここに記載の団体の皆様と意見交換をさせていただいたり、時間の都合上、意見交換ができないところにはアンケート調査ということでお願いをしているところでございます。とくに大きな団体につきましては、なかなか全員の皆さんがこのためだけにお集りいただくという会議がなかなかできなかったものですから、アンケート調査という形で会員さんに送らせていただいております。農業団体であったり、行政機関、農業者、消費者。そして、さらに、今回、県が条例を制定するにあたって、種子法では主要農産物が対象であったわけでございますが、いろいろなお声を聞く中で伝統野菜、長野県の食文化を支える「昔から受け継がれてきた伝統野菜についても盛り込むべきではないか」とのご意見もありましたので、伝統野菜の関係者にも意見を聞いたところでございます。

 P6で先ほどアンケート調査をさせていただいたと申しましたが、そのアンケートの概要をまとめさせてもらっております。172名からお返事をいただいたところでございまして、盛り込んで欲しい内容として、設問として我々の方でお願いしたところでございますが、やはり一番多かったのが主要農作物種子の安定的な生産供給。これまで種子法に書かれてきた内容をちゃんと網羅してほしいという内容が8割近くあったわけでございます。その他の項目についてもおおむね5割以上の解答をいただいているところでございます。その他の意見ということで、ご意見があればということで特にいただいたご意見を7Pにまとめてございます。意見聴取及びアンケートで寄せられた主な意見への対応ということで、これは、二つに分類させていだいております。分類Aということで、意見をいただきまして、今回の骨子案に反映させていただいたもの。そして、分類のBとして、骨子案に盛り込むことは難しいのですが、今後の施策立案の参考とするものとして整理をさせていただきました。まず分類A。今回の骨子案に反映させたものでございますが、採種農家への支援について検討してほしということで、採種農家さんの高齢化なりという問題も影には隠れてございます。また、県の予算の確保についてもちゃんと盛り込むべきであろうと。法律の裏付けがなくなった中で、条例に入れるべきだというご意見。そして、主要農産物には蕎麦を加えた方がいいのではないかとか。長野県原種センターの役割をちゃんと明確化して欲しいと。概ね条例制定ということに対しては前向きな賛成というご意見をいただいております。法律がなくなって心配だけれども県が条例が作ることには賛成だというご意見。これが大半いただいていたところでございます。

 分類Bの方でも色々なご意見をいただいております。優良品種が海外へ流出しないようにとか。民間企業や外資系企業による種子ビジネスへの影響を懸念しますですとか、県財産の知的財産の保護が心配だとか、種子法廃止によって遺伝子組み換え作物が入ってくるのではないか。あるいは、自家採種ができなくなるのではないか。このようなご意見もいただいたところでございます。これらのご意見を踏まえまして、P9ですが、「長野県首脳農産物等種子条例(仮称)」の骨子案を策定させていただきました。

長野県主要農作物等種子条例〈仮称〉の骨子〈案〉

 さて、長野県というのは、全国の中でもトップクラスの品質収量を誇っている県でございまして、特にコメについては毎年のように10a当たりの収量が全国第1位、品質基準の農産物審査の結果も全国第1位という結果がほとんどでございます。これを支えているのは、やはり安定的に優良な種子が供給されて種子方針がきちんとしてることもひとつあろうかと存じます。当然、農業者の皆さんの高い技術力があってのことになるわけですが、安定的な種子供給というのも一役を買っているのかなと思っております。

 また、信州には伝統野菜と呼ばれる、県内各地で多様な種が各地域の食文化も支えていることもございます。これも是非残していくべきものだと考えてございます。このような中、種子法が廃止され、不安の声があるということで、今回条例を制定することに至った訳でございます。

 では、具体的な骨子案の内容でございます。まだ骨子案の段階でございますので、条文にする、文章に起こす内容があるわけでございますが、策定していくにあたって、前段階としてどのようなものを中に盛り込みたいのかを載せたものが骨子案でございます。

 まず、一番に条例の目的と基本理念を掲げたいなと思っております。目的については以下の基本理念に基づいて本県における主要農産物の種子の安定的な生産に寄与することを目的とすると。

 また、あまり今までの種子法では書かれていなかったのだが、基本理念を、業務において念頭におかなければならないものを三つおいてございます。種子の生産は、作る農作物の品質の確保であったり安定的な生産のためには欠くことができない重要なものなんだということを理念としておきたい。二点目にそれが消費者の皆様への安全・安心な食料の安定的な供給につながるものであるのだと。三点目にその種子生産の業務を行うにあたっては、関係機関の相互の連携によって行わなければならないと。

 次に今回の条例の対象とする作物でございます。主要農産物種子法、通称、種子法におきましては、稲、麦類、大豆だけが対象となっていたわけでございますが、これに本県特産のそばを加えていきたいと考えております。主要農産物の定義として、長野県では蕎麦を主要農産物に入れてしまおうと。全国トップクラスの生産量を誇る、本県の信州そばとして全国に認知されている重要な作物でございますので。さらに、これに加えて本県の多様な食文化を支える伝統野菜であったり、これに準ずるような、将来に向けて種子生産を継続する必要がある在来品種。このようなものに対する支援も加えていきたいと考えております。

 次に用語の定義もさせていただいております。「主要農作物」と書いた場合においては、稲、麦類、大豆、蕎麦を指すとお考えいただければと思います。そして、これに「等」がついた場合には、上の四品目に加えまして信州の伝統野菜と将来に向けて種子生産を継続する必要性のある在来品種。これを加えたものであるとお考えいただきたいと思います。ということで、全体の条例の名前につきましても、長野県主要農産物等と「等」を条例の題名につけたところでございます。

 三番に、それぞれの機関の役割を載せてございます。冒頭の理念のところでご説明しましたが、種子生産にあたっては、関係する皆さんが連携してやっていかなければ種子生産ができないというわけで、県の責務。施策の全体的な統括。総合的かつ計画的な推進としてございます。また、一般社団法人、長尾健原種センターの役割を位置付けてございます。これは条例制定上の作業上のことなので、あまり条例に固有名詞、ある団体の個別名を書くことはあまりしておりませんので、原種センターを「種子管理団体」という名称で位置付けて、これを県が指定する形にしようかなと思っております。

 そして、主要農産物の種子の生産及び供給を行う。主要農産物等の種子の保全に努めるとしてございます。

 次に種子生産者の役割としては、主要農産物等の種子の適正な栽培を行い、優良な種子の生産に努めるとしておきたいと考えておりますし、関係する組織・団体は、県が実施する主要農産物等の種子生産に関する施策に協力するとともに、種子生産者に対する支援に努めていただきたいとしてございます。

 次に第4番目は、主要農産物の種子の生産と安定供給でございます。これは「等」がついておりませんので、米、麦類、大豆についてふれてございます。それぞれはこれまでの種子法に書かれていたものを継続していくということで、県内に普及すべき優良な品種を決定していくと。そして、種子管理団体、原種センターは県と協議の上、種子の生産計画を策定すると。そして、県は原種の生産を行うということで、具体的には、原原種の生産をするということでございます。そして、長野県の原種センターが原種の生産、確保、供給を行うということでございます。

 そして、原種センターが全体の種子の確保、供給調整及び備蓄を行うと。

 また、種子生産圃場につきましては、種子法では県が指定をするという行為になってございましたが、今年からの基本要綱では届け出制という形にしてございます。我々の方からお願いしたものに対して、「設置しましたよ」という届け出という行為をしていただくと。

 7番目は、種子生産者は品質を保つために県に対して審査の請求を行っていただきます。これに対して、県は請求があったときに、審査を行い、これが基準に適合すると認められたときには審査証明書を発行することとしてございます。

 ご覧いただければわかりますように種子法の内容は網羅してあるわけでございます。

 5番目は、主要農産物の種子生産者等への支援でございまして、いわゆる稲、麦、大豆、蕎麦への個別生産者への支援を明記してございます。まず、きちんとした助言、技術指導を行うと。また、新たに加えたことでございますが、新たな種子生産者の確保。前段で若干ふれましたが、現状の種子生産者の高齢化が進んでおりまして、新たな採種作業をやっていただける方を確保していかなければならない。いま採種作業をやっていただいている方の巧みな採種技術を後世へとちゃんと伝承していかなければならないと。継承していかなければならないと。また、できたタネを調整する機械、各地で種子センターも設置されているわけでございますが、これも老朽化が進んでいる地域もございますので、そのために必要な施策を講じるということでふれてございます。

 6番に、伝統野菜等の採種技術等の指導や種子保存への支援でございます。伝統野菜であったり、将来に向けて保存する必要のある在来種につきましては、種子の安定確保のための採種技術の指導。他と交雑をしないように純粋に品質の形質を表すようなタネをどうやって取るかという技術の指導であったり、遺伝資源として、そのタネを保存するお手伝いもしたいなと思っております。

 基本的に採種作業は在来品種については、地元の皆さんがやっているわけでございますが、例えば、気象災害が来て、全部それが全滅してしまって翌年に作るものがないとなってしまうと非常に困るわけでございます。純粋な形質を持つタネというものをお預かりして遺伝資源保管庫で保存を行なっていく。基本的に採種をされている方が、品種更新を行なっていくわけでございまうが、何か間違って来年のタネがないということとなれば、我々の保管庫の方からタネをお戻しさせていただいて、それで、翌年のタネ採りにつなげていただくと。そのような支援をさせていただきたいと。県の方で、原種センターの方にですね、低温で長期間保管できる施設がございますので、その活用につきましても、きちんと検討していきたいと考えてございます。

 ここで、種子法に書かれていたものに加えて、伝統野菜なりの支援についても一定の位置付けをしていきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に最後7番でございますが、財政上の措置として、施策を推進するための財政上の措置を講じるよう努めるという項目をつけくわえさせていただいたところでございます。

 P12ですが、要望で一番多かったこれまでの種子法に書かれていたものは網羅されていることがわかるようにそれぞれ対比をさせていただきました。ご覧頂いく通り、いままで種子法に書かれていたものについては、今回の条例骨子案においてすべて網羅するような形にしております。それに加えて、網掛けをしてある部分。今までの種子法にはなかったのですが、新たに盛り込みさせていただいたということでご確認をいただければと思います。

条例骨子案についてのQ&A

 最後P13以降でQ&Aということで、お寄せいただいたご意見の中で、骨子案の中で十分にご説明できなかった部分をご説明させていただいてございます。いくつかポイントなることを説明したいと思います。

 まず、P14の一番下にございます、「種子法廃止で海外の民間企業に種子が独占されてしまうことはないか」とご心配されている方もいらっしゃるかもしれませんが、そのために今回条例を作ったというのが一番のお答えになっているのかなと思っております。

 条例を作っていない県も多々あるわけでございますが、すでに種子生産に取り組んでいない東京都を除いて、他の道府県は、これまで通り、何らかの形で行政機関が種子生産には関わると宣言をしているところでございます。稲、麦類、大豆のタネについては、全国において消費者のニーズに対応して、栽培地域に適した色々な品種が栽培されております。特に長野県については標高が低いところから1000m地帯まで米を作ると言う非常に特異的な地域でございまして、それぞれの地域にあったものをちゃんと育成して利用しているところでございまして、あまり作られていない細かいタネまでを民間企業が作っていだだけるとは到底思えませんし、また、現在、お米の品種をみていただくとおわかりいただけるように、各地域が各県のブランド品種を出してございます。こうした中で、我々条例を作る中で農家の皆さんのためにきちんと種子生産を続けて行きたいと。これが一番のメッセージかなと思ってございます。

 次のP15でのQ6でございます。遺伝子組み換え作物の栽培であったり、交雑について非常に心配されている方がおられます。ですが、そもそも種子法の条文をご覧いただければおわかりいただけるかと思いますが遺伝子組み換えについて書いてあるわけではございませんので、同法の廃止によって急速に遺伝子組み換え作物が生産されることがあるとは我々としては考えてはいないわけでございます。ただし、今回種子法の廃止にあわせて、民間企業に対して、県の知見の流出。民間企業に県の知見を提供するようにという法案があわせて可決されているため、これを心配されている方が多々いらっしゃるわけでございますが、遺伝子組み換えの作物については種子法とは別の関連する法案、四つの法案「食品衛生法」「食品安全基本法」「飼料安全法」「カルタヘナ法」を記載してございますが、これら四つの法律によって現在守られているところでございます。特に、稲などの主要農作物については、自家受粉する植物であることから、遺伝子組み換え作物がもし国内に入ってきたとしても、交雑の危険性は極めて低いものであると考えてございます。ただし、県民の皆様方の不安の声が多いということから、検討する中で、今後、遺伝子換え作物に対するガイドラインを策定している県がいくつかございますので、これらを参考にさせていただきながら、今後、検討してまいりたい。ただ、これを今回の条例に盛り込むという形になりますと、そちらのボリュームが多くなってしまいまして、本来、我々が目的としている主要農作物の安定生産という部分が、条文の中では一部になってしまいますので、遺伝子組み換えについては、別での対応ということで検討をさせていただいてございます。

Q7 種子法の廃止によって種子の自家増殖が禁止になるのではないか。という心配もございます。条文をみていだたくとおわかりいただけますように、種子法では自家増殖の規定はされておりませんので、種子法の廃止が自家増殖の禁止にはつながらないわけでございます。自家増殖については別の法律、種苗法という法律の中で記載がされているところでございまして、現状は一定の要件のもとに原則容認でございます。その中で、農業者の意見を聞きながら自家増殖を禁止する作物を定めているわけでございます。ただし、昨年ですね、農水省が原則禁止にするという方向で種苗法の見直しを検討しているとの報道がなされたために、皆さんご心配になったのかなと思うわけでございますが、同省はその後、コメントをしてございまして、新たな方針を決定した事実はないとコメントしているわけでございます。ですので、我々としては国の動向を注視しながら、皆さんのご意見もお聞きしながら、国の動向を注視すべきと思っております。ただし、一点。在来の品種であったり、登録期間が満了した品種については、特に自家増殖を禁止する気はないと農水省は言っております。今回、自家増殖を禁止するという背景にあったのは品種育成者の知的財産権利の保護という部分でございますので、在来品種については対象外と考えてございますので、これについては今後もきちんと自家増殖できるのかなと考えおりますが、前段でもうしあげたとおり、どのような動向になっていくのか。きちんと注視してまいりたいと考えてございます。

 最後になりますが、Q10番でございます。条例骨子案において、長野県らしい点や特徴はなんですかということでいくつかあげさせていただております。

 ひとつは、基本理念に消費者への安全・安心な食料の安定な供給に資することを盛り込んだことと考えておりますし、条例の対象にそばや伝統野菜、将来に向けて種子生産を継続する必要がある在来品種を加えたことだと思っております。あと、種子管理団体として原種センターの役割を明確にしたこと。そして、種子生産者に対する支援をきちんと明記したこと。そして、最後に施策を推進するために必要な財政措置を明記したこと。このようなところかなと考えてございます。

 さて、最後にp17で条例制定に向けた今後のスケジュールでございますが、1月31日から骨子案に対するパブリックコメントを募集してございます。このような説明会。今回と来週安曇野市で開催をいたしますし、県の食と農業農村振興審議会。この審議も7日の日に受けたいと考えてございます。これらの意見を反映させていただいて3月の上旬には条例の素案を作っていきたいと考えております。そして、素案ができた段階でこちらの法務部局との法律上の言葉の整理をさせていただいて、最終的には6月の県議会に条例案を提出してご審議をいただきたいと考えてございます。説明については以上でございます。現在、パブリックコメント。募集しておりますし、皆さんのご意見をいただいて、より皆さんのご要望に沿うような条例を作り上げていきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

質疑応答

タネの維持・保存に対して消費者の責務を

2019020502S.jpgS町W氏 お話を聞いてまことに感慨深い。遺伝子組み換えの問題も取りあげていただき、ありがたい話である。ただ一つ思ったのは3番目で県の責務、種子管理団体の役割はあるのだが、これだけきちんと県の骨子案が出た中で消費者への記載がない。タネに対する消費者の理解と関心が必要である。国産のタネを守っていくうえで、消費者の関心がなければ生産者は支持を受けられない。それでは先細りになってしまう。消費者の責務。県産の農産物に対する関心を高める意味で、「消費者の責務」という言葉が入ると消費者の関心につながるのではないか。ヨーロッパでもスイスは食料主権を国民投票で憲法に取り入れた。こうして国民の意識を高めている。そうしたことがなければ、どうしてもタネは確保できない。是非、骨子案にもこれが一項目としてあると素晴らしいと思います。ご検討いただけばと思います。

伊藤課長 貴重なご意見をいただいた。我々は「責務」と「役割」という言葉を使いわけている。「責務」は県に対して責任を位置づけるものである。貴重なご意見として検討させていただきたいが「責務」という言葉はやや難しいのかなと。「役割」(の必要性)は感じている。最終的は、(農産物は)消費者の皆さんのものである。安全なものを食べたいと(消費者が求める)とのことである。ご意見をありがとうございます。

遺伝子組み換えのガイドラインを制定してほしい

N市H氏 長野市から来た。タネを取ることに対して、誰もが協力をしていただく。消費者も参加していただきたいと思っている。そこで、学校教育の中から関心を高めることを進めていただきたい。また、在来品種と伝統野菜だが、種苗用の作物の種子生産も継続する必要があると思う。対象品目の中で「在来品種等」という言葉を加える必要がある。「等」を加えていただけるとよい。私は世の中には雑草というものはないと思っている。他の植物のことも考えていけばよいと思う。

 最後にもう一点、ガイドラインで遺伝子組み換えを検討するとあるが、是非、目の届くところで検討をお願いをしたい。でなければ、基本理念の「安全安心」が安心できない。基本理念を(実効性のある)ものとすることで、ガイドラインを設けることへの希望を申し上げたい。

予算は大丈夫か、自家採種は大丈夫なのか

S市S氏 信毎の記事があって二人から「そういうことでいいのか」と質問を受けたので来た。まず、予算面だが国からの交付金がなくなるのではないか。県としての予算規模において予算が確保ができるのかである。また、説明の中で自家採種だが、米国ではメジャーな自家採種させない動きがある。向こうの体制に沿ってこれを全品種にやらせようとしているのが安倍さんの意向。漁業法とかの改正もどうみても国民のためのものではない。また、試験場では育種とかがなされているが、八重森の試験場がなくなるのではないかと。再確認の意味でお答えをお願いしたい。

伊藤課長 4点、ご質問をいただいた。まず、種子法がなくなったが、それを踏襲した種子の生産を行っていくのかとのご質問だが、大池が網羅してあると申し上げたように以前は国にやらされていたが、県が自ら法律を作ってやっていくということだ。二つ目の予算の確保だが、財政上の措置も県が自ら科すわけでその予算は確保することになる。三つ目の自家増殖は種苗法が関係する部分でご不安もあると思われるが、冒頭で述べたように現状を考えてれば品種育成を止めてしまうことにはなりにくいのではないか。全くないとはいえないが。また、タネでの外国のメーカー産は、F1がほとんどになっている。F1はできたものが良い品種であって、子どもと同じ形質はできない。となると自家採種する意味がない。また、国は原則禁止にはしていないと言っている。そこで、(もし改正するのであれば)種苗法の手続きとしてきちんとバブコメをした上で、(改正の)手続きをして欲しいと(国に)お願いしたいと思っている。また、試験場の方だが、米、麦も長野県の重要な作物である。100年、200年後にはわからないが、いまはそれを考えてはいない。

異常気象の際に南の他県との連携が必要なのではないか

S市K氏 須坂からきた。須坂に試験場があることを誇りに思っている(笑)。また、種子条例について、長野県民からの声が直接的に反映されている。ありがとうございます。

 さて、質問だが1993年に岩手で冷害があり、その際に石垣島からタネをもらったと。先ほど原種が絶えないように保管庫で保存し、それから育てるという話があったが、作付けが難しくなった際に、いま、福岡県や宮崎県でも条例を作る動きがあるのだが、気象条件が南の方の他県と連携する動きがあるのかどうか。

 また、これとは別の質問として骨子。いま県民の意見として聞いていだいているが、ある程度はそれが反映されるとしても、直接的に盛り込めなかったものについて随時、見直しがなされてしていくのだろうか。

伊藤課長 最初の点。冷害は重要なポイントである。このため原種センターでは備蓄がある。また、基本的には法律と同じであるので特別な理由がないと。そして、骨子の書きっぷりだが、例えば、在来品種で「等」と書かれているが、この「等」については何なのかを条例では明確にしなければならないとされている。こうした細かいことは骨子案では省いてある。

U市K氏 長野県の原種センターの「こうじいらず」を上田市のバイオセンターでも作っているが、主要品種として種の保存がされるのだろうか。

大池英樹氏 奨励品種への登録は長野県に適した品種として決定するものである。ある一定地域まではそぐわないのかなと思っている。一般農家が作れるものが奨励品種だからである。では、どういったものが対象となるのかというと、将来にも残しておくべきものであろうと。奨励品種。審査会。コア的な品種まではそこで位置付けをしている。

U市K氏 伝統野菜という表現があるが。

大池英樹氏 伝統野菜及び6番で伝統野菜等で将来に向けて保存する必要がある在来品種ということである。これに当たるのかなと。で現状だが、在来の蕎麦、くらかけまめといろいろあるために、そのすべてを網羅することは、保管庫のキャパもあることから難しいのかなと思っている。

条例ができれば伝統野菜は守られるのか

T市N氏 子どもたちの未来を考える会のメンバーである。お話を聞いていてまさに完璧なもののように聞こえて嬉しいなと思ったのですが、まだモヤモヤしている。その一点がK氏の言われた伝統野菜である。とりわけ、いま野菜の品質が落ちている中で、いま売られているタネは、例えば、長野県で買えるタネであれば安心できるものになるのか。新聞紙上で見ると、例えば、タネがなくなるようなことを信毎さんが言っている。この条例によって伝統野菜が安心になるのかなと。それが心配なのだが。

 もう一点、長野県の条例なので、県知事さんが、つまり、最終的には県知事さんの責任で定めていくのかなと思ったりもしました。

伊藤課長 分けて考えていただきたい。まず、主要農作物。これは安心して手に入るようにしていく。伝統野菜については支援したりをしていく。絶えないようにする。これも行なっていく。これも守り続けていきたい。そして、ここに書かれたものは安心できる仕組みを作っていく。

 一方、ここに書かれていないもの、例えば、業者が売られているものだが、サカタのタネ、タキイが販売しているものである。一般に流通しているものである。これらについても外国企業がやって来て日本では買えなくなるとのご心配があるのだが、実際には大企業は大企業で、上場しているし研究場も持っている。突然に廃業することはないと思っている。突然に止まってしまうことはない。そのリスクないと思っている。ただ、全くないかというとそうではなく心配すればキリがない。

 一方、知事の責任かということだが、何度も知事と話し合いをする中で作っている。国会で法律が認められるのと同じで、まず知事の意思として県議会に提出する。県議会がこれを審査をするという手続き。そこで担保されるのかなと思っている。

N市H氏 在来品種の等は難しい。品種は幅が広い。在来種とすることはできないだろうか。

種子農家が高齢化する中、支援策は?

S町W氏 6番目の遺伝資源としての種子の維持だが、生産農家がどんどんと高齢化している。タネ取りが厳しくなっている。採種農家が厳しくなっている。保存維持していくことを前提としていてこのままで農家がいなくなってしまったら条文は空手形になってしまう。「支援」という言葉があるが具体的な施策としてはどのようなことを考えておられるのかなと。

大池英樹氏 6番目の主要農作物については生産への施策としては、採取農家への技術指導。また、これを伝承させる。

県の知的財産は守られるのか

N市Y氏 競争力支援法で「知的財産を出せ」と言われたときに具体的に守れるのだろうか。あるいは、具体的に出せという話がすでにあるのだろうか。

伊藤課長 県は出さない、となっている。長野県民の貴重な財産であるからである。

大池英樹氏 農業競争力支援法は「日本農業の強化になれば」ということが前提となっている。ということで、日本農業の企業であれば。県についても同じである。ただし、長野県の農家にしか作らせないとの指導を国から受けている。長野県民が共同研究する段階である。県民の幅広い財産であるので出すことはない。

N市Y氏 先ほど遺伝子組み換えは自家受粉で交雑する危険性がないと言われたが、栃木県の稲葉光圀氏は実際に栃木の在来種のダイズと丹波の黒豆を栽培して交雑することを立証している。そのうえで、栃木県でも自民党の県会議員が在来種のダイズを守るため遺伝子組み換え防止を盛り込んだ条例を作ろうという動きがあると耳にしているし、水戸納豆で有名な茨城県とも連携しているとの話を聞いた。

伊藤課長 交雑はない。万が一あったとしても、至近距離で同じものを作らないことが大事である。

都会の消費者のエシカル消費を推進してほしい

N市Y氏 これは意見だが、昨年に中条村の山奥で消費者と有機農家との交流会が開かれた際に、その場に参加させていただいた。集落の公民館があふれんばかりに人が集まった。それだけ魅力を感じる人が都会にいるということだ。そして、このイベントを主催された都会の消費者の方は、長野県産のダイズで作った豆腐を本当においしいと評価していた。さらに、都会でもタネについてアンケート調査をしたところ、9割近くの消費者が外国で生産されたF1よりも国内産のタネの方がいいと。きちんと説明をすれば高くても買ってくれるということだ。ただし、その説明がなければ理解できない。農業振興に従事する農政部としては川下対策は難しいだろうし、IT農業やドローン、ハイテク農業等も否定するわけではないし、ひとつの柱なのだが、その一方で、エシカル消費ということもある。実際に、ヨーロッパでは医療部局、環境部局がそうしたことを打ち出している。是非、他部局と連携していただきたい。日本の食がこれだけおかしくなればなるほど、これほど画期的な条例を作られた長野県の農産物はそれだけでも付加価値がつくと思う。これこそが攻めの農業なのではあるまいか。

伊藤課長 有機農業研究会とエシカル商品のPRも初めてさせていただいた。確かに農業分野だけで健康で安全な食べ物を提供しようというのは限界があると我々も思っている。

国からの財源が切られても大丈夫なのか、県民啓発を

T村K氏 村でお米や「こうじいらず」も作っている。在来品種だが、長野県の奨励品種の制度を作っていただきたい。是非、意見聴取をしてもらいたい。また、将来的に地方交付税の打ち切りもされるのではないか。先ほどの方の質問と重複するが、万が一打ち切られた時に県はどうやって財源を確保していくのか。

 また、素晴らしい条例を作っていただいたが県民の責務ということで、内容を理解をするためには説明が不可欠と思う。様々な形で県民への啓発のきっかけを県予算で民間団体と協力して講演会等をしていただけばと思っている。これは要望である。

伊藤課長 こうじいらずとかは在来品種が育成者ではないために、今の種苗法上は難しい。それぞれの地域で守り育てていく。どのような支援ができるのかは考えていく。

 また交付金の打ち切りの歯止めとして条例がある。交付税がなくなれば財政側からは「国がやらないと言ったのだから止めたら」と言われてしまう。これに対して、条例があるのであれば県が条例で議会でお約束をしたのだから止められたら困ると言える。つまり、予算要求をするための印籠である。議会のための約束であるので条例がある以上は理不尽なことはしづらいと思っている。農政部としては全力で予算を確保していく。また、県民へのPRは、種子条例は一般県民の方もいいものが食べられなくなるわけなので、いろいろな機会を捉えてPRできればと思っている。

営業局を活かしてた部局と連携して県内外にPRを

N市H氏 先ほどの他部局との連携の話だが、4月からは県庁に営業局ができる。タネから守り育てた農産物ということで新しい条例の制定と機を一にしているので是非、連携をして県内外にPRをしていただきたい。

S市K氏 他県との連携は今の所はないのかなと。

大池英樹氏 条例制定において他県とどうこうということは考えてはいない。

宮原馨氏 種子の確保に努めると骨子案では役割が書いてあるのだが(P10)、種子管理で、これまでも原種センターはコシヒカリがなくなる時には他県から仕入れるということをやっている。逆に他県に出していることもある。そうした連携は全国にあるタネの団体が調整でやっている。計算してやっている。

S市K氏 安心したのと勉強になった。ありがとうございます。

U市K氏 青山のファーマーズで、東京のマルシャで売っているのだが、有機JASは大変なので、県の環境に優しいで売っているのだが、伝統野菜の看板を掲げられると嬉しい。表現の方法。観光のあり方もオリパラも始まるので早めにやっていただけると助かります。農薬を使わないと書きながら、環境に優しい伝統野菜があるとアピールになる。POP的なもの。また、伝統野菜ではオリジナルなものがあるが、「こうじいらず」はポスターではやっているのだが、足並みを揃えてポップでつけられるとわかりやすいかなと。

伊藤課長 伝統野菜は知事認定の制度がすでにある。それ以外の枠組みを考えないといけない。

U市K氏  ポップで載せられるものがあると良い。

資料を公開してもいいだろうか

T村K氏 いただいた資料で5p、6p、7Pだが、ウェブサイトの資料では見たことがないので。今日、来ることができなかった人のために公開していだけるのだろうか。

大池英樹氏 これは骨子案を作るための経過のために用意した資料であるので、広くお知らせするものではないので掲載されていない。

T村K氏 こうした意見が寄せられているということを見るだけでも、例えば、パブリックコメントを出す人は「こういう意見があるのであれば追加質問をよせようかな」と。これを元にさらに練った質問を出される方もいるので、可能であれば取り出せるようにできないかなと。お願いしたい。友人、知人で参加できない人も多いので。

大池英樹氏 資料2は骨子案を作りにあたって参考にさせていただいた意見である。普通、骨子案を作るにあたって意見をもらうことはない。さらに、限られた方のご意見である。そこで、このアンケートも公開はしていない。パブリックコメントの意見は公開をしていくがあくまでも事務的に匿名で行なったとのことである。

T村K氏 公開の承諾は得ていないとのことですね。わかりました。

宮原馨氏 その他の資料。2月28日までがパブコメである。今日、来れなかった方も県庁の1Fでも見ることができる。地域振興局でも見ることができる。ご意見の提出方法だが、お電話は記録として残らないため、それ以外でよろしくお願いしたい。「長野県らしい良い条例になったね」と言われるように努力していきたい。

大池英樹氏 大池 その先にいる消費者に向けて、長野県農業を支援する。我々も努力をしていきたいのでご支援をお願いしたい。

編集後記

2019020503S.jpg このように上山田文化会館で2月5日に種子条例骨子案の説明会が開かれた。結論から言うと信濃毎日新聞というローカル新聞紙も社説に書いてくれたのだが、伝統野菜や必要ある在来種の保全も盛り込まれることとなった。食の会が印鑰智哉氏を講師としてお招きしたのがちょうど1年前。「条例ができればいいね」という話をしたのがついこの間のようだが、伝統野菜、将来必要となる在来品種、そして、種子の生産者への支援、自然災害の多発や複雑化する国際情勢の中、消費者に安全安心な食料の安定的な供給、信州の食文化の継承といった拡張高い理念を掲げた条例骨子案がほぼ現実化した。

 食料主権は参考意見になってはしまったのだけれども、画期的といっていい。ラテンアメリカの使途、ホセ・マルティの遺言「今日は夢をみよう。明日にはそれはきっと現実になるであろう」が思い起こされふと涙した。

 ただ、コンテンツ以上に感動したのはプロセスだった。県民に対して骨子案の段階で意見を聞くことはないのだけれども、あえて説明会を開き、パブコメに活かしたいというのである。通常であれば、ほぼ完成品をつくって一気に議会で可決する。それが条例制定のオーソドックスなやり方なのだが、異例中の異例なのだと言う。ここに知事の意思と民主主義の萌芽を見た。なぜか。

 日本の官僚、とりわけ、長野県の県民気質からすれば、文字の一語一句まで釘をさされないよう「完成品」をつくり、それを「しゃんしゃんしゃん」で農政審議会にかけて、議会で可決していくのが常道であろう。この背景には「知らしむべからずよらしむべし」という明治以来の中央集権的なエリート意識と官僚の無謬性への神話がある。けれども、私の知る限り、北欧のやり方は違う。ある程度で来た段階(長野県用語では「なから」とか言う)で民間にオープンにしてしまう。で、喧々諤々叩かれる中でより良いものをつくっていくという「プロセス思考」がそこにはある。というのは、仮に完璧な完成品を出した所で、それは「実効性」がなく、むしろ、ビジョンやプラン策定のプロセスそのものを市民と共有しわかちあうことの方が社会的実効性につながるという経験則があるからだ。そこには一見「完璧な完成品」を一気出しするよりも、時間をかけてでも脆弱な未完成をさらけだした方が、社会が変わるという逆説的な「弱さの強さ」がある。慶応大学の金子郁容教授的に言えば「フラジャイル、弱さからの出発」である。

 で、今回の長文をお読みいただければわかるように、県の農政部の担当者は「このままでは高齢化と後継者不足で種子生産者は消滅する。奇麗な条文は作ることは簡単だが、お知恵をいただきたい」というニュアンスで、ある意味では、行政にあるまじき弱さをさらけ出してみせてくれたのだ。

 もちろん、一気には社会は変わらない。けれども、そこに何かの新しい胎動を感じた。素晴らしいことだと思う。あとは、この現状を受けて、どれほど私ども県民がそれを我が身の危機として受けとめられうるかだ。今月下旬には印鑰智哉氏が遠路また長野まで足を運ばれ講演をされる。

 2019020602.jpgこの印鑰氏がフェイスブックで書かれているように、腸内細菌と多細胞生物の共生はカンブリア時代の前のエディアカラ動物群にまでおそらくさかのぼる。今の土壌が形成されたのは第三紀と地質学的に見ればごくごく最近のことだが、石炭紀のシダやソテツがいまの石炭になっているように、陸上植物もキノコや微生物と共生しつつ上陸した。数億年、数千万年という生命たちの数えきれないほどの試行錯誤に比べれば、モンサントの試みは1990年代半ばからとたかだか20年でしかない。その一瞬でしかない20年で遺伝子が失われるとしたら取り返しがつかない。だが、在来種が、そして、遺伝資源が守られれば、そこから生命たちは再び復活することができる。それは、長野市の西方にある「西山」という採種地から始まるのかもしれないし、「飯田いいら」という飯田から始まるのかもしれない。

2019020601.jpg 女性作家、バージニア・リー・バートンの「せいめいのれきし」という素晴らしい絵本がある。学問的にはちょっと古いが、それでもいまも読み応えがあるのは、地球上にいきものが誕生してから、わたしたち人間の時代になるまでの長い長い生命の発展の歴史が情緒たっぷりと物語られているからだ。そして、この素敵な絵本の最後は、米国の農村校外での農家の一日で終わる。そう。バートン女史が語るように、今日、私たちの一日が未来を創っていく。創造してゆく。

 もし、長野県が在来種を条例へと位置付け、これに続いて北海道庁も位置付ければ、他の自治体は後退はできない。あるいは、長野県を上回る条例を各県が競い合って作っていけば、どうなるか。例えば、後世の歴史家が古文書をたよりに過去の歴史を調べていて、どうも2019年2月28日のパブコメ締め切り日がTippingなポイントになったとすれば、まさに「その時、歴史が動いた」と言えるのではあるまいか。本日も長文の駄文を最後までお読みいただきありがとうございました。
(2019年2月6日投稿)
補記
 県の担当者の説明部分についてはこの動画でご覧いただけます。
 県の骨子(案)については、県のこのウェブサイトからダウンロードできます。
 県の骨子(案)に関する参考資料も、県のこのウェブサイトからダウンロードできます。
 パブリックコメントは、県のこのウェブサイトから申請できます。
(2019年2月7日加筆)
【画像】
「せいめいのれきし」の画像はこのサイトより
posted by José Mujica at 19:54| Comment(0) | 種子法廃止 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月03日

長野県種子条例骨子案公表

2019年2月1日(金)信濃毎日新聞(一面)

県種子条例の骨子案 ソバや伝統野菜も対象に

 県は31日、主要農作物種子法(種子法)の廃止に伴い制定を検討している「県主要農作物等種子条例(仮称)」の骨子案を明らかにした。種子生産に関わる県の責務や必要な財政措置を講じることを盛ったほか、種子法で対象としていた稲や麦類、大豆に加え、ソバの種子生産や地域に根付く伝統野菜の種子の保存に取り組むことを明記。県によると、種子条例の対象に伝統野菜を加えるのは全国でも例がないという。

 種子法は稲や麦類、大豆の種子の生産・普及を都道府県に義務付けていたが、種子産業への民間企業の参入を促すことなどを目的に、昨年4月で廃止された。だが農業関係者や消費者団体などからは、種子の価格高騰や品質低下への懸念から、条例制定を求める声が上がっていた。

 骨子案は県の責務として、種子生産に関する施策を総合的、計画的に進めることを規定。農作物の種苗を供給する県原種センター(長野市)には種子の生産や供給、保存の役割を求めた。県が認定する「信州の伝統野菜」や特徴ある在来品種を絶やさないよう、条例の対象作物に加え、種子の生産や保存を支援するとした。

 このほか、永続的な種子生産を支援するために必要な予算の確保に取り組むことも明記。種子生産者の高齢化が進んでいることに対応し、県が助言や指導、生産に必要な設備導入の支援に当たることも盛った。

 2月28日まで県民から意見を募集し、条例案作りの参考とする。6月の県会定例会に条例案を提出する方針で、来年4月の施行を目指す。県によると、既に5県が種子条例を設け、4道県が制定に向けた作業を進めているという。

2019年2月2日(土) 日本農業新聞(一面)

種子条例案骨子 伝統野菜、ソバも対象 長野県

 長野県は、主要農作物種子法(種子法)廃止を受け、制定の準備を進めていた「県主要農作物等種子条例(仮称)」の骨子案で、種子法で対象だった米、麦、大豆に加え、ソバと県認定の「信州の伝統野菜」を対象とする方針を示した。県独自の種子条例に伝統野菜を盛り込むのは「全国でも聞いたことがない」(県農政部)。28日まで県民から意見募集し、県議会6月定例会に条例案を提出する方針だ。

 伝統野菜は、県の「信州伝統野菜認定制度」に基づき、「小布施丸なす」や「ねずみ大根」「松本一本ねぎ」など、76種類を選定。個人の農家や生産グループによって地域に受け継がれている特色ある伝統野菜の種子の保存と安定生産につなげる。 全国トップクラスの生産量を誇る特産品のソバも対象にする。

 県やJA長野県グループなどでつくる一般社団法人長野県原種センター(長野市)が、種子管理団体として種子の保存、生産、供給、需給調整を担う。県は同センターなどと連携して、種子生産者への助言や指導などで支援する。

 種子法に代わる条例は、既に5県が制定、長野県を含む5道県が制定に向け、検討・準備している。市民団体による種子法復活の署名も多く集まっている。

2019年2月3日(日)信濃毎日新聞・社説(5面)

農作物の種子条例 地域で多様性を守る意味

 農作物のもとになる種子はどこから来るのか。誰のものか。大切なことなのに、正面から意識する機会は少ない。

 県が種子条例(主要農作物等種子条例)の骨子案を発表した。コメ、麦、大豆、ソバについて、これまでと同じように、県が地域に合った品種の選定や種子の生産に取り組むと定めている。

 各地に残る伝統野菜を守る動きを支援することも盛った。

 条例制定に乗り出した背景には、国が昨年春、民間企業の参入を促すためとして、種子法(主要農作物種子法)を廃止したことがある。都道府県に種子の生産を義務付けていた法律で、食糧の安定供給の基盤になってきた。

 条例は、公的な種子供給システムの重要性は失われていないというメッセージでもある。種子法にはなかった基本理念も新設し、「欠くことのできない重要なもの」と強調している。

 条例制定を機会に、種子の保全と開発、生産の持つ意味を県民レベルで改めて考え直したい。

 それは信州の農業と県民の食生活を守ることにつながる。

法の廃止を受けて

 作物を育てて収穫し、翌年のために一部を種子として保管しておく。農業が始まったときから、農家が繰り返してきた営みだ。自家採種と呼ばれる。

 yoshiaki-Nishikawa.jpg種子と社会の関係を研究する龍谷大の西川芳昭教授によると、日本で品種改良が行われるようになったのは江戸時代から。

 江戸や京都で売るため、農家は品質のそろった作物を選抜して種子を採るようになった。やがて採種は専門化し、交雑しにくい山あいなどに採種場ができた。

 地域それぞれに、風土に合った個性的な品種が形成された。

 そんな状況はしかし、戦後の高度成長期を経て変わっていく。生産性を上げるため単一作物を大量生産するようになったためだ。

 野菜の多くは、種苗メーカーが市場ニーズに合わせて開発した種子を農家が毎年購入するようになった。採種場は、低コストで生産できる海外にほとんど移った。

 ただし、主要農作物と呼ばれるコメや麦は状況が違った。

 戦後の食糧難を背景として1952年に制定された種子法が都道府県に種子の生産を義務付けた結果、都道府県レベルで個性的な品種が生まれていったのである。

 県内ではいまも、山間地を中心に、生産依頼を受けた採種農家が県指定の奨励品種の種子を作り続ける。採種場の管理は長年の経験によって支えられている。

 種子の商品化が進み、農家の手から離れれば離れるほど、農作物の多様性は失われていく。

 地域に存在する品種が多様であれば、農業の生態系は安定的になり、環境や病害虫への抵抗力が強くなることが分かっている。

 かといって昔のように自家採種だけで農業は成り立たない。

 「うまくバランスを保つ役割を果たしてきた」。西川教授は種子法を、そう捉えている。

持続可能な農業へ

 昨年の種子法廃止は、消費者や農家の間に不安を広げた。

 目立ったのは、バイオテクノロジーを駆使してビジネスを展開する外資系企業によって種子の独占が進む懸念である。

 特定の農薬に耐性のある作物を遺伝子組み換え技術を使って開発し、農薬とセットで種子を供給する。農家は毎年、同じ種子を購入せざるを得なくなる。既に海外でみられる現象だ。

 医薬、農薬、化学肥料などを複合的に手掛ける多国籍企業は、巨大化している。多額の研究費を投じることができる。種子の開発は今後も加速するとみられる。

 公的な品種が定着したコメなどへの本格的な進出は考えにくいとの見方もある。それでも、杞憂と片付けることはできない。

 日本は1993年、生物多様性条約を批准した。2013年には食料・農業植物遺伝資源条約に入った。大規模化や作物の単一化で失われていく多様性に目を向け、持続可能な農業を目指す動きは世界の潮流の一つになっている。日本も、そのなかにいる。

 一方、環太平洋連携協定(TPP)の発効など自由経済圏が広がり、国内農業の規模拡大や生産性向上も求められている。

 どう両立を図っていくか。種子法廃止が決まったとき、国会ではほとんど議論にならなかった。

 種子法の廃止は当時、農業改革関連8法の一部とされた。8法の中心は、生産・流通コストの引き下げを目指す農業競争力強化支援法だった。一方的な視点しか持ち得なかったことを物語る。

 既に5県が種子条例を設け、他に制定を目指す動きもある。バランスを欠いた政府には地方から異論をぶつけるべきだ。県には、その覚悟を持ってもらいたい。

【画像】
西川芳昭教授の画像はこのサイトより

posted by José Mujica at 18:30| Comment(0) | 種子法廃止 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする