2019年04月15日

タネが売られる?~ベストセラー作家、長野県種子条例案に着目

はじめに

 「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきたSBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」の4月15日のテーマは「種子法廃止」とTPPについて、国際ジャーリスト堤未果さんが搭乗した。ということで、この放送をテープ起こししたものも紹介しておこう(1)

Masaaki-kubo.jpg
久保正彰 様々な話題をアラカルトでお送りするJポイントのコーナー。さて、この時間、昨年の4月から長野県民にとっても大切な「農業」と関連する法律やその現状について紹介をしてきました。スタジオには、生田明子アナウンサーです。

生田明子 おはようございます。今日もよろしくお願いします。主要農作物種子法。種子法の廃止から1年が経過しました。まだまだこの法律、知られていないなと、取材を続けていても感じています。改めてこの「種子法」とは、日本の主食である、稲、麦、大豆に関して、国民が飢えることのないように、安定した価格で購入できるようにと「公共のタネ」を開発することを都道府県に義務付けていたという法律です。

久保正彰 うーん。1年紹介してきましたけれども、いろいろな、その直々の注目を集めるニュースに比べるとちょっと地味目というかなかなか取り上げられることが少ないですよね。

生田明子 その通りなんですよね。そのような中、昨年の秋に発売された1冊の本があります。幻冬舎新書から発売されている「日本が売られる」。昨年の10月に販売されてから増刷を重ねているベストセラーなんですけれども、「タネが売られる」としてこの本の中では種子法廃止問題も取りあげられています。今日は、この本の著者の国際ジャーナリスト・堤未果さんにお話を伺います。まず種子法の廃止には、どんな背景があったのか、堤さんのお話をお聞きください。

TPPの前準備として種子法は廃止された?

mika-tsusumiS.jpg堤 未果 一言でいうとTPPの流れにそった前準備だったということですね。種子法廃止。それから、自家採種の原則禁止、それから農業競争力支援強化法、あれ全てですね。あーいった法改正の根っこ、というのはつながっています。日本はですね、 TPP が交渉の最中からですね、アメリカの意向に沿って国内法を変えるという方針でずっとやってきていたので、すぐに閣議決定をしてすぐにこの彼らの要求に沿って改定したということですね。

 ただアメリカといっても、アメリカという国家ではないです。アメリカの農家ですとか、バイオ業界、農薬メーカーアメリカを中心とした企業群、多国籍企業群というふうに思って頂いたほうがいいかと思いますね。彼らは2014年に、自家採種廃止とかですね、そういったものを TPP を交渉していた米国通商代表部に要求してたんですね。今はですね、政府が一部の企業側を向いているような法改正というのが非常に多いので、これ無関心でいるとですね。本当になし崩しに自分たちの食ですとかそれから暮らしですとか、そういうものにどんどん値札がつけられてしまうんですね。

 タネに限って言えば、それぞれの国が持っている、例えば、主食のタネを必ず政府が保証すると。支えていくと。それから、各国の農家が自家採種をして、自由にタネを開発していくと。ということをやられると、非常に商売がやりにくいので、その辺は全部取っ払って自由化して、それで、企業同士が、まあ、自由にビジネスができるようにと。そういう流れがいま世界的に起きています。その流れに沿って日本にも、そういう流れが来てるということですね。

TPP11で米国が離脱した後、さらに厳しい要求が求められていく?

久保正彰 ただ、TPPは、アメリカは、まあ離脱してしまって。日本はそのアメリカから言われたことを、国内法を変えているということなんですね。

生田明子 はい。そして、日本はこんなふうに考えていると堤さんは分析しています。

堤未果 アメリカが抜けた後も、今の日本の政権は TPP は11カ国でもやろうということで、旗ふり役をしたんですね。で、結局TPPイレブンは、締結されました。ただし、それはアメリカがいつでも戻って来られるようにという前提なんです。日本の政府はまあアメリカに戻ってきてほしいというふうに思っているので、アメリカが TPP に戻ってくる条件は TPP 以上の譲歩を日本から引き出すということ。これは今、日米の2カ国で交渉が始まっているFTA、二か国の国際条約の交渉の中で進めていることなんですね。

久保正彰 まあ、そういった世界の流れが世界では起っていると。一方で、この長野県では阿部知事が「種子条例を決めよう」ということで、今年の6月県会に条例案を出すということで、骨子案も県のホームページに掲載されているんですね。

生田明子 はい、パブリックコメントも終了しています。これについて、どのようななご意見なのかも気になります。再び堤さんです。

長野県の方向性は素晴らしくずっと注目

堤 未果 「日本が売られる」という本に私も長野県のことを書いたんですが、種子法が廃止された後に、いろんないくつかの自治体で自前の種子法を復活させるという動きがあるんですね。で、その中で、特にこの長野の条例というのは、これまず、県民から意見を広く集めたということ。それから、長野県の場合は、元々の種子法を復活させるというだけではなくて、例えば、名産品の蕎麦ですとか、信州の伝統野菜も対象にしている。これは非常に大きな意味があると思います。ただ廃止された従来の法律を元に戻すということではなくて、本当に、あの長野県にとって、例えば、食の安全ですとか、安定供給を守るということがどういう意味を持つのか。これは、県民にそれを問題提起して食に関する未来の設計図を県の中で考えたということですから、私はあの、素晴らしい方向性だとずっと注目をしていました。

生田明子 現在、堤さんは、この本の販売をきっかけに、全国で講演活動を行っています。種子法廃止から1年が経過しました。今どんな実感をお持ちなのかお聞きしました。

種子法の廃止が知られていない~なし崩しに暮らしの基盤が失われることを懸念

堤 未果 そもそも種子法というもの自体を、これだいたい一年経っていますが、私、全国公演していてほとんど知りません。知られてないし、法律って難しいので、なかなか伝わっていかない。なので、問題意識として、人々の関心に引っかかってないところがやっぱり非常に多いんです。なので、あの、これ知らないままで行ってしまうとですね、非常に危険で、今ですね、世界中で、例えば、命の源である「タネ」ですとか、それから「水」ですとか、そういった水や食料。つまり、私たちは生きていくのに絶対に必要なものというのが、値札が付いてるわけですね。生きていくのに絶対必要なものであれば、商売にすればそれだけ高く売れる。

 これは武器を使うのとは違って、目に見えない形で外国に対して影響力を持てるので、儲かるというだけじゃなくて、政府にとっても効率がいい。政府と企業が手を結んで、世界的に他の他国の政府にも、やりましょうということで広げてるわけです。

 で、特にあの食の問題というのは、あの、ただ、これ農家さんの話ではないので、安全なものを食べて健康に暮らしたいということに皆さんが関心をもたないで、なし崩し的になっていた時に、これ取り返しがつかない事になってからひっくり返そうとしても非常にこれ、難しくなると思うんです。いやまったく皆さん、本当にご存じないので、くりかえし くりかえし広めていかないと法改正の方がスピード早いので、非常に危ないというふうに思いますね。企業ですとか、外国ですとか、そういうに食をにぎれられた時に、どうなってしまうか。外国の例なんかもね、しっかり知ってもらいたいと思いますね。

久保 正彰 なるほどねぇ。

生田明子Akiko-Ikuta.jpg 堤さんが「法改正がハイスピードだ」と懸念されていますように、種子法廃止だけでなく、これまで農家の権利として認められていた、自分の家で種をとって植物を育てるという、自家採種・自家増殖が大幅に制限されるという「種苗法」の自家採種原則禁止にむけた動きというのもあります。

 この番組では、長野県が制定しようとしている条例も紹介してきましたが、私たち県民のいのちと暮らしを守るうえで、改めてこの条例の大切さを実感しています。堤さん自身「日本が売られる」の中で「中央政府が国民の声に耳を傾けなくなったとき、自分たちの住む地域から小さな変化をおこしていくことが有効だ」としまして、イタリア等海外の事例と並んで、長野県のこの条例づくりをとりあげています。

 堤未果さんは、今月の26日(金)、長野県内での講演を予定されています。場所は、松本市勤労者福祉センター。時間は、午後6時30分からとなっています。入場料は500円です。

久保 正彰 はい。今日は「日本が売られる」著者の堤未果さんのお話を生田アナウンサーのリポートでお伝えしました。

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
堤未果さんの画像はこのサイトより

【引用】


posted by José Mujica at 12:30| Comment(0) | 種子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月20日

第3弾:伝統野菜を守れ

はじめに

 1月31日の「県主要農作物等種子条例(仮称)」の骨子では、他県に類を見ない伝統野菜が位置づけられたが、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきたSBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」の2月4日、2月25日のテーマはまさに「伝統野菜」の抱える問題だった。まさに、種子の保存問題が根幹でどれほど深刻な問題を抱えているのかがよくわかる。まことに時宜を得た放送といえるだろう。そして、3月18日も第三弾ということで現場の状況がリアルで放送された。ということで、この放送をテープ起こししたものも紹介しておこう(1)

久保正彰 今朝はスタジオに生田明子アナウンサーに入ってもらってきています。このコーナーでは、「農業」についての様々な話題をお送りしてきました。とりわけ、タネについ、信州の地方野菜の種が海外で採種されているものが、大変多くなっているという話題をお届けしましたが、今朝は何ですか。

伝統野菜を守っていく素晴らしい条例骨子案を絵に描いた餅にしないために

生田明子 今日は、信州の伝統野菜の作り手の高齢化の問題を取りあげます。

Masaaki-kubo.jpg久保正彰 農家の高齢化、担い手不足は信濃毎日新聞にも掲載されていましたし、いろいろなところで話題になっていますね。

生田明子 はい、ここまでお伝えしてきたように、信州の伝統野菜だけでなく、一般に出回っているおよそ9割もの種が外国産になっている。その背景には、農家の高齢化とそれを担う人の激減があることがわかってきました。

 信州の伝統野菜というのは、地域の私たちの食文化と密接につながっているものです。それをなんとか守ることができないかということで、阿部知事が今年の6月県会に条例案を提出する方針を明らかにしている「県主要農作物等種子条例」、(仮称)なんですけれども、これの中で、伝統野菜についても守って支援していくという方針が盛り込まれると伝えられています。ただ、この条例は素晴らしいのですけれども、それが絵にかいた餅にならないように、今日は、その高齢化について考えていきたいと思います。

 まずは、その現状を知ることから始めたいと思いまして、長野市戸隠で、信州の伝統野菜のひとつ「戸隠大根」の生産者に今日はお話をお聞きました。戸隠大根は、辛味がある地域に根付いた地大根のひとつなんですが、長年の自家採種によって特徴が崩れてしまったため、元の状態に戻そうと地元の皆さんが努力されまして「戸隠おろし」として種苗登録されています。生産者グループ 「戸隠おろし振興会」会長の横田久(ひさし)さんです。

伝統野菜の担い手が高齢化~需要があっても重いから作れない

20190220戸隠振興会S.jpg横田久 だいたい今年は30a、10tを超えましたでしょうかね。生産者がいまたしかに減っているんですよ。管理まではいいんですよ。ただ収穫になるとですね。大変重いもので、我々みたいに高齢化になってくるとですね、大変な作業になってくるので、栽培者が年々やっぱり減っていくということですよね。まあ、そんなことで、中学生に今ちょっと作って頂いて、中学生が作って収穫して食べてみて、それで、その感想を家庭に持ち帰って「こういう大根が地域にありますよ」という話をしてくれということで、学校と学習の一環としてやっているんですけれど、そこに私ども参加させて頂いて、たとえ、一軒でも、生産者を増やしたり、また地域にこういう伝統的な野菜があるんだっていうことも理解を頂きたいと、いう取り組みをしております。

久保正彰 なるほどね。中学生にかかわってもらおうということなんですね。長野市の「小森ナス」の場合は農業高校とタイアップして農業高校が種を採るということがありましたけれども、こういうことがカギですね。それにしても、お元気な様子が伝わってきましたが、横田さんはおいくつなんですか。

20190220戸隠収穫S.jpg生田明子 横田さんは、現在81歳なんですね。戸隠おろしのグループでは30人ほどの方が生産されていますが、70代の方がほとんどで、グループの最高齢は84歳。長野県は長寿県ですからやっていけているものの他の県では成り立たないのではないかなと感じます。インタビューの中で「収穫の時に大変重い」とおっしゃっていましたが、大根の単体としては20センチ程度で重さは200~300gですが、それを出荷のためにコンテナに入れて運ぶと20kgになります。畑の中まで車が入れるような条件のいい畑ばかりではありませんので、自力で運ぶか、手押し車で運ぶか。20kgです。自分が80歳になった時に20kg運べるかと考えましたら私は自信ありませんねぇ。

 そして、先日、信州の伝統野菜の生産者の方が集まる会に取材をかねて参加してきたんですけれども、だいたい60歳の定年を過ぎてから地方野菜、信州の伝統野菜の魅力にとりつかれて、はや10年になるかなという方という方とも多くお話をさせて頂きました。そうすると現在は、70代、80代前半の方が多いかなという印象を受けました。

タネを守っている高齢者が病気になれば遺伝資源は消滅

久保正彰 高齢の方が多いということは、その年代が担っていると、体調面でちょっと病気になってしまったりすると大変なことになってしまいますね。

生田明子 そうなんです。信州の伝統野菜の場合は自分で種採りをなさっている方が非常に多いんですね。そうしてしまったら種採りの技術が廃れてしまうことになります。

久保正彰 となるとギリギリの状態だということですよね。

生田明子 はい。これは、すなわち、その品種が消えてしまうことにもつながっていることになるんですよね。そこで、今年、長野県は、信州の伝統野菜を栽培する農家を対象にした採種指導会、種採りの指導会を今まで以上に増やして、10カ所で行うとのことです。

久保正彰 安定したその品質の種子が採れるように県も後押しをしようと。こういうことなんですね。

生田明子 そして、作ったら、今度は売れると作る意欲もわいてきます。地域に根付いた食文化ですから、地元で消費が一番好ましい形となります。

久保正彰 戸隠おろしの場合は、これはどうなんですかか。

生田明子 はい、再び、横田さんです。

横田久 江戸時代ですね、戸隠のお蕎麦の薬味として、一番たぶん使われはじめた。

生田明子 戸隠そばのお店はたくさんあるんですけど、その中で「戸隠おろし」を使ってるところは、やっぱり多いのですか?

横田久 今あまりないんですよ、残念なことに。一時、相当、何軒かの人達が使っていたんですけど今、実質的には1軒か2軒だね。ちょっと残念なんですね。

生田明子 というと、いま主にどこにおろしているのでしょうか。

20190220木の花屋漬物S.jpg横田久 今は、私どもは宮城商店さんさんといって、製品になると、木の花屋さん。そこにおろしています。戸隠おろしのたくあんということで、漬物屋さんから販売をしていただいています。大変実は固いんですね。そして辛味がありますので、漬けると甘みが出てまいります。だから、おかげさまで大変評判がいいということで、なるべく多く出荷してくれっていうふうに言われるんだけれども、さきほど申し上げたとおり、なかなか重いもので、生産が少し落ちぎみです。

生田明子 今日は、戸隠おろしで作られました「ぬか漬け」をお持ちしました。この「ぬか漬け」はこだわりで、漬け材料のところに、米ぬか、果物の柿の皮、なすの葉と書かれていました。昔ながらの作り方、付け方ですね。

久保正彰 この味ですね。この歯ごたえ。これはやはり戸隠の大根ならではですね。これだけおいしいのに、作りたいのに重いとか作れないというのはジレンマでしょうね。

伝統野菜は文化的、学術的、経済的にも重要

生田明子 おいしいからもっと広めたい、けれども生産量がこれ以上増やせないという状況は、他の伝統野菜も同じようでした。最後に、前回出演してくださいました、信州の伝統野菜の認定委員をつとめる信州大学農学部植物遺伝・育種学研究室の松島憲一准教授にもお話をお聞きしました。

Kenichi-Matsushima.jpg松島准教授 長野県の農業、やはり高冷地から割と低いところまで、さまざまな農地があるっていうことで、バラエティに富んだ農作物が作れるっていう利点がありますよね。で、何よりもやはり、信州ブランド、我々素晴らしい景色の中で農業してますので、その中に昔から培われてきた伝統野菜が各地域に76もあるんですよ。これは今の日本の他の県でも山形の次ぐらい多いんですよね。こういうバラエティがある長野県の農業は、各地域の食文化とセットになって残ってきてますので、文化として残していくことも大切ですし、やはりそれで他の地域には、ない野菜ですよって言うことが売りになりますから、そういう経済的な面でも重要なんですよね。で、もう一つはですね、我々学者側からすると、昔からずっと作られてきた作物ですので、今の一般に売られている品種にはない遺伝子、病気に強いだとか、倒れにくいですとか、わかんないですけど、そういう遺伝子が残っている可能性がある。これを遺伝資源というんですけど、遺伝資源として保存していく必要も、学者サイドからもあるんですよね。ですから、学術的、経済的、文化的な重要性が伝統野菜にはすごくあってですね、そういうものが長野県には76もあるということですので、文化的、経済的、学術的に農業を下から支えている伝統野菜を大切にしていきたいなと思ってます。

久保正彰 文化的、学術的、経済的。ねぇー、お年寄りにとってみれば健康のためですよね。今日も天気がよいですから外に出ると気分がすかっとしますよね。


生田明子Akiko-Ikuta.jpg 農業のおかげで信州が長寿ということもありますよね。松島先生のお話の中に遺伝資源という言葉があったんですけれども、来年度は、健康志向の高まりに対応して伝統野菜のブランド力をさらに高めるため、県内の大学に栄養成分の分析も36品目で行われるということです。さらに、販路開拓に向けた商談会も開く計画があるということです。認定を受けた生産者グループの信州の伝統野菜には、「信州の伝統野菜・認定マーク」がついていますので、見かけられましたたら、ぜひ手に取ってみてください。

久保正彰 今朝は、伝統野菜の担い手が高齢化している、ギリギリのところにあるという話題、生田アナウンサーでした。

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
横田久氏の画像はこのサイトより
戸隠大根の収穫風景はこのサイトより
戸隠大根の漬物は「木の花屋」のこのサイトより
松島憲一准教授の画像はこのサイトより

【引用】
2019年3月18日、モーニングワイドラジオJ
posted by José Mujica at 23:28| Comment(0) | 種子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月27日

続・伝統野菜を守れ~SBCラジオJポイント

はじめに

 1月31日の「県主要農作物等種子条例(仮称)」の骨子では、他県に類を見ない伝統野菜が位置づけられたが、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきたSBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」の2月4日のテーマはまさに「伝統野菜」の抱える問題だった。まさに、種子の保存問題が根幹でどれほど深刻な問題を抱えているのかがよくわかる。まことに時宜を得た放送といえるだろう。2月25日はその続編が放送された。ということで、この放送をテープ起こししたものも紹介しておこう(1)

Masaaki-kubo.jpg
久保正彰 日本の農業人口の減少、そして、高齢化に伴って、日本で売られている野菜の種。野菜の種のおよそ9割が海外でタネが採られたものという現実が、信州の地方野菜にまで広がっているという話題を今月の初めにお伝えしましたが、今日はその続編です。今週も生田明子アナウンサーの報告です。

生田明子 おはようございます。前回は、信州の地方野菜としても知られております「坂城町のねずみ辛味大根」「戸隠地大根」などの種が実は中国で採種され、県内で販売されているという報告でした。

 今回はその続報ですが、大根にとどまらず、信州の冬の味覚の代表、野沢菜も中国で採種が行われているという現実がありました。お話は、長野市信州新町の信州山峡採種場、金子量昭(かずあき)社長です。 

野沢菜の種も中国産だった

野沢菜.jpg金子社長 野沢菜の種も残念ながら中国産になってしまったんですね。残念ながらっていうのは、長野県はね、野沢菜の産地だから野沢菜の種採りぐらいどこでもできるんじゃないかっていうんですけど、問題があるんですよね。周りに別の野沢菜が咲いていてはいけないんですよ。その花粉が混ざってしまう。この品種の野沢菜を採りたいっていう場合は、周りに野沢菜がない場所で採らないと、その品種を採りたい場合は採れない。それは、野沢菜なんでもいいですよって場合はかまわない。自家用で使う場合ならいいんだけど。その選抜してこの品種の野沢菜が採りたいんだっていう場合は、野沢菜がない場所で採らないと種採りができない。これが問題で。うちの会社でもねぇ、以前はねぇ、山奥にけっこう農家さんが畑をもっていてくれていて「ここなら大丈夫」っていうところで野沢菜の種採りができたんですが。高齢化で山奥の畑をみんな放棄されて、家の周りだけしか畑が残っていないんですよ。

 で、山奥の畑ってまず、行く道も自分で整備しなくちゃいけない。その畑の周りの草刈りも全部自分でしなくちゃなんない。獣は出て来るし、若かったらできるんだけど、もう年をとって段々遠くから手放していって、家の周りの畑だけに。家の周りの畑って近所の人も野沢菜作りますよね。そうすると、野沢菜をね。種を採る場所がなくなってしまった。まぁなんということでしょう。それが現状なんですよ。

久保正彰 なるほど野沢菜もそうなんですね。特に山奥で作っていた方って、もう農業をやっていらっしいまんせんよね。

生田明子 そういった話を本当によく聞きますよね…。そういう方が増えるとこういった影響につながってくるんですね…。1点お伝えしておきますと、これは、信州の伝統野菜の野沢菜を作っている人達とは別物でなんですね。ホームセンターなどで販売されている野菜の種の裏には、どこで採種されたのか、国やその場所が明記されていますので、皆さんも是非一度、チェックしてみてください。

 金子社長の信州山峡採種場だけでなく野沢菜の種というのは、今、ほとんどが外国産になっています。で、金子社長の場合は、原種の生産は日本で責任をもって行い、13年ほど前から種取りなどを中国の農家に指導し、中国で様々な野菜の種を採っているとのことでした。金子社長。種をとる最適な場所の「適地」と野菜としての生産の「適地」とは違うと話します。それは、こういった理由からです。

採種適地と生産適地とは違う

20190206金子.jpg金子社長 地産地消というね方向性から考えると種だって地産地消がいいんじゃないかっていう。まぁ、そういう考え方をしている方がいるかと思うんですけど、地産地消できないものも結構あるんですね。日本の場合、梅雨の時期がありまして、その時期に花を咲かせる品目、その時期に収穫をする品目というのは、いい種が採れない。例えば人参とかね。ちょうど梅雨の前半から開花をして。まぁ、種は採れるんですけど、やっぱり梅雨時、花が咲いて昆虫が花粉をつけにくいですよね、濡れてしまうので。そして収穫時、梅雨の末期で雨が降ると今度は種が病気になって腐ってしまうと。で、やっぱり採ってみると発芽率がどうしても良くならない。というようなことで、開花時と収穫時は雨が降らない地域で採ったほうが、いい発芽率の種ができる、ということなんですね。

久保正彰 なるほど。地産地消。タネはそう簡単にはいかないということなんですね。

生田明子 そうなんです。今や、私たちは世界中のいろいろな野菜を食べることもできるようになっていますし、種も買うことができます。私たちはその恩恵も受けているわけなんですよね…。

久保正彰 まあ、今、種も安く売られていますもんね。そういう現実もあるわけなんですよね。ただ、外国産の種を私も買ってしまったこともあるんですけれども、でも、その土地の影響を受けて、その種が、だんだん変わっていくという心配があるですけれどもどうなんですか。

外国で作られたとしても一代限りであればタネは変わらない

生田明子 そこが一番気になるところですよね。今回、今回作物の品種改良にむけての遺伝解析がご専門、信州大学 農学部植物遺伝・育種学研究室、松島憲一准教授にもお話をお聞きしました。

Kenichi-Matsushima.jpg松島准教授 日本で種をしっかり管理していて、それを外国に持って行って増殖させて売って。で、また次の年はやっぱり日本でちゃんと管理している種を外国に持っていって増やして販売するということを繰り返してる場合は、特に大きな問題はない。だけどもそのもとの種を外国に持っていて、例えば、中国に持って行って中国で栽培して、で、売った残りをまた中国でそこで植えて、そこで、また中国で増やして、で売りまして、また残りをまた次の年に植えてとということを何代も何代も何代も繰り返していくと徐々に徐々に中国のその地域にあった植物になっていく可能性はあるというか、なっていくでしょうね。ゆるやかにですけども。ですから、何代も何代もそれを同じ地域でやっていくと若干変わってくるということになりますが、まあ、あのちゃんと日本でその形質=特徴ですね、を管理してやっているぶんには、中国で植えようがアメリカで植えようが、それは遺伝子的には変わりはないはずです。

 その野菜を中国なりアメリカで育てて、それを日本に輸入するって言うならば、ものすごく影響しますよ、栽培してる場所によって全然こう味が変わりますよね。だけど種ですと、そのミネラルだとかその栄養分が変わってても要は、同じ遺伝子を次の世代に伝えるって言う役目が種ですから、核の遺伝子は変わりませんから、それについては大きな問題はないです。

久保正彰 へぇー。あの育った土地で野菜の味が変わるとよく言われていますけれども、タネ種の場合、また原種から1代限りであれば、大丈夫ということなんですね。

生田明子 はいそうなんですね。これも今回初めて知ったことなんですけれども、消費者としてはなかなか理解しがたいということもあるんじゃないでしょうか。そして、採種農家として、金子社長は最後にこんなことをおっしゃっていました。

矮小な畑が多い長野県は実は採取適地だった

金子社長 私、あの中国で種取をもう13年もやっていてね、「あー長野県ってなんて種とりに向いてるんだろうって」つくづくと感じているところがいくつもあって、まず標高がある程度高いってことは、夏の昼夜の温度格差が大きくて、夜はある程度涼しくなりますよね。そうすると作物はある程度体力を回復できるというか、休めるというか、いい種がと採れると。もうひとつは山で囲まれているので、この品種をこの谷間で採りたいという場合に谷間だけ隔離を確認すればいいんですよね。ですから、その谷間の集落の方に種採りしてない方にもね「今年はこのつけ瓜の種採りするから、今年は自家用はこの品種で作ってもらいたいんだけどって、その原種を配ってね、種採りをするとかね。そういう隔離環境をととのえてという意味では、山で囲まれているのでいいですけど。

 平地の場合はね、とってもじゃないけど、全ての庭先まで見まわってね、花咲いていれば「これ抜かしてもらえないか」って言って回れないんですよ。ですから、そういう意味では隔離環境が整えられるっていうところで、むいているんですよね。

生田明子 想いとしては信州で採れるなら採りたい。

金子社長 もちろんそうです。中国に年間8回通って種まきから、途中の生産から、全部ね、指導をしているので、長野県なら片道、車で1時間で回れますんでね。もちろんその地元で採れるに、こしたことない。

久保正彰 へぇー。長野県内は山あいが多くて傾斜地で農家やっている方がいっぱいいらっしゃいますけれども、そういう機械化ができない土地とよく言われますが。

タネを残すことは他人事ではない~消費者に何ができるか考えよう

生田明子Akiko-Ikuta.jpg かえって種を採る上では利点になるということですよね。傾斜地のおかげで水はけがよくタネが腐らないという話も聞きますし。さて、2回にわたってお届けしたこの企画なんですけれども、最初は、信州の地方野菜の種が中国で生産されているという驚きから始まりました。ですが、金子社長の切実な声を聴いて、自分の想像以上に、農家の高齢化そして激減が進んでいたということを知り私自身はとても大きなショックを受けたんです。ですが、まだ種や野菜のすべてが外国産になってしまったわけではない今だからこそ自分にも何かできないかなぁという気持ちになっています。

久保正彰 ラジオをお聞きの皆さんも、ああ、想像以上に外国に頼っているんじゃないかなと実感されたんじゃないかなという思いますけれども、私たち消費者の私達も日本の農家を支援することができないかという思いも湧いてきます。

生田明子 兼業でもいからでも種農家になりたいという若者が大勢出てきてほしいという思いが取材を通じて感じたことですね…。また、たとえ少しでも自家採種できるものは自家採種して残していこうということも大事な行動のひとつだと思います。

 今回お伝えしたような状況をふまえまして、阿部知事が今年の6月県会に条例案を提出する方針を明らかにしている「県主要農作物等種子条例(仮称)」これでは、どんどん少なくなる農家に対しての生産者支援も含まれています。現在、その骨子案が長野県のホームページで公開されていまして、今週の28日(木)まで、県民に対しての意見公募が行われています。ぜひご意見をお寄せください。

久保正彰 生田明子アナウンサーでした。ありがとうございました。

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
野沢菜の画像はこのサイトより
信州山峡採種場金子社長の画像はこのサイトより
松島憲一准教授の画像はこのサイトより
【引用】
2019年2月25日、モーニングワイドラジオJ
posted by José Mujica at 22:49| Comment(0) | 種子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする