2019年01月17日

グリホサート、お前はすでに終わっている

求められる無農薬の除草剤

 2015年、WHOは除草剤グリホサートに発がん性を見出す。これは、グリホサートを使っていればガンになるという強力なエビデンスがあるということだ(1)。持続可能ではないうえに健康にも影響がある。この懸念がメディアの注目を浴びる中、一部の農業界や地方政府は、化学除草剤に代わる雑草防除対策を模索し始めている(4)

 農業をする以上は除草剤は欠かせないのだが、国際市場に農産物を輸出するうえでも残留農薬規制値を気にしなければならない(3)。けれども、そうした懸念をしないですむ除草剤がある。土の健康にとっても有益で、持続可能な農業の助けとなる除草剤がある(3,4)

「除草剤や農薬が使い放題のこの毒物の時代に、農業を含めて、あらゆる産業が持続可能であることへの価値が高まっております。健康のことを考えれば、化学農薬や除草剤が引き起こす多くの病気の治療法を考えるうえで、それらからの汚染を防ぐことが最優先事項となっています。私どもが目指しているのは、私たちの土。そして、ここオーストラリアにおいて栽培される農産物の恵みを高め、弊社製品の知の恵みを全世界へと広げることなのです」

 そう語るのは、コンタクト・オーガニック財団の所長で、創案者でもあるウィリアム・ブリッグス氏だ。そう。これは、土の健康を最優先する農場のためにオーストラリアで特に開発された除草剤なのだ(4)

 コンタクト・オーガニックの本部はメルボルン。2014年にオーストラリアで設立された会社だ(4)。コンタクト・オーガニックのコアにある哲学は、地球上の生命が繁栄することを助けることにある。そこで、天然の非毒性成分を用いることで、土壌生物相を豊かに維持することを重視する(2)。どれほど土壌生物相が保護されるのか。それを担保するための広範囲な研究がなされ(3)、30年も研究を積み重ねてきた(2)

樹園地から学校の校庭まで

「私どもは、いま、パフォーマンスが高く環境にも好ましい除草剤「FarmSafe」「LocalSafe」、「HomeSafe」を提供しております(2,4)。ブドウ栽培、遊び場、運動場、学校他の公的なアメニティエリア、そして、ご家庭や庭の周囲で効果的で、かつ、無毒な雑草防除の実践に向け、オーストラリアの消費者と共に働けることを楽しみにしているのです」(2)

 農業用の「FarmSafe」は、ブドウ園等の果樹園、パドック、農場で速効性があり、かつ、自然な雑草防除ができる(3)。家畜や人間、土壌の健康を守れる。有毒な残留物がないために残留物濃度を懸念する必要がない。グリホサートを含まない選択肢にチェンジすることで、安全かつ効果的に土の健康を守れる。環境とのバランスが回復され、持続可能な農業も発展する(2)

 「LocalSafe」は地元団体が安全に使えるためのものだ。また、コンタクト・オーガニックは、ガーデニングでさえ、持続可能でなければならないと考える。安全な除草剤を求める市民の意識が高まっていることから、あらゆる菜園や道端用の「HomeSafe」も開発している(2)

水分を飛ばすことで枯らす

 コンタクト・オーガニックの製品は最先端技術を用いているのだが(3)。それが雑草を枯らす仕組みは、ひどい霜害や極端な熱波がするのと類似したやり方だ(1)。雑草に散布すると、その細胞の保護膜 (protective film)が劣化する(1,3)。ひとつの活性成分(volatile ingredient)は植物の葉のワックス層(waxy layer)を分解する。一方、これとは別の活性成分は植物から大気中へと水分を放出させる(1)。このため完全な脱水(complete dehydration)が引き起こされる。そして、植物細胞は急速に破壊されていく(1,3)

 散布してみていただきたい。1~2時間も経てば、雑草が褐色になって弱っていくことがわかるだろう(1,3)。コンタクト・オーガニックは、市場に出ている多くのそれ以外の多くの除草剤よりもいち早く成果の出る速効性の手法を開発している(1)。この製剤(formulation)は強力で効果的な乾燥剤(desiccant)なのだが、毒性がないために植物は免疫力(build immunity)を構築できない(1)。そこで、長期にわたって散布し続けた結果生じる除草剤耐性も防げるのだ(1,3)。さらに、価格面でも競争力があるのだ(3)

オーストラリアで許可

 こうした中、オーストラリアの農薬当局(APVMA= Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority)は、コンタクト・オーガニックが作成している除草剤シリーズを許可したと発表した。コンタクト・オーガニック社の常務、フランク・グラッツ博士は「オーストラリアの規制当局から認可されて嬉しい」と語る。

 コンタクト・オーガニックの製品は、メルボルンとバンコクで製造され、オーストラリア全域へと地域の業者を通じて流通している。この製品開発センターはコフス・ハーバーにあり、米国ではアイオワ州のモーリスでビジネスを展開している。

 この製品開発センターはコフス・ハーバーにあり、米国ではアイオワ州のモーリスでビジネスを展開している。強力な特許でのポートフォリオ(Portfolio)を持ち、環境的に持続可能な雑草管理や農業へと向かう世界的な傾向で加速的に成長している。製品開発センターはニューサウスウェールズ州のコフス・ハーバーにあり、米国ではアイオワ州のモーリスでビジネスを展開している(4)

毒物被曝は避けられないがデトックスを始めよう

 私たちの身体は、日々、何百種類もの化学製品にさらされている。こうした化学物質からの被曝をコントロールすることはできない。けれども、この地球上に対して永久の負荷を残すことを望む人は誰もいない。そして、環境に対する自分たち自身の影響は取り除き、負荷を最低限に抑えることはできる。また、化学毒物を土壌や食べ物に入れないことで、食べ物から毒素を取り去り、身体の中に毒物を入れないことで身体のバランスを取り戻すこともできる(2)

編集後記

 ゼン・ハニーカットさんの講演を昨年末に聞いたのだが、そこで、オーストラリアでグリホサートに代わる除草剤が開発されているという話を聞いた。まだ、ネット上は多くの情報はないのだが、さっそくチェックしてまとめてみた。グリホサートが危険なことは確かだ。けれども、いきなり除草剤を使うのを止めよ。手で草を取れと言われれば「江戸時代に戻るのか」と暗澹たる気分になるしコンセンサスも得られまい。とはいえ、グリホサートにかわり安全な除草剤があり、かつ、コスト的にも競争力があるのであれば、常識的にはそちらにシフトしていくはずである。安い。安全。効果がある。となれば、普通は誰もそれを選ぶではないか。どこかの試験場で試したうえで実践されることを願う。
(2019年1月17日投稿)

【人名他】
フランク・グラッツ(Frank Glatz)博士
ウィリアム・ブリッグス(William Briggs)
コンタクト・オーガニック(Contact Organics)
【地名】
コフス・ハーバー(Coffs Harbour)
モーリス(Maurice)
【引用文献】

(1) Product Information
(2) Sustainable Weed Control
(3) Cutting-edge Weed Control for Vineyards & the Agriculture Industry
(4) Press Release – LocalSafe Eco-Friendly Weed Killer, Dec 11, 2018.


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2019年01月06日

注文が多い料理店〜公共の給食から始めて農業全体を変える

有機レストランの数を3倍に

Torben-BlokS.jpg「個人の料理店や大規模な公共食堂での調理に使われている有機食材の割当はかなり増えています。すでにその多くが『オーガニック・キュイジーヌ(有機食材)』が求める水準を満たしています。そして、このラベルは多くの料理店が有機食材を購入するインセンティブとなっています。ですから、その数を2020年には3倍の6000にすることを狙っているのです」

 こう語るのは、デンマーク有機農業協会のマーケティング・ディレクター、トブ・ブローク(Torben Blok)氏である(2)

Chistian-puglisiS.jpg デンマークでは、1999年から、国がゴールド、シルバー、ブロンズからなる「オーガニック・キュイジーヌ」のラベルを設けてきた。プロの料理店のためのもので、購入された食材のうちどれだけが有機かであるかの割合を示すものだ。例えば、ミシュラン-レストラン『Relæ』は、ゴールド(90~100%が有機)のラベルがあるレストランで、スターシェフ、クリスチャン・プリージ氏(Christian Puglisi)が抱えているのがその証明ボードである(2)

 2016年現在、デンマークでは約1800のレストランがこの「オーガニック・キュイジーヌ」のラベルを持ち、うち、6分の1の約300がゴールド、3分の1の約600がシルバー、残りの約900はブロンズとなっている(2)

料理店に注文する消費者たち

 もし、あなたがデンマーク人なら、きっと有機農産物を買っているはずだ。というのも、デンマーク人の実に80%が有機農産物を購入しているからだ。市場における有機農産物のシェアにおいて、デンマークは世界1位で13%も占める(4)

 世界有数の有機農業大国だけあって、有機食材への関心の高まりから、多くのレストランがちゃんと有機食材を使っていることをアピールしようと、2016年だけでラベルを設けたレストランの数は50%も増えた。そして、動きは加速化している。

 もちろん、多くの大規模なカフェや食堂はまだブロンズのラベルだが、シルバーを獲得しようと懸命に努力しており、シルバーの料理店はゴールドをゲットしようと努めている。「ですから、このラベルは、デンマーク農業を転換させる推進力にもなっているのです」とブローク氏は指摘する。事実、多くの農家が、いま有機農業に転換してきている(2)

 大規模な食堂での有機食材の販売量はこの5年で3倍以上にも増えている。これは、デンマーク最大手のHørkram フードサービスにとっても重要な動きだ。

vivi-kjaersgaardzS.jpg「多くのレストランが「オーガニック・キュイジーヌ」のラベルを得ているのは、各店舗がどれだけ有機食材を使っているのかを顧客が求めているからです」と同フードサービスの生産マネージャー、Vivi Kjersgaard氏は言う。 

「有機農産物の販売量は、慣行農産物よりも増えていますし、我が社の売上高の18%にも及びます。この7年では2桁の成長率でしたが、これは続くように思えます。どの食材部門でも有機を求める大きな声がありますし、以前には有機では販売が難しかったカテゴリー、例えば、生鮮肉類でもそうなのです」(2)

まずは需要を増やす学校給食の6割を有機に

 けれども、意外なことがある。デンマークにある約1800のオーガニック・キュイジーヌ・ラベルのうち、トップの1300以上は公共機関が占めている。これに、個人の料理店約350が続き、レストランやカフェがほぼ100、ホテル、仕出しセンター(catering centers)、民俗学校(folk schools)、フードマーケットが残りを占めている(2)

 一番遅れがちなお役所がトップを走っているというのは意外に思えるのではあるまいか。けれども、それにも理由がある。2011年。デンマーク政府は、2020年までに公的キッチンの60%を有機農産物にするとの国家目標を立てる(3,4)。そして、公共調達において有機農産物を増やすというかなりの努力が中央政府によってなされてきたからだ(3)

 学校や病院といった公共食堂において有機農産物の需要を増やす政策を展開(4)。2012年には、食材を有機農産物に変えることを望む公共機関に対して、有機農産物を優先した公共調達入札を各自治体ができるようアドバイザー・チームをもうけた。そして、3年間で230万ユーロ以上(2億8000万円)の資金を投じた(3)。こうした国家目標によって各自治体は動機づけられている(4) 。さらに、学校給食以外でも有機食材を購入するため300万ユーロ(3億7000万円)が組まれている。保健省は病院で有機農産物を公共調達しているし、国防省にも有機農産物を購入するパイロット・プロジェクトがある(3)

 また、個人消費を伸ばすための意識啓発キャンペーン、レストランのリーダーや従業員の教育、サプライチェーンやメニューの改革も展開した。このプランの背後にある思想は、国産であれ海外産であれ、有機農産物そのものに対する消費者需要を増やすことによって、慣行農業から有機農業への転換の動機づけにしようというものだ。そして、この政策は見事に機能し、2007年のベースラインと比較して有機農業面積を倍増するとの当初目標を達成する(4)

コーペンハーゲン学校給食の9割以上を有機に

 首都コペンハーゲンでは、2007年にデイケアセンター、学校、老人ケアセンターで提供される食材の90%を有機農産物にするとの目標が定められる(1)

 目標設定時の有機農産物の調達率は51%にすぎず、調理済みのパック食材に大きく依存していたのだから、実に野心的な計画だ(1)。とはいえ、2015年には価格をあげることなく、学校給食では90%目標を達成する(4)。そして、2016年に市が発表した数値によれば在宅患者ケア(home care patients)向けの素材は60%にとどまったが、デイケアセンターや学校では94%と目標を凌いだ。トータルでは、市内の公的調達の実に88%が有機となったのだ。いかなデンマークといえどもそれ以外のどの市もこの数値にはたどり着いてはいない。コペンハーゲンの割合は世界最高と考えられ(1)、ヨーロッパでも最も野心的な公共調達プログラムのひとつとなっている(4)

 おまけに、有機農産物は高い。にもかかわらず、有機食材への転換は、以前の予算を増額することなく達成された。なぜか。ゼロから料理し、旬の素材を購入し、食品廃棄物を削減し、使用する肉量を減らしたことでなされたと市側は説明する(1)

frank-jensenS.jpg「有機的な暮らしへの転換は、私どもコペンハーゲン市の緑のプロフィールのラインにまったく沿ったものです。コペンハーゲン市は食の分野で巨大なプレーヤーです。有機農業をスタンダードに設定することによって、環境を保護し、農薬を含まないクリーンな飲料水を確保することにもつながるのです。同じく重要なことは、高水準の目標を設定することが、とりわけ、日々、私どもの市からの食材提供に依存している全市民の皆様のより高い生活水準につながることです。我が市の学校、診療所、避難所、デイケアセンターにおいて、健康的で、かつ、おいしい食事が提供できることは、私にとっては、福祉のベーシックなコアでもあるのです」

 フランク・セン(Frank Jensen)市長はこう言う(1)

大欧州の転換~公共調達という秘密兵器

 はたして「公共財」とは何なのか。そして、「公共財」のためには公的資金はどのように使うべきなのだろうか。こうしたことを日々耳にする機会が増えている。公的資金は地球や人類のためになるよう、なんとなれば、環境や人々の健康に利するよう費やされなければならないからだ。

 そして、これも当然のことのように思えるが、いくつかの国においては、かなりの額の公的資金が、学校や病院、ケアホーム、大学、公官庁(government buildings)での公共調達に費やされている。そして、注目すべきは、有機農産物を公共調達しようという動きだ。

 この動きを政策化されれば、有機農業のメリットに対する消費者の意識が高まるし、地元で生産された有機農産物への需要が増えれば、持続可能に生産され、かつ、栄養価が高い食材を地元住民が手にするチャンスも増す。つまり、「公共調達」は持続可能な有機フードシステムを達成するための大きなステップと考えられているのだ(3)

 これは机上の空論ではない。例えば、スコットランドのイースト・エアシャーでは地場の有機農産物を含め、持続可能な給食に対して投資しているのだが、その社会的な見返りを試算してみると、1ユーロの投資に対して環境や社会経済的益で7ユーロもの価値を産みだしていることがわかったのだ(3)

 2008年。EU委員会は、公的機関においてグリーンな購買を促進するための措置として、グリーン公共調達を促進し始める(3)

 このこともあいまって、この10年で「有機アクション・プラン」は、ヨーロッパ諸国においてはすっかり馴染みある政策計画ツールとなってきている。とはいえ、同じプランであってもその効果は国によって温度差がある。2015年にアップデートされたデンマークの「有機アクション・プラン2011~2020年」は、最も先駆的な取組み事例とされ、他国のインスピレーションの源となっているのである(4)

新たな需要を作る

 では、なぜ、デンマークが大きく転換できたわけは、これまでみてきたように、かなりの資金で支えられ、需要創出に大きく重点がおかれていたことだった(4)

 なるほど、有機農業部門の強化だけに重点をおくのみならず、農業農村の発展や子どもたちの栄養の改善といった様々な政策目標と連携することも必要である。とはいえ、それはある程度、有機農業セクターが発展した場合に最も効果を発揮する。まだ発展の初期段階にある場合には、有機農産物を目標とした地元での学校給食用の有機食材調達プログラムが重要であろう(3)

 さらに、需要創出も必要である。例えば、商務・成長省は、高付加価値製品やマーケティング戦略を創出するため、移動製品開発チーム(mobile product development teams)に対して投資をしている。こうしたチームは、農民や中小企業とミーティングを重ねる中、5年間で、400以上もの新たな有機製品が開発された(4)

供給への万全のサポート体制

 もちろん、デンマークの計画は、需要を増やす「プル」と生産を刺激する「プッシュ」との組み合せによって成功している。例えば、有機農業には高い生産コストがかかることを政府は認め、農地支払いへの支援(support for land area payments)が維持されている。ヨーロッパ共通農業政策の財政措置を介して1億4300万ユーロ(176億8550万円)が転換とメンテナンスのために確保されている(4)

 そして、有機農業への転換は、研究やイノベーションに対する投資並びに農民たちに対するかなりのキャパシティ・ビルディングによって支えられている。

 オーダーメイドでのコンサルティング・サービスには、農場における「転換チェック」が含まれる。有機農業に転換したことでどのような成果が得られたのか。それを農民と議論するため農業改良普及員は、終日を農場で過ごすのである(4)

有機農業団体の支援と研究の支援

 公共調達プログラムを立ち上げるにあたっては、デンマーク有機農業協会は、大きな役割を演じた。そして、政府は同協会をサポートしている。協会は相談サービスを農民や会社に提供しているが、有機食材の供給量を担保・拡充するため、農民、食品会社、食品サービス会社をまとめあげた。同時に環境・食品省や「有機フードシステムの革新基金と研究のための国際センター」を介して、有機農業の研究に資金提供をしている(3,4)

デンマークが変わると他国にも影響

 デンマークにおける有機農業生産の高まりは、他国においても市場を形成している。有機酪農製品、豚肉、穀物、家畜飼料を輸出しているからだ。輸入国を見てみると、圧倒的にドイツが多く、これに、スウェーデン、中国、フランスが続く。同時に、デンマーク国内における需要の高さから、有機農産物の輸入量は輸出量を上回っている。デンマークは、有機果物や有機野菜、穀物、家畜飼料を他のEU諸国、とりわけ、ドイツ、オランダ、イタリアから輸入しているのだ(4)

市民意識が変われば政権交代があってもぶれない

 アグロエコロジーに対するサポートが直面する難題は、政策や支援資金が変わらずに続くかどうかである。実は、デンマークにおいては、2015年の政権交代がその危機的となる時期だった。とはいえ、新政権も有機農業の支援では変わらなかった(4)。2015年の「有機アクションプラン」では、有機食材の供給量を増やすため、2015~ 2018年にかけ800万ユーロを割り当てられた(3)。デンマークの事例は幅広い政治的な支持が市民社会やステークホルダーからあれば、たとえ政権が交代したとしても政策が変わらないと言う好事例でもあるのである(4)

 確かに、農家の転換プロセスを支援するための支援資金は巨額である。けれども、給食を含めて、公共の食堂で日々出される健康的な有機食から80万人以上が、パブリックな恩恵を得ていると政府は見積もっている(4)

【地名】
イースト・エアシャー(East Ayrshire)

【用語】
デンマーク有機農業協会(The association Organic Denmark)
オーガニック・キュイジーヌ(Organic Cuisine =有機食材)
EU委員会(EU Commission)
グリーン公共調達(Green Public Procurement)
有機アクション・プラン(Organic Action Plans= OAPs)
有機アクション・プラン2011~2020年(Denmark Organic Action Plan: Working together for more organics)
商務・成長省(Ministry for Industry, Business and Financial Affairs)
環境・食品省(Ministry of Environment and Food)
有機フードシステムの革新基金と研究のための国際センター(Innovation Fund and the International Centre for Research in Organic Food Systems)

【画像】
トブ・ブローク氏の画像はこのサイトより
クリスチャン・プリージ氏の画像はこのサイトより
Vivi Kjersgaard氏の画像はこのサイトより
フランク・イェンセン市長の画像はこのサイトより

【引用文献】
(1) Copenhagen touts ‘organic food revolution’, the local Denmark, 24 May 2016.
(2) Boom in organically certified eateries in Denmark, Organic Denmark,15 Nov 2016.
(3) Joelle Katto Andrighetto, Organic Public Procurement is a Win-Win Scenario for Farmers, Consumers & Public Goods, September 5, 2018.
(4) Future Policy Award 2018 crowns best policies on agroecology and sustainable food systems

編集後記

 みなさん、明けましておめでとうございます。遅らばせながら、今年の第一弾のブログです。

 TPPの発動といい、ゲノム編集の解禁といい、確かに、日本だけを見ていると暗澹たる気分になってくる。けれども、これだけ地球が破滅的であるとその反動も大きい。まずは明るい話題から。デンマークの首都コーペンハーゲンは公共調達の9割を有機にすると目標をたて、デイケアセンターと学校給食では94%を達成したものの、老人ホーム足を引っぱり、トータルでは88%と目標達成が達成できなかった。だが、はたしてこれを失敗と言えるであろうか。「ナヌ。88%が有機だと」思わず口をあんぐりとあけたくなるに違いない。

 フランスのみならず、デンマークでも公共調達で6割を有機農産物を義務づけし、消費者の8割も有機を買っている。なぜ有機でやれないのか、圃場で1日農家と語り合うのが普及員のお仕事。もはや、かの国においては慣行農業をやることの方が難しいのではあるまいか。日本で騒がれているスマート農業だIOTだという前に、まさに話題にもならないアグロエコロジーが着実に市民権を得て大欧州が転換しつつあるという事実に衝撃を受けた方がいい。

 「コペンハーゲンの学校給食では9割が有機食材である」。この驚くべき話を知ったのはこのブログでも何度も登場している印鑰智哉氏のフェイスブックである。同氏の長野県池田町での講演は昨年の12月1日に聴講することができた。「驚くべきことではないか」と口にすると「他国からの輸入ですから」と印鑰氏はさりげなく受け流した。とはいえ、他国からの輸入食材とはいえ、9割もの有機給食を達成しているというのはやはり凄まじい。大欧州が転換しつつあることがまざまざと知られてくる。

 新年早々、デンマークをとりあげてみたくなったのは、この池田町の講演を企画された臼井健二夫妻が村上真平(1959年~)氏とのバングラディシュでの出会いから、タネに覚醒されたことを知ったことだった。2018年9月5日付の姉妹ブログ「いいかげんなタネ採り作法」でも書いたのだが、1996年にコペンハーゲンで開催されたIFOAMオーガニック世界会議で、ずっと一緒だったのが、この真平氏の父上で、エゴマ油づくりにも力を入れていた村上周平(1923~2004年)氏であった。周平氏は内村鑑三(1861〜1930年)の『後世への最大遺物・デンマルク国の話』(1976年) 岩波文庫を愛読され、胸に期待を膨らませて憧れの地に降り立った。けれども、2haもある施設農業を案内され、1ha以下の露地農家は「農家や園芸家」ではなく家庭菜園だと言われて落胆していた様を思い出す。けれども、故周平氏がこの記事を読めば「やはり有機の時代が来た。デンマルクを評価した鑑三は正しかった」と納得されるに違いない。

 ということで、今年もこうした明るい話題を提供していきたいと思っています。よろしくお願いします。 

 (2019年1月5日)

posted by José Mujica at 00:37| Comment(0) | アグロエコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月29日

大欧州の転換~フランス学校給食を有機に

フランスは持続可能な指標でトップに

 いま、フランスは、持続可能な農業、フードロスや廃棄物、栄養や健康と関連した大胆な目標や政策で世界のリーダー国となっている。エコノミスト誌の調査部門、「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」や「食料と栄養に関する情報機関」が、フード持続性指標によって34カ国を比較したところ、トップだった(注)。まさに、世界の食のリーダーと見なされている(3)

アグロエコロジーへの転換を推進

 そのひとつがアグロエコロジーだ。マクロン大統領は、最近、農業部門に対する50億ユーロ(1ユーロ=12674円)投資計画を明らかにしたのだが、驚くべきことに、その一部として、EUの補助金や集約的な農業生産方法から脱却して、『文化革命』を受け入れるように農民たちに訴えている。

「フランスではどの政治家も何かを農民について言う必要がある… 。フランスでは、農民の重要な政治的な重さに対峙することなくフードシステムを変えることはできない」

 集約型農業を脱却し、アグロエコロジーに向けて食や農業システムを設計し直す必要があるとの認識が高まりつつある。農業省は、2025年には、農民たちの大半がアグロエコロジーの概念を認めることを期待している。

 フランスが有機農業やアグロエコロジーに向けて舵を切るにあたって大きな影響を及ぼしたのは、ステファヌ・ル・フォル元農相である。たとえペースが前後することがあったとしても、強力なリーダーシップによって、こうした転換が始まることが可能となっている。こと持続可能な食や農業に関しては、フランスは世界を導いているように見えるのだ(3)

食品廃棄物をなくす

 フードロスや食品廃棄物の無駄をなくすことにあたっても、フランスは野心的で包括的な対策を講じることで世界をリードしている。2013年には、2025年までに食品廃棄物を半減するとの明白な目標を立て、学校での食品廃棄物教育からマーケティングキャンペーンまで展開している。

 2016年には大規模な食料品店に対して、特定の売れ残りの食品をフードバンクや慈善団体に渡すことを義務づける法律が導入された。類似した法律は一定以上の規模のレストランに対しても科され、『持ち帰り袋(le doggy bag)』を求めるお客にはそれを提供しなければならない(3)

子どもの肥満に対処するインクルーシヴなアプローチ

 イギリスでは各家族で消費される食品の半分以上が『超加工食品(ultraprocessed)』だが、フランスはわずか14.2%にすぎない。それでも、フランスは肉を大量に食べたり、脂肪を過剰摂取するという食と関連した健康問題のことを考慮している。つまり、子どもの肥満を防ぐ努力でもフランスは先駆的なのだ。2004年からは、地元コミュニティや多くの関係者がかかわり、『子どもの肥満を防ごうプログラム』を展開している。フランス食料・環境・健康と安全性庁は、2017年に、その食事消費ガイドラインをアップデートしたが、肉の消費量(家禽を除外)と加糖飲物を制限することをこれに含めた(3)

 食品廃棄物という重要な課題に関して包括的な計画をもって、意味ある変化を引き起こすための政策を展開している(3)

学校給食の半分以上を有機に

Stéphane-Travert.jpg 2018年の2月、ステファヌ・トラヴェール(1969年〜)農相は2022年までに、フランスの公共部門で購入される全食品の少なくとも半分は有機農産物、あるいは、地元産、あるいは品質表示(quality label)されたものでなければならないと発表した(1,2,3)。これは、学校、病院、刑務所で使うために買われる食材を含む(2)。ラディカルで大胆な目標に思えるが、転換のための条件は年々もかけてすでに構築されている。机上の数値ではなく現実に進展することが可能だと楽観されている(3)。そして、この新規則は、フランスの農業部門を押し上げ、食を改善するための政策措置の一部となっている(1,2)

農民がまっとうに稼げるようにする

 かくして、フランスにおいては有機農産物市場が創出されなければならない状況となっている。そして、有機農業への投資がなされるためには、農民や食品会社の信頼を得なければならない。

 フランスでは『公正な取り分(fair share)』という問題とも真っ向から対峙しようとしている。このアプローチは、もちろん、生産された農産物が健康的な食事につながるかどうかとは無関係である。とはいえ、あるフランスの食品企業は、農産物の流通において、価値を再分配することには、フードチェーンにおける高付加価値化が付随する必要があると結論づけている。それは、レジにおいて値段が高くなることを意味することもある(3)

イギリスよ、フランスに続け

 フランスと対照的に、イギリスはフード持続性指標で評価されたヨーロッパ10カ国のうち8位にすぎなかった。そして、イギリスでの子どもの肥満防止計画もあまりにも生ぬるいとの批判の声が高い。

 もちろん、フランスの農業は完璧ではない。けれども、フランスでの進展が今後も続くことが期待される。フェアで健康的で持続可能な食べ物に関して、多くの面でイギリスよりも進んでいる。そのわけは、なんといっても、フランス政府の意欲にある。

 フード持続性指標といった指標を用いることによって、諸国間で食や農業システムの持続性を比較することが可能だ。『フランスとイギリスとは食文化が違う』の一言を言い訳にしてはならない。他国が類似した課題にいかに取り組んだのか。何が機能し、何が機能しなかったのか。それを学ぶことができる。つまり、イギリスはフランスから多くを学ばなければならない(3)

Rob-Percival.jpg イギリスの土壌協会には「いのちのための食べ物」というプログラムがあるのだが、同協会のスポークスマン、ロブ・パーシバル氏は、フランスの発表に対して以下のようなコメントを寄せている。

「マイケル・ゴーヴ(1967年~)環境・食料・農村地域省担当大臣は、このフランスの新政策を注目しなければならない(1)。それは、より良き農業の実践をサポートし、健全な食べ物へのアクセスを改善するため、公的調達が持つパワーを際立たせている(1,2)

 イギリスの公共部門は毎年、公共調達で食材や仕出しサービス(catering services)に24億ポンドも費やしている。これは、公共財のために公的資金を費やす大きな機会となっている(1)

Michael-Gove.jpg マイケル・ゴーヴ大臣は、必要なツールをすでに手にしている。政府のより野心的な行動によって、イギリスにおいて、地場産のより高品質な農産物需要をさらに刺激できる」(1,2)

 ゴーヴ大臣は、産業戦略(Industrial Strategy)でなされた確約(commitments)と整合性をとって、農業生産者をサポートするため、革新的な『ダイナミックな』調達アプローチのポテンシャルを探求しなければならない。フランスが示しているように、公的調達は地元農民や有機農業者を支援するための強力な道具でありえる。そして、公衆衛生の改善に対して大きく貢献できる。全公共部門で義務図けられた環境・食料・農村地域省のバランスト・スコアカード・アプローチを実行するため、教育と健康を含めて、コストとの関連性で少なくとも量的に60%を品質に置く公的調達の決定のためにいま、動かなければならない(1)。変化のための強力なレバーとなる公的調達への野心を次第に高めることで、イギリス政府も、大胆な目標を掲げ、それを意味ある行動に変えることによってフランスに続くことができる(3)

20181229.jpg NPOガーデン・オーガニックも、有機食材の公的調達が必要だと主張する。その姉妹組織 、イギリス農薬アクションネットワークの研究によれば、一人の子ども当たり1日に約1ポンド、あるいは年間に560万ポンドの経費を追加するだけで、保健省の学校果樹野菜計画を介して、コアとなる農産物をすべて有機農産物に切り換えることが可能なことが明らかになっているからだ(2)

【用語】
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)
食料と栄養に関する情報機関(食料と栄養のためのバリラ・センター=Barilla Center for Food & Nutrition Foundation=BCFN)。世界の食と栄養問題を分析するため2009年に創設された組織
フード持続性指標(Food Sustainability Index=FSI)
フランス国立食品環境労働衛生安全庁(ANSES= Agence nationale de sécurité sanitaire de l’alimentation, de l’environnement et du travail=French Agency for Food, Environmental and Occupational Health and Safety)
子どもの肥満を防ごうプログラム(EPODE= Ensemble Prévenons l'ObésitéDes Enfants, Let’s Prevent Childhood Obesity)
公的調達(public procurement)
土壌協会(Soil Association)
いのちのための食べ物(Food for Life)
ガーデン・オーガニック(Garden Organic)
イギリス農薬アクションネットワーク(PANUK= Pesticides Action Network)
保健省(Department of Health)
学校果樹野菜計画(School Fruit and Vegetables Scheme)

【人名】
ステファヌ・ル・フォル(Stéphane Le Foll)
エマニュエル・ジャン=ミシェル・フレデリック・マクロン(Emmanuel Jean-Michel Frédéric Macron, 1977年~)
ステファヌ・トラヴェール(Stéphane Travert)農相の画像はこのサイトより
ロブ・パーシバル(Rob Percival)氏の画像はこのサイトより
マイケル・ゴーヴ(Michael Gove) 農相の画像はこのサイトより
子どもの食事の風景の画像はこのサイトより
(注)ちなみに、フランスが1位、2位は日本である。

【引用文献】
(1) Half of all food bought by the public sector in France to be organic or locally-produced, or come with a quality label by 2022, 01 Feb, 2018.
(2) Garden Organic, France leads the way with organic public sector procurement, 13 Feb, 2018.
(3) Lessons from France: world leader on sustainable food & farming? Report of Business Forum, 21Mar, 2018.

編集後記

 FAOで研究をされている愛知学院大学の関根佳恵准教授から次のような驚くべきメッセージが入ってきた。

「フランスでは学校給食など公的調達(役所、病院、刑務所を含む)の50%以上を有機農産物にすることが義務化される動きがあり、日本も見習って欲しいです。新聞報道によると、日本では少年院の食事を宅配弁当に切り替えて、予算を節減することが提言されているそうですが、これは180度逆のアプローチですね」

 印鑰智哉氏のフェイスブックからデンマークでは学校給食の90%が有機農産物となっていることを知り仰天したものだが、フランスもか。そして、イギリスの老舗の有機農業団体、ソイルアソシエーションは「大臣、何をもたもたしておる。さっさとやらんか」とフランスの事例を直ちに紹介して、アジテートしている。まさに、学校給食を有機農産物にチェンジさせることによって農政そのものを転換しようという戦略が着々と進んでいる。けれども、なぜか、日本はこれとまったく逆に進んでいるのだ。日本の異常性はこんなところからもかいま見ることができる。
(2018年12月29日投稿)

posted by José Mujica at 18:19| Comment(0) | アグロエコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする