2019年10月04日

化学薬剤で処理するファストな技術はSDGsになじまない?・下

水民営化を推進する法律が10月から施行されている

Masaaki-kubo.jpg久保正彰 さて、先週のラジオJでもお伝えしましたが、水道事業についての法律、改正水道法。明日10月1日から施行されます。これまで市町村が担ってきた水道事業の運営に、民間企業が参入しやすくなるということなんですが、今日は「改正水道法でどう変わるのか」。7時台のJのコラムでは、長野県がどうなっていくかについてご紹介していきます。スタジオは、生田明子アナウンサーです。おはようございます。

生田明子 おはようございます。まず、改正水道法、法律改正の目的は「水道基盤の強化」です。背景には、水道施設の老朽化が深刻化していまして、設備の更新が急務になっている上に、人口が減少していますので、料金収入が減って、経営環境が悪化している。といった現状があるからです。この法律では、施設の所有権を自治体が所有したまま、民間企業に水道事業の運営をゆだねるという「コンセッション」方式の導入を自治体の水道事業でも推進しているということが、柱のひとつになっています。

久保正彰 コンセッション方式ねぇ。

waterDVDs.jpg生田明子 まず、この「コンセッション方式」について、世界の水事情に詳しいNPO法人アジア太平洋資料センターで『どうする?日本の水道~自治・人権・公共財としての水を~』 というDVDを制作し、水道の民営化について、問題提起している、内田聖子(しょうこ)さんに解説して頂きます。

情報の透明性、水質、料金、災害時。懸念だらけのコンセッション方式

内田聖子 「コンセッション方式」というのはですね、私達はほぼ民営化だと思っているんですけど、その経営に関わる全ての権限ですね、これを自治体から民間企業に、売却されるという話なので。例えば、経営の方針を立てるとか、それから料金の設定だとか、職員は何人雇うかとかですね、水質をどうするかとか、あらゆる運営に関わる判断を企業の側が持てるようになると。ただ、施設の所有権、つまり、浄水場とか、水道管とかですね、インフラは自治体が持つと。という非常に分かりにくいスキームなんですけども。経営や運営に関わる権限というのはですね、非常に大きなものです。民間の手に移ってしまうということはですね、情報の透明性の問題ですとか、それから料金が上がるという懸念もありますし、水質は大丈夫なのかとかですね。それから災害の際に、これまで公共で点検をしてきたような復旧作業ができるのかとかですね、様々な懸念というのがあるわけですね。

 これがその運営が民間企業に移った場合ですね、責任の体制はどうなのかとかですね、連絡などもしっかり取れるのかとかですね、あるいはその後で費用がかかってきますので、そういう負担の問題とかですね。まあ今も、実は山のように懸念する点があるという状態ですね。

生田明子 人口減少で、苦境に立つ水道基盤の強化が目的なんですが、災害時の対応に不安を残したまま、民営化のハードルが引き下げられたという形になっています。このコンセッション方式については、長野県内では、今のところ検討している自治体はありません。では、長野県としては、どうなるのか、長野県環境部水大気環境課水源水道係専門幹 斎藤正幸さんにお聞きしてきました。

長野県では広域連携を推進することで問題を解決しようとしている

斉藤正幸 ただちに日常の水道使用に何か変化があるかといいますと、まったくそんなことは感じられないかと思います。しかし、皆様に水道を供給する立場の側としましては、将来を見据えた対策を今からおこなっていかなければならないといったことが、改めて法律上、明記されたということができるかと思います。その意味でも危機感をもって、取り組んでいかなければならないわけです。そのための基盤強化の有効な手段の一つとしまして、広域連携の推進が今回の改正法では盛り込まれています。そこでは、私ども県の方に広域連携の推進役としての責務を課せられているところでございます。

 長野県では、特に規模の小さい水道事業者が多いのが特徴です。水道事業の直面している課題を解決するためには、施設や経営の効率化・基盤強化を図っていくといったことにあるわけでございますが、それらを、市町村の境を超えて一緒にやっていこう、ということがいえるかと思います。連携の形態としましては、水質検査を共同で行う共同委託、あるいは水道施設の維持管理業務の共同委託、経営の一体化などが考えられるところでございます。これらも各地域の実情といったものがございますので、それを踏まえながら可能性を探っているところでございます。

生田明子 水道法改正の柱としましては、国は、民間企業の参入の他にもですね、広域連携の推進を掲げています。

久保正彰 ですから、長野県としては、こちらの広域連携で水道事業の難局を乗り切ろうとしているということなんですね。

生田明子 はい。

久保正彰 この法律の改正によって、水道事業は転換期を迎えているといってもいいかと思います。このあとの、8時15分からのJポイントでも、引き続き、生田明子アナウンサー、水道について解説をしてまいります(1)

上田市では水道料金徴収をフランス企業ヴェオリア・ジェネッツに委託している

久保正彰 水道事業についての法律 改正水道法。明日10月1日から施行されます。これまで市町村が担ってきた水道事業の運営に、民間企業が参入しやすくなります。今朝の7時台のJのコラムでは、改正水道法の柱のひとつとなっている「コンセッション方式」について、そして、長野県がどうなっていくのか紹介いたしました。このコンセッション方式とは、施設の所有権を自治体が持ったまま、民間企業に水道事業の運営をゆだねるというこういう方式です。8時台でも水道について考えていきます。生田明子アナウンサーです。

生田明子 改めてよろしくお願いします。今度は、世界の状況も紹介しながら 水道の民営化について考えていきます。実は、水道事業に関わる自治体の職員が減少していることから、多くの民間企業によって業務委託されていることを皆さんご存知でしょうか。先週お話を伺った上田市の県営水道長野県企業局、上田水道管理事務所浄水係長の軣廣人(とどろき、ひろひと)さんです。

轟廣人 上田水道につきましては、二種類、業務委託を行っておりまして。料金徴収業務につきましてはヴェオリアジェネッツさん。と、浄水場の運転管理業務につきましてはメタウォーターさんに委託をしておると。県の定めた仕様に基づいて委託業務を行っているという状況になりますので、県で決めたやり方でやってくださいと。あくまで自治体が主の業務になります。                     

生田明子 でてきましたヴェオリアジェネッツは、フランスの企業。メタウォーターは、東京の企業です。

久保正彰 ほう。

生田明子 長野県内の水道事業、こちらだけではなく、かなりの自治体で、料金の徴収をはじめ、浄水場の運転管理業務。それから、水道管の修繕等も含めた維持管理業務等を民間事業者に委託しているということなんですね。

久保正彰 普段あまり見えないことですからわかりませんよねぇ。既に水道事業には多くの民間企業が関わっているわけなんですね。そして、今、フランスの企業名がでてきましたねぇ。フランスではこれ水道は民営化されているんですか。

生田明子 はい、そのあたりの事情を、7時台に続きまして、NPO法人アジア太平洋資料センター 内田聖子さんです。

フランスではヴェオリアに民営化したところ役員報酬が見えず料金が倍になった

Shuko-UchidaS.jpg内田聖子 例えば、あのフランスのパリ市、1985年にヴェオリアとか、スエズというメジャー企業と契約をして、コンセッションをやってきたんですけれども、当初契約するときは、民営化で全てうまくいくんだと、自治体もコストかからなくなるし、効率的なサービスが提供できるということでみんな次々にやっていたんですけれども、例えば、自治体の側にですね、企業の財務状況ですね、いくら儲けてるのかとか、役員報酬はいくらだとか、そういう情報がきちんと開示をされなくてですね、非常に水道事業というのが自治体の側から見えにくくなってしまったという点や料金が2倍近くにあがっていったんですね。20、年30年という間にですね。料金のことはもちろんですが、水質が実は悪化してしまったとかですね。等々の問題がありまして、実は2010年に再公営化といって、もう1回公営に戻すということに成功した自治体なんですね。

久保正彰 一度コンセッションを取り入れて、また公営化したわけですね。

生田明子 そうなんです。長野県内では7時台にもお伝えしましたが、コンセッション方式を検討しているところは今のところはないようですが、水道法が改正される前から、宮城県などの自治体では検討されています。その背景とは。

コンセッション方式に転換するよう国は補助金で推奨している

内田聖子 宮城県の場合はですね「コンセッション」を導入するとですね、いろんな国からの補助金というのがいまつくことになっていまして、財政的なインセンティブを色々つけて国はやってくださいということを自治体に推奨してるんですけども、そういうメリットというのも感じてる自治体もあるかもしれません。

久保正彰 うーん。日本の自治体は、どこも財政難ですからねぇ。「補助金という特典がつくならば、うちもやろうか」と考えるところが多いでしょうねぇ。きっとねぇ。

生田聖子 内田さんは、これから、このコンセッション方式を取り入れる自治体は、増えていくのではないかとおっしゃっていました。けれど、ここで立ち止まって考えて頂きたいんですね。最後に、内田さん、このようにおっしゃっていました。

脱大量消費のSDGsの時代には限られた資源をわかちあうべき

内田聖子 これからの時代は、大量生産大量消費ではなくてですね、限られた資源をいかにみんなでシェアをして使っていくかっていう時代に、もう転換しているはずなんですけども、民営化という方向性はですね、それとは逆行していると思います。やっぱり企業は利益を求めてですね、たくさん水を使って欲しいっていう話になってくるので、持続可能性とは真逆だなと。

 日本の水道は、明治からずっと公共がやってきたっていうところでですね、非常にクオリティーが高いんですね。素晴らしいゆえに、私たちは恩恵を何も考えずに享受しちゃってるっていう現実があります。

 ただやはり人口が減っていく中で、今までのように無関心、無意識ではもういられないとふうに私は思っていまして、自分たちの地域の水道がどうなってるのか、どうしたいのかっていうことをできるだけ住民が参画するような形で取り組んでいくことが必要だと思っています。

久保正彰 うーん。

Akiko-Ikuta.jpg生田明子 私達は水がなければ生きていけません。まずは、身近な自分の飲んでいる水がどこの浄水場からきているのか。そして、それが、どんな方法で浄水されているのか。調べてみるのもいいかもしれません。明日、改正水道法が施行となります。

久保正彰 日本は治安がよい国であると。そして、公共の水が美味しいと言われておりますけれども、その効率的なサービスといわゆる公共性、透明性。このへんのバランスですよねぇ。きっと。明日から改正水道法施行ということで、生田明子アナウンサー、3回シリーズで、持続可能な水道について伝えてくれました(2)

編集後記

 結局はグローバル企業とカネの問題か。このブログでは、タネの問題を扱ってきたのだが、まさに、水道もタネと同じ構図にあることがわかる。そして、食や水の安全性を考えた時に鍵となるのは「予防原則」である。

 当然と言えば当然なのだが、「予防原則」という概念は、私的に言えば「安全な水道水」と密接に関連して生まれた。舞台はロンドン。時は1854年。かのフローレンス・ナイチンゲールがクリミア戦争に赴いた年だ。ヴィクトリア朝の大英帝国は、地球の陸上の四分の1を支配し、栄華を極めていた。けれども、首都、ロンドンでは夏に謎の疫病が発生。死亡率はソーホー地区では12.8%に及び終息する9月末までに616名が死んだのだ。

 当時のロンドンは、産業革命で離農を強いられた人々が押し寄せ、ゴミや糞尿処理もままならず最下層の人々は悪臭が漂う劣悪な生活環境で暮らしていた。

 病気の元は空気で伝わる悪臭であるに違いない。「瘴気説」をもとに良心的な役人は「不快除去及び伝染病予防法」の施行。街中の汚物を下水として河川に流す政策を講じた。

John-SnowS.jpg だが、瘴気説を疑う一人の医師がいた。人々の健康を守るため、被害が生じている地域や人の属性等から要因を見つけ出す学問を「疫学」と呼ぶ。この疫学の祖といわれるジョン・スノウ(John Snow, 1813~1858年)だ。

 地道な聞き取り調査から、スノウは「井戸水が怪しい」と見抜く。かつ、当時、疫病発生地区には2社の水道会社が水を供給していたのだが、テムズ川の下流から取水するサウスワーク社の利用地区で病人が多発していたのに対して、上流から取水するランベス社ではほとんど患者がいないことに気づく。

 謎の奇病を防ぐには、井戸水の使用を直ちに止める以外にはない。かつ、テムズ川の上流から取水すればよいのではないか。そう考えたスノウは、渋る公衆衛生局を説得。結果として、謎の奇病は終息したのだった。

 結論から言うと、この疫病の正体はコレラだった。コレラは水中に生息し、コレラ患者の排せつ物に含まれ、菌が含まれる水を飲むことで発症する。けれども、当時のパラダイムは、瘴気説だった。ドイツの細菌学者ロベルト・コッホ(Robert Koch, 1843〜1910年)がコレラ菌を発見したのは、この事件の約30年後のことだ。「町を清掃すればよい」と考えた役人たちの努力でコレラ患者の排泄物がテムズ川に流し込まれることで、逆にコレラ患者を拡大再生産させていたのだ。

 コッホのコレラ菌の発見には科学的な価値はある。けれども、刻一刻と患者が増える状態に対策を打つためには、時間をかけて研究をしている場合ではない。メカニズムがなんであれ、疫病を防ぐにはコレラ菌が含まれない水道に変えるという結論には変わりはない。

 スノウの凄みはそこにある。スノウの主張は「科学的ではない」「確実な証拠がない」と学会や行政からは批判された。が、スノウのアドバイスにしたがって、菌に汚染された水の使用を止めた町ではぱたりと疫病が止まったのだった。

 そこで、今回の「そのとき歴史が動いた」という日を1984年。スノウの予防原則に従って、ロンドン市の役人たちが信じられていた瘴気説に相反する政策を勇気を持って講じたその日としたい。

 君子危うきに近寄らず。触らぬ神に祟りなし。原因がわからないにせよ、危ういものは使わないにこしたことはない。そう。予防原則の概念はまさに水道から誕生したのだった。けれども、日本国中央政府が予防原則に立脚していないことはいうまでもない。だから、グリホサートにせよ、ネオニコチノイドにせよ、環境ホルモンと言われる内分泌撹乱物質にせよ、世界に冠たる日本の科学技術によって明確な因果関係が立証されるまで、いつまでも使い続けることができる。となると、日本は、まだ「歴史が動いていない」ともいえる。本日も最後まで御拝読ありがとうございました。
(2019年10月4日投稿)
【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
「どうする?日本の水道―自治・人権・公共財としての水を」のDVDの画像はこのサイトより
内田聖子氏の画像はこのサイトより
ジョン・スノウの画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年9月30日、 モーニングワイド Jのコラム
(2) 2019年9月30日、 モーニングワイド ラジオJ


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2019年09月24日

化学薬剤で処理するファストな技術はSDGsになじまない?・中

はじめに

 2018年4月に「種子法」が廃止されて以降、SBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」というコーナーは、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきたのだが、どうやら、売られているのは「タネ」だけではないらしい。改正水道法が10月1日から施行されることを受け、「Jスポット」は、「持続可能な水道」をテーマに3回シリーズで水道問題を扱うという。ということで、9月2日に放送されたものに続く、第二弾。この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

スローな水の浄化法はメリットが多いのに普及していない

Masaaki-kubo.jpg
久保正彰 さて、自治体の水道事業に民間企業が参入しやすくなる改正水道法。来月10月1日から施行されます。法律の施行を前に、改めてこの飲み水、水道について考えていますが、スタジオは生田明子アナウンサーです。おはようございます。

生田明子 おはようございます。

久保正彰 1回目の前回は、緩やかな速度と書く「緩速ろ過」という浄水技術について紹介してくれましたが、今朝はどんな内容ですか。

生田明子 はい。今回は、急速濾過という浄水技術について紹介します。その前に、久保さんがおっしゃったまず前回のおさらいなんですが、前回紹介した緩速濾過は、砂の層に水をゆっくり通すことにより、濁りを取り除くだけでなく、藻、バクテリア、プランクトンですね。藻をはやしまして、藻やそこにすみつく微生物の働きによって水を浄化するという技術でした。「濁度」という濁りを計る数値は0.000度を示していました。

久保正彰 薬も電気もほとんど使わなくて、それから費用もあまりかからないということでメリットがたくさんあるように思うのですが、数を比べると少なかったんですよね。もっと広がってもいいのかなと思うのですが。

生田明子 はい、長野県内の年間浄水量でみてみますと「緩速濾過」は9.8%。一方、28.8%を占めるのが、急速濾過という浄水処理技術です。どんなふうにして浄水しているのでしょうか。急速濾過システムを取り入れている県営水道、上田市にある諏訪形浄水場を取材しました。案内して下さったのは、長野県企業局、上田水道管理事務所の浄水係長、軣廣人さんです。

凝集剤と濾過池の二段階で水を浄化するシステム

軣係長 水が到着する井戸と書いて、着水井(ちゃくすいせい)という設備になります。ここでは薬品を二つ入れてまして、臭い取りのための活性炭と、汚れを静めるための「凝集剤」、イメージ的には液体糊を想像していただければと思います。

生田明子 こんな言い方してはなんですけども、ほぼ泥水みたいな。

軣係長 そうですね。台風も過ぎ去った後ですし、昨日とかも雨が降りましたので、ちょっと川が濁ってる状況でしたので、今こんなに茶色の状態になってます。で、これちょうど、凝集剤の効果で汚れが沈みやすくなったということで、これが2、3時間経ちますと、汚れが完全に沈んで、この上の部分がきれいになってるんですが。

生田明子 わぁ全然違いますね。無色透明の水になって。

軣係長 この薬がないとこんなに綺麗にならないということですね。

生田明子 この工程だけでは、まだ飲める水にはなっていませんので、このあと、急速濾過池、「ち」は池と書きますが、濾過地と呼ばれるプールの中に70 cmの砂の層と20cmの砂利の層がありまして、そこに水を通過させるということでした。

緩速濾過の4倍の速度で水が浄化できる急速濾過

chindenchi1-suwa.jpg生田明子 その早さが急速濾過の名前の由来でした。時間的に1分あたり急速濾過は、8cm。比べまして緩速濾過では、1分あたり、3mmということで、速度については約25倍のちがいがあると。で、これは、「濾過池」の砂の層を水が通過するスピードを比べたものなんですね。川から入ってきた水が処理されて浄水場を出るまでは、急速濾過の諏訪形浄水場は、およそ6時間。前回お話を伺いました緩速濾過の染谷浄水場の場長は「一日程度」とおっしゃっていました。

 比べてみると急速は、緩速の4倍の速さということになるんですが。

久保正彰 6時間と24時間ですものね。

生田明子 県営の上田水道からは、上田市、坂城町、千曲市方面に水を送っているので、1日に多くの水を処理しなければならないと。そこで、一日あたり、処理できる量が多いことから、急速ろ過を採用しているということでした。ちなみに、ろ過した後の 浄水濁後は 「0.01度」とのことでした。

メカが多いため故障が起こり敷地も必要とする急速濾過

久保正彰 急速濾過は、早く浄水できるということが最大のメリットなのでしょうが、一方で デメリットはどうなんですか?

生田明子 再び、軣さんです。

轟係長 急速濾過方式は、機械の数が多くなります。ですので、あと10年20年経ってきますと機械を取り替えなければいけないということがございますので、緩速濾過に比べますとその部分が費用がかかったりですとか、故障の率が高いということがデメリットになるかと思います。

生田明子 そして、もうひとつデメリットと言われているのが広い敷地です。単純に敷地の広さを比べますと緩速濾過の染谷浄水場の方が広いのですが、諏訪形の急速濾過の上田水道管理事務所の上空からの写真をご覧ください。

久保正彰  はい、手前に真っ黒なプールのような場所があるんですが。

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生田明子 さきほど 活性炭という黒い粉末と、凝集剤=「ポリ塩化アルミニウム」を混ぜて、水の濁りを沈めていると紹介しましたが、その沈殿物を乾燥させているのがこの黒い部分「天日乾燥池」です。9カ月から1年間、天日で乾燥させて、土壌改良剤として再利用していますが、乾燥させるために広い敷地が必要なんですね。

久保正彰 写真でみますと浄水施設とほぼ同じだけの面積が必要ですね。

生田明子 そうですね。また、この天日乾燥池を敷地内ではなく、浄水汚泥を別の場所に持っていて処理しているという浄水場もありますが、いずれにしても、処理するための施設が必要になります。

緩速濾過は実際にはもっと早く浄化できる可能性がある?

NakamotoS.jpg
生田明子 最後に、今日の放送した染谷の緩速ろ過の処理スピードについて、信州大学の中本信忠名誉教授は、今言われているよりも、実際はもっと早く、4時間から6時間できれいな水ができあがっているという研究結果、調査結果を示しています。だとすれば、大変画期的なことです。染谷浄水場で処理スピードの検証がなされるべきだと考えます。

ということで、2回にわたり、水道の濾過の違いについて紹介してきましたが、次回は、改正水道法で懸念される民間企業の参入について考えます。

久保正彰 はい。この改正水道法はこの10月1日ということですね。生田 アナウンサーでした。

編集後記

 災害があったときにどうするか。被災地で恐ろしいのは伝染病の蔓延である。ゴミが収集されなければ腐敗する。塩素殺菌されなければ飲み水も汚染される。けれども、倒木で道路が封鎖されていれば給水車も来ない。こうした状況の中で電気や薬剤がなければ動かない『急速濾過』システムは、災害に弱い。つまり、普段は効率的に見えても、いざというときには持続性がなさそうな気がしてくる。

 もうひとつ気になったのは、水道の沈殿物が土壌改良材として販売されていることだ。もちろん、浄化された有機物を大地に還元するという意味では素晴らしい。けれども、大量の廃棄物が生じることには他ならない。ウィキペデイアを見ても、緩速濾過と比べて、管理が大変である、味や香りの問題に対して効果がない、大量のヘドロが廃棄物として生じる、凝集剤を購入するための費用が継続的に必要とされる、原水の化学薬品処理が必要とされる、管理監督に高度な技術が必要とされる、管理コストが高い、細菌を取り除くことはできないとデメリットばかりが並ぶ。

 唯一のメリットは早いことなのだが、これも中本教授の見解によれば差がないという。となれば、ますます急速濾過法を採択するメリットが見えなくなってくる。それでは、なぜ、緩速濾過法は普及しないのか。

 技術はさておき、人材育成という面からストレートに切ってみたい。つまり、端的に言えば「技」を持った職人の育成に失敗したからだと言える。

 グローバル・スタンダードとは、すべてに応用が効くレシピさえ作っておけば、素人でも対応できるマニュアル人間を大量に育成することである。一見するとハイテクに見えても、投下薬剤の量から流速までメカがコントロールしてくれれば、たとえ職人がいなくても浄水場は運営できる。

 これに対して、微生物に依存する緩速濾過法は生き物である。いま、水がどんな状態なのかを見抜く職人の目と、微生物の状態に応じて迅速に対応できる職人の「技」が必要とされる。それは、中本教授のような「名人」から伝承されるべきものであって、マニュアルは通用しない。

 と、ここまで書いてきたところで、緩速濾過法がまさにアグロエコロジーと同じであることに気がついた。アグロエコロジーは生態系を読み解き、生態系がうまく作動する環境を整えることによって安全な食べ物を生み出す技である。同じように、緩速濾過法も微生物生態系の状態を読み解き、微生物生態系がうまく作動する環境を整えることによって安全な水を生み出す技ではないか。アグロエコロジーの技を駆使できる職人は「百姓」として尊敬されるべきだと私は思っているのだが、であれば、これと同じく、緩速濾過法の技を駆使できる職人も命の守り手、「水の匠」といっていい。

 「将来なりたい職業は?」と子どもに問いかけてみよう。マニュアルどおりに動き、つねに代替えが効くメカ工場の部品と、その土地特有の風土の水の「特性」を読み解いて、余人をもって替えがたい浄水池の「守り人」のどちらになりたいかを問いかけてみよう。おのずから答えは明らかではないか。

 以下のサイトも参考にされたい。中本名誉教授の凄みがおわかりいただけよう。けれども、残念ながら、信州大学には、中本名誉教授の後継者はいない。まさに、日本の貧しさを象徴する事象と言えるだろう。子どもたちが憧れる「粋な職業」を復活させたい。
  (2019年9月24日投稿)

【画像】
久保正彰アナウンサーの画像はこのサイトより
生田明子アナウンサーの画像はこのサイトより
中本名誉教授の画像はこのサイトより
急速濾過浄化地の記事の画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年9月23日、 モーニングワイド ラジオJ

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2019年09月04日

SDGsになじむのは微生物で浄化される美味しい水・上

はじめに

 2018年4月に「種子法」が廃止されて以降、SBCラジオ(信越放送)の「Jスポット」というコーナーは、「種子法廃止」の問題を連続してとりあげてきた。けれども、どうやら、売られているのは「タネ」だけではないらしい。ベストセラー作家、堤未果さんの『日本が売られる』(2018)幻冬舎では、以下のように資産も未来も売られていくと記述している。

1 水が売られる(水道民営化)
2 土が売られる(汚染土の再利用)
3 タネが売られる(種子法廃止)
4 ミツバチの命が売られる(農薬規制緩和)
5 食の選択肢が売られる(遺伝子組み換え食品表示消滅)
6 牛乳が売られる(生乳流通自由化)
7 農地が売られる(農地法改正)
8 森が売られる(森林経営管理法)
9 海が売られる(漁協法改正)
10 築地が売られる(卸売市場解体)
11労働者が売られる(高度プロフェッショナル制度)
12日本人の仕事が売られる(改正国家戦略特区法)
13ブラック企業対策が売られる(労働監督部門民営化)
14ギャンブルが売られる(IR法)
15学校が売られる(公設民営学校解禁)
16医療が売られる(医療タダ乗り)
17老後が売られる(介護の投資商品化)
18個人情報が売られる(マイナンバー包囲網拡大)

 そう。堤さんの著作ではタネは三番目で、水がトップなのだ。インタビューの中では、堤さんは、2018年12月に成立した「改正水道法」について、自治体が公共インフラである上下水道等の施設を所有権したまま、運営権(通常15~20年)を民間企業に売却する「コンセッション方式」の導入が促進されることによって、料金の値上がりや水質の悪化という問題が起きるのではないかと懸念する。

 この改正水道法が10月1日から施行されることを受け、「Jスポット」は、「持続可能な水道」をテーマに3回シリーズで水道問題を扱うという。ということで、この放送の一部をテープ起こししたものを紹介しておこう(1)

水の浄化法にはファストとスローがある

Masaaki-kubo.jpg
久保正彰 さて、水道ですね。水道事業についての法律。改正水道法が来月10月1日から施行されます。これまで市町村が担ってきた水道事業の運営。これを民間にゆだねることが可能になるんですね。今回の法律改正の目的「水道基盤の強化」。これを図ることが必要であることが目的となっておりますけれども、この背景には「水道施設の老朽化が深刻化しておりまして、設備の更新が急務」という現状があるということです。今月は、3回シリーズで「持続可能な水道とは」というテーマで生田明子アナウンサーのリポートです。

生田明子 おはようございます。第一回は「安全・低コスト・省エネという持続可能な浄水施設」として世界中で注目を集めています「生物浄化法」について取り上げます。まず、その方法を紹介する前に、水をきれいにする浄水処理技術には、大きくは2つあるんですね。

 ひとつは「急ぐ速度」と書く「急速(きゅうそく)ろ過」。水中の小さな濁りや細菌類などを「薬品」によって沈殿させ、水をきれいにするという方法です。

 二つ目は「ゆるやかな速度」と書く「緩速(かんそく)ろ過」。200年前イギリスのロンドンで開発されました。砂の層に水をゆっくり通すことによりまして、濁りを取り除くだけでなく、感染症のリスクを下げる効果というのも認められたことから世界各地にこの技術、広がっていきました。開発された当時はゆっくり水を通すことからこの名前がつけられていたのですが、顕微鏡の発達でいろいろなことがわかるようになってきまして、15年ほど前から「生物浄化法」という名前になって、世界に広がりを見せています。提唱者は、プランクトン研究の専門家でいらっしゃいます、なんと信州大学の中本信忠(のぶただ)名誉教授です。

上田新聞S.jpg中本名誉教授 35年前から一生懸命研究して、昔は顕微鏡が発達してないから、砂できれいにしていると思って名前つけられてて、実は顕微鏡が発達してよく見てみたら、いや微小生物の活躍だったよってことがわかった。じゃ微小生物が活躍できるようにどうしたらいいかって考える必要があるよということで名前を新しくしたんです。スマートテクノロジーっていったらいいかな。薬は使ってない、電気は使ってない、動力もかかってない、自然の仕組みのね、賢い活用っていうわけ。新しい浄化法としての発祥地、それが、染屋浄水場なんです。上田市にある。

上田市には世界最先端の微生物浄化水道があった

生田明子 そこで、中本先生と一緒に、上田市にある染屋浄水場に行ってみました。先生のおっしゃった通り、あたりを見渡してみても、電気を使う機械というのは見当たらずとても静かなんですね。そのかわり「ろか池」には「藻」がたくさん生えていたんです。

久保正彰 写真ありますけれども、結構、大量に発生していますね。

生田明子 はい!。いいんですよ。

NakamotoS.jpg中本名誉教授 最初、これを見た小学生が、「わあ、汚い」って言うんですよ。いや、これは汚くないんだよ。これが役にたってるんだよ。これが水をきれいにしてるんだよ。という解説。おいしい水を作る小さな主役たち。水をろ過する砂の表面に、無数のプランクトンがいます。藻といってもわかんないから、プランクトンにしてるんでしょ。中でも浄水場にとって強い味方は、メロシラ・バリアンス(Melosira varians )という、ケイ藻です 。これね。この茶色いやつ。彼らは、春から秋にかけて繁殖して、水道水に不要なものを除去します。そして、光によって酸素を放出し、その浮力でゴミと共に浮かび上がります。この繰り返しにより美味しい水が作られます。濁りが取れますと。

生田明子 へぇー。

中本名誉教授 だから、これ有用生物だってわけ。それを私たちは毛嫌いしちゃった。だから、いやーこれは役にたってるよって。

維持経費もかからずきれいで美味しく安全でいいことずくめの微生物の威力

生田明子 中本先生は、「生きている藻は臭くないし、藻は自動ごみ取り装置」だというふうにおっしゃっていました。

 この藻や砂を顕微鏡でみてみましたら、小さな生き物たちがいっぱいいたんですね。藻は、微生物たちの餌になっていたんですね。さらに、アメンボなどの昆虫もいたんですが、こういった微生物や昆虫による食物連鎖で水が浄化されているということを研究によって証明し、世界にこの方法を伝えているのが中本先生なんです。では、微生物たちは、川の水をどのぐらいクリーンにしたでしょうか?水の濁りを表す濁度計の数値を見てみました。

中本名誉教授 最後の砂ろ過した後は「0.000」の水なんです。濁度基準というのは、0.1度を目標にしなさいと。何桁も下位のきれいな水です。もう細菌もいないですからね。ちょっと飲んでみて。

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生田明子 いただきます。美味しいです。蛍がこっちの水は甘いぞって。

中本名誉教授 そう。つまり刺激が何もない水は、実は僕らは甘く感じるんです。だから別名、甘露水て、甘い露の水って呼んでます。この本物の水を知らないんです、みんな。

生田明子 最後に、もうひとつおっしゃっていたのが、染屋浄水場の生物による浄化法は薬品類をほとんど使わないため、水道管等の設備も長持ちするのでメンテナンスも最小限で済むとのことなんですね。ですから、大正12年に作られたので100年近くたっているのですけれども、この施設でも現役でいまも活躍しているんだと力強くおっしゃっていました。

 染屋浄水場では、中本先生の解説つきで、月に一度無料の見学会が行われています。「水が第一」という気持ちで、第一水曜日です。今月はあさっての4日(水)午前9時から、来月は2日(水)午前9時からです。

久保正彰 ここまでねぇ、お話を聞くていると、緩速ろ過は、メリットがだらけというか、いいところばかりのようなのですが、この緩速ろ過は、上田市染屋以外にも県内に何カ所かあるんですか。

生田明子 はい、平成26年の5001人以上の給水人口のものに対しての「長野県水道統計」のデータによると長野県内には、緩速ろ過は26あります。対して今日紹介しなかった薬品を使う急速ろ過の浄水池は、58と、急速ろ過のほうが多いんですね。どうして、この急速ろ過を多く採用しているのか、次回以降に、またご紹介いたします。

編集後記

 農業、食の世界では作家、島村菜津さんの「スロー・フード」が良く知られている。防腐剤等の食品添加物を利用して工業的に大量生産される「ファスト・フード」に対して、微生物の力を活かし自然に発酵していくチーズや味噌はまさに「スロー・フード」と言える。けれども、同じ図式で薬剤を利用した工業的に大量浄化される「ファスト・ウォーター」と微生物の力を活かして自然に浄化されていく「スロー・ウォーター」があるとは意外だった。しかも、このスロー・ウォーター研究の第一人者が信州大学の中本名誉教授であり、その実践事例も上田や飯田にあるという。

 微生物は地球にやさしい。浄化された水は、阿寒湖やバイカル湖の水よりきれいなうえ、薬も使わないから甘い。薬を使わないので配管の老朽化も起こりにくく、機械も使わないため阪神大震災でも東北大震災でも施設は壊れなかったという。なんとなれば、これは東京都市大学の枝廣淳子教授が「しなかやかな強さ」と訳されている「レジリアンス」そのものではないか。

 ちなみに、「レジリアンス」は農業の世界で着目されているキーワードだ。FAOの小規模家族農業の専門家、竹之下香代さんによればSDGSでは「オーガニック」よりも「アグロエコロジー」と「レジリアンス」がいま一番のキーワードになっているのだという。次回の放送に期待したい。
  (2019年9月4日投稿)
【画像】
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緩速濾過浄化地の記事の画像はこのサイトより

【引用文献等】
(1) 2019年9月2日、 モーニングワイド ラジオJ

posted by José Mujica at 06:00| Comment(2) | 水道民営化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする